転生者セイズ・ベルベットの憂鬱   作:エリス

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第10話 豊穣の女主人

「おじいちゃん…凄かったね…お義母さんも…普段の魔法、大分手加減してたんだね…」

 

「病気が完治したからか無茶苦茶軽快に動きまくってたし、出力(パワー)も昔より上がってたのう…」

 

「本当はモンスターがあんなに簡単に弾けるほど強かったんだ…恐っ…特にセイ姉が凄かったね…なんかいっぱい魔法使ってたし剣も凄いしで…」

 

「あーまあアレは例外中の例外というか儂らの頃もあんなん居なかったし…アレが本職治癒師(ヒーラー)とか詐欺じゃろう」

 

「おじさんも凄かったよね、【猛者(おうじゃ)】にも全然負けてなかった!」

 

「あの這いつくばっていた猪小僧がいっぱしの(おのこ)になりおって…ザルドも前の前に会った時は死相しかなかったのにあそこまで、活き活きするようになったのは感慨深いのう…何故か若返ってたけど…」

 

「それに『小人族(パルゥム)は弱い』ってよく聞くけどあの()は滅茶苦茶強かったね!」

 

「いや身体小さければ普通は弱いのは当然なんじゃが…アレも突然変異のようなもんじゃろう…あの()もセイちゃんの弟子らしいぞ」

 

「指揮していた【白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)】より中心に居た感じだったしやっぱりセイ姉凄いんだなあ…」

 

ベル・クラネルがオラリオにやって来る一年程前のこと。尚「知り合いの綺麗な強いお姉さん」くらいにしか思っていなかった憧れの女性が実は【剣姫】以上の高嶺の花とは知る由もなし。

 

エルソスの遺跡付近では───大本のアンタレスを仕留めたら、子サソリも灰になった。

その一方でアルテミス・ファミリアに追従する形で依頼を受けていたヘルメス・ファミリアは…

 

「凄かったね…『小人族(わたしたち)の聖女様』。あの『【勇者(ブレイバー)】に取って代わる』だってさ…まあセイズさんが勝手に言っているだけかもしれないけどさ…実際にそう思わせられるだけの動きしてたよね…」

 

ヘルメスには遺跡の中の状況を伝えなければ、鑑賞したいがためにアスフィを伴って突入し兼ねなかったので、そちらにもタイミングを伝えて【神の鏡】を繋げさせていた。

 

ヘルメス・ファミリアは一時(いっとき)セイズが【派遣】されていた。当然ヘルメスは拒否したのだが、「後ろ暗いところがあるからだろう」と押し切られ、

レベル2と詐称していた本当はレベル4の団長のアスフィを初め、全員の詐称していたレベルを正確に言い当てられ、罰金と共に言うことを聞かざるを得なくなってしまったのだ。

「冒険」させられ、アスフィが最終的にレベル5になれたこと自体はプラスだったのだが。

ポットとポックの小人族(パルゥム)の双子の姉弟は、双子ということもあって結構目をかけられていた。

「どんな種族だって神の恩恵(ファルナ)を貰った時点で誰でも超人になれるし公平なんだから種族を言い訳にすんな」「下を向き続けているような奴に神の恩恵(ファルナ)は応えてくれない」

「ウチのバカ兄弟は種族の未来を憂いている節はあるけど種族が理由で自分たちが卑屈になっているところなんざ一度も見せたことがない」と。「まあ私と比べたら雑魚なんだけど」という最後の一言で台無しだったが。

「リリも昔は虐げられていて下を向いていたけど、地を這い続けて一時(いっとき)卑屈になることはあっても完全には諦めなかったから私に逢えたのよ。今ではとにかく私のために頑張ってるみたい。カワイイわよねー」

 

元気づけられもしたが色々台無しだった。セイズがリリルカを見出して拾ったことはオラリオでは結構有名で美談として扱われているが。「ペット感覚で拾ったんじゃねえよな」とポットも思わず睨みつけてしまったし。

 

