存在してはならなかった世界   作:真暇 日間

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絶対に存在してはならない世界30

 

 春が来たので皐月賞。皐月は五月。なのに今は四月。正確には皐月は五月なのではなくて旧暦の五月なので暦がそもそも違うのです。なので四月でも皐月で大丈夫。多分。

 そんな四月の皐月賞には例年それなりの数のウマ娘が参加するのだけれど、今回の皐月賞にはあんまり人数が集まっていない。まあアタシの二番手なのに一着とされる屈辱に耐えられる人じゃないと参加しないとか言われているけれど、それでも出たい、そして勝ちたいと思える人ばかりが集まっているのだから熱意は例年以上なんじゃないかと思ったりもする。実際の所は……そもそもこの世界のレースでは他の世界よりも熱意が凄いことになる傾向にあるからよくわからない。死にゆく身体を熱意と執念で支えているような感じだから時々ものすごい人も出たりする。アタシほどじゃないけどね。

 

 もしもこの世界にトレーナーさんと一緒に来ていたら、いったいどうなっていただろうか。アタシのこれはトレーナーさんの置き土産だからトレーナーさんが居ると出力が上がって大変なことになったりするけど、それならそれで多分どうにでもなっていたと思う。

 そして多分トレセン学園に入学する前に出会って、多分アタシの家族を美味しいご飯で篭絡してアタシを貰っていってくれていたと思う。アタシはトレーナーさんにとって便利な女だろうからね。言い方最悪? いいのよアタシが言う分には。トレーナーさんに言われたらちょっと小突くけど。

 トレーナーさん以外に言われた場合? 相手次第だけど東京湾に沈んでもらおうかな。

 

 まずはパドック。特注の勝負服に身を包み、今の自分の調子を見せつける場所。そして今回の皐月賞では、つい先日アタシが出したラーメンによって調子が非常に良くなっているウマ娘ばかりと言えた。それでもアタシには届かないけどね。

 一応アタシも出ておくけれど、流石にもう慣れてしまった。いったい何度こうして自身の身体の出来上がりを見せつけてきた事か。ちょっと斜に構えて、髪をかき上げ挑発的なポーズなんて取ってみると……視線が刺さる刺さる。何十人か性癖歪めた感触がありますよこれは。自分よりずっと背の高い少女にしか興奮できない身体になれー? 投げキッスチュッ♪

 

 あ、何人か崩れ落ちちゃった。そろそろいけないね退散退散っと。なんかレースの参加者からもよくない目で見られてるような……嫉妬とかそういうのかな? 多分そうだろうと思う。だってアタシ一人だけこんなに調子がいいんだもん、そりゃずるいって思いますわ。

 でも今回はみんなも恐らくそれまでの人生最高の調子だと思うんだけど、アタシはアタシで普通に走るから頑張ってね? 負けないよ?

 

 さあそういう訳で皐月賞を大方の予想通りの順位で駆け抜けたアタシはひっそりと一人でトレーナーさんに捧げるウイニングライブを一つ。アタシ一人が勝手に一人でやるだけのウイニングライブだし、他の人は誰も呼んでないし、なんなら音源もアタシの持ってる携帯電話からのものだから大したことないけど、それでもちゃんと想いは込めますとも。溢れて零れて滴り落ちるほどに。

 

 歌い終わったらその場を軽く片付けて、そのままトレセン学園に帰還。ちなみにアタシのミニライブは誰にも見せてないので口コミとかで広まるはずもなく、すぐにいつも通りの日常に戻ることになる。

 

「そう言えば、あの歌はなんという歌なんだ?」

ヒュッ

 どれの事です?」

「レースの後に歌っていただろう」

「……まあ、はい。ちょっとした恋と愛の歌ですね?」

「……ちょっと? あれがか?」

「ええ、ちょっと」

 

 にっこり笑顔で返しておいたらなんだかオグリ先輩はもにょもにょと奥歯に物が挟まって取れなくなったような顔をした。言いたいことはわからなくもないけど重いとか湿っぽいとかそういうのは置いておいて欲しい。もう十五年くらい会ってない上に恐らく今世では会うこともできないだろう最愛の夫の事を想っての歌なんだからそのくらいになってもなーんにもおかしくないはずだ。言わないけど。

 今度歌うことがあったらもう少し人に聞かせても大丈夫そうな歌にしよう。一つわかるのは、アタシが神の子だとか神だとかそういう歌を歌うと面倒なことになりそうってこと。なんかちょっと宗教っぽい感じになってきてるからね不思議と。

 

 そう言えば、漸くテイオーが始動し始めた。本格化の兆しが表れて身体能力が目に見えて上がり始める。その結果食事量が増えたけどそれは別にいい。どうせクラスメイト達にもあげてるし、最近は作る量が結構なことになってるけどみんな手伝ってくれているからそんな問題にもならないしね。

 来年はテイオーがきっと無敗三冠を取ってくれると思うけど、たまに凄いことになったりすることもあるからね。アタシが居なくても。

 例えば、テイオーが十全に仕上げていったにも拘らず突如として現れたターボが皐月とダービーをかっさらっていったときもあった。まあそのうち一回はアタシがちょっと裏で手をまわしてたりしたんですが、そういうこともあるので気を抜いたら負けるよ。ターボもこの世界ではアタシ達の手伝いで色々お仕事してはご飯食べていくようになってるし、状況次第では十分届く。ウマ娘って言うのはそういう生き物だ。限度はあるけど。

 

 




Q.皐月賞はこれで終わり?
A.はい。盛大に見ている人たちの性癖を歪めてさらっと終わりました。

Q.ところで何歌ったの?
A.『サウダ〇ジ(ポ〇ノグラ〇ィティ)』

番外編のネタ(すぐ用意できるものに限る)

  • ナイスネイチャ+αのヒミツ(ウマ娘風)
  • ウィニングカラオケ(NN杯直後)
  • 『ハヤイ』という名の馬について
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