ウマ娘の長い短編集   作:のるどすとりーむ

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お化け屋敷で柄にもなく怖がるマンハッタンカフェ12月5日「バミューダトライアングルの日」

 トレセン学園近くの商店街を利用する学園関係者は非常に多い。この商店街は、昔からトレセン学園と縁があってトレーニング用品や食料品など、学園生だけでなくトレーナーなどにも嬉しい商品を扱ってくれている。そして定期的にその商店街では、月に一回、福引き抽選会が行われている。それを引くのが、個人的にちょっとした楽しみになっている。

 

 「おめでとうございま〜す!2等、遊園地のペアチケットです〜」

 

 著名な遊園地のチケットを受け取る。使用期限は思っていたよりも短い。

 こういうくじ系のものは当たらないと思っていたから、正直驚いたし、なんだか嬉しかった。ただ問題が一つだけ存在している。

 

「ペアチケットかぁ……」

 一人で遊園地に2回行くわけにもいかないが、遊園地に行くような間柄の友人も残念ながら俺には存在しない。

 

「トレーナーさん……?」

 聞き覚えのある声に呼ばれる。振り返るとそこには俺の担当であるマンハッタンカフェがいた。

「ああ、カフェ。偶然だね」

 そうだ、いいこと思いついた。

「これ、あげるよ」

 遊園地のペアチケットを差し出す。カフェは唐突の出来事に若干戸惑う表情を見せながら、チケットを受け取る。

「……遊園地のペアチケット、ですか?」

「そう、カフェにあげるよ。誰か誘って遊んでおいで」

「……なら、一緒に行きませんか?」

「ん?」

──

 ということで、現在に至る。流れでついてきてしまったが、よくよく考えると、トレーナーとウマ娘が一緒に遊園地に来るというのは、なかなか……いや、大分変な状況じゃないだろうか。

「……」

「どうかされましたか?」

「遊園地って、たいてい仲の良い友だちとかと一緒に来るものじゃない?」

「そうなんですか?……まあ私にとって、トレーナーさんは仲の良い友人だと思っていますので」

 そう思ってくれるのは非常に嬉しいが、多分そういうことではないのじゃないかと思ったが、あえて口には出さなかった。

「まあ、カフェがいいならいいか……」

 俺は諦めて遊園地を楽しむことにした。

──

「……結構色々なアトラクションに乗れましたね」

「そうだね……」

 これが十代の体力か、と驚かされる。初手にジェットコースターに乗り、その次にバイキング、そして再びジェットコースター……といった感じで、絶叫系に乗りまくった。それだけで俺はへとへとになったが、カフェはピンピンしていた。というか、絶叫系が好きなのが少々意外だった。

 ふと、視界の端に禍々しい館が入った。

「お化け屋敷、か」

「……」

 一瞬カフェが肩をビクッ!とさせる。

「……もしかしてだけど」

「いえ、私は別に……お化け屋敷を怖いとは思いませんから、普段から見ているので」

「そ、そうか……試しに行ってみる?」

 カフェは一瞬逡巡した表情を見せてから、少々弱々しい声で応える。

「え、ええ……行きましょう」

 

 そういえばお化け屋敷なんて、小学生ぶりとかだろうか。あの頃は、お化け屋敷が非常に怖かった思い出がある。

 早速館内に入ってみる。舞台は中世ヨーロッパの館で、未練がある貴族の魂を鎮めるというものだ。

 内装は、思っていたよりも不気味で、恐怖心を煽られるような仕組みがところどころに仕掛けられている。

 そんなことを考えていると、何者かに袖を引っ張られている感覚がした。……いや、正確には今でもしている。とうとう本物が出てしまったのかと、振り向くと、そこには猫背になって、俺の袖を引っ張っているカフェの姿があった。

 

「……」

「……えっと……その……実は私、お化け屋敷が苦手で……」

 なんとなく、そのような雰囲気はしていたが、まさか本当に苦手だったとは思わなかった。

「そうなんだ。……ちなみになんで苦手なの?」

「本物の方なら、『お友達』と協力して撃退できるのですが……お化け屋敷のものは……無理なので……」

 なるほど、カフェらしい理由だ。

「……ちなみに大丈夫?無理してない?」

 知らなかったとはいえ、誘った俺にも責任はある。

「無理は……していないです。ただ一つだけ、お願いがあります」

「お願い?」

──

「トレーナーさん……私の手……ちゃんと握ってくれていますか?」

「もちろん」

 カフェの要望で、手を繋ぐことにした。これなら恐怖心も和らぐらしい。

「まあ、落ち着いて進んでいこうか」

「はい……」

 手を握る力は少々強く、カフェの不安の程度が伺える。握っている左手には、少々冷たい熱が伝わってくる。ウマ娘の体温は、基本人間よりも高めだが、人間同様、冷え性や様々な理由で体温には振れ幅がある。カフェは以前、体が冷えやすい体質だと言っていたので、恐らくそういうことだろう。

 

何かが出てきそうな曲がり角をゆっくり曲がる。

 

「ぎゃああああああああああ」

 血のような赤い液体が顔一面に塗られている、ドレスの女性が飛び出てくる。

 

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 カフェは声に出さずに、猫が驚いたときのように、盛大にビクッ!っとなる。

 

 そして握っていた俺の手を離して、俺に抱きついてきた

「ちょっ……!?カフェさん!?」

「……」 

 何も声が帰ってこない。相当怖がらせてしまったのだろうか。

 

「よ、よしよーし……」

抱きつかれた状態で移動しながら、持て余した両手でカフェの頭を撫で続けた。

 

──

「お見苦しいところを見せてしまいました……」

 

「それより大丈夫?」

 俺はむしろ体調のほうが心配であった。

「ええ、まあ……」

 

 カフェはいたずらっぽく笑いながらこちらを見る。

「頼りになる人がいたので」




「あの二人、さっさとくっつけよと思った」byお化け屋敷のスタッフさん
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