こんにちは実力主義の学園 作:恋キング
人は何かを一度与えられると、それを与えられるのが当たり前と感じてしまう生き物である。
例えば喜んでもらいたくて教室などの掃除をはじめると、最初のうちは、ありがとうと言われるだろう。だが、その習慣を辞めると必ずその恩恵を受けていた人間に、「どうしてやらないのか」などと言われることは珍しくない。
だから、育児ではよくテストでいい点をとったから、試合で勝ったからなどのご褒美として報酬を渡す家庭が見受けられたりするが、それを続けていた場合、ご褒美がもらえないのなら成果を出さない。努力していたけど勝てないのならやらない。といった結果が生まれてしまうことがよくある。
何が言いたいかというと、本日5月1日は茶柱先生が言うには、今月分のポイントが配られるといわれていた日であったが、そのポイントが振り込まれておらず、クラスのグループチャットは大荒れという結果が起きているのだ。
「やっぱり君、小説家になろうよヒナタくん」
などと、電話口からは櫛田の戯言が聞こえてくるが、今はそれ以上に他のクラスの生徒がどうなのかを知ることが先決である。
すると、案の定クラスによって貰ったポイントは異なっており、AクラスからDクラスにかけてどんどん少なくなっていたのだ。
櫛田の弁当箱に野菜を多く入れながら、当分はより節約する必要があると思い、部屋を出た。
「賭けはウチの勝ちみたいだねハニーさん」
「折角取り越し苦労なダーリンくんのお小遣いでたくさんお肉が食べられると思ったのに、これじゃまた健康になっちゃうね」
寮の前で櫛田に弁当箱を手渡し、新入生がざわつくのを横目に校舎に向かっていると、池と山内が声をかけてくる。
「おい、ヒナタ!お前何か知らないか?」
「やべぇよヒナタ、金貸してくれ!」
話を聞くと、ゲームやらで先月配られた10万円をほとんど使い切ってしまったらしく、山内に至っては自販機で飲み物すら買えなくなってしまったらしい。
今朝に0という事は最悪の場合来月も0だ。ここで貸せるほどの余裕もないウチは、二人を慰めながら共に校舎に向かう。
そんな二人を見て、櫛田は仮面をきしませるが、特に何かを言うわけでもなかった。
教室に入ると、やはり一番変化の大きいDクラス。振り込まれていない事を学校側の不備だと訴えるなど、己の情報収集能力の低さを声高にアピールしている。
そんな中クラスに入ってきた茶柱先生は、学校側の不備ではなく、このクラスの責任であることを説明した。
そして、予想通りこの学年のクラス順は学校側の査定によって格付けられており、我らがDクラスが最下位であることを示した。
Aクラス 940pt
Bクラス 650pt
Cクラス 490pt
Dクラス 0pt
また、毎月ポイントとして支給されるポイントはプライベートポイント(今後はPP)、クラスごとの評価ポイントはクラスポイント(今後はCP)として分かれており、1CPごとに毎月100PPが配られることになっているとのこと。
つまり、一番近いCクラスですら5万円近くをもらえている中で、ウチらDクラスは、0とダントツの最下位であることが目に見える。
評価基準として、授業中のスマホ、私語、遅刻欠席などの素行不良の回数が明かされてしまっては、まあそうだろうなとしか言いようがない。
だがしかし。納得できるわけがないだろう。
櫛田と目が合い、同じことを考える。
なぜウチが、Dクラス等といわれなければならないのだ。
その後、茶柱は小テストの結果を貼りだす。
結果は櫛田と並んで78点。
上には何人かいるが、それでもまあ結構な高得点である。
別に中学のときに特段、人より劣るような生き方はしていない。
よく学び、よく笑い、よく泳ぐなどしたものだ。
高校に入る前になんらかの人間関係にトラブルがあったわけでもなく、よく言えば優等生と呼ばれるだけの成績であったと思う。
別に尻拭い要員であった等の説明もないこの状況、この対応で、この湧き上がる怒りが抑えられようものだろうか?
いいや、そうではない。
そこで、決まったのである。この学校に通う目的が。
必ずしもどんな手段を使おうとも、自分こそがAクラスにふさわしいということをこの学園に証明してみせる。
まったく、面白いじゃないか。
あらためまして、こんにちは実力主義の学園。
1
茶柱がいなくなったあと、今後どうするか平田が中心となって、クラスでの話し合いが始まった。何故かプールで。
とりあえず素行については、各自で注意し合いながら改め、中間試験については、クラスでの勉強会を開くといったことが決まった。
しかしだ、それに反発するものもいるのである。
「お前が何を言おうが勝手だけどよ、俺を巻き込むな」
赤き不良、須藤である。
毎度毎度、平田がやろうとすること全てに反発する彼はもう、逆に平田のことが大好きなんじゃないかとまで疑う。
池や山内なんかは特に今回の小テストの結果が悪く、平田の勉強会は参加しないが、ウチや櫛田と一緒になら勉強するという返事ももらった。
別にいいのだが、仮にも彼氏の前で水着姿の胸に注目するのはどうにかならないのだろうか。櫛田ぐらいになるとわざと見せつけてる節もあるが、流石に気持ち悪かったのか仮面がずれていた。
綾小路くんは、相変わらず黒髪少女と一緒にプールサイドに腰掛けており、なにやら話しこんでいる様子が見れた。そこで、櫛田を女の子たちにまかせると、ウチは二人のもとへ向かった。
「キヨくん、堀北さん、一緒に泳がない?」
そこには筋肉があった。
細身でありながらも、つくところにはつく筋肉。
その顔にその身体はズルいでしょ、と言いたくなるような、そんな健康的な肉体美は、隣に女の子がいても、そっちには微塵も気にならないくらいには美しかった。
触っちゃだめかな?男同士だから許されるよね?
なんて思っていたが、残念ながら堀北に拒絶されてしまい、堀北はどこかへ行ってしまった。
「やっぱり仲良くなれないのかな?」
「とりつく島もなかったな」
「それよりもキヨくん、いい筋肉だね」
にっこり笑顔で筋肉を褒めると、キヨくんはキョトンとする。
かわいい
「俺なんかより高円寺とかの方が凄いんじゃないか?」
「なんというかね?キヨくんって見せ筋とかじゃないじゃん?だからこその、機能美っていうの?すごいよね、ちょっと」
「はいストップ!!」
ここで邪魔が入る。おのれマイハニー。
「もう、ヒナタくんったら私がいるのに浮気はだめだよ?」
「櫛田、お前は何を言っているんだ?」
「筋肉を褒めるのは当然のことじゃないの?」
「ヒナタ、お前も何を言ってるんだ?」
こうして、まずは中間試験全員赤点回避に向けて、ウチらは勉強と節制の日々を過ごすのであった。
タイトル回収ついでにオリ主について
作中の描写だけではオリ主がDクラスにいるのは違和感だと思うかもしれませんが、あくまでも語り手視点だから騙されているだけに過ぎません。
例えば、頭の回転がそこそこ早いからかSシステムといった学園の秘密などにも気がついたりしますが、それを周りに伝えて改善させるといった行動に移るわけでもないため、クラスポイントの変動といった結果には出ません。
描写からもわかるとおり、ナチュラルに他人を見下すような表現がされているため、実態としては、堀北鈴音から少し学力面を削って、コミュニケーション能力に多少振り分けた程度に過ぎず、特化してない分堀北よりもあつかいにくいというオチがあります。
なんなら精神性は櫛田レベルのため、承認欲求のためならば、他人を利用したり平気で裏切るといった行動も彼はするでしょう。
要するに、なるようにしてDクラスになった子です。