存在してはならなかった世界   作:真暇 日間

75 / 115
絶対に存在してはならない世界70.5

 

 聞こえていたのは恐らく数人だったのだろう。多くの生徒が、観客が、ファンたちが立ち上がり、帰路について行く中で、私は次のレースの開催を待っていた。

 ナイスネイチャ記念。ナイスネイチャが発案した、デビュー前、ジュニア級、クラシック級、シニア級、ドリームトロフィーリーグ級の五つの枠によって構成されるレース。本当なら個人が発案したレースがURAに引っ張り出されて公式化することなどないはずだったが、参加者の名簿を見せられて『これを内々でやったらファンからの圧がやばい』と思ったのだろう理事長からの特別な配慮とそれを知ったURAのお偉いさんたちのゴリ押しによって公式化してしまったレースだった。

 ちなみに私も出た。ドリームトロフィーリーグの芝マイルの部で優勝させてもらった。ネイチャの美味な食事をたくさん楽しめると思うと腹が鳴ってしまう。

 

 だが、ナイスネイチャを知っているものであればこの程度で終わるわけがないとどこかで感じていただろう。実際、私以外にも気付いて帰ろうとしない者がいる。

 私はここの掃除をしてから帰ると伝え、そういった者たちと共に時間を潰す。今ここに居るのは私とライスシャワー、タマ、トウカイテイオー、マーベラスサンデー、そして───恐らく次のレースの参加者と思われる十数人のウマ娘だけになった。

 

「……多分だけど、あそこにいるのが次のレースの参加者だよね? 見覚えある人いる?」

「んー☆ えっと……たづなさん?」

「ああ、あの人やっぱりウマ娘だったのか……待て、あそこにいるのはTTGでは?」

「ハ? いやいやなに言うとんねん。少なくとも流星の貴公子は大分前に亡くなってホンマに居るやんどないなっとんねん……?

「えっと……ほら、多分ネイチャさんだから……」

「あーうん納得。いや納得するんもおかしいんちゃうかこれ? 一時的なもんか何か知らんけど死者蘇生やぞ……?」

「タマ。考えてはいけない。私の胸で悪いが抱きしめてやるから落ち着くといい」

 

 タマの頭を抱きしめたが、タマの震えはいっそ強くなっていった。まあ、幽霊のような物だしな……。

 ちなみにだが、私はおおよその事は聞いている。ネイチャはしっかり聞けばちゃんと返してくれるからな。ごまかしを入れることもあるがそれに気付いたうえでちゃんと聞き直すと言ってもいいと思っていることは教えてくれるし、できれば聞かせたくないことについては聞かせたくないから言えないとかそういう風に言ってくれる。ネイチャは優しいからな。

 

「……あ。あそこの人、前に見たことある。確か……マルゼンスキーって人だ」

「えっ? マルゼンさん!?」

「旧世代とはいえスーパーカーと呼ばれた怪物やんか!? おふくろさんのコネはどうなっとんのや……?」

「ネイチャはタマの母ではないぞ」

「美食研のおふくろさんみたいなもんやんか!いやまあおふくろさんと言うにはちょっと感覚がぶっ飛んでたりするところがあるってのもわかるけどな?」

「待ってあの人……うわぁ……どうやって引っ張り出してきたんだろ?」

「見覚えのない人たちもいるけど……あの中に並んでるってことは絶対物凄い人たちなのは間違いないと思うんだよね」

「せやろな……ハイセイコーまで引っ張り出してくるんやから」

「なんならあそこの人はシンボリ家の重鎮の一人だよ?」

「…………あの、なんだか見覚えのある勝負服の人が……」

「五冠……シンザンやと? いやいやウチでも知っとるで? シンザンはそろそろ寿命でほとんど寝たきりみたいな状態やって」

「まあ、ネイチャだからな」

「ネイチャだからねー☆」

「それでなんでも済むと思うなや……いやまあ実際それで済んどるんやけども」

 

 参加賞として配られていたカロリーバーの余りとゼリー状の栄養剤を啜って簡単な夜食にしつつ、最後のレースが始まるまでの時間を潰す。ふと見てみると、東京レース場の芝が明らかに再生していくのが見えた。

 

「……まあ、今更考えるのもあれだな。普段のあれはネイチャがいなくなっても問題なく回していけるようにと考えられているらしいし、そういうことを考えなければこういうこともできるんだろう、恐らく」

「まずできとる時点でおかしいけどな」

「おかしいからこそ色々と作れてるわけだろうからそこを責めるのはお門違いだと思うぞ? ネイチャのおかしさのおかげで私は今も健康に走れているのはまず間違いないからな」

「それに関しちゃ否定のしようが無いわな!」

 

 いまあそこに居るのは、十人。多分もう少し集まってくるんだろう。一体どこの誰が来るのかはわからないが、きっと言葉にできないほどのレースになるに違いない。ネイチャのことだからな。物凄い人たちを連れてきているに違いない。今の時点でこれ以上物凄い人って誰だかわからないが。

 なにしろ私でも知っている有名なウマ娘が複数人居るのだ。聞いたらびっくりしすぎて心臓が止まってしまうかもしれないが、そうなったらネイチャに責任もって呼び戻してもらおう。

 タマがそうなった場合もだな。

 

 





Q.聞こえてたって何が?
A.69の最後、ドラッグ。それでわかる。

Q.他の人達は?
A.帰った。夜も遅くなるのでね……という理由で無理矢理。
 なお幹部の皆は片付けの名目で残ってる。

番外編のネタ(すぐ用意できるものに限る)

  • ナイスネイチャ+αのヒミツ(ウマ娘風)
  • ウィニングカラオケ(NN杯直後)
  • 『ハヤイ』という名の馬について
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。