存在してはならなかった世界   作:真暇 日間

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絶対に存在してはならない世界55

 

 先日ナイスネイチャ杯のエキシビションレースのための参加者集めが終わってそのことについて理事長に報告したら顔色が一瞬で変わってしまった。なんと言うか、最初の内は喜びだったのが困惑に変わり、胃痛を耐えるような苦悶の表情に変わり、最後の方には真っ青になってしまっていた。

 

「……確認ッ!これは公開する予定のない身内でのレースになるのだな!?」

「そうですね。模擬レースなので」

不可ァッ!!!!!!

 

声デカ。と言うか、いきなりなんだろう?

 

「この面子のレースを公表しない? トレセン学園内でのみ見ることのできるレースとして処理する? できるわけがないだろう!?

「えぇ……? ただ集まって走るだけですよ?」

「どんなレースでも究極的にはそれだけなのだが!?」

 

 まあそれはそう。そしてメンバー的にも見たい人はかなりいるだろうなとも思う。少なくとも今までの世界では全員揃って走ることは無かった。揃うところまでならあっても、レースで走るとなるとどうしてもね。

 なので正直今回のはアタシが見たいって理由が大きい。少なく見積もっても八割くらいはアタシのわがままだと言っていい。

 なので、そんな我儘にあんまり多くの人を付き合わせるのも悪いかなと思って他の人達が賞品目的で走るついでに走ってもらおうかなと計画したんだけど……ダメかー。

 

「可能な限り!可能な限り急ぐので公式にやってはくれないだろうか!」

「いえあの、一部の方が現世に戻って来れる時期じゃないと難しいのでお盆かハロウィンあたりじゃないと……つまり数日以内にやるか聖蹄祭までお預けかになるんですけど……数日以内にできます?」

「うぬあぁぁぁぁ!!!」

 

 頭抱えて机にダイブしちゃった。大丈夫? なんかダメそうだけど。

 

「あと、参加者の皆さんには『ちょっと待ってて』くらいの感じで伝えてあるので、あんまり遅くなるとその方が問題になるんじゃないですかね?」

「ネイチャさん、あまり理事長を虐めないであげていただけませんか?」

「虐めるだなんてそんなそんな。社会経験の少ない中学生の小娘のちょっとした質問ですけど……そもそもどうやって伝えればいいかわからない相手もいらっしゃいません?」

「こちらから連絡できる方にはご連絡させていただきますので、ネイチャさんにもご協力いただければと」

 

 たづなさんってこう言う時強いよね。まあ勝たなくていいどころか勝負でもなんでもないから素直に受け入れておく。それに、オグリ先輩達からは『最低でも二ヶ月くらいは欲しい』って言われてるからね。まあ、聖蹄祭の出し物の一つでいいでしょ。

 

 こうしてナイスネイチャ杯、改めナイスネイチャ記念は乗り上げた暗礁を粉砕しながら着実に開催へと近づいていくこととなった。時間が空いてしまった分、参加者全員がバッキバキに鍛え上げてくるだろうことに期待が隠せません。

 あ、でも一つ忘れてたことがある。ハンデについてだ。

 

 ほら、最後の参加者が……ね? この世界出身じゃないから凄いのよ。ほぼ確実に勝っちゃうわけ。地力が違いすぎて。

 なので一時的にこの世界ナイズしてもらうことになった。具体的には身長が三分の二になるまで縮んでもらうことになった。まあ身体のバランスとかは変わらないでただ縮むだけだから大丈夫なはずだけど、いきなり周囲が大きくなるわけだから距離感は掴みにくいはずだ。まだ秘密だから外で一緒に居るわけにはいかないのでこの場限りではあるけれどレース場を再現して一緒に走って慣らし運転をした。トレーナーとして誰かを担当するのは初めてじゃないけど、やっぱり特別にはなるよね。

 で、ついでに他の現状身体を持たない人達を集めて状況説明。ついでに本番で使う身体に慣れてもらうために試運転。なお試運転程度で収まるような優しい気性の人がこの場にどれだけいるかと言うと……ねぇ? 慣らし運転って言うか荒らし運転になってしまった。想定の範囲内ではあるけど。

 

 ……それに、あくまでもここには元ウマ娘から成り上がってるか化けてる存在しかいないからね。生まれつき神様だったウマ娘ほどぶっ飛んでないからちゃんと育成されてれば現代のウマ娘でも十分に追いつけるくらいの能力でしかない。

 違いがあるとすれば、やっぱりあれだろうか。いわゆる、領域。トレーナーさん曰く、固有スキル。

 一度ウマ娘を辞めたり死にかけたりすると、自身の存在についてなんとなく理解できる。ウマ娘の本体とも言えるウマソウルの事も、そしてウマソウルに刻み付けられた願いや想い、歴史の事も、それらを活性化させることで扱えるウマ娘それぞれの固有スキルの事も。

 

 この世界だとそんな風に一回死にかけたりしないと身に着けることが難しい固有スキルだけど、それも身体がどうしてもできていないことが原因の一つとしてあげられる。要するに、未発達な身体で固有スキルを使うと骨やら筋肉やらが耐えられず……ということになる確率が非常に高いのでリミッター的なものがかかっていると思われる。

 なお最近は身体が多少まともになってきている人たちが多いこともあってちょこちょこ使えそうな人も増えてきた。そう言うものがあるという認識も何もないから使われたことはアタシの知る限り一度もないけどね。

 このレースがそういった人たちの着火剤になってくれることを祈っている。

 

 

 




Q.着火剤と言うか起爆剤になってるようにしか見えないんですが。
A.しかもクラスターなやつね。周囲への巻き込みの規模からして。

Q.理事長壊れちゃった……。
A.なぁに人参食わせれば治る。なおまたすぐ壊れないとは言ってない。

Q.そもそも例の人たち一体どこに参加させるおつもりで?
A.デビュー前のチック杯、ジュニアのスパロウ杯、クラシックのスワロー杯、シニアのピジョン杯、ドリトロのチキン杯。そして神話や伝説の火の鳥(フェニックス)杯。わかりやすいですね。

Q.どういう理由でそんな名前になってます?
A.飼い始めた順と年齢、あと体格順。

番外編のネタ(すぐ用意できるものに限る)

  • ナイスネイチャ+αのヒミツ(ウマ娘風)
  • ウィニングカラオケ(NN杯直後)
  • 『ハヤイ』という名の馬について
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