転生者セイズ・ベルベットの憂鬱   作:エリス

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第14話 豊穣の女主人2

ベル君に早熟スキルが最初から生えたらしい。スキル名も同じっぽい。どうやら「エルソス攻防戦」を見せた影響は大きく、あの時の討伐隊メンバー…私達3人に特に憧れたらしい。

「一途」とは一体…私のフルネームに関しては本人だけで聞き込んだりして調べたらしく普通にバレた。「バベルの頂上に主神が居る」というヒントだけでバレたらしい。

というか「ピンク髪のドラゴンライダー」だけで普通にバレる。そんなん私しかいないし。

世界最強格のザルドさんや、アルフィアさんらと近しい実力者と予想していたらしいので、意外にも驚きは少なそうだった。まあギルド行けば似顔絵見れるしある程度アタリつけられれば即バレだわな。ちぇっ滅茶苦茶驚かれるの期待していたのに…

アルフィアさん曰く「異性的にもお前に憧れているっぽい」と言われてしまった。うっげフレイヤ様との妙な三角関係は勘弁して欲しいです…弟分として可愛いとは思っているけど歳下趣味じゃないし…

それでとにかく急激に上がるアビリティに合わせて私が直接技術も叩き込みながら指導する毎日だ。ギルド支給武器の質が酷すぎたので、少しはマシな武器を与えておいた。

指導場所は早朝に例の城壁の上だ。念の為変身魔法(シンダー・エラ)を使っているが。その姿でダンジョンにも随伴している。ほぼサポーターだが。

マジで便利だな、変身魔法。フレイヤ様からは「新しい弟子を取ったのね」しか言われなかった。

これ私の所属ファミリアが違っていたらウチの連中に襲撃されていたのだろうか。私なら兄弟とアレン程度は普通に返り討ちだしちょっとやってみたいかも。団長来たら?街中で私らが戦ったらシャレにならんので流石に自重してくだしあ。

「中堅派閥の面倒は散々見てきたんで今度は零細から育ててみるの試してみよう、かなんて…」と返しておいた。決して嘘ではない。それ以外の理由が多過ぎるというだけで…

あとアルフィアさんがやりやがった。ロキ・ファミリアの帰還タイミングにアタリを付けて5階層でのアイズとの出会いに割り込みかけやがった。ちょっと話し過ぎたかな…

スキル発現済みのぶん成長には影響ないだろうけど…ベル君も正史(ほんらい)よりは少し強いはずなので逃げ切れそうっぽかったが、流石に戦って勝つのは現時点じゃ無茶だ。

福音(ゴスペル)」パァン!って感じだったらしい。血は正史(ほんらい)ほどかからなかったっぽい。

この世界のベートさんは(まが)っていないリア充彼女持ちなので、駆け出し(ベルくん)貶して、アイズを口説いてフラれるとかいう三下ムーブはしないはず。

あれアルフィアさんの前でやったら普通に殺されるからな。オリ主のテンプレとしては私がやり返す役目になるんだろうがその必要はないはず。

私は豊穣の女主人の「副店長」という肩書もあるのだが、シルから誘われたベル君はそのまま私達にも誘いをかけ、今日は客として共に来た。

アルフィアさんも体調が良くなってからは昔ほど騒がしい場所が苦手ではないらしいので、そのままついて来た。ヘスティア様も誘ったがバイト先の打ち上げとかで欠席だ。代わりにザルドさんも居る。

 

「うお…【聖女一派】だぜ…今日は客としてか…【暴喰】や【静寂】までいやがる…」

 

「珍しいな…相変わらず美人だなあの2人は…」

 

色目を使うような発言をするとすぐ福音(ゴスペ)られるのでモブ客共も言葉には気を付けている。まあ「美人」と言われて悪い気はしない。ヘイズと同じ顔だから当然なのだが。誇張抜きで私達は今の世界のほぼ頂点だからな…

 

「シルのお客さんはセイズやザルド達のツレかいっ!?」

 