「まだ14歳らしいけど…8歳の頃から頑張っているっていうのは凄いよね…【剣姫】は7歳からだっけ?」

 

「そうだな…まだまだだ…オレなんかっ…」

 

ポックが悔しがる。「聖女(フィアナ)が実在した史実」は今のオラリオでは結構有名だ。【勇者(ブレイバー)】の勇名が有っても小人族(パルゥム)本人だけが言っていたらホラ吹き扱いされ兼ねないが、別種族の聖女(セイズ)までもが支持しているからである。

ちなみにセイズの最初の二つ名は【女神の聖女(ヴァナ・セイント)】だった。その頃の名残で単に【聖女】と呼ばれることも多いのである。その後の活躍で更に前の二つ名の印象が強まったというのもあるが。

今のリリルカのぶっ壊れっぷりは誰もが知るところだ。「なんか凄い奴の生まれ変わり」くらいは有り得るとみなが思ってしまう。

ちなみに本人はフィンに取って代わるつもりなんざない。ライラやフィンには世話になったが相変わらず同族意識は低めである。「【一族の象徴】なんざ真っ平ごめん」という感じである。

ただ「恩人(セイズ)が褒めてくれるなら」という理由だけでどこまでも頑張れてかつ実現出来てしまうのが今の彼女なのである。実際に魔法無しの物理のみの白兵戦では既にレベル6最強だ。

 

「やっほーアスフィーみんなーお仕事ご苦労さまー」

 

「ええ…セイズ…発生源の方は私達やアルテミス・ファミリアじゃ無理でした…礼を言います…」

 

「貴方達はその飛竜で帰るのですか…」

 

「うんまあ…ちょっと恨めしそうに皆で見ないでよっアスフィが全員抱えて飛べばいいんじゃないの?」

 

「馬鹿なこと言わないでください出来るわけないでしょう」

 

「アスフィに皆が群がってぐちゃぐちゃになりながら無理矢理飛ぶか、下の人が上の人の足を掴んですっごく長くなりながら『うわぁ落ちるぅ』って言いながら揺らされながら飛ぶの、超愉快な絵面だと思わない?」

 

後ろで聞いていたヘルメスは「ちょっと面白そう」とか思ってしまう辺りはやはりこの世界の神らしい神なのであった。

 

「あ、ゼウス様も直接視ていたはずだから報告の必要はないわよ、お仕事奪っちゃってメンゴ♪居てもあんま意味ないんだからとっとと天界(ソラ)に還ってもいいのよ?眷属の皆には私が責任持って良い所リクルートしてあげるからさ?」

 

「いい加減限界になったらその時はよろしくお願いします…」

 

「じゃっまたオラリオでねーアスフィ糞主神からのストレスでハゲないように気を付けてねー美人が台無しになるよー」

 

「あっこらっ…もうっ好き勝手言って…」

──────

「じゃあアルテミス様…彼のことよろしくお願いします」

 

「ああ、有り難う【戦乙女(ヴァルキュリア)】…フレイヤは流石に眷属に恵まれているな…皆凄かったよ…」

 

「まあこの場の面子と黒いの以外は正直びっみょーなんですけどね…」

 

恋人(オリオン)見つかるといいですね、アルテミス様。じゃ、次会う時はヘスティア様と一緒に楽しくやりましょう」

 

そのまま飛び去ってしまう一行(いっこう)───

 

「わたし…言ってないのに…」

 

そうしてまずレオンさんを学区に送り届けたら滅茶苦茶凱旋ムードになっていた。まあ尊敬しているであろう自分たちの教師が大活躍していたのだ。

レベル7の武力なんて船上で晒すことなんて滅多にないだろうし…まあ私含めて他の何人かにも熱い声援があったが。

アルフィアさんはベル君に早めに別れを告げて一足先にオラリオで待つことにして、私らと一緒に都市に向かった。

ゼウス様に「絶対死んだフリしてベルを悲しませるんじゃねえぞ」と釘を差して。勿論私からの原作知識提供だ。「実際にやりそう」とは思ったらしい。

まあ彼も早くオラリオに行きたそうにしているので、普通に円満に送り出せるだろう。

アルフィアさんはまあ…早くステイタス更新したいのもあったんだろうな。

 

