トリニティとゲヘナ、共通の敵が出来れば両校とも仲良くできるのでは? 作:ミカへの愛
私は生まれつき強い体を持っていた。
おかげで幼稚園の頃からお手伝いをすればみんなが感謝してくれて、みんなが私を頼ってくれた。そんなことをしていたおかげで両親にはたくさん褒められたし、時には劇場にも連れて行ってくれた。
そんな両親に勧められた小学校へ入学すると、クラスの皆から頼りにされ、先輩から一目置かれる一一一とても楽しい学校生活を送っていた。
一個下の妹一一一カレンは体こそ強い訳では無いがテストの点数では私以上だった。
きっと私のような学校生活を送っているのだろうと勝手に思っていた。
だがそんなことはただの思い違いだったのだと、そう知ることになる。
「ねぇ、聞いてカレン!私この前クラスの委員長に推薦されちゃったんだ!いっつもみんなから頼りにされてたけどまさかここまでなんて…えへへへ……」
私が中学校に入学してすぐ、幼稚園の頃から多くの人と仲良くなって頼られてきたよしみで1年生の委員長に推薦されたことが嬉しくてついカレンに自慢したのだ。
「すごいなぁ、ミカねぇは…」
そう言って笑うカレンだったが、その顔はどこか悲痛に満ちていたのを今でもはっきり覚えている。
中学校からは寮に入るためカレンに会う機会はかなり減ってしまい、時々会ってもどこか元気の無い様子に心配していた。
ふと、カレンの様子があまりにもおかしいと思った私はお母さんに聞いてみることにした。
「お母さん、なんでカレンはあんな様子なの?」
最近は私よりもカレンの方が多くお母さんと関わっている時間が多かったため、何か知っているだろうと思い聞いた。
「あの子は…大丈夫よ、絶対にあなたの邪魔はさせないから。安心して委員長になるのよ。」
一瞬、頭の中がフリーズしてしまった。
まだカレンにしか言ってないはずの委員長に推薦された話を既に知っていること、何より『あなたの邪魔はさせない』という発言を聞いてしまったからだ。
一一一カレンが何かしようとしていたのかな?
しかし今までずっと違う学校に通ってきたのだから何も出来ないはずだ。とその考えを一蹴する。
何か噛み合っていないのかと思い、次はお父さんに相談してみることにした。
「お父さん、なんでカレンはあんな様子なの?」
全く同じ質問をお父さんにも投げかける。
「ん?ああ、心配になったか、でも大丈夫だぞ。」
大丈夫。その言葉を聞いて安堵したのもつかの間
「ミカがティーパーティーになることを絶対に邪魔しないように監視してるからな。」
一一一何、言ってるの?
自分の耳を疑う。
ティーパーティーってあのティーパーティーに?なぜ?
カレンが私の邪魔を?そんなこと今までされた記憶もなければ素振りも見せなかった。
むしろ私に人との関わり方を教えてくれる味方だと思ってた。
動揺した私は…カレンがお風呂に入ってる隙にスマホの中身を覗いてしまった。
今思い返せば家族だろうと絶対にやってはいけないことだが…その時ばかりはそれが正解だったと思う。
スマホの中にはモモトークと動画視聴アプリと買った時からインストールされているいくつかのシステムに関するアプリだけだった。
モモトークの履歴を見てみると、中にはおそらくトリニティ系であろうたくさんの人からの罵倒とも取れる一方的なチャットと………ゲヘナっぽいアイコンをした子からの感謝のメッセージだった。
内容から察するに、カレンはたまたま迷い込んだゲヘナの子を守った結果、ゲヘナを忌避する人達から敵対視されてしまった…ということだろう。
両親からゲヘナは野蛮ですぐに暴力に走り秩序のない場所だから絶対に関わるなとカレン共々強く言われてきた。
そんなことを言われ続けてきたカレンがなぜゲヘナを助けたのかは全く理解出来なかったが………これでカレンが辛そうにする理由が分かったので助かる方法を探そう思い、スマホをホーム画面に戻してその場から離れようとした…のだがホーム画面に違和感を感じた。
指で数えられる程度の数のアプリの中で、一つだけ見覚えのないアプリがあったからだ。
あたかも最初からあったかのようにシステムアプリのフォルダの中にある「トラッキング」というアプリ。
私のスマホには入っていないそれに疑問を抱きつつもカレンがお風呂から出てきそうだったので急いで元に戻した。
この「トラッキング」というアプリに関する情報は少なく、不確定的な情報がほとんどだったが…2つほどわかったことがある。
1つ目は例えスマホの電源が切れていようと位置情報を発信し続けること。
これだけならまだカレンは幼いしどこに行くか分からないから、なんて事が考えられる。
だが問題なのは2つ目一一一持ち主の生体情報まで得られるということだ。
カレンは肉体面の強さでは私よりは劣るが…だからといって病弱というほどでは無い。
なら一体なぜそこまで情報を集めようとするのか?
