存在してはならなかった世界   作:真暇 日間

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絶対に存在してはならない世界100.5

 

 日本にて。

 

 トウカイテイオーはダービーにて容易く頂点を奪取した。皐月に続きダービーを獲ったことで、この世代における最も『はやい』ウマ娘及び『幸運な』ウマ娘はトウカイテイオーに決まった。ライバルと目されていたターボは、2400は流石に長いと感じたのかダービーには向かわずなんと宝塚へ出場し、そこで一年上のメジロライアンと死闘を繰り広げて6cm差で敗北を喫した。

 ツインターボにとってトウカイテイオーは目標ではなくライバルだ。そのライバルがG1の二つ目を取ったのに自分はまだ一つ目すら取れていないということに大きな衝撃を受けたが、ターボは今日もまた全力で走り続けていた。

 

 ネイチャ(分身)が考案した、ウマ娘の力を最大限に利用した農耕術。端的に言えば馬耕用の鋤だが、それを取り付けて耕されていない畑を耕す。それも全力で。

 鋤が抜けないように上から重しが載せられ、土に食いついた鋤の刃の摩擦を受けながら進むのは、砂浜で巨大なタイヤを引くトレーニングに似ている。足元が柔らかな土であることもあってより力を込めなければ動くことができず、しかしやみくもに力を込めてもただ滑るだけ。ターボは根性と同時に自身の身体にどう力を込めればより強く前に進めるのか、どうすればより強く地面を蹴ることができるのかを覚えることができた。

 

 そうして成長していくターボだが、テイオーも同じかそれ以上に成長し、進化を続けている。自身の弱点であることをようやく理解した、出力に対して脆い脚。しかし実のところ、テイオーの脚が脆いということはない。それどころか一般的なウマ娘の脚に比べれば頑丈な部類に入るが、自身の出力に骨が追いついていない。そのことをネイチャにベッドの上で鳴かされながら教えられたテイオーは、自分の全力の走りを受け止められる体を作ろうとネイチャに頼りながらも改造を続けていた。主に食と運動によるものだが、結果としてテイオーの脚はダービーまでに僅かにではあるが太さを増していた。筋肉の増量もあるが、そもそも骨の太さそのものが僅かにではあるが増していたのだ。

 テイオーが次に目指すのは菊花賞。長距離を走ることは身体にかかる負担も大きくなるということ。しかしそれでも無敗の三冠を目指すテイオーは、普段の食事に加えて美味くもない錠剤をいくつも食事後に摂取することを続けていた。何のことはない、カルシウム剤と鉄剤である。

 骨を強化するのに必要不可欠なカルシウムと、カルシウムなどの栄養や酸素を必要な部位に届ける血液をつくるための鉄。これらを継続的に十分な量摂取することでテイオーは何とか自身の目的を叶えようとしていたのであった。

 

 テイオーは天才であった。だからこそ、自分の最も向いている距離が中距離であり、長距離は走れはするものの長くなればなるほど不利になるということを理解していた。恐らく自分の実力を発揮しきれるのは2500m程度まで。それ以上を走って勝利するならばちょっとした努力では届かない可能性が高い。それをよく理解していた。

 それはネイチャからの継承により長距離の因子を得た後も変わらない。多少長距離が得意になった感覚はあったものの、3000を何も考えずに疾走するのは不可能だと結論付けた。そして十分なスタミナをつけるのには時間が足りないことを理解し、スタミナの消費を抑える走り方を身に着ける方向へと変わっていった。

 自身の直前の相手の影に隠れるようにして風を避けるスリップストリーム。走りやすい位置や状況を作り出してメンタルに余裕を持たせるレースプランナー。コーナーで息を入れる円弧のマエストロ。直線で息を入れる好転一息。左右に振れる際に独特なステップを刻んでやる気と気力を回復させる神業ステップ。レース序盤に見通しがよければ体力の消費を抑えることのできるスタミナキープ。手の届く所にあれば全てに手を伸ばして掴み取ってきた。

 

 それだけの努力を続けられる燃料は以前から抱き続けていたシンボリルドルフへの憧れであり、そしてナイスネイチャの作る『ご褒美』であった。

 現在、美食研究会では重賞に勝利したウマ娘を集めて週に一度食事会を開いている。複数人集まって食べる鍋はとても幸せになるが、G1を獲った場合の食事会は通常の重賞を獲った場合とは一線を画する。

 複数人で食べる以上、鍋はどうしても好みの分かれるところがある。ネイチャの作る鍋はどれもこれも格別であることに変わりはないが、しかし一度好みのど真ん中を打ち抜かれたことがある者にはどうしても何かが違うという感覚が付きまとうのだ。

 しかし、個人を対象に作られた料理にはそういうものがない。今まで食べたことのない物であっても、ナイスネイチャはまるで最も好む味を知っているかのように仕上げてくる。食べる当人に最も合うように調理を加えたそれらの料理は、多くのウマ娘を物理的に溶かしてきた。

 

 ネイチャがアイルランドに飛んでから、美食研究会にはネイチャの分身が常駐している。ネイチャ自身と変わらず動き、畑を弄り、料理を作る。しかし最近になって少しずつその行動がネイチャのそれから離れてきている。

 元々人から、そしてウマ娘からも少々離れた行動をとっていたネイチャだが、最近はそれが著しい。今までは祈りを受ければ苦笑していたのが、ある時から優しげな微笑に変わった。ウマ娘にできる行動を拡大すればできるようなことしか見せてこなかったのが、明らかに超常の力を扱うようになってきた。

 

 トウカイテイオーは天才である。それまで抱いていた常識と眼前に広がる現実が異なっていた場合、常識は常識として別の枠に置いたうえで現状をしっかりと認識することもできていた。

 故に、気付いたのは二番目だった。

 

 ナイスネイチャは、神様になりかけているのだと。

 

 一番最初に気付いたのはマーベラスだった。マーベラスはなんと言うか、半分神様になったネイチャからすると一番初めの信者みたいな扱いになっているみたいで扱いがちょっと高い感じがする。まあ本当に少しだけだし、美食研究会の初期メンバーも大体同じように扱われているんだけれど、それでも少しだけ扱いがいい気がする。

 自分は自分でかなりいい扱いをされているような気もするけれど、それはそれ。年代的にマーベラスとぶつかることは多分無いことを喜びつつ、テイオーは三冠目、菊花賞に向けてのトレーニングを再開した。

 

……ところで、神様ってことは重婚とかしても問題ないってことだよね? マーベラスの次でいいから立候補しちゃおうかなぁ……?




Q.神業ステップって長距離で効果あったっけ?
A.アプリだと無いですが、現実に持ってきた場合を考えると距離関係ある? と思ったので多分あります。

Q.神様になりかけてるって気付かれちゃってますよ?
A.気付かれて困るもんじゃないのでセーフ。

Q.おい おい おい
A.受け入れられるかは別なので。

番外編のネタ(すぐ用意できるものに限る)

  • ナイスネイチャ+αのヒミツ(ウマ娘風)
  • ウィニングカラオケ(NN杯直後)
  • 『ハヤイ』という名の馬について
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