存在してはならなかった世界   作:真暇 日間

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絶対に存在してはならない世界4

 

「それで、いくらかな?」

「何がです?」

「私が君を雇うのに、いくら出せばいいのかな?」

「今そういう話はしてないと思うんですけど??」

「はっはっは」

 

 完全に『ガチ』の目のまま笑いかけられても親しみは感じませんが?

 

 オグリ先輩にお帰り願った後、生徒会に『美食研究会』と名前を付けた部活動の申請と自作のりんごジャムとスコーンを持って行ったのだけれど、生徒会長のルドルフ先輩が一口食べたと思ったらあっという間に全部を消し去り、私に対して言ったのが先ほどの言葉だ。生徒会の全員分として作ってきたつもりだったのだけど、あっという間になくなってしまった。

 ……ジャムとスコーンで生徒会を篭絡して予算とかをそれなりに頂こうとしたんだけど、そこを飛び越えて個人的に雇おうとしてくるなんて思わないでしょ普通?

 

「個人的な物ではなく、シンボリで雇おうという話さ」

「会長個人でもシンボリ家が相手であろうとも雇われる気は現状ありませんのでしばらくは諦めてください」

「はっはっは」

 

 だから肉食獣が草食獣を狙う目で笑いかけられても親しみは覚えませんって。

 

「……さて、冗談はこのくらいにしておこうか。『美食研究会』だったかな? 君の活動を楽しみにしているよ」

 

 絶対本気だったと思うけどそれを言ったらまた勧誘が面倒になりそうだから黙ってよう。うん。

 

「……会長。絶対本気だったでしょう」

「さて、なんの話かな?」

 

 せっかくアタシは触れなかったのにそれを台無しにしてくる副会長さん……会長さんも誤魔化しが上手いのか下手なのか……もしくはわざと下手に見せているのか。名家って大変。

 とりあえず賄賂代わりに副会長さんに薔薇のジャムとプレーンのスコーンを渡しておいて、そのまま生徒会室の外に出る。中でちょっと取り合いと言うか喧嘩と言うか言い争いのような物が起きているような気がするけど気にせずに。

 これで美食研究会としての活動ができるようになったので、まずは学園に土地を借りて畑を作りたい。アタシ個人ならそんなもの無くても毎回出せばいいんだけど、アタシがいなくなってからも美食の文化を残すためには何らかの形でこの世界だけで独立した生産方法の確立が必要になってくる。海の物は正直なところ難しいと言うか、多分アタシが生きている間じゃ無理だろうけど……でも始めなければ進まないしやるしかない。

 この世界の悪夢のメシマズをなんとかできるのは、今のところアタシだけなんだから。頑張らないと。

 

 ……農業系の学校行けって? いやいや、この世界の農業科って生産量しか見てないんですわ。味は科学の力で何とか無味無臭にできるようになってきたからそこに栄養を後から加えて、結果として出来上がるのが味のしない固形交じりの半液体と言うか溶けかけのゼリーみたいな栄養食。不味くないように見せかけて虚無を食べているような感覚になってくるこれは、カロリーも栄養もあるけど味は良くない。いや本当に。

 しかも一食分作るのに結構な量の作物が必要になってくるものだから量ばかり見られるし、栄養を抜かれた後のそれは燃料ぐらいにしか使えない。本当に悲しくなってくる。

 なのでアタシの求める美味しい野菜とかはアタシが自分で作るしかない。もうこれに関しては仕方ない。だって世界から求められていないんだから。

 

 畑作りは多分大変だと思う。でもやらないと自分以外が作った美味しいものが食べられない。じゃあやるしかない。畑作りが終わったら虫や鳥を避けるためのネットか何かを張って、それから……初めてだし大豆でも蒔いてみよう。プランターで土も水も出した時とは色々違うだろうけれど、何が駄目で何が良いのかくらいは学生のうちにある程度分かるようにしておきたい。

 それからお金を稼いで土地を買って農場を作り、美味しい物をたくさん作ろう。農場が軌道に乗ったら家畜も飼いたいけどこの世界の家畜ってまっっっっずいんだよね。肉も卵も何もかも。臭みが全身のありとあらゆる細胞に染みついているうえに体液と言う体液が苦エグい。舌に触れた瞬間から舌の表面がギュゥゥゥゥゥッと締め上げられるような、子供の頃に親が飲んでいたコーヒーに憧れて馬鹿みたいな量のインスタントの粉に適性の半分以下の量のお湯を入れて飲んだブラックコーヒーを飲んだ時のそれを更に数倍にした時のような感覚がある。あれはもう二度と食べたくない味だった。この世界では恐らくブライアン先輩も肉を食べたいとは言っていないだろう。

 ……ちょっと見てみたい気もする。さっき行った生徒会室にはルドルフ会長は居たけれどブライアン先輩もエアグルーヴ先輩もいなかった。もしかすると後から入学してくるのかもしれない。

 

 でも、少し困ってしまった。名家の人から援助を受けてトレセン学園の土地の一部をあれこれして畑にして、援助を受けた名家に配当として配って広めていく事でより素早く世間に広がっていく事を想定していたのだけれど、一歩目で頓挫してしまった。まさかいきなり囲い込みに走るとはこのネイチャの目をもってしても───とか言うと『節穴乙』とか言われてしまいそうなのでやめておく。

 まあまずは今まで通り、家庭菜園的な規模から始めていきますかね。

 

 




Q.美食研究会の二人目の部員はオグリ?
A.多分そうなる。

Q.副会長って誰?
A.想定ではビゼンニシキ。なおこの後ジャムとスコーンはほとんど全部カイチョーに持ってかれた模様。

Q.栄養食あるの?
A.一応は。ただ苦エグ渋いメシマズ物質とネイチャが呼ぶそれが作物の栄養のおよそ八割五分を占めているため、不味くない栄養物質を集めるだけでも本来の必要量の七倍近くの量が必要で、更にそれだけでは生きていくにはまるで足りないためさらに量が必要になる。
 結果として、滅茶苦茶お値段が高くなる傾向にある。

番外編のネタ(すぐ用意できるものに限る)

  • ナイスネイチャ+αのヒミツ(ウマ娘風)
  • ウィニングカラオケ(NN杯直後)
  • 『ハヤイ』という名の馬について
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