両親が共通して言っていた『邪魔はさせない』という言葉、これに引っ掛かりを覚えたまま考えに考えて…結局、明日カレンに話を直接聞くことにしてその日は寝てしまった。
今でも後悔している。
あの時、寝ずに話を聞いていればカレンは大切な中学校時代を楽しめたかもしれないのだから。
学校が終わりカレンから話を聞こうとしたが連絡がつかない。
急いで家に帰って部屋を見るがもぬけの殻だった。
カレンの在籍する小学校に連絡をしたがもう既に下校していると言われた。
既に制服を着た生徒の姿はない通学路を探し回ってもカレンの痕跡は一切無かった。
何も分からずに焦燥感を覚えながらも日が沈んでしまったため一度家に帰ったのだが…玄関にはやけに汚れたカレンの靴を見つけ、安堵する。
「カレン!どこに行ってたの?心配したんだからー!」
きっと時間も忘れて外で遊んでいただけなのだろう。
私も小学校の頃は夜に帰ってきては両親によく怒られていた。
だからカレンも同じはず一一一そんなのはただの希望的観測だった。
真っ白で清楚な印象を受けた綺麗な制服は水や泥で汚され、隠れているつもりなのだろうが見えている服の下の痣、私とお揃いだとカレンが喜んでいた腰まで届いていたはずの髪は、肩の高さでバッサリと切り落とされていた。
「おかえり……ミカねぇ」
気丈に振舞っているつもりなのだろうが目には涙が浮かび身体は小刻みに震えている。
「ごめんね、こんな姉で、何も出来なくて、気づけなくて、酷い姉で、ごめんね。」
カレンを抱きしめながら泣きながら私は謝った。
本当に泣きたいのはカレンのはずなのに、この時は自分の不甲斐なさに私が泣いてしまっていた。
「お姉ちゃんは悪くないよ…これは全部、私の自業自得だから。」
「そんなわけないでしょ!!!誰がやったの!?私が…私が…!」
殺してやる、なんてつい物騒な言葉を言いかけた私の口が塞がれる。
「そんなこと言わないで、ミカねぇが人を殺すところなんて見たくないし、絶対にさせたくない。」
今まで目に涙を浮かべていたとは思えないほど強い目を向けられながらそんなことを言われ、冷静に戻る。
なんて心の優しい子なのだろうか。
こんなカレンが私のことを邪魔するだなんて考えられない。
ここで初めて私は自分の両親を疑うことができた。
思えば両親は私には欲しいアクセサリーやお菓子を沢山買ってくれていた。
だがカレンにはとても冷たかったように思える。
最低限の服や食事以外に何かをあげていた物はあっただろうか。
キヴォトスなら誰でも持っている銃でさえも持ったところは見たことがない。
身につけているアクセサリーは私があげた髪を結ぶためのおさがりだけ。
分厚いスマホカバーにはストラップホールも無く簡素だった。
そんなカレンに私は今までなにかしてあげていただろうか?
両親を盲信するのみでカレンのことを考えて何かしてあげていたのは少なかっただろう。
そんな仕打ちを受け続けてきたのだからきっと辛かったはずだ。
だからこれからは一一一一一ちゃんと"姉妹"としてカレンと仲良くしていこう。
もう二度とカレンが傷つき、悲しまないように。
そう決意した
一一一一一一はずなのに、そんなカレンが今目の前で倒れた。
「あなた!小鳥遊ホシノって言ったよね!?近くに病院はある!?」
「近くに病院はない。でもアビドスの校舎に連れて行けば安静には出来る。」
道中カレンに水を飲ませながらも何とかアビドス校舎にたどり着く。
私が余計なことをしたせいで、またカレンが傷ついてしまった。
もう傷つけないと、これからは仲良くするだと、そう決意したはずなのに。
正直、ゲヘナをそこまで恨んでいるわけではなかった。
だがもしカレンに何かがあったら、今度こそ立ち直れなくなってしまうかもしれない。
だから電波の届かないところまで行ってまで邪魔の入らない場所で本意を聞こうとしたのだ。
だがその余計な行動のせいでカレンは今目の前で、熱中症により倒れている。
一一一私がお姉ちゃんだなんて、無理だったのかな…?
