存在してはならなかった世界   作:真暇 日間

6 / 115
絶対に存在してはならない世界5

 

 特に何かあるわけではないが、オグリ先輩の好物はにんにく味噌だった。おにぎりに塗って表面を軽く焦がしてやったものを目の前にすると大喜びしていたものだ。

 なおこの世界にそんなものはない。味噌も無ければにんにくに当たる植物もない。なんなら米すらまともに存在していない。あまりにもひどすぎる世界だ。

 

 話は変わるが、ウマ娘は鼻が良い。犬並みとまでは言わないけれど人間の数百倍くらいは良い。だからこそ科学的ににおいを消した食品に僅かに残されてしまった臭みだとかを敏感に感じ取ってしまうし、そんなウマ娘でもほぼ何も感じることのない無臭の栄養食と言うのは爆発的に売れているわけだ。

 

 ではここで問題。なぜかこんな所にある炊き立てのご飯を三角形に握ったものを炭火で焼き、片面焼き上げてから自作のにんにく味噌を塗ってもう片面を焼く。その際に周囲に漂う香りに誘われて一番最初にトレセン学園の屋上に現れたウマ娘は誰でしょう?

 

 1 サボり魔天狼 シリウスシンボリ

 2 賭け事狂い ナカヤマフェスタ

 3 ゴルゴルワープ! ゴールドシップ

 4 芦毛の怪物 オグリキャップ

 

「……!!」オメメキラキラ……

「……おひとつ食べます?」

「ぜひ頼む」

 

 そうだね、オグリ先輩だね。実は焼き始めるより早く来てたね。早くない??

 

 オグリ先輩はアタシのサイズのおにぎりを頬張って目をキラキラさせている。椅子が無いからアタシの膝に座っているんだけれど、今までの世界じゃ絶対無理だったなと考えつつ次のおにぎりに醤油を塗って網の上に転がす。おひつと七輪を持ってきた時にはあからさまに訝しげな顔をされてしまったけれど、クラスメイトは全員チュロス一本ずつで買収して見なかったことにしてもらった。蜂蜜チュロスにドハマりしてどこかで見たセミみたいにくっついてきた見慣れた娘もいたけどそれもなんとかなった。

 

「実はですね、オグリ先輩」

「ん? んむ、んぐ、なんだ?」

「アタシ、最近『美食研究会』っていうクラブを立ち上げたんですよ」

「びしょく……微食……? 僅かな食事で満足するための活動か?」

「違いますねぇ」

 

 通じなかったので内容解説。まあ簡単に言えば美味しいものを学園を卒業してからも食べるために品種改良だとか美味しい農作物の栽培方法の確立だとかを目的に活動する部活のようなもの。実際に説明する時には『美味しい』と言う単語が使えないから説明に少し時間がかかったけどおおよその説明はできたと思う。

 そしてその場で協力したいと言う言葉を貰い、美食研究会にオグリ先輩が新しく入会することになった。入会したところでお金が必要とかそういうことは無くて、畑で取れたものを美味しく料理したりそもそも畑の物を美味しくするために手をかけるべき所に手をかけてもらうくらいの事しかしてもらうつもりはないんだけどね。

 

 さて入会祝いということで宴会をしたいところなんだけど、残念ながら美食研究会は発足したばかりでまだまだ実績が存在しないし作れたものもない。精々プランターで種を増やしているくらいで、畑ができたらこのプランターで増やした種を蒔いて増やしていく予定だ。

 学園に確認してみたんだけれど、流石に学園の土地を広く借りるとなると生徒会ではなくて理事長に掛け合う必要が出てくるらしい。アタシの知るあの理事長なら最初の内は簡単に許可を出してくれそうな気がするし、ある程度実績ができればそれに見合った資金提供なんかもしてくれそうな気さえする。

 いずれは学園で作った野菜を学園の食堂で提供し、美味しく食べられるようになればいいなと思う。

 

 こんがり焼けた醤油の焼きおにぎりを頬張りながら次のおにぎりを握る。醤油とにんにく味噌だけじゃなくて色々用意してきている……と言うか、本当に必要なら大体何でも出せるからさっと出してぱっぱと使う。オグリ先輩のお腹がものすごい勢いで絶叫しているからオグリ先輩の分も一緒に作る。

 いやほんと、お腹が鳴いてるとかそんな可愛らしい表現ができるような音じゃない。明らかにあのお腹の中には怪物でも住んでいるに違いない。ご飯を与えると静かになるタイプのやつ。

 オグリ先輩は年齢からしてもう背が伸びることはない。ある程度幼いうちから食べていないとアタシみたいな体にはならない。それは弟とおふくろでわかってる。ちなみにおふくろは背は伸びなかったけど胸とお尻がちょっと増えて、お腹周りが健康的になった。弟は麻か筍かってくらい伸びた。まあ数億年積み重なった遺伝には流石に勝てず今のアタシより20cmくらい小さいけど。

 

 たっぷり食べてもらって満足してもらったら、ちょっと理事長に使ってない土地を使わせてもらうために申請出しに行かないとね。なんとかなるとは思うんだけど、部活動的なものとして扱ってもらうならもう少し人数がいたほうがいいだろうか? 悩ましい。

 人を集めるのが先? でも活動実績として山菜の炊き込みご飯と豆腐ステーキでも出せば通るとは思う。焼き鮭のほうがいいとは思うけど、動物をどうこうするのはまだちょっと時期尚早かなって。

 

 さ、頑張りますかー。

 




 Q.ウマ娘達の身長ってどんなもん?
 A.公式の数値を2/3前後を想定。つまりここのネイチャの身長をこっちのに置き換えると2メートル45センチくらい。でっか。しかも最近まで小学生。やっば。

 Q.今のオグリの一番のお気に入りは?
 A.にんにく味噌の焼きおにぎり

番外編のネタ(すぐ用意できるものに限る)

  • ナイスネイチャ+αのヒミツ(ウマ娘風)
  • ウィニングカラオケ(NN杯直後)
  • 『ハヤイ』という名の馬について
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。