トリニティとゲヘナ、共通の敵が出来れば両校とも仲良くできるのでは?   作:ミカへの愛

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3話 砂と夢

 

 

 

 

「カレン、アビドスに行ってみない?」

 

 

「ふぇ?」

 

 

 唐突の問いかけに気の抜けた返事を返してしまった。

 

「この前図書館でアビドスの水族館のポスター見だけどさ、なんでもキヴォトスで唯一クジラが見れるんだって!」

 

「えっそうなの?」

 

 広いキヴォトスの中でもクジラの生息域が限られていることは知っていたが…水族館で見られるのはアビドスだけであることは初めて知ったため驚く。

 

―――ちょっと見てみたいな。

 

 クジラを自分の目で見ることが無かった俺は少しの好奇心で行ってみることにした。ミカねぇと遊びたいからという気持ちもある。

 

 

―――あれ、でもミカねぇはティーパーティー補佐だから何かと忙しいはず…休暇でも貰えたのかな?

 

 

「行ってもいいけど…ミカねぇが抜けた分の仕事は誰がするの?補佐の仕事は誰でも代われるようなものでは無いはずだけど。」

 

 

「だいじょーぶ!カレンが行きたいって言ってたよって言ったらナギちゃんが代わってくれたから!ほんと優しいよね☆」

 

 

―――ごめんなさいナギサ様…

 

 こんな姉の無茶振りに振り回されている彼女へ心の中で謝意を示す。

 

「私の事を勝手に利用しないでよ…はぁ、いつ行くの?」

 

 

「30分後に駅前集合ね!じゃあ私は自分の部屋で準備してるから、またね!」

 

 

―――行動が速いことで…俺まだ全く準備してないのに…

 

 クジラを見に行くだけならまた後日でも良いだろうに、なぜティーパーティーの仕事をほっぽり出してまで急いで行こうとするのか、なんて疑問が浮かぶが…

 

―――まあミカねぇの事だし、突発的な行動もありえなくは無いな。

 

 

 そんなことを考えながらも、アビドスに行くということで万が一に備えて予備の服や水の用意をすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん、お待たせ。」

 

 

 寮を出る直前に十分な量の飲み物がないことに気づいたので急いで水をいくつか買ってきたのだが…そのせいで少し遅刻してしまった。

 

 

「大丈夫だよ。でも…そんなに大きなバックいる?」

 

 

「私のバックが大きいと言うより、ミカねぇのバックが小さいだけだよ。」

 

 

 ペットボトル2,3本とミカねぇの銃で限界になりそうなバックを見てそう言う。

 

 俺のバックには飲み物と緊急時の装備だけでなく、トライデントを入れてるので少し膨らんでいるが…それでもアビドスに行くというのならさほど不自然では無いほどだ。

 

 

「そうかなぁ、別にそこまで警戒する必要は無いと思うんだけど…」

 

 

 普通の人ならそんな判断が命取りになるだろうが…目の前にいるのはキヴォトスでトップレベルの頑丈さが売りのミカねぇ。

 

 

―――万が一遭難した時用のビーコンやサバイバル装備まで持ってきてるのが馬鹿らしくなってくるな!

 

 

 やはり規格外な姉を横目にアビドスへ向かうため電車に乗り込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 電車に揺られること数時間、ようやく降りた駅で俺は絶望していた。

 

 

「あっつ…なにこれ…干からびそうになる…」

 

 

「確かにちょっと暑いけど…そこまでかな?」

 

 

「いやめちゃくちゃ暑いでしょ!」

 

 

一一一予報だとこの時間の気温は37℃だったはず…そんな気温で平気そうにするその肉体の耐久性が羨ましい!!

 

 

「それで…どこに水族館があるの?」

 

 少しばかり人の影は見られるが…近くに水族館がある雰囲気ではないため疑問に思う。

 

「…こっちだよ!」

 

 

 声こそいつもの調子だが顔はいつもの天真爛漫純粋無垢さを感じさせないミカねぇの言われるがままに砂漠の奥へ奥へとついて行く。

 砂に侵されつつも文明的だった駅前から周りの人工物が完全に見えない砂漠へ神妙な顔をしながら歩くミカねぇ。

 

 やがて携帯の通信が圏外になり太陽がちょうど真上に来た頃、歩き続けていたミカねぇは急に立ち止まりこちらを真っ直ぐな目で見つめながら口を開く。

 

 

「ねぇ、ナギちゃんからカレンがトリニティとゲヘナが仲良くするために入学したって聞いたんだけど…本当?」

 

 

「うん、本当だよ。」

 

 特段隠すつもりもないので正直に答える。

 

 

「そっか…でも私は反対かな。だってあの人たちって一々暴力に走るような野蛮な人達ばっかりだし、きっと仲良くしようとするカレンにも酷いことするに決まってるよ!」

 

 元よりゲヘナ嫌いのミカねぇからこの目標を反対されているのは分かりきっていた。

 だからこそしっかりと自分の意見を伝えられる。

 

「確かに、出された料理が不味いってだけで店を爆破させるような人もいるし、温泉のためならどこでも構わず掘り出そうとする人もいる。ゲヘナのトリニティに何かとちょっかいをかけることだってある「ならそんな人達なんて!」一一一けど、それでも全員がそうじゃない。」

 

「ゲヘナには"そんな人達"から風紀を守るために身を粉にして戦う人もいるし、"そんな人達"から妨害をされても自分の仕事をやり通そうとする人もいる。」

 

 

「でも…おかしいと思わない?」

 

 前世からの疑問を投げかける。

 

「…何がかな?」

 

 

