トリニティとゲヘナ、共通の敵が出来れば両校とも仲良くできるのでは? 作:ミカへの愛
小学校、中学校と様々な人と関わってきたが人間関係にもっとも影響を与えるのは派閥と言っても過言ではなかった。
元々話の合う子でも1度敵対する派閥に入ってしまえば次会話の内容は丁寧言葉で繰り出される罵倒…なんてこともよく見たものだ。
そんな光景ばかりを見てきた俺はトリニティに入学しても意図的に派閥に入らないことにした。
俺の目標を達成するためにも無駄な争いなどしてる場合では無いからね。
派閥に属さない―――このトリニティにおいて無くはない選択だが…後ろ盾がないというのはいつでも私のことを殴ってくださいと言ってるようなもの。
だからこそ委員会や部活に所属することで居場所を作ることで平穏な生活を送るという選択をする人が多いのだか…
俺の場合はそうする訳にもいかなかった。
俺が両校の敵になった時、所属していた部の人達はどのような目で見られるだろうか?
……そんな事を考えて行動を渋っているうちにクラス内では既に輪ができていて―――――俺は孤立した。
やらかした。
だが俺も指をくわえてそんな様子を見ていただけでは無い。
誰かが話しかけてくれた時もあったのだが…この世界で人と話すことに嫌悪感すら感じていた俺は「はい」か「いいえ」以外の返事がすらすらと出せなくなっていたからだ。
…いや指をくわえて待ってるどころか救いの手を自ら跳ね除けているようなものだな。
そんな事を考えてセンチメンタルな気分になるとつい銃をいじってしまう。
かなり物騒な癖に思えるがキヴォトスならばそこまでおかしいことでは無い…はず?
「しっかし、ミカねぇにもらったこの銃もそろそろガタがきているなぁ…」
この銃をもらったのは3年前――――中学校の入学式の時だ。
最初はなんの装飾もなかったのだが…ミカねぇがことある事に装飾品のショップに連れていくのでその場の流れで買っていった結果、誰が見ても一目で俺のだと分かるくらい派手な銃になってしまった。
そんな思い出のある銃もいつしか最近はどうも調子が悪くて、修理してもらおうにもあまりに大量の装飾品が付けられていることや改造を理由に断られてしまいどうしようもない状況だった。
「新しい銃でも買おうかな。」
そんなことを思った俺は近くのガンショップへ行くことにした。
日差しが眩しいので少し俯いて歩いていたのだが、おかげで前の人影を認識できずに誰かとぶつかってしまう。
「ご、ごめんなさい!大丈夫でしたか?」
そう謝罪の言葉を述べながらぶつかってしまったであろう人を見ると―――
「大丈夫ですよ!でもちゃんと前は見て歩くようにしてくださいね。」
よく分からないデザインをした鳥の人形を片手に歩く少女一一一阿慈谷ヒフミがいた。
―――それ、本当に実在するんだ…
と思いペロロ人形を一瞬凝視する。
そんな俺の視線を勘違いしたのかヒフミはこんなことを言った。
「あ!まさかあなたもペロロ様のファンなんですか!?」
「あっ、いや、えっと私は…」
「遠慮なんてしなくても大丈夫ですよ!ちょうど今から廃盤になってしまったペロロ様を買いに行くつもりなんですが一緒にいかがですか?」
ペロロに興味はないのだが…でもなんだか押しが強いし、何より仲良くできるかもしれないから一緒について行ってみようかな。
「…分かった。私もそのペロロ様を買いに行くのについて行かせてもらえないかな?」
「もちろんです!!取っておきのお店に案内してあげます!…ところで名前を教えていただけませんか?私は阿慈谷ヒフミですからヒフミ、と呼んでください!」
「私は…カレンって呼んでください。」
「カレンちゃんですね!じゃあ早速行きましょう!」
***
ヒフミに連れられること数時間、ようやくついたそこは――――ブラックマーケットだった。
「ねぇ、ここブラックマーケットだよね?