「あー店長。見ての通りまだ彼は駆け出しなんで、私達との繋がりは吹聴せんといてくださいな。」

 

「わぁ!セイズとお知り合いだったんですねぇ!凄い偶然ですぅ」

 

うっわぁ白々しい。アルフィアさんはシルの正体含めて大体把握しているので胡散臭いものを見る眼でシルを視る。

 

「あの…セイ姉はここの…」

 

「ああ、私この店の『副店長』なの…料理もザルドさんの弟子だからね、店長不在時の厨房任されるくらいの腕はあるわよ?」

 

「ふむ…ミアの奴なかなかの腕だな…」

 

ザルドさんは料理に夢中だ。序盤はいつもこんな感じで「作る側」として味わいながら品評している。それが終わると豪快に料理も酒もかっ食らう。

 

「おい…ロキ・ファミリアのエンブレムだぜ…」

 

「第一級冒険者率たけえなこの店」

 

ロキ・ファミリアが遠征後の打ち上げで入店してくる。「一緒にするな」とか言いたげだなアルフィアさんは…流石にこれくらいでモブをどついたりはしないが。

まあ実際レベル5以上はみんな「第一級」で括られているのが大雑把過ぎる。「S級妖怪」の括りみたいなものだ。でもそこからグッと少なくなるのは事実だしな。だが実際私らくらいまで来るとレベル5程度何人いても鎧袖一触だし。

流石に「雑魚」とまでは言わないが。【ガネーシャ】なんかアーディも足して12人もいるし。あそこにはそこまで揃えられるのなら「いい加減レベル6出せ」とも言いたい。だから、質と数の割に私らを止められる抑止力足り得ないし。

四兄弟よりは「レベル6が1人の方が使えるんじゃね」と思わなくもないし。あいつらの場合は「単独(ソロ)がクソザコ」という問題もあるのだが。

実際私も改善点を考えてみたのだが、魔法の適性が不明すぎだし、そんなんではいくら【フレイヤ】でも高価な魔導書(グリモア)なぞ試せない(ただしベル君は別)

フィンさんや今のリリがどれだけ異端なのかが分かってしまう。小手先の技術だけでどうにかなるもんでもないしな。あれ以上は。実際あいつらの連携技術は見事なものだ。だが、あいつらが5人や6人になったとしても普通にレベル7には蹴散らされる。

私もヘイズと連携してみたいんだけど、あんまり武器適性高くなくて、結局護身優先にしたからそこまでは出来ないんだよねえ。とはいっても格下程度は普通に撲殺するが。

それにレベル6だの7だのになったら、魔導士であろうとなんであろうと、身体能力活かす方向見つけないと勿体なさすぎる。それまでのアビリティがどんなものであろうとも。

 

「なんやなんやセイたんにザルド達もかぁこの店で一緒にいんの初めて見るなぁ!セイたんはよあの色ボケんとこなんか抜けてウチらのとこに()ん?」

 

「あっはっはっ有り難いお誘いですけど私なんていなくても充分やっていけそうですしロキ様の所は。それにウチのバカどもは私が目ぇ離したら後が恐いですからね」

 

「やっほーフィンさん皆さんもお疲れ様ー言った通り深層で『やっべえの』出てきたでしょ?」

 

「ああ、覚悟は出来ていたぶん助かったよ…有効な対策があんまり立てられなかったのが申し訳ないけどね…」

 

「まあ『遠征義務』も期限があるんだし無理は言えないけどさ…60階層以降は、『今』はレベル7が複数でもヤバそうだから、そのうち多分私らも行くからさ、『アレの大元』はそれだけヤバそうだから、頑張って皆で強くなってちょうだいっ♪」

 

「それは…そこのザルド達もかい?」

 

「うん多分、【アストレア】の皆も、出来たらレオンさんもかな」

 

「それほどか…まあアレの元凶だと…たしかにヤバそうかもね」

 

