存在してはならなかった世界   作:真暇 日間

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絶対に存在してはならない世界70

 

「……で、どうやって来た?」

 

 アタシは目の前のヤツに用意しておいたペパーミントのキャンディを詰めた袋を投げ渡しながら問いかけた。そいつ───サンデーサイレンスは放られた袋を受け取り、早速一つ口に放り込みながらにやにやと笑みを浮かべている。

 

「つれねえなァ。せっかく久し振りだってのに」

「だから聞いてんでしょうが。アンタがこの世界に来るなんて予想もしてないんだから」

「そりゃァそうだ。狙って移動しないことを選べンなら私だって来ねェよこんなとこ」

「いいからさっさと話しな。ここの世界のアンタはアンタじゃないんだから。乗っ取ったってんならそれなりのことしなくちゃならないのは知ってるでしょうに」

「まっじめだねェ。安心しな、ヤベェ橋はわたってねェし決まり事の方も破っちゃいない。アンタのトレーナーに誓ったっていい」

「その名前に誓ったってことは、わかってるね?」

 

「破ったら祓うぞ」

「やってみなァ」

 

 ビリ、と周囲が張り詰めて……すぐに弛緩する。

 

「だーいじょうぶだ。ここでやりあうつもりはねェよ……フヌケ相手に喧嘩売るほど暇じゃないんでね」

「よく言う」

 

 ま、いいけどね。

 

「しかしこの世界の私は細っせェ上にちいせえな」

「小さいのはどこの世界でもそうじゃない?」

「流石にここまでじゃねえよボケ」

「知ってるよチビ」

「……流石に今じゃ否定できねえな」

「だよね。いつもの煽りのつもりで言ってから気付いたよ」

 

 口の中の飴玉が無くなったのかもう一つ放り込んで、ころころと転がす。

 

「……お前だけだったからなァ」

「流石に察する能力が高い日本人でもそれだけじゃ察しきれないんですけど?」

「この世界で私の事をちゃんと覚えてたのがだよ。私の知り合いもみーんな死んじまってた」

「……あ、そ」

 

 適当に入れたミントティーをカップに注ぐ。アタシは麦茶。そしてお互いに無言で乾杯して、一気に飲み干す。

 

「……ッあー、めっちゃ熱いわ。涙出てきた」

「何回やっても辛いものは辛いからね」

「オイせっかく誤魔化そうとしてんのにまっすぐ来んなよ」

「お互いそんな気を回すような関係じゃないでしょ」

「ハ!違いない」

 

 お互いにもう一杯。淹れておいたミントティーはあと一杯くらい残っている。

 

「……で、呼び出したからにゃなんかあんだろ。言ってみな」

「これから夢のレースやるんだけど解説として参加しない?」

「誰が出んだよ」

「あんたの知ってそうな所で言うと三女神とエクリプス、あとポテイトーズ」

「……ほー。思った以上に大物じゃねえか」

「この世界生まれこの世界育ちだからアタシ達から見れば弱いけどね」

「私もこの世界の身体じゃそんなもんだ。と言うかお前さんの方がよっぽどおかしいんだよ」

「アタシはトレーナーさんの唯一の愛バだからね。いつでも完全な状態でいないと」

「ご苦労さん」

 

 二杯目のミントティーを飲み干してアタシと視線を合わせる。

 

「面白れェな。やらせてもらおうじゃねえの」

「それじゃよろしく。台本いる?」

「いらねえよ。と言うかレースに台本なんかあんのか?」

「日本人としては最初に掴みを入れとかないといけないからね」

「何回来ても日本人ってのはよくわかんねェ事を気にするよな」

「たまに日本人にもわかってないことがあったりするからね」

 

 サンデーサイレンスのカップに最後のミントティーを注いでポットを中身ごと消す。なんとも奇妙な関係になったものだと思う。トレーナーさんとも帝王とも違う、腐れ縁とでも言うべきか。

 

「解説やんのは構わねェがよ? あのちっこいのはどうしたよ? マーベラス、っつったか?」

「時間考えなよやるの真夜中だよ? 明日は一応授業はないけどこんな夜遅くまで連れ回せるわけないじゃん」

「お前、今の自分の年齢答えてみろや」

「ピッチピチの14だけど?」

未成年(ローティーン)じゃねえかお前が言えたことかよ」

「アタシだけならどうとでもなるからいいんだよ」

「……ハァ、そうかよ」

 

 なんかジト目で見られてる。こいつにそんな目を向けられる筋合いはないんだけど?

 

「ところでお前、この世界じゃ何人抱いたんだ?」

「お前と一緒にすんじゃねえよ●●●●(ピーーーーー)野郎。そもそもお前と違ってアタシはあの頃も大した数相手にしてないんだよ思い出させんな」

「年十頭だったっけか? そのくせそうやって作った(ガキ)どもの平均成績はお前の方が良いんだったよな?」

「思い出させんなっつってんだろ頭蓋骨の中にたっぷり詰まった海綿体抉り出してやろうか」

「ケケケwww ちなみに私はこの世界じゃ処女のまま死んだみたいだぜ?」

「あの歳で死んだのに経験があったらその方が嫌だしアメリカ進んでるなじゃ済まないよそんなの」

「だーよなァ」

 

 ガリッ、とミントキャンディを噛み砕いてそのままミントティーの最後の一杯で流し込む。こいつと話してると疲れるけど精神的に若くなるからちょっと助かる。基本的に周りの人達がみんなアタシより大分年下だから精神が母親とかおばあちゃんとかそういうのに寄りがちだしね。

 

 ……まあ、こいつ相手にも仕込んでおいたヤツがあるからその反応でも見て笑お。

 




Q.どういう関係?
A.一言で説明するのが非常に難しいので雑に言うと腐れ縁の悪友?

Q.馬の時のこと覚えてんの!?
A.意図的に思い出さないようにしているだけなので思い出そうとすればまあ。

Q.ちなみにどのくらいの戦績?
A.受胎率10割、重賞勝利率10割、G1勝利率9割超え。

番外編のネタ(すぐ用意できるものに限る)

  • ナイスネイチャ+αのヒミツ(ウマ娘風)
  • ウィニングカラオケ(NN杯直後)
  • 『ハヤイ』という名の馬について
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