ある日、理事長にお呼ばれしたのでお土産をいくつか持って会議室に向かったのだけれど、そこには明らかに日本のウマ娘レース業界における重鎮や名家と呼ばれる皆さんがずらりと並んでいた。そして皆さんの前には美食研究会で作って学園に収めた野菜のサラダ……が、入っていたと思わしきお皿が一つ。ちょっとこぼしてる人のを見たら細く切られた人参とキャベツの千切りが見えたから多分あってる。
アタシとしては「ついに来ちゃいましたかー」と言う感じだけれど、とりあえずその場で一礼しておく。服は学生らしく制服だから、まあいいよね。冠婚葬祭全部いけちゃう学生の戦闘服なんだから。
それに、最低限味方につけておきたい相手に話は通しておけたからなんとかなるんじゃないかとは思っていたりする。
「えーと、初めまして、ナイスネイチャです。」
「うむ!早速なのだがナイスネイチャ君、美食研究会のこれまでの活動を研究成果として発表してみるつもりはないか?」
「えー、と、大分不完全なので外に出すのはちょっとばかり恥ずかしいのですが」
「疑問ッ!これほどのものを作っておいて何が不完全なのだ? これよりさらに良いものができると?」
「良い物はできると思いますけどそうじゃなくてですね。連作障害とか再現性とかより良い育成環境の構築のために何が必要かとか、その環境がどの程度で崩壊するのかとか、崩壊した際にどのくらい影響が出るのかとか、そういった実験がまだ済んでなくてですね?」
「それに関してなのだが、君もなんとなくわかっている通り今ここに居るのはこれまでURAを支えてきた名家と呼ばれる家の当主、あるいはそれに近い立場の者達である。彼らは君たちの研究成果に感銘を受け、資金提供をしたいと申し出てくれたのだ」
「囲われるのはちょっと……」
「理解している!なので少し聞いてほしい!」
それから聞かされたのは、要するにアタシが起業しないかということだった。それも日本の様々な産業に関わるシンボリ、メジロ、ダイイチなどの様々な名家からバックアップを受け、より大量にこういった野菜を作れるようにしたいと言う話だった。
望むのであれば今の美食研究会のメンバーを幹部として雇うことも可能で、ゆくゆくは日本を飛び出して海外でもこういった野菜や穀物を育てられるようにしたいと言う話をされた。
また、自由を奪うことは極力しないという確約も得た。具体的には、どれだけ圧倒的なレースをしようとG1レースすら事実上出禁のようなことにはしないようにしてみせるということだった。まあ実際ほぼ出禁みたいな感じになってもおかしくはないしね。
囲われるのは事実だが、檻は出入り自由で家族との面会も自由、暇潰しにゲームなんかも自由に持ち込めて昼寝付き。なお料理は自分で、みたいな感じの檻を用意したから入ってくれない? ということだった。その檻で諸外国からの干渉を跳ねのけたいという思いも見えているけれど、それ以上に美食に心を持っていかれているのが見える。美味しい食事は健全な人生の糧になってくれるからね。
……ちょっと考えが甘いんじゃないかなー、とは思うけど。
ここで追加説明。アタシたちが作っている野菜や穀物と現在一般で作られている野菜や穀物の栄養価の違い、それによって想定されるウマ娘を含む人類の成長の度合いの変化などを説明し、恐らくちゃんと世界的に広めれば今のあたしくらいの身体能力は平凡なものになることが考えられるとして話を一旦切り上げた。
実際、そのくらい行くと思う。トレーナーさんの置き土産を使ってない場合に限るけど。
その上で、世界中に美食研究会の研究成果を広めることに否はないということもついでに伝えた。ただ、できるだけ広く広めてほしいこと。そしてメシマズ物質の濃い場所で育ててもメシマズ汚染されてしまうし、最悪種も汚染されてそこから先全部メシマズ化してしまうこともあるだろうから、そういうのを守れない所に寄こしたくないと言う話もした。
メシマズ物質って基本的にはただひたすら不味いだけなんだけど、その場所を汚染する力が凄いんだよね。だから何も処理されてない所に新品の種を蒔いても栄養価は高いけどとても不味いものができてしまう。そしてそう言う所に種を蒔くような人がちゃんと畑の世話をするとは思えない。
メシマズ物質に汚染されてない野菜はものすっごく狙われる。忌避剤的な効果のあるメシマズ物質を感じないからだろうけど、払っても払っても潰しても潰しても焼いても焼いてもいくらでも湧いてくる。まあ虫も獣もメシマズ物質とそれ以外に分解してメシマズ物質じゃない所は肥料に、メシマズ物質は後で焼却するために溜め込んでいる。1550℃って温度大分高いから、そこらの焼却炉じゃどうしようもないんだよね。
なので、やる気のない所に渡しても多分無駄になるので広めるのは慎重にお願いしたいところですね。原因向こうなのに延々騒ぎ立ててこっちのせいにしてこようとする人っていますから。
「無論そういった相手からも守ってみせるが、そのためにも是非頼めないだろうか!」
少なくとも、理事長は本気でそう思ってくれてるんだよね。そして周りにいる人たちの大半も。
アタシは少し悩んでみせて、それからこくりと頷いた。
「それじゃあ、よろしくお願いいたします」
その場に居たほぼ全員が、満面の笑みで頷き返してきた。あ、これ多分ちゃんと守られますわ。
Q.最低限味方につけた相手って?
A.シンボリの次期当主、メジロの次期当主と現当主、理事長、たづなさん。
Q.方法は?
A.栄養失調になると肌艶悪くなったりしますよね。美容の天敵ですよね。
米ぬかを薄手の布に包んで優しくポンポンと顔を叩いてあげると米ぬかに残った米油とビタミンがいい感じに肌に移ってしっとりするんですよ。
メシマズ物質無し云々以前にまともなお米作ってる所ってこの世界だとトレセン学園の美食研究会の実験農場だけなんですよ。
そういうことですね。
Q.胃袋と美容を掴むのはちょっと強すぎん……?
A.だってそうしないとこっちの意思を聞かずに囲い込みしそうじゃん?
番外編のネタ(すぐ用意できるものに限る)
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ナイスネイチャ+αのヒミツ(ウマ娘風)
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ウィニングカラオケ(NN杯直後)
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『ハヤイ』という名の馬について