初対面の人と一緒にこんなとこに来るなんて有り得る…?」
「ご、ごめんなさい!私以外にペロロ様が好きな人なんてこの学園入って初めてなので…そのせいで気分が盛り上がっちゃったと言いますか…」
…ヒフミ、恐ろしい子。1年生の時点ではアズサもいないし本当に初めて見つけた仲間に喜んでいるのだろう。
ここまで来たら俺もペロロが好きということにするしかないな…
それにブラックマーケットに来てしまったものはしょうがない。
色々武器とか見てみようかな?
「まあいいよ、でも何かあった時はよろしくね。」
「もちろんです!」
威勢の良い返事だ。
そんなやり取りしたあと、ヒフミは一直線に店に向かい俺もその後を追っていたのだが…
道中で俺とヒフミを間を隔てるように大きな爆発が起こった。
原因は目の前にいるヘルメット団とマーケットガードによるものなのだが…
道を塞ぐように対峙しているためこのままヒフミの後を追えそうな状況でもない。
だからといってこの場で待機しようにも流れ弾が飛んで来る危険があった。
「仕方ない、少し遠回りをしてヒフミの行きそうな店をしらみ潰しに見ていこう」
こうして俺はブラックマーケットを探索がてらヒフミを探すことにした。
ブラックマーケットには様々な店があった。
普通の町にありそうな雑貨店から明らかに怪しい警備員のついた中の暗い店。
さすがにそんな怪しい店にモモフレンズの人形なんか売ってるわけが無いので俺は比較的怪しくなさそうな雰囲気の店を見ていたのだが…
ふと、何故か目につく店があった。
その店のショーケースには銃が置かれていて、ガンショップであることが分かる。
―――怪しすぎる
ブラックマーケットの中でも人の寄り付かない路地裏に入口のあるそのガンショップは外壁の塗装は所々剥がれていて全体的にくたびれている印象を受ける。
しかしショーケースと中の銃は綺麗な状態だ。
ヒフミと合流することも重要だが…自分の銃を買うために少し寄って行くことにした。
***
「いらっしゃい。トリニティの孃ちゃん」
少し嫌味な口調で話しかけてきたのは170cmくらいある背丈をした女性?だった。
「?」がついている理由は彼女の身体的特徴と顔にある。
身体は中性的だし、男女両方とも取れそうな声質。
そして極めつけに顔には謎のモヤがかかっていて全く認識出来ないようになっている。
このキヴォトスで男性なのは先生だけのはずだからこの人はきっと女性だろう。
そんな希望的観測から勝手に女性だと思っているだけなのだが…
「なあ、そんな黙りこくられても迷惑なんだが。」
なんて考え事をしていると少し怒られてしまった。
「ごめんなさい、えっと、新しい銃が欲しくて…」
「見りゃわかる。あんたの持ってる銃にガタが来てるから新しいのが欲しい。そういうことだろう?」
「ッ!よく分かりますね…」
「そりゃそうさ、その銃…装飾のつけすぎだし改造品も乱用もしてるからな。修理を断られて泣く泣く新しい銃を買おうとしてる、てとこだろう。
とんでもない観察眼の持ち主だ。
俺ほとんど喋ってないのに…
「そ、その通りなんですが…何か良い銃はありませんか?」
「そんなこと自分で決めるべきなんだが………まあでも、嬢ちゃんの動きからして足と腕の両方とも強そうだからな、いくつか良いもん見せてやるよ。」
そう言って彼女が持ってきたのは対物用のスナイパーライフルとマシンガン、そして…よく分からない配線が多く付けられた何かだった。
「御託はいい、とりあえず持ってみな。」
言われるがままにそれぞれ持ってみる。
スナイパーライフルは持ち手が俺の手に馴染んで持ちやすいが…銃身が長いので取り回しが悪く感じる。
マシンガンは取り回しこそ比較的良いが…持ち手が複雑な構造をしていて違和感を感じる。
そのよく分からない何か―――店主さん曰く、トライデントという名前だそうだが…微妙に手には馴染まないし取り回しも悪いというふたつの武器の悪い所を中途半端に組み合わせたような感じの武器だった。
「これ、どうやって撃つんですか?」
どうやらこの銃の弾には薬莢が付いておらず、細長い金属の矢に小さい翼がいくつかついている物をそのまま装填する構造になっている。
そんな疑問に店主さんはこんな答えを返してきた。
「嬢ちゃんの神秘を推進力に変えて撃つんだよ。」
「神秘を…推進力に…?」
そんなことが出来るのだろうか?