そんな自責思考に苛まれていると、小鳥遊ホシノから声を掛けられる。
「あなた達があそこで何をしていたのかは知らないけど…あの子が倒れたのは聖園ミカ、あなたのせいじゃないよ。」
「そっか…ありがとう。でも悪いのは私なのに変わりはないよ。」
大切な妹の体に気を遣うことも出来ない私が全部悪いんだ。
「…私、1年前には先輩がいたんです」
「え?」
いきなり何の話だろうか。
「でもその先輩は私と喧嘩してしまってから行方不明になってしまったんです。」
「最初はずっと後悔してました。なんであの時しょうもないことで喧嘩したのか、先輩がどこかへ行った後なんですぐ追いかけなかったのか。」
「それから1年間、先輩を探し続けましたが遺体どころか装備品のひとつも見つけられず、私のやってることは無駄なんじゃないかと思い始めていました。」
「後悔は尽きません、ですがこのままではせっかく来てくれた後輩に悪いと思い捜索を諦めたんです。」
「それで…何が言いたいの?」
空気を読まずに続きを催促する。
「あなたは私と違って、まだ大切な人が残ってる。だからそんなこと考えてないで早くその大切な人を守れるようにして。ということです。」
「そんなこと、言われなくても分かってるよ!でも私はあそこでカレンに一一一「ちゃんと守れてるじゃないですか。」え?」
「確かにあの子一一一カレンさんは倒れてしまった。あんな砂漠の中で話し合うだなんて普通は有り得ない。けど、それがあなたにとってのカレンさんを守るための最善策だったんでしょ?」
「…分からない。でも私のやったことがカレンが倒れるのに繋がったんだから、結果として最悪な一一一一」
そこから先はホシノの大きな溜め息に遮られた。
「はぁ…あなた、自己肯定感低すぎるよ。少なくとも、目の前のカレンさんはそう思って無いと思うんだけど。」
「え?」
俯いて下を向いていた視線をカレンの眠っているベッドへ向ける。
「えっと…おはよう、ございます?」
カレンは少しおどおどとした様子で私と小鳥遊ホシノを交互に見る。
「カレン!良かった…体におかしいところは無い?」
「うん、大丈夫。そんなに心配してくれてありがとう。」
「…あなた、どこから話聞いてたの?」
一一一どこからって…カレンはついさっき起きたばっかりじゃ…
「あなた達があそこで何やってたのかは知らないけど一一一から、です。」
一一一全部聞かれてたってこと…?
なんと言っていただろうか。そんな記憶が飛ぶくらい焦る。
「えっと、えっと…ごめんね、あんなことして。お姉ちゃん失格かもしれないけど、どうかまだ一緒にいさせてくれたら嬉しいなって一一一」
「えいっ」
いきなりカレンに抱きしめられる。
「カレン…?何してるの?」
「うーん、センチメンタルなお姫様に癒しを与えてる?」
何て?センチメンタル?お姫様?
カレンの行動に疑問が湧く。
「私はね、ミカねぇがお姉ちゃん失格だなんて産まれてから一度も思ったことは無いし、ミカねぇの妹ととして生きてこれたことを喜んでるくらいなんだよ。」
そんなことを言われて思わず涙がこぼれ落ちる。
「本当に…?私はカレンのお姉ちゃんとしてちゃんと出来てた…?」
「うん!ミカねぇは最高のお姉ちゃんだよ!」
久しぶりに見たカレンの晴れやかな笑顔は砂漠の太陽よりも眩しく感じた。
「ところで、私のことはあなたじゃなくてミカって呼んでくれたら嬉しいな。」
呼び名が「あなた」だけだなんて寂しいことか。
そう思いカレンがお手洗いへ行っている間にそう提案した。
「…ミカさん、でどうですか。」
「そんなこと言うなら私もホシノちゃんって呼ぶからね!」
「はぁ…分かりました。ミカと呼びますから、私のことはホシノと呼んでください。これでどうですか。」
かなり迷った結果そう結論を出したらしい。
「もーつれないなぁ、まっいっか!よろしくねホシノ!」
一一一心の中でならホシノちゃんって呼んでもいいよね!
ホシノちゃんとカレンの励ましによってこんなやり取りをできるくらいには立ち直れた。
一一一今度こそ、もう二度とカレンが傷つかないようにお姉ちゃんが守るからね。
そう強く決意した。
ミカの口調は要修正ですかね…