「個人間でのトラブルはあっても学園間での最近の衝突は全くないはず。」

 

「なのにみんなゲヘナの話を出しただけで親の仇かのように態度が悪くなるんだ。」

 

「確かにゲヘナは荒れている学園ではあるけれど…それでもトリニティはゲヘナの悪い所しか見れてない。ゲヘナもきっと同じようにトリニティの悪い所しか見れてないだけのはず。」

 

 

 

「だからきっかけ1つがあれば仲良く出来ると思うんだ。お互いに悪いところだけじゃなくて良いところも見つけようって一一一そう思えるようなきっかけがあれば。」

 

 

「つまり、そのきっかけにカレンがなるってこと?」

 

 

「そのつもりだよ。」

 

 ミカねぇは数秒間目を閉じて何かを考えてから、また目を開けてこちらを見る。

 

「そっか…うん、でもやっぱり賛成は出来ないかな。

きっとトリニティのカレンが歩み寄ろうとしても変な目で見られるだけなんじゃないかなって思ってる。」

 

「でも…もしも本当に仲良くできる良い考えがあるんなら一一一一私はカレンを止めたりしないよ。」

 

「…うん、任せて!」

 

 原作ではずっとゲヘナを忌み嫌っていたミカねぇが俺の目標を止めずに、認めてくれたことに安堵した俺はそう溌剌と言う。

 

 ミカねぇはそんな俺の様子を見て嬉しそうにするが、一呼吸置いて口を開く。

 

「でも…カレンが酷いことされようものなら…私、なにをするか分からないかも!」

 

 ミカねぇは冗談っぽく言っているが目の奥は全く笑っていない。

 

一一一いざ両校の敵になった時、俺どうなるのかな…

 

「ところで…なんでこんな砂漠の奥まで来てこの話をしたの?」

 

 誰かに聞かせて良い話では無いが…ここまで来る必要があっただろうか、という疑問をミカねぇに投げかける。

 

 

「うん、ネットが繋がるところだとあの人たちに聞かれてるかも知れないから。」

 

 ここで言うあの人たちとは…間違いなく両親のことだろう。

 

 うちの両親は何らかの方法で俺たちを…いや、正確に言うと俺を監視してる。

 

 それがどこかに付けられた発信機なのか、盗聴器なのか、はたまた尾行されているのかは分からないが俺の行動は筒抜けだ。

 

 この前行ったブラックマーケットの件でも途中でなんならかの要因により通信が途切れたことについて事情を聞こうとするようなメッセージが送られた。

 

「そっか…あの両親のことだし、トリニティとゲヘナを仲良くさせたいなんて聞いたらもう学校に行かせてすらもらえないかもね。」

 

 思考が完全にトリニティへ染まっている両親はゲヘナという単語を聞くだけで激しく不機嫌になると言うのに…そんなことを言ったらどうなるか想像はし難くない。

 

「ずっと通信が途切れたままだと何か厳しく言われるかもしれないし、そろそろ帰ろう?」

 

 そうミカねぇに提案するが…

 

「え?まだ水族館に行ってないのに帰るの?」

 

 

「…え!?本当に行くつもりだったの!?」

 

 平然とした態度でそう言われた俺は驚く。

 

「当たり前じゃん!あの話をするだけならわざわざここまで来ないよ!」

 

 

「うーん、確かに…じゃあせっかく出したこのまま行こうかな。」

 

 

「うんうん、じゃあしゅっぱーつ!」

 

 

 そう言って元来た方向へ歩を進めようとした瞬間

 

「あなた達、誰?」

 

 

 声のした方へ振り向くと急いで来たかのような息遣いとこちらを疑う目をしたピンク髪をミディアム位まで伸ばした少女一一一小鳥遊ホシノがいた。

 

 

一一一なんでここにいるの?

 

 

 などと思ったがここは一応アビドスの土地なのだし、別にいること自体はそうおかしいことでは無いだろう。

 

 だが…少なくとも原作時には持っていた大きな盾を持たず、自分のショットガンのみを持っていることに強烈な違和感を感じる。

 

 

 ただ盾を持っていない事に違和感を感じているわけじゃない、もっと根本的な何かへ違和感を感じる。

 

 

一一一ユメ先輩ってどうなっているんだ…?

 

 もはや記憶の中が原作での出来事や時系列がぐちゃぐちゃになってしまっている俺でもユメ先輩は記憶に残っている。

 原作開始前に死ぬだとか、それがきっかけでホシノがテラー化するものの何とか元に戻るとかその程度だが。

 

 

一一一ユメ先輩は生きているのか?

 

 

 ユメ先輩の死がいつかも分からない。すっかりアビドスの事など忘れてユメ先輩やアビドスへ何も手助けをしてこなかった俺がそう思うだなんてなんておこがましいのだろうか。

 

 そう自嘲しながらもホシノへ問いかけに応じる。

 

 

「私は聖園カレン、こっちの方は姉のミカだよ。」

 

「カレンとミカ…ね、私は小鳥遊ホシノ。君たちは何しにここに来たのかな?」

 

 口調は少し柔らかくなったが、こちらを見る目は変わらず鋭い。

 

 その目線に当てられたせいか身体が脱力し、冷や汗が一一一出ることはなかった。

 

一一一こんなに砂漠の風景は歪んでいたっけ。

 

 

 

一一一そういえばミカねぇと話してる間、水一切飲んでなかったな…

 

 振り返ってみると話に集中し過ぎて保冷剤で体を冷やす事も水を飲むことも忘れていた。

 

「カ一一!一一一!?」

 

 何か言っているミカねぇと動揺した様子のホシノを横目に、俺は意識を手放した。

 

 




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