 

 

 

そしてアストレア・ファミリアでも───

 

 

「凄かったわね、皆…セイズは殆ど魔法剣士として動いていたけど…聞いてはいたけど初めて見たわねあのスタイル…」

 

「アタシらもリオン含めレベル6が3人レベル5が5人にもなり、ファミリアとして結構なモンになってきたと思っていたけど…」

 

「まだまだ…ということですわね、彼女が私達に一番求めているのは【大きなファミリア】とかではなく、ああいった大物を狩る時に少数精鋭のメンバーに確かな戦力として組み込める個としての強さ…」

 

「セイズに頼られたリオンが羨ましいわね…『あの日』以来あの()が一番彼女に憧がれていたから…嬉しかったでしょうね…」

 

「あの場では一番リオンの能力が使い易いと思って引き立てられたのでしょうが…私達あんまり強力な遠距離攻撃持っていないし…それでもレベル7くらいにでもなれば無条件で選ばれたのでしょうが…」

 

「おめーらはまだマシな方だろうがよ【白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)】にリリまで居るような戦場じゃマジでアタシなんかにゃやれることがない。【本番】はフィンまでいるだろうし…

あいつフィンに出来ることは全てリリに仕込んで、【勇者(ブレイバー)の予備】どころか【完全上位互換】にしようとしてやがる…!」

 

「あの頭のおかしい単騎での【威力偵察】…アレってやっぱリリにしか無理?」

 

「フィンの奴が切り札のあの魔法を使いながら常に理性を保てるんなら出来るかもしれないが…現状じゃ他の誰にも無理だな、頭の良い奴が更にレベル8以上とかアタシらでも計りようがない次元までいけば判らないが…

アレはあいつの異常な戦闘力と生存能力、(ずのう)と観察眼、分析能力を全て同時に成立させて初めて実現するものだ。レベル7でも他の奴らには…いや【静寂】なら、もしかしたら…」

 

「あの人は出来る能力はあっても、『生まれながらの絶対強者』って感じだしやらないんじゃないかな?病気で苦しんでいた時期があったらしいけど…てかそれも割と最近までだったらしいけど…」

 

「今のリリだけ見ているととても信じられねーだろうが、あいつも昔はかなり酷く虐げられていたらしいからな…だから『弱者の視点』にも立てるし、常に油断や慢心の類が皆無だ。

それは他の才能溢れる強者たちにはない強み…あいつだけの武器だろうな…」

 

「それでいてセイズにも憧れていて嫌われたくないから、強さの割に絶対暴力に溺れない…いやホントこのまま定着して欲しいんだけどねえあの()

 

「肝心のセイズ本人が割と手が出るの早い方なんだがな…」

 

そして帰還後の討伐メンバーは───オラリオでも凱旋ムードとなり、盛り上がった。

最終的に参加メンバーほぼ全員のランクアップが確認され、レベル8が4人も誕生し、「ようやくゼウス・ヘラの頃に追いついた」と言われるようになった。

まあレオンさんは都市外の人だし、見事に主神もバラバラだし…追いついただけじゃ本当は足りないんだろうし、ゼウス・ヘラに所属していた人間が2人もいるのは締まらないし、まあそのへんの足りない部分はフェルズさんの発明でなんとかするのだろう。

フェルズさんは結構便利に利用させてもらっているが、いやマジであの人現代知識の観点から色々依頼すると大体100%以上で応えてくれるし、便利すぎる。

まあ異端児(ゼノス)への支援含めて直接的な武力による助力も結構しているし、持ちつ持たれつだ。

リリは「まだアビリティが上がる余地があるので保留」とのこと。派閥がバラバラなことについても私らは【聖女連合】みたいな派閥の垣根を越えた独自の勢力と見做されているらしい。

