存在してはならなかった世界   作:真暇 日間

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絶対に存在してはならない世界92

 

 早速食事と行きたいところだけど、この世界において食事とはすなわち苦痛。碌な食べ物なんてものは存在せず、ただ苦痛を乗り越えるための修行の場でしかない。

 というのは昔の話。アタシがそんな現実をなんとかするために現れましたどうもナイスネイチャです。

 

 そういう訳で食事の前に王宮の庭の一角、日当たりのいい中庭を借りて軽く地鎮する。方法は簡単、この城に住んでるらしい妖精だか精霊だかを魔力で一時的に雇ってメシマズ物質を酸素炭素窒素水素燐に分解していい感じに混ぜ込んで土を作る。王宮直属のSPの前でやったけどなんか呆然としてた。

 それから王宮の調理場で適当に貰って来た野菜屑の中から人参らしきもの、玉ねぎと思われるもの、ジャガもどきの三つをそれぞれ分解して遺伝子構造からアタシの知ってる形に再構築。つまりアタシのよく知るにんじん、玉ねぎ、じゃがいもに変えて、それぞれ植える。周りから声とか音とか全部消えてた気がする。

 小さな雨雲を呼んで水をやり、雲を掻き消して太陽光を降り注がせ、畑の周りを半周して上を飛び越して元の位置に戻って逆向きに半周、そしてまた飛び越して元の位置に。そこでぐっと力を込めて、上に向けてぱっと放てば、ポコポコと可愛らしい芽が出てくる。精霊たちも踊る。なんだか窓の方から視線を感じるけど気にしない。

 精霊たちと一緒に畑の周囲を回っては跳び越え、力を込めて上向きに解放するのを繰り返す。すると植えたばかりの小さな種はどんどんと大きくなっていって、青々とした葉を茂らせる。なんか端っこにお芋さんが混ざり始めたけど気にしなくて大丈夫。

 

 呆然としてる殿下の手を取って、同じようにやらせてみる。ぐっと力を入れて、ぱっと放す。新しくポンと芽が出てきた。

 殿下も同じようにやってみると、またポンと。流石はこの地に根差して長い王族の血縁と言うだけあってここに住む精霊たちとも相性が良いらしく、一つ二つではなくいくつもいくつも弾けるように芽が出てきた。

 

 後は似たようなことを繰り返す。溜めて、解放する。溜めて、育たせる。それを繰り返すだけで、みるみるうちに一面の畑が豊作の状態になっていった。

 

 ……神様が近い所とか、精霊が近くに居る所だと、こういうことができるのはなにもおかしなことではない。アタシの知る限りでは幽霊だっているし、魔法使いだって実在した。こういう技術も体系化されてないだけで結構使える事におかしさなど感じるわけがない。ごめん嘘、おかしいと感じることはあるかもしれないけれど現実に起こっていることを否定する方がよっぽどおかしなことだと言うだけの話だ。

 ただ、当たり前なんだけどこういうのはその土地の力を大きく消費するし精霊たちの負担も結構なもの。年に一回くらいに抑えた方が良いと思う。可能ならば今頃の、春と夏の入れ替わる時期、芽が出たり大きく育ったりするのに相応しい時期にやることをお勧めする。

 

「はいはい結構いい所まで育ったし収穫ですよー。ただそのあたりの一部は残しておいてくださいね。種にして増やさないといけないから」

 

 畑に入ってササっと収穫。うん、なかなかいい感じに育ってる。黒々とした栄養のある土にまみれた朱色の人参に、でっぷりと丸い玉ねぎ。そしてじゃがいも。じゃがいもは成長させる方でなく溜め込む方に力を入れないとあんまり身をつけないけど、今回は大丈夫。制御したからね。

 それぞれ十分に収穫したら、残していた株に今度は溜め込むように力を加える。ぐぅっと力を溜め込んで、それを成長のために解放させるのではなく溜め込ませるために押し込むように。すると花が咲くのでちょっと受粉のお手伝い。種は大事だけど虫とかいないし、このままだとただ枯れるだけなのでこれは大事な作業だ。

 で、もう一回同じように力を溜めて、押し込む。殿下には少し難しいようだったから、動作として溜め込んだ力を脚から地面に押し込むような動きをしてもらいつつやってもらったら結構うまくいった。花は枯れてしまったけれど、ちゃんと種まで獲れたから大丈夫。

 

 種を回収してから枯れた本体なんかを土に漉き込み、ちょっとそこらで水に浸して精霊にメシマズ抜きしてもらった木と葉っぱを砕いて混ぜ込んでおく。これで一年すればまた使えるようになるはずだ。

 

「じゃあこの野菜を使ってなにか作ってみましょうか。きっといい物が作れますよ」

 

 その場に居たほぼ全員がなんでか平伏していた。殿下は平伏こそしていなかったけどアタシを見る目が明らかに変わった。とりあえずなにか解説とかしておいた方が良いかなと思うけど、今解説しても何も入ってこなさそうだから後に回しておくことにする。どうなるかはその時のアタシに任せた。

 

 ちなみに、妙な信仰を向けられたせいか歩く度に足元から植物が生えてきては即座に枯れていくみたいな状態になりそうだったけどちゃんと制御できた。よかったよかった。

 




Q.魔法使いみたいなことやってない?
A.やってますね。なおこの時点では殿下はまだ楽しんでいた。

Q.卜卜口みたいなことやってんな?
A.やってますね。なおこの時点でオヨソシンザンは考えることを辞めた。

Q.シシ神みたいなことになってんな……?(震え声)
A.なってますね。なおこの時点で結構な人の脳は焼けた。

番外編のネタ(すぐ用意できるものに限る)

  • ナイスネイチャ+αのヒミツ(ウマ娘風)
  • ウィニングカラオケ(NN杯直後)
  • 『ハヤイ』という名の馬について
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