「おい、コラ、なんでテメェがアタシらより上から目線で団長と語り合ってるんだゴルァ?」

 

「実際私のほうがもう上だしぃ?フィンさんのことは先達として敬意は持ってるけどアンタは違うでしょう?てか他所の幹部と自分の所の団長が喋ってんのに割り込んでるくんな阿呆がたかだかレベル5程度の分際で喧嘩売ってくんなクソザコが。

私とアンタを比べてアンタが優れているとこ1つでも言ってみなさいよ、レベル並んだとしても1つもないでしょう?」

 

ティオネが不機嫌そうに割り込む。ちなみに身体のスタイルはほぼ同格だ。【ロキ】の幹部陣は「また、やっているよ」くらいのものだ。あまり見慣れていない下っ端のレフィーヤとかはアワアワしているが。

私も最初の内は仲良くしようとしたのだ。珍しい同じ「双子の姉」だし。血塗られた人生の中で自分の在り方を変えてしまうくらいの好きな人が出来たことは素直に素敵だと思うし。

分かりにくいがティオナのことは大切に想っているみたいだし。だが友人(ライラ)弟子(リリ)が襲撃され続ければ私もいつまでも良く思えるわけがない。

 

「上等だ…表出ろゴルァ!」

 

「はい、そんじゃあ外行きましょっか…皆さん、また後で…要介抱者出るけどメンゴ」

 

「程々にしてあげてくれよ…?」

 

「手加減してやれよー?」

 

外に出る間際にフィンさんとザルドさんから声がかかる。

 

店内から2人の気配が消えたのを確認して、フィンが口を開く。

 

「済まないねいつもいつもウチの者が」

 

「いやアレはアレで奴も楽しんでいるみたいだからな、本当に『取るに足りない奴』と思っている場合はあいつなら即相手の意識を落として済ませるだろうし、構わんだろうよ」

 

「レベル7まで来ると近しい実力者が減って普通は喧嘩なぞ売る奴も皆無になるからな、かといって格下に自分から喧嘩売ったらダサいしな、あいつも相手から喧嘩売ってくるぶんには歓迎しているのだろう」

 

「しかしアレだな…昔を思い出すな…ゼウス・ヘラ(オレたち)に懲りずに挑んできていたお前らみたいだよな、あの小娘は」

 

「その頃の話は止めてくれ…若かったんだ」

 

「違いない…セイズは、私達の後継者のようなものだからな…お前らのところのなら互いに何かしら感じるものもあるんだろうよ」

 

その頃の話を聞きたそうにする周りの人間達…

 

「お、ベル、聞きたいのか?昔の話を───」

 

「うんっおじさんっ」

 

ベルは正史(ほんらい)ほど【ロキ・ファミリア】に呑まれていなかった。彼らに対する敬意は勿論あるが今の身内の方が格上だ。過剰な緊張をして縮こまることはない。

 

──────表の通りに出てきて向き合う2人。

 

「好きな人のために生来の凶暴性抑えようとする努力は認めて上げるけど隠しきれない野蛮さと獣性で台無し。アンタも近い内にランクアップしそうだし、レベル6になったらまたかかって来なさいな」

 

「何をもう勝った気でいやがるんだぁゴルァ!」

 

ティオネの飛びかかって放った右ストレートは、そのまま左手で捌かれ躱されて、セイズの右肘がカウンター気味に腹に入れられる。

 

「おごぉっ!ゲハァ!」

 

そのまま腹を抱えて転げ回るティオネ。

 

「アンタも学習しないわねえ、このパターン2回目でしょ?胃に何か入れる前で良かったわね、本当は今のでアンタゲロまみれよ?最初の頃は見に来ていたティオナやアイズも来なくなったじゃんもう…」

 

「ほら、恒例の『サービスタイム』よ。素手でかかってくる内はいくらでも好きに打ち込んで構わないわ、躱さないし、反撃もしないから当ててごらんなさい?」

 

回復魔法をかけられて復帰するティオネ。

 