ヘディンが入るかは微妙で、今回レオンさんの連合入りが確認された、ような扱いだが。実際私が派閥内の幹部で「仲が良い」と言い切れるのは団長と兄弟とヘイズだけだ。

ヘディンは能力の高さは互いに認め合っているけど、基本的に反りが合わない。まああいつと相性の良い奴自体が殆どいないだろう。性格はほぼ誰からでも満場一致で「悪い」という評価だし。

 

 あいつもレベル7になり、珍しく私に感謝してきた。いやしかし【派閥大戦】になった時のこと考えたくないなあまり…レベル8の団長の相手はレベル6が何人いても蹴散らされるだろうし…

レベル7複数なら通じるだろうが…アルフィアさんの「子を奪われた母の怒り」など考えたくもない。というかまんま今の主神(デメテル)様の地雷と一致する。

最悪アルフィアさん1人に団長含めて半分以上殺され兼ねない。病気が無くレベル8になったあの人なら不可能でもない。

まあザルドさんと【アストレア・ファミリア】の参戦も【ロキ】と同じように待ったがかかるだろうが…アルフィアさんの参戦は誰にも止められないだろう。

彼女のその時の心境を想えば当然だ。やっぱ「魅了かけて奪う」ことそのものから未然に防がないと駄目か…「黒竜退治」だけを思えば正史(ほんらい)より戦力が着実にアップしているし、良いことばかりなのだが…

正史(ほんらい)のヘディンのような土壇場で裏切るような不義理なマネもしたくない。アレも悩み抜いた上での苦肉の策だったのだろうが…どうせ敵方につくなら最初からだ。

団長とヘディンと私とヘイズのランクアップがフレイヤ様主導でファミリア内で盛大に祝われ、まだそう日が開かない内に「豊穣の女主人」でも祝われた。

 

「こんばんはー、セイズちゃんいますー?」

 

「はい、アストレア・ファミリアの5名様入りますニャア!」

 

アストレア様が眷属連れて、やって来た。ちなみにリリは最初からこちらにいる。

 

「セイズ…貴女もレベル7おめでとうございます…私は…貴女の力になれたでしょうか…?」

 

「そりゃもう充分過ぎよ…皆100点以上だったわよ、あの戦いは」

 

「セイズぅ!なんで私達もレベル6だったのにお呼ばれしなかったのっ!?ハッまさか私の美貌に嫉妬してっ!?」

 

「貴女が美女なのは認めるけど客観的に見て私と貴女を比較してもどっこいどっこいだと思うけど…?それに昔貴女に言ったでしょう?『閉所での火の魔法は窒息する恐れがあるから気を付けなさい』って、

ダンジョンは謎の空調が効いていて何故か大丈夫だけど今の貴女の火力でガンガン周囲の空気を人工物の屋内で燃やしたら危ないわよ」

 

「それにああやって前衛を並べて壁役(タンク)として運用していたら貴女の魔法味方巻き込みそうじゃない、子サソリがもっと多かったら速度落とすことになっても、もっとレベル6を増やしただろうけど充分戦力足りたし…

それにアンタレス本体の討伐に直接大きな貢献しなきゃランクアップまでは無理だったと思うわよ?」

 

「ぐぬっ!?…むむむむ…」

 

「はぁまぁ大体予想通りですわね…団長様はもう少し考えて発言しますように…」

 

「む!?アストレアじゃないかいっ!?こんな所で会うとは奇遇だねっ!」

 

滅多にないご馳走を前に料理を頬張っていたヘスティア様がアストレア様に反応する。

 

「あら、ヘスティアじゃない、風の噂ではヘファイストスの所追い出されてバイト頑張っているって聞いていたけど?」

 

「ふふんっ僕とセイズ君はマブだからねっマブダチさっ!今日は直接お呼ばれしたのさっ!」

 

「ええ…私がヘスティア様にも祝って欲しくて…直接お呼びいたしました…」

 

「へえ貴女達が知り合いとは意外ねえ、セイズちゃんに関してだけはフレイヤも独占欲働かせそうだったけど…大丈夫だったの?」

 