「トライデントに神秘を流し込むような感覚でやってみな。」
言われた通りに自分の中にある神秘っぽいものを慎重にトライデントに流し込むと、10秒くらいでこれ以上流れないような感覚がした。
「休憩無しでフル充填できるとは…それにまだ余裕もありそうだし…うん、見込んだ以上の逸材かもしれないな。」
「よし、地下に試射できる場所があるからそこで撃ってみな。」
言われるがままに地下へ連れられ射撃訓練場のような場所へ着いた。
「弾はトリガーを引けば発射される。今はフル充填されてるから…普通にすれば30発くらい撃てるだろう。」
「普通にすれば、というのは…?」
「気の持ちようだ。」
―――何言ってるんだこの人は。
気合いを入れれば30発分を一発で消費できる、ということなのだろうか。
とりあえず言われるがままにトリガーを引き撃ってみる。
一発で約500m先にある丸い的が原型を留めることなる粉砕されてしまった。
―――これは使えるかもしれない。
トリニティとゲヘナ、両校の敵になるのであればある程度の強さは必要だろう。
だからといって生徒をあの的のようにしたい訳では無いのだが…その辺の威力は何故だか調整出来る気がした。
「うーむ、さすがは私が見込んだだけはある……どうだい嬢ちゃん、それ買ってかないかい?今なら好きなハンドガンもセットで付けるよ。」
買わない選択肢なんかあるものか。
すぐに購入の意を示した。
***
トライデントは持ち歩く時には上手いこと畳めるように作られているらしく、そこまで邪魔にならずに持ち運べている。
セットでもらったハンドガンもまた神秘を利用した特別製―――という訳ではなく、ちょっと威力の高い銃だった。デザートイーグルとか言ってたかな?
いい買い物をしたなぁと思いながらブラックマーケットから出ようとするが、1つ大事なことを思い出す。
―――ヒフミと合流出来てない!!
日の沈みかけたブラックマーケット内でヒフミを探し回り、途中で赤い髪の子に助けてもらいながらヒフミと合流することが出来た。
「ほんっっとうにごめんなさい…」
どうやら別れた後もずっと1人で店を回っていたらしくそろそろ俺の事を探そうか、という時にちょうど合流したそうだ。
「私も途中ガンショップに寄り道してたし…お互い様だよ。」
そう言って先程買ったデザートイーグルを見せる。
トライデントはバッグの中に上手いこと詰め込んで見せない方針で行くことにした。
「新しい銃ですか…なんにも装飾されてないのは寂しいですから帰りがけに装飾品ショップに行きませんか?お詫びもしたいですし…」
「お詫びなんていいよ…でも、そうだね。なんの装飾もないのは寂しいから行こうかな。」
ミカねぇに装飾され尽くされた銃しか持って来なかったので何も付いていないものを見ると違和感すら感じるようになってしまった俺はヒフミの案に乗ることにした。
***
トリニティ自治区に戻って来た俺たちはあれも良いこれも良いと言いながら色々付けた結果半分以上が装飾品で埋められるようになってしまった。
普通ならもっと抑えるそうだがなんだがそれだと落ち着かないのでヒフミの意見も聞きながら装飾品を選んでいたのだが…とても楽しかった。
この世界に来てから初めてミカねぇ以外相手に心の底からそう思えたヒフミに俺はまたいつか会おうねという約束をして今日は開きになった。