「ふ、ふざけやがって…後悔しやがれ────っ!!!!」

 

最初以上の渾身の右ストレートが顔面に入る。そこからアッパー飛び蹴り、鳩尾や、喉元、結構急所を狙ったエグい攻撃の連打が浴びせられるが、身(じろ)ぎもしなかった。

セイズは全てのアビリティが4桁ランクアップをし続けた、究極の万能型(オールラウンダー)だが、その中でも耐久が最も高かった。

昔は洗礼を続けてその中から頭角を現したのだ。回復魔法が発現してからは、いくら傷つけられても自己回復をし続けるゾンビさながらの不死身のような戦法で同格以下には無敗だったのである。

 

「なんていうか…殴る時の力の込め方とかは100点なんだけど…意外に『人の壊し方』については未熟っていうか…もっと眼球とか耳の穴狙ったエグい攻撃してくるのかと思ったら意外にそうでもなかったり…」

 

「これも『神の恩恵(ファルナ)の弊害』ってやつか…単純に効率よく力を込めて殴れるようになるだけで人も怪物も簡単に壊せるようになるからだね…タケミカヅチ様が嘆くわけだわ…」

 

アンタ達の故郷(テルスキュラ)は…神の恩恵(ファルナ)が齎されたことで確かに強くはなったんだろうけど、間違いなく『戦士の純度』ってやつは落ちているわよね…」

 

「それがミジンコ同士の争いに終始するとしても…神の恩恵(ファルナ)なんて無い方が間違いなく、元主神(カーリー)好みの血みどろの闘争になり易いだろうに…

結局典型的な頭スッカスカの神かな、カーリーも…イシュタルのバカと手を組むわけだわ…闘争の神のくせにその本質が見えていない…神として楽な方向にすぐ行ってしまう…

カリフ姉妹もせっかくのレベル6でもこれじゃあたかだか知れてるわね…これは特別サービスよ…アンタら姉妹の過去が近い内に現れるわ…ティオナはあんまり心配していないけどね…

アンタは結構不安定だし…ちょっと心配だわ…仲間に頼ることは何も恥じゃないから…そりゃあ『1人で乗り越えるべき壁』ってやつは人生には往々にして存在するけどね…

アンタらの過去は2人だけで抱えるには重すぎるから…恥も外聞も捨てて惚れた男に縋りつきなさい。フィンさんは気が無い相手でも仲間ならその程度はしてくれる程度の優しさも器もあるわよ」

 

「以上、サービスタイム終わり、じゃあ今晩はここまでね♪」

 

脳を揺らされてそのまま意識を落とされる。散々殴られておいて向こうはただの一撃。それだけがあまりにも致命的だった。レベル5のパワータイプが痣すら作れなかった。まさに怪物。レベル7とはここまで差が大きいものなのか。

 

(チクショウッ…)

 

そのまま担がれて店内に戻る2人…

 

「今日は早かったね…」

 

「んーまあ良い【耐久】訓練になったかな、ほんのちょっとだけ痛かったし…6になったら流石にもう好きには打たせて上げらんないかなあ」

 

「なんだ1レベル差もあって無理になるのか」

 

ザルドが弟子(セイズ)にニヤニヤしながら言い放つ。

 

「あのですねえ私は確かに耐久滅茶苦茶高いですけど、貴方やガレスさんのようなタンクタイプではないんですが!?」

 

「今やったら店長が作ったせっかくの料理がリバースしてしまうので止めておきますが後日素手でいいのでしっかり私の【全力の一撃】受けてもらいますからねっ!」

 

尚、後日ザルドが受けた、魔法を素手に付与(エンチャント)された加減無しの一撃はレベル6以下は消し飛ばされそうな、久々に【ヘラ】を想起させる恐怖の一撃だったという…

 

 




この世界の硬派な(彼女持ち)ベートさんはミノを逃がしたことをベル君にちゃんと謝罪して難を逃れました。
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