「ええ『付き合う神は考えなさい』って言われたことはありますが…アストレア様とヘスティア様に対しては『敬意を持っている』とのことらしいので、私もお二方のことは尊敬してますし、何の問題も有りませんよ」

 

「実際ヘスティア様凄く格の高い神様らしいじゃないですか」

 

「地上じゃなんの役にも立たないけどねっ、他のクソ神共は『威厳の無いチビ神』ってバカにすることも有るのに、君はなんて良い子なんだいっセイズ君っ」

 

「威厳なんて必要な時だけ偶に見せられれば良いでしょうに、見た目を不変の神様に求めるのがナンセンスでしょう。無駄に魅了とハリボテの威厳だけ撒き散らしてる頭スッカスカのどこかの歓楽街の女王サマより、

私はヘスティア様のことを億倍尊敬していますよ」

 

膝枕されていたシルが「ぶふっ」と吹き出している。くつくつ嗤っているが、左隣にいるヘイズがシルの正体も知っているのであわあわ焦っている。リリはその逆の右隣りに居る。

 

「フレイヤ様も脳筋(ばかども)にそんな威厳(モノ)ばっかり求められてて肩凝っちゃうんでしょうね…ロキ様ほどとは言わないけど程々に力抜いて威厳なんてほどほどでいいんですよ

神々(あなたたち)も凄く永く生きているってだけでその身1つで地上に降りてきた私達と中身は大差ない1人の(ヒト)に過ぎないんですから『全知零能』とか自称してますけどぶっちゃけ全然『全知』じゃないですよね?」

 

「フレイヤは貴女のような眷属に恵まれて幸せ者だわね…退屈そうにしていることが多かった彼女が貴女と居る時はよく笑うようになったのよ、『最高の眷属』というのも誇張じゃないのでしょうね…」

 

アストレア様がめっちゃ褒めてくる。

 

「そうだね…神々(ぼくたち)と本当の意味で対等に慈しみ合える地上の子は貴重だ、況してやあのフレイヤの眷属に居るというのは…奇跡のようなことだ。僕に言われるまでもないことだけど…そのまま大切にしてあげてね、フレイヤのこと」

 

シルを撫でる私の手が自然に優しくなっていたが、ヘスティア様が滅茶苦茶優しく微笑む。どうしよう…ああっなんかヘイズまで私の腕に抱きつき出してきたし…脱退無理じゃね、これ…ヘスティア様とも絶対に敵対したくないし、どうしましょ、これ…

 

「ニャア!妹のヘイズは良いとしても、シルばっか可愛がってずりーのニャ!アタシにも構うのニャア!」

 

アーニャちゃん…君私より歳上でしょう…知らないって凄いな…歳が近くて昔から構っていたから懐かれてしまったのだ。ヘイズが「こいつマジかよ…」みたいにアーニャちゃんを見ている。だけどシルの正体を言うわけにもいかず葛藤している…

 

「セイズッ!ちょっとこっち!」

 

ヘイズに引っ張られて店裏に引きずられて仕切り直される。

 

「なぁにヘイズ…こんな所に連れてきて…」

 

()()()…貴女にとって一番大切なモノは?」

 

昔から偶に甘えたい時だけこう呼んでくる。だから今私のすべきことは…

 

「勿論昔からずっと貴女が1番よヘイズ…私の可愛い妹…貴女のためならフレイヤ様だって裏切れるわ…勿論そうはしたくないんだけどね…」

 

抱きしめながら耳元で囁く。ヘイズの顔がボッと赤くなる。ああ、なんて可愛いんだろう。いつもこれくらい素直ならいいのに…ヘイズが逃げるように店内に戻っていく。

 

「はあ…『全ては女神のために』とかほざいている連中じゃなくて『2番目』に置いているアンタの方が小娘をよっぽど任せられそうってのが皮肉だねえ」

 

「店長も(シル)の方だけじゃなくて主神(フレイヤ)様のこともちょっとは面倒見てくださいよ」

 

「馬鹿言ってるんじゃないよ、今更アタシが戻っても出来ることなんて何もないさ、アイツが今一番求めているのはアンタさ、アンタが急にシフトから外れるとシルも凄く機嫌悪くするんだから」

