存在してはならなかった世界   作:真暇 日間

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絶対に存在してはならない世界105

 

 許可は出してもらったのでちょっとアイルランドの妖精郷から影の国へ行って、そこから更に死者の領域であることを利用してギリシャ圏の冥府まで足を延ばす。今となっては冥府を治める神はおらず、ただシステムとして死者をどうこうする機構が残っているだけになっているんだけど……それでもそこに残っている存在は居たりする。

 神になれず世界の壁を越えることができない者であったり、仕事をする機能だけ持たせた自分の分身のようなものを残していたりするんだけど、ギリシャ圏の冥府の神であるハデス神はどうやら後者のようで明らかに本体の影の十分の一くらいまで色の薄い影がずらりと並んで仕事をしていた。社畜っぽ過ぎて泣けてくるね……アタシも社員の皆にはちゃんと休暇あげないと。まあ書類仕事してる人たちに休暇あげると笑顔で畑に飛んで行って農作業始めるんだけど。趣味で農作業は体が休まらないからやめなって……言っても無駄だったけどさ。

 

 さて、多分だけどこの影たちは仕事の邪魔をするとその原因の排除のために冥界の機能をフル活用してくるタイプだと思うから、こういう時こそ規則を守って真正面からお願いすると割となんとかなる。一番最初から賄賂とかそういうのを使うよりも印象がよくなることってあるからね。特に冥界の支配者っていうのは自分の仕事に誇りを持ってる人―――いや、人じゃない存在も多いけども、とりあえず人とさせてもらう―――が結構多い。まるで顔見知りって? 泰山府君とは結構顔合わせしてるから……。

 ちなみに泰山府君っていうのは所謂閻魔様のこと。泰山府君祭っていうのは反魂の術の一種だけど、正式な手順を踏んで一旦返してもらったりすることができるわけ。その際に現世で行った死者の魂を得たものは多くの場合死者のあの世での対応に関わってくる。良いことをすると良い方へ、悪いことをすると悪い方へ、というわけ。

 それに、ギリシャ神話圏だと力技とは言っても一回黄泉返りが為されてるから不可能ではないんだよね。神話において死が絶対で蘇りが一切ないとされると難しいんだけど、そういう神話ってまあ無いからね。何らかの方法で死者が現世に干渉する方法はあるものだ。

 

 そういうことで交渉。と言ってもアタシが借り受けたいのは死者ではあるものの座に登録されている英霊で、正確には冥界の守備範囲から少し外れてるみたいなんだけど……呆れたように溜息をつく素振りだけ見せて、一体の影が手続してくれた。いやほんと有り難い、流石はギリシャ神話圏において優しい神ベスト3常連なだけある。

 まあいくら優しくても限界になったり必要とあらばいくらでも残酷になれるのがギリシャ神話圏の神格の特徴だけど。いや、神なんて大体そんなものか。

 連れてこられた先には大きな門。冥界と座の境界みたいな役割を果たしているらしいけど、最近はあまり使われていないらしく一部に埃が被っている。死者の世界だけあって蜘蛛の巣とかそういうのは無いみたいだけど。

 

 扉を開けてもらって、いざ交渉開始。あくまでも本人の意志で参加してもらわないとレースにならないからね。特にヘラクレスは逸話において天空そのものを持ち上げるなんて言う常識外れをやってるし、やろうと思えば大陸くらい割れるだろうからね。無駄に怒らせたくはない。

 ……いや、まあ、一応だけど必要になれば戦いにはなるよ? 多分だけど。こちらの攻撃が通らないわけでもなければ殺せない存在って訳でもないはずだし。実際死んでるからこうやって英霊の座に居るわけだし。

 

 アタシが用意したのはいつもの通りの食事。ただし以前のようにアタシが新しく出した物ではなくアイルランドや日本でも十分に栽培できるようになったものに限っている。それでも十分だとは思うけど。

 

「参加か。良いぞ。いつだ。今か。五分後か。十分後か」

「食いつきがよすぎて驚いていますがとりあえず質問に答えると二か月後くらいです」

「……は?」

「二か月後くらいです。現世でハロウィンと呼ばれる時期じゃないと呼びづらいので」

「……は?」

「いやそんなドスの利いた声出されても無理な物は無理ですって」

「なぜ無理だ」

「色んなところから有名な英霊の皆さんを集めてのレースの予定なんですけど、暦とかを考えると全世界に広がってる概念を使って集めるとなるとそこが一番楽なんですよ。神の子の復活祭でもできなくはないんですけどそっちで蘇らせると性質がいくらか変わったり死んだりする人が出る可能性が十分ありますし」

「……なるほど、魔術か。ヘカテ神に協力を頼むわけにはいかないのか」

「皆さん居なくなっちゃってますから。死んだわけではないと思いますけどこの世界に残っている神格は所謂土着の小神とか精霊みたいなのばっかりで死人をどうこうするようないわゆる大魔術に分類されるようなのは本職以外がやった場合揺り返しが怖いので……あ、一応基督教の復活祭に合わせて四月でやることもできますよ?」

「では十月か……待ちきれんな。他の参加者は誰だ?」

「それはこれから色々声をかけていくところです。まあきっと全力で競い合える相手が出てきますからお楽しみに」

「ほう? それは楽しみだな。ああ……実に、楽しみだ」

 

 わあいい笑顔。やっぱりライバルが居ないと倦むのかな? アタシも旅に慣れ始めてきたころはそんな感じだったっけ。その後ちょっと人ならざる存在と言うかそっち系ともやるようになって倦んでる暇なんて無くなったけどさ。

 




Q.最終的にどこに向かってるんですかこのネイチャさんは……?
A.神様あるいは英雄。なおもうほぼそうなってる点には触れないものとする。

Q.ハデス神ってもしかして、社畜……?
A.イメージはディ〇ニーのハデス様。

番外編のネタ(すぐ用意できるものに限る)

  • ナイスネイチャ+αのヒミツ(ウマ娘風)
  • ウィニングカラオケ(NN杯直後)
  • 『ハヤイ』という名の馬について
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