存在してはならなかった世界   作:真暇 日間

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絶対に存在してはならない世界108

 

 アイルランドまで走って戻ってすぐにフランスまで。イギリスのG1は一つ取ったから次はフランス。まあ基本的にどこの国でも自国のレースに外国のウマ娘が出場しようとするとあの手この手で妨害してくるからあんまり長いことその国に滞在したくはないんだよね。日本だって似たようなことやってるから文句は言えない? 限度っていうものがあるでしょ。

 と言ってもアタシにとってはもう慣れたもの。何度もフランスに行ってるし何度も勝ってるし、なんなら学園全体で凱旋門賞に挑戦するプロジェクトができた時にはフランスに行きつけのお店とかも作ったくらいだしね。まあ庶民派なアタシにとっては海外旅行っていうのはあんまり得意な事じゃなかったんだけど、旅行気分で勝てる事ではあった。

 そしてこの世界では、はっきり言って現代でアタシに勝てるウマ娘は多分存在しない。この世界で得た神格による強化を抑えて、トレーナーさんから預かっている権能や魔力とか気とか霊力みたいな特殊な身体強化方法を使わないようにして、理論上一般的なウマ娘でも問題なく習得できる範囲の技術と身体能力だけに制限しても負けるつもりはない。ちなみにその状態はナイスネイチャ記念で走った三女神様たちと同じような条件だから多分神ならみんな同じくらいまで抑えることはできると思う。

 ……抑えた状態でよその世界仕様のキンチェムに勝てるかって聞かれると、微妙な所はある。だってキンチェムって近代で英霊にまで上り詰めた存在だよ? しかも逸話からしてどれだけ盛っても許される類の存在だから後付けで実力が盛られる盛られる。近代の英雄が英霊になると身体能力は強化されるって話はよく聞くけど、キンチェムもそれに含まれるからね。恐ろしいことに。

 

 ───さて、そういう訳でアタシは久し振りに自分の強化を一時的に抑えていた。

 

 魔力による身体強化を一般的なウマ娘のそれと同等にまで抑える。ウマソウル由来の霊力による強化も同じく。気による強化は一般的なウマ娘の領域発動のように一時的な物に。

 神格を一時的に停止。霊格の一時的な降格。呼吸法も一般的なそれに戻してからトレーナーさんの置き土産から来る身体強化の部分を止める。

 万能感が消えていく。目を閉じていても感じていた周囲の光景が感じ取れなくなり、その気になれば周囲数十㎞の音を全て聞き取ることのできた聴覚も昔々の状態に。僅かな湿度や異物にも反応できる鼻や天気も読み取る肌も、一般的なウマ娘のそれと同等にまで落ち込んだ。

 

 そう、今の状態こそがナイスネイチャと言うウマ娘の本来の姿。本来の力。トレーナーさんの置き土産による底上げも神格による上乗せもない、ナイスネイチャそのものの力。

 違うのは、積み重ねてきた物だけ。

 

 何度巡ったかわからない世界での積み重ね。幾度も繰り返された、数多くの想い。

 トレーナーさんと一緒に重ねたトレーニング。何故か色々なウマ娘と何度も繰り返し走ったあの坂道。今のアタシの身体はあの時の身体ではないけれど、魂にまで刻みつけた技術は忘れられない所にまで来ている。

 たくさんのウマ娘から受け継いだ願い。アタシの脚質とはまるで違うものもあれば、アタシに合ったものもある。それは異なる馬場を走るための技術であったり、経験を記録として知らされることで得られる精神性による新たな脚質であったり、自身の力の扱い方を知ることによって距離適性をある程度克服することであったり、ウマ娘の本質の一つとも言われる領域であったり。

 一つ一つは大きなものではない。合うものも合わないものもある。けれどそれらは確かにアタシの魂に刻まれているし、今でもしっかりと残っている。

 

 この世界には神が居る。悪魔がいる。それはつまり、信仰が力を持つということ。信仰は神に向けるばかりではなく、良いものばかりとは限らない。

 日本のウマ娘は凱旋門賞では勝てない。そういったジンクスもまた信仰の形のひとつ。重なれば重なるほどにその力は大きくなり、より強く降りかかる。そういった負の信仰こそがこの世界におけるジンクスの力の源になる。

 ……まあ、別に勝てないわけじゃない。ジンクスがあったところではね返せるくらい強ければ何も問題はないし、芝やコースに対しての適応くらいならまあできる。アタシは慣れた。一体どれだけの数新設されたばかりのURAファイナルズを走り抜き、アオハル杯を優勝に導き、数々のレースを走り抜け、グランドライブを復活させ、再現された三女神と鎬を削り、凱旋門に日本の国旗を建て、ウマ娘用の運動種目を極め。畑を耕し、メカウマ娘とを完成させ、廃れかけたレースを復興させてきたか。身体が覚えていなくても魂が覚えている。勿論少しは慣れのために走ったけどね。

 アタシはレースにおいて、その世界で許される範囲でしかそういった力は使わないようにしている。神を相手にしたならば色々と自重を無くすけど、只人を相手にあらゆる全力を出したりはしない。戦いにならないからとかそういった理由ではなく、世界の中で許されていない力を使うと消耗が大きいから。だからアタシは一般的なレースの時には自分の強化を許される範囲まで落とす。完全に無いものにしてしまうとまた別の意味で問題が出てくるから完全には無くさないけどね。

 

 ……それじゃあ、行こうかな。

 




Q.どゆこと?
A.ウマ娘『ナイスネイチャ』としての純粋な実力のみで走ります。異界法則適用権を一時的にカットすることで純粋な実力のみで走れます。

Q.……どのくらい強い?
A.まあこの世界においては常識外れの恵体と莫大な栄養に支えられていますので、恐らく皆さんの思う通りかと。



次の作品は……?

  • ヒロアカ寝たいだけ
  • ヒロアカ非寝たいだけ
  • ブルアカ非寝たいだけ
  • ウマ娘旧作
  • なんか適当に
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