 

「それに小僧の面倒を今見ているのもアンタなんだろう?」

 

「…どうなんですかねすんなり、肯定も否定も出来ないのがなんとも…」

 

「アタシは嬉しいのさ、あそこの連中はヘタに小僧に追いつけそうになるとこぞって『女神の隣りをよこせ』ってなるからね、アンタくらい実力も立場も近くなってアイツを慕い続けていられるような奴は凄い貴重なんだよ」

 

「まあ別に2番手でも私の方がよっぽど団長より近くにいる時間長いですし…力で私を排除しようにもそんなこと団長以外無理ですし…団長確かに頭良くないかもしれませんけど本気でフレイヤ様の幸せ願っているのは

私やヘディンと同じですからね…私をどうこうする気なんて起きないでしょう、勿論1人の冒険者としてそのうち抜いてやろうって気持ちはありますけどねっ」

 

「それにあの派閥本当に酷いんですよっ私とフレイヤ様以外誰も団長に『おめでとう』言わないしっ団長は団長で『お前とフレイヤ様だけでも祝ってくれるならそれでいい』なんて納得しちゃっているしっ…

ザルドさんやアルフィアさん達からも素直に褒められてようやくゼウス・ヘラへの劣等感も乗り越えられそうになったのにっ…」

 

「よしよしアンタは本当に良い()だねえはっきり『1番目』と『2番目』まで定めているのに『3番目』以下の奴らにまでそこまで心を割ける…まさに【聖女】さ、ね…皆がこぞってアンタを愛するわけさ…」

 

思わず泣いてしまった私を店長が撫で回す。

 

「…そんなに褒められたものじゃないですよ…私が多くに手を伸ばして沢山を助けているのも全てが『(ヘイズ)が長く安心して生きられるように黒竜殺したい』ってだけなんですから…

『黒竜殺すためにフレイヤ様を利用する』とかほざいているアレンと大差ないですよ…現状口だけで『どこが利用出来ているのか』って感じですけどね…ハッ」

 

「『一番大切なもの』をはっきり定めているのは何も悪いことじゃないさ…逆に無差別に愛を振りまくような奴のほうが胡散臭くて信用に値しないと思うがね、利用し合うのも互いが納得した上でならそれでいい、アンタにはしっかり情もあるし、

常に全力でそれが周りに伝わっているから、皆に好かれんのさ、アタシも…ね」

 

「セイズぅーどこー?」

 

「あ…呼ばれてるんで戻りますねっ」

 

「はいはい戻りましたよってあら!?ナァーザじゃないっミアハ様もっ」

 

「ん、恩人祝うのは当然リリルカもでしょ?」

 

「そうだぞ…セイズ…被害が拡大する前に大物を討伐したお前の働きは素晴らしかったし、私達はお前に恩がある」

 

ナァーザがボロボロになる時期は全く不明だったので尾行するわけにもいかず、酷い状態で運ばれてきたナァーザを私が辻ヒールの如く即癒やしたのだ。

私の魔法は、フェルズさんの【ディア・パナケイア】と同じく身体の欠損も再生が可能だ。

お陰で【ディアンケヒト】に頼る必要も借金する必要も無くなり、派閥も中堅クラスのままだ。

まあ、正史(ほんらい)ならあっさり借金を理由に2人を見限った連中だ。どこまで頼れるかは微妙なところだ。

やばいレベルの心的外傷(トラウマ)も負っていたのでちょい魂術(セイズ)も使ったが。

お陰で完全に持ち直して今やレベル4だ。普通にダンジョンにも潜れる。

 

「まあレベル8が一度に4人も誕生しちゃったから胸を張って『最強』と名乗れ無いのが微妙に締まらないんですがね…」

 

「そやつらも全員お前の味方のようなものなのだろう、なら素直に胸を張るが良い」

 

「セイズぅこっちー」

 

「はいはい、戻りましたよーシル」

 

そうして夜は更けていった───

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