あんまりにもあんまりな結果に終わったけどそれもまたレース。レースに絶対は無いのでこういうこともあるよね。あの後一悶着あったけど一悶着で済んだから大丈夫。済んだと言うか、済ませたと言うかだけど。
アタシから言えることは一つ。やっぱりマスコミって嫌い。碌なことしないんだもの。
『このあたりから魔境になっていくと思われましたナイスネイチャ記念ピジョン杯ですが、思った以上の魔境となっています。次に行われるのはダートミドルになりますが、これまでもなんとも見ごたえのある───』
『……ネイチャ?』
『……おい』
『なんでお前がここに居る?』
……おっ、と、いけない。
『───失礼いたしました。これまでのレースも非常に見ごたえのあるものでしたが、次のレースにも期待が持てますね。マーベラスサンデーさん、注目のウマ娘などいらっしゃいますか?』
『……』
『……マーベラス?』
『ッ! え、えーとね!この、13番のサンデーサイレンスって人かな☆ なんだか運命的なものを感じる気がするの!』
ああ、怖がらせてしまった。いけないいけない、ついうっかり。少し声の震えているマーベラスの頭を抱き寄せて、心臓の鼓動を聞かせながら頭を撫でる。落ち着いてー、落ち着いてー……アタシも、落ち着いてー……?
そう、この世界にトレーナーさんは居ないんだから、あいつがコナかけてくるわけがない。だから大丈夫。大丈夫……大丈夫。
……そも、本当になんでここに? あいつこの世界じゃ死んでたよね? まさかとは思うけど自力で戻ってきた? アタシでも流石に無理だぞそんなの。トレーナーさんならいけるかもだけど、アタシの場合気力が持たない。死んだら『あー死んだわ』で終わっちゃう。
……運命的な何か、か。そう言えば日本にはあいつに運命的なものを感じるウマ娘が多くいたっけ。出身地のアメリカよりもずっと多く。その縁に引っ張られて化けて出てきた?
となると、このレースの結果は見えてくる。ペパーミントキャンディの詰め合わせ作っとこ。
『えー、少々問題が起きたため解説をマーベラスサンデーに代わってトウカイテイオーが務めます。またナイスネイチャが固まってしまったため一部実況も行います』
『あー、いや大丈夫。そういえば今日ハロウィンだったってことを思い出したから』
『……え、もしかしている感じ?』
『ノーコメントにさせていただきます。ちなみにですが優勝者が幽世の方であっても優勝賞品の授与は滞りなく行われますのでご安心ください』
『絶対いるじゃんコワ……帰ったら戸締りしとこ……』
『そうしておくと安心感は持てるかもしれませんね。さてナイスネイチャ杯も最終日となり残るレースも数少なくなってまいりました、ナイスネイチャ記念ピジョン杯、ダートミドルの部、距離は2410mとなっております』
『なんで最後10? 日本じゃないよねその刻み方』
『気分とネタですねー。距離はくじ引きで決めたので実は長距離だと6000までありました。出ませんでしたけどね』
『デビュー前とかジュニアの娘達にそれが当たらなくて本当に良かったと思います』
『そうですね。流石に6000kmをデビュー前の娘に走らせるのはちょっと……』
『うんごめんちょっと待って桁って言うか単位がおかしいね? 勝手にメートルだと思ってたボクがいけないのかなこれ? おかしいのボクじゃないよね?』
『そうだね、プロテインだね』
『違うね? あとそれ結構古いよ』
『ガビーン』
『それも結構古いよ』
『知ってる。さてそろそろゲート入りが済んだ頃でしょうか。今最後の一人がゲート入りを終わらせ、発走準備が整いました……スタートしました』
『これは……速いね。流石』
『生きてればアメリカクラシックでかのイージーゴア相手に三つの冠のうちの二つを奪っていただろう女傑です。日本とアメリカではダートの質が違いますがそれでも弱いわけがない』
『ネイチャって好き嫌いと相手の能力についてはしっかり分けるよね』
『別に彼女の事は嫌いじゃないですよ。まだ。さて13番サンデーサイレンス、多くのウマ娘をゆっくり置き去りにして加速していく。逸脱していると言えるほどの差は感じられませんがこれは非常に上手い。砂の上を本格的に走るのがほぼ初めてとはとても思えません』
『練習ほぼゼロであれなの? アメリカウマ娘ってヤバ……』
『さっきも言いましたが彼女は相当の上澄みです。それにどうやら多少の練習はしてきているようですね……とはいえ現世で実際に走るのは恐らく初めてだとは思いますが。』
『絶対さっき言ってたのあの娘じゃん』
『はい』
『認めちゃ駄目でしょせっかくここまで誤魔化したんだから最後まで誤魔化して?』
『ここでサンデーサイレンス失速、どうやら背後を走るウマ娘達から多量の牽制を受けたようです。一気にスタミナが底をつきましたね』
『そうみたいだね。……でも、ここで終わるようなウマ娘がG1の舞台で何度も勝てるわけないんだよね』
『全く以てその通り。即座に自身の領域効果を一部削減して減速を抑えてスタミナ回復に回しましたね。加速や最高速度の上昇を回復に変えるのは領域をある程度扱える者にとっては必須スキルのようなものですし特に驚きはありませんが』
『……』
『なんですか?』
『ネイチャ以外にそんなことできる人いるの? 第二領域とかじゃなくて?』
『結構いますよ。死んでから何百年か経ってもまだ走り足りないレースジャンキーの方々だと割と皆さんやってます』
『それ化物としての第一歩とかウマ娘卒業試験とか言われてない? 本当に生身でできて大丈夫なやつ?』
『そこにほんの十年程度死んでからの練習でできている方もいますし大丈夫大丈夫』
『絶対大丈夫じゃない奴だこれ……あ、第二領域』
『サンデーサイレンスが先程開いたのとはまた別の領域を開きましたね。効果は───』
『うわはっや!何あの加速!?』
『どうやら直前までに受けた牽制などの数や効果が大きい程加速する領域ですね。生身であの速度を出してたらまず脚が砕けていたでしょうね……サンデーサイレンス、一着です。二着以降は団子状態……ほんの僅かにアレイアードが抜けていたでしょうか?』
『写真判定はある? 二着以降の判定よろしくね!』
ふぅ……。
……あ。ってことはもしかして?
……ッスーーー───うん、まあ、うん。何とかなる。する。大丈夫。
Q.最後なにがあった?
A.ネイチャはサンデーサイレンスに声をかけてない=自力であの世から戻ってこれるウマ娘がいる。そして最後のレースは追加で参加者募集中。
Q.テイオーの反応どうなってる?
A.「アレェ!? ナンデボクノコエ?!? ボクココニイルケドォ!?」みたいな感じ。
Q.サンデーサイレンスと何があったのよ?
A.ネイチャ「トレーナーさんはアタシのトレーナーさんなので。言うことはそれだけ」
番外編のネタ(すぐ用意できるものに限る)
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ナイスネイチャ+αのヒミツ(ウマ娘風)
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ウィニングカラオケ(NN杯直後)
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『ハヤイ』という名の馬について