存在してはならなかった世界   作:真暇 日間

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絶対に存在してはならない世界60

 

 調整に調整を重ねてなんとか十月末日に開催されることになったナイスネイチャ記念だけど、URAの方は知らないけど理事長が疲労困憊していたので美味しいご飯で労っておく。もっと近い人たちなら例のお風呂から全身マッサージコースまで行ってもおかしくない仕事量だけど、アタシの目論見を吹き飛ばして行われたことなのでそこまでやる予定はない。全くない。

 その代わりではないけれど、オグリさんを呼んで一緒にお風呂に入ることにした。なんだかマーベラスがマーベラス☆してたけど、理由はちょっとわからない。仲間が増えるよ!的な感じなのかな?

 

 オグリ先輩をお風呂に連れ込んでまずはかけ湯。軽く全身を濡らして大きな汚れを取ったらお風呂にドボン。するとマーベラスの時と同じように無色透明でありながら異様な色と表現できる何かがじんわりとオグリ先輩の身体から浸みだしていくのが見えた。

 オグリ先輩もそれに気付いたのかアタシにこれはどういうことかと問いかけてくるけれど、全部説明するのはアタシにはちょっと無理なので一部を説明。

 まず、このお風呂は特別であること。アタシが作り、魔法を外注して入った人の体内に存在するメシマズ物質を抜き出して分解・無毒化する性質を持つ。ついでに美肌とかの効果もあること。

 お風呂のお湯につかったところしか効果が無いので全身から抜きたいなら息を止めて潜るのが一番手っ取り早いこと。マーベラスの時には大体十五分くらいで全部抜けたことを伝えると、オグリ先輩もすぐに息を止めて潜ってしまった。

 芦毛の髪から滲みだす赤褐色と緑青でありながら無色透明な濁り。瞼の裏側から涙のように零れる青白色と黄土色の混じったような無色透明の濁り。全身の肌から滲むものとは少し違うし、マーベラスの時とも違う。これはもしかすると生まれ故郷の土が違うからなのかもしれないけれど、なんにしろメシマズ物質が抜けていく事には違いない。

 オグリ先輩の口が開いて口の中にもお湯が流れ込むと、今まで以上に勢いよく無色透明の青白色が抜けていく。それはお湯全体を覆い尽くすくらいの勢いで広がっていって、しかし分解されて消えていく。

 血液の流れが近い所から直接抜いて行っているせいか十分程度でメシマズ物質の勢いは弱くなり、滲みだしてくるのが分からなくなってきた。骨や内臓にはまだ残っているかもしれないけれど、そこまで抜くにはもっと時間が必要だろう。

 

 アタシはアタシでシャワーを浴びていたから寒くはないけれど、やっぱりお風呂に入るってなるとお湯に浸からないと。メシマズ抜きの終わったオグリ先輩を持ち上げて、抱えるようにしてアタシも浸かる。触れた所から身体の中を精査していくと、やっぱり骨や脳、内臓には少し残ってしまっているのがわかるのでアタシの方で分解して排出させておく。ちょっとピリッとしますよー。

 オグリ先輩が目を開ける。眼球内部から零れていたメシマズ物質の多量に含まれた涙のようにも見える靄は既に収まっていて、綺麗な瞳がアタシの姿を捉えたようだ。

 

「……私は今まで、濁っていたんだな」

「そうですねぇ。色々と入ってなくていいものが入っていたりしてましたねぇ」

「ああ……こんなに、こんなに、綺麗だったんだな」

「ええ。無色透明なのに濁って見えていたんでしょう? とってもきれいになって」

「ちがう。綺麗なのは、ネイチャだ」

 

 ───少し、驚いた。その間にオグリ先輩は全身を振りむかせて、そのままアタシの体にぴったりと貼りつくように抱き着いた。

 

「ネイチャは、こんなに綺麗だ」

「……それは、どうも」

 

 本気で褒められているのはわかる。嘘なんて全く混じっていない、純粋な誉め言葉だということも。

 けれど、アタシの内心にまでは響かない。外っ面に張り付けた表面的な感情は動いても、長い長い長い旅の中で摺り切れないように大事にしまったこの心までは届かない。残念だけど。

 オグリ先輩からの感情は、なんと言うかわかりやすいけれどごく一部とても分かりにくい。今のところそういう雰囲気になりそうな感情は動いていなくて、代わりに安心感のような感情が動いている。

 ……これは多分、子供が親に向ける絶対的な安心感とかそういう類のやつ。アタシはそれに応えて胸に顔を埋めるオグリ先輩の髪を優しく撫でる。

 

 それと、前に言われたアタシが好きって言葉もなんとなくわかった。あれは多分子供が母親に向かって言う『お母さん大好き』みたいなものだ。いやアタシはオグリさんを子供に持った覚えはありませんけどね?

 となるとあの時否定したのはあんまりよくなかったのかも? いやでもあの時否定したから今こういう形に収まってる可能性もある。そのあたりは何回やっても難しくて困るね。

 

 とりあえず、まだ髪も身体も洗っていないんだから洗っておこう。綺麗になったからってちゃんとお手入れしていないとあっという間に汚くなるからね、髪や肌って。

 くっついているオグリ先輩をそのまま抱きかかえて湯船から上がり、お風呂用の椅子に座らせる。アタシに合わせたサイズだからちょっと大きめだけど、このくらいなら問題なく座れる。シャンプーとリンスとトリートメントと、ボディソープもいるよね。全身綺麗に丸洗いしますよー。

 

「うん、お願いする」

 

 お願いされました。

 

 

 




Q.なんでオグリ? なんの順番?
A.ナイスネイチャ記念の優勝候補だから。順番については特に何も考えてない。

Q.ネイチャママ!?
A.ネイチャ「ママ呼びはもういいけどオグリ先輩を産んだことは一度もない。それはタマ先輩も同様」

番外編のネタ(すぐ用意できるものに限る)

  • ナイスネイチャ+αのヒミツ(ウマ娘風)
  • ウィニングカラオケ(NN杯直後)
  • 『ハヤイ』という名の馬について
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