こんにちは実力主義の学園 作:恋キング
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さて、諸君らは犬を飼ったことがあるだろうか?
石器時代、マンモスやナウマンゾウを追いかけていた頃や
中世に羊を飼っていたことのある人間ならその有用性から
優秀な相棒として活躍してきたことで共存していたその生物は
今では愛玩用動物の代表として、ただ飯を食べ
共に過ごすだけの日々を謳歌するまでに陥っている。
ではどうして、そんな穀潰しを人は自らのリソースを削ってまで
養うという選択をとるのか。
答えは当然、かわいいからである。
かわいいは正義、はっきりわかるね。
今までは、そんな飼い主たちにあまり共感がわかなかったウチであるが、その目を見たときには、考えを改めさせられた。
女の子がほっとかない顔、タレ目気味のどこを見ているかわからない目、服の上からでもわかる筋肉量からも確実にスポーツ等で活躍してきたことが伺える。そんな人間が、まるで怯える子犬のように、助けを求めるような目をこちらに向けている。
おそらく、人と関わることに慣れていないのだろう。目があっても会釈もできず、ジッとこちらを見つめる瞳にウチは心を揺さぶられた。
「えと、はじめまして。夢宮ヒナタです。」
「はじめましてだな、綾小路清隆です。」
あーもう、かわいい。打算とかいらない、難しいこと考えるの辞めよう。入学式なんか知るか、この子が友達になってくれたらそれでいい。ごめんねキーちゃん。
隣の黒髪女子が、驚愕の表情でこちらに目を向けているが、それも無視して、綾小路くんと交流を深めようとしたそのとき。
無粋にもチャイムがなったため、ウチは名残惜しくも、自分の席に戻るのであった。
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チャイムがなると、すぐに教師であろうスーツを着た女性が教室に入ってきた。あわてて席に戻ったウチは、キーちゃんと目を合わせると、前を向いてその教師の発言を待った。
「えー。新入生諸君、私はこのDクラスを担任することになった茶柱佐枝だ。普段は日本史を担当している。この学校には学年ごとのクラス替えは存在していない。卒業までの3年間、私が担任としてお前たち全員と学ぶことになると思う。よろしく。今から一時間後に入学式が体育館で行われるが、その前にこの学校の特殊なルールについて書かれた資料を配らせてもらう。以前入学案内と一緒に配布してあるがな。」
なんと、3年間同じクラスときたのだ。
実力主義を教育方針にしていると聞いていたため、成績に応じて学年ごとにクラス移動があると考えていたが、そうではないらしい。
塾などの学習機関では、効率のいい教育のために、同程度の能力のものをクラス内で競わせることで、互いに高め合うといったことをしているが、クラス間の移動がないのであれば、下位のクラスはやる気を失うだろう。
となると、予想できるのは、クラスごとの団結等を活かした集団戦だろうか?先程の視察である程度の特徴によってクラスが別れていることを考慮すると、どういった特徴を持った集団が上位に上がれるかといった実験も兼ねられていることが予想できる。
まあ、そんな難しいことよりも、今は、かわいいかわいい
綾小路くんと3年間一緒のクラスであることを喜ぼう。
やった、かわいい。
その後、Sシステムの説明、毎月の頭に1ポイント1円となるポイントが、なんと10万円分も振り込まれるなどの説明があった後、茶柱先生は教室を去っていった。
10万円が毎月貰えるとなると、年120万円の3年間で360万円。
しかも、学生寮なので家賃は無料であること考慮すると、光熱費や食費で3万円から4万円ほど差し引いたとしても、毎月のお小遣いが6万円近く、3年間で216万円も貰えるということになる。
入学することができた事によるボーナスみたいなものだと先生は説明していたが、流石にちょっと多すぎないだろうか?
そんなことを考えていると、平田がスッと手を上げる
「皆、少し話を聞いてもらってもいいかな?」
やられた。と思った頃にはもう遅い。
「僕らは今日から同じクラスで過ごすことになる。だから今から自発的に自己紹介を行って、一日でも早く皆が友達になれたらと思うんだ。入学式まで時間もあるし、どうかな?」
仕切り役を平田に取られてしまう。こうなってはヒエラルキーは一気に平田に傾くことになる。こうなったなら、やることは一つだ。
ウチもすぐにスッと手を上げる
「いいねいいね、ウチは夢宮ヒナタ。みんな気軽にヒナタでいいよ。趣味は料理と水泳。中学のときはスポーツばっかりだったからこの学校では勉強とか頑張りたいと思ってます。よかったら誰か教えてほしいな!」
ここで誰よりも早く名乗りを上げることで、自己紹介のテンプレートを構成する。これがあるとないとではテンポが大きく変わる。
平田もご満悦のようだ。
「ありがとうヒナタくん。そうだ、僕の名前は平田洋介。中学では普通に洋介って呼ばれていたから、下の名前で呼んでほしい。趣味はスポーツ全般だけど、特にサッカーが好きで、この学校でもサッカーをするつもりなんだ。よろしく。」
平田に続き、端から自己紹介が始まる。
おどおどした様子の井の頭。お調子者の山内。
クラス全員と仲良くなりたいというキーちゃん
自己紹介もすすみ、クラスがうまくまとまりかけたとき。
いかにも不良ですと言った赤髪の男が平田に怒鳴りつけると、
それにつられて立ち上がった何人かの生徒と共に、教室から出ていってしまった。
クラスの隅では綾小路くんがどうしようと混乱していた。
かわいい
ちなみにその隣にいた黒髪の女は出ていった。
その後、自己紹介の流れは続き、滑り倒した池、協調性のない高円寺様などが自己紹介を終えた。
そして、ついに綾小路くんの出番となった。
「えーっと、次は、そこの君お願いできるかな?」
「え?」
ぼーっとしていたのか、綾小路くんはガタッと立ち上がり
何を言おうか迷っているようだ。かわいい
「えー…えっと、綾小路清隆です。その、えー得意なことはありませんが、皆と仲良くなれるよう頑張りますので、えーよろしくお願いします。」
クラスが凍りつく。
かわいい
なんだこの可愛い生き物。生まれて初めてたった子鹿か?
抱きしめて、ヨシヨシしたい。という衝動にかられながらも
流石にフォローしないと彼がクラスに馴染めなければ
一緒にいるだけで彼に気を使われてしまっては大変だ。と思い
「綾小路くんよろしく!タカくんって呼んでいいかな!」
「あ、あ、はい、よろしくお願いします。」
クラス中に綾小路くんはウチと仲がいいと少し牽制をかけると
クラスではパラパラと拍手が起こる。
これが、ウチと"犬"である綾小路くんとの初めての出会いである。