転生者セイズ・ベルベットの憂鬱 作:エリス
あの後──────アイズがベル君に興味を持っていたらしく普通に和やかに交流が進んだ。まあ「私達の身内」ということで皆には興味持たれたが、「今は騒がないでください」と口止めしておいた。
「絶対漏れてはいけない」というほどの繋がりではないし。どうせこれから少し後にはオラリオの話題の中心となり続け、皆が注目する。
ベートさんの侮辱は無かったのでアイズがショボンとしたりベル君の食い逃げはなかった。
やっぱ初期【
アルフィアはベル達と共に廃教会の地下に住んでいた。
地下空間はセイズの手でヘスティアが住み込む前に拡張されていたので、3人程度なんの問題もなかった。
そんなある日──────
「ヘスティア…近々ヘファイストスにベルに関して何か頼むというのなら…私も噛ませろ、10億ヴァリスくらいまでなら普通に出しても構わん、私の総資産は40億越えだからな、なんの問題もない」
「へっ!?なんでその事っ…」
「宴用のドレスは私とセイズが用意してやったからな、くれぐれも余った料理を持ち帰るなんてみっともないマネはするなよ?お前は私の主神候補なんだ。なぁにデメテルからの了承は取ってある、
セイズの言う通り品位や威厳なんて最低限あればいいが…最低限も持てないようなら私にも考えがあるからなぁ?」
「ひっ…分かったよザルド君やセイズ君のお陰で結構良い物食べられてるし、最近は…やらないさっ」
「なら良し…だ」
アルフィアとデメテルの相性は存外に良かった。気性がヘラ似で結構アレなアルフィアもデメテルからすれば少しだけ懐かしい妹分と大差ない。本来は「エニュオに対するカウンター」としての役目もあったのだろうが今はもうその必要はないし。
アルフィアからしてもデメテルは大らかで面倒見が良く、農作業には無理に参加させようとはしないし高評価だ。逆にギルドから改宗を薦めさせられているのが申し訳ないくらいだ。
「アルフィアほどの大戦力を遊ばせておきたくない」というのがロイマンの本音らしく、生産系ファミリアから探索系ファミリアに鞍替えして欲しいらしい。
彼女1人の存在だけで等級ランクは上がるということはなく、デメテル・ファミリアはCランクのままだ。流石にアルフィアに対してギルド程度が「1人で遠征に行け」という無茶ぶりは出来ない。
昔と違って身体を鍛えるのも問題ないし、
レベル6にもなればまだ自分達には及ばないがもうひと頑張りというとこまではきている。7にもなれば流石に自分でも無視出来ない確かな戦力だ。
本来は「頭脳特化で武力皆無のサポーター」のはずだった
ここまで確かな成果を上げ続ける愛弟子のことをアルフィアは存外に気に入っていた。アルフィアはヘラ・ファミリア内でも若輩だった関係で「自分より歳下の真っ当な後輩」というものが皆無だった。
まあその実力と威厳でナチュラルに歳上だろうが格下は見下していたし、数少ない格上の先輩たちはなんだかんだ可愛がってはくれたが…気難しい自分を慕い続けてくれる後輩など皆無だった。
仮に「歳下の後輩」というものがいたとしても、「自身の弟子」として扱い続けるのは無理だったと思う。才能の差が有りすぎるからだ。リューやアイズほどの天才でも追いつく気力を持ち続けるには難しいのだ。「才禍」というものは。
「チート」を除いても純粋な才能でセイズはアルフィアの背が見えるくらいには天才だった。アルフィアの2倍3倍努力すればなんとか追いつけてしまう程度には。
それほどの天才が弛まぬ努力をし続け自分がすることを「凄い凄い」言いながら目を輝かせて、そのうち真似出来るようになってしまうのだからまあ可愛がりたくもなる。
「剣士」にはあまり比重を置いていないアルフィアの場合はザルドの剣筋を雑に模倣するだけだったが…それで大抵のものを斬り捨てられてしまうのだからどうしようもない。
セイズはとにかく色々な人間、果ては武神の技から
例の「チート」頼みだけでも充分強いのに「借り物の力だけでイキるのはダサい」と言って、芯から強くなれるように身体も技も鍛えている。
「チート」の方も研究と研鑽を怠っていないみたいだし。セイズ”は”チートを持っているから強いのではない。セイズ”が”チートを持っているから更に強いのだ。
「双子の妹を誰よりも可愛がっている」というのも良い。何から何まで自分好みだ。
何より自分ほどぶっとんだ天才ではないから、少しは「出来ない側」の気持ちにも理解が有り、師匠役には自分より適性が高い。
レベル3以下の頃の弟子たちを「パワーレベリングだ!」とか言って竜の壺まで連れ回し実際に全員生還させてランクアップまでさせているのは大概イカれているとは思うのだが。
アレは自分たちの頃でもやる奴は居なかった流石に…「躱しきれずに足がふっ飛ばされたアミッドを抱えて、並行詠唱しながら治療して、空いた穴に一緒に飛び込んで、残らずオッタルやリリルカと共に竜を全部駆逐した」
とか聞いた時は流石のアルフィアも宇宙猫になったが。
「アレで未だに弟子たちにも慕われているのは
どこかの世界線の未来で散々鬼畜眼鏡に痛めつけられたのにマゾでもないのに慕い続けられているベル・クラネルのようなのはかなりの特殊例だ。
【神の宴】の後にヘファイストスに土下座をし続けてなんとか頷かせることに成功したヘスティアは、セイズ達からの依頼書を取り出した。
「詳しい大きさや形状まで書かれている…は?【暴喰】と【静寂】に【
「『2億ヴァリス程度なら即金で出せる』だってさ…」
「貴女…これどういうことなのよぉ!?」
「本当ならヘファイストスに頷いてもらえたら費用は借金してでも僕持ちにするつもりだったんだけど…『億単位の借金なんて不名誉、万一他所に漏れたら誰もファミリアに入ってくれなくなるだろう』って言われて…」
「その3人はベル君の保護者達さ…ベル君はアルフィア君の甥っ子で、義理の親子関係だよ…ザルド君はファミリアの弟分だった団員の息子なんだってさ…セイズ君は2人の弟子だから弟分ってことで可愛がっているみたい…ベル君の師匠も彼女がメインだ…」
「な…なんですってー!?それほどの面子が…貴女の眷属1人に期待しているっていうのぉ!?」
「うん…ベル君も英雄に憧れているみたいだから…『自分たちは道を舗装して手助けするだけで後は勝手に英雄への道へ一直線』だってさ」
「それってもしかして…【静寂】や【
「ううん『素の才能はそこそこ程度』だってさ、でも『
「なるほどだから『使い手に合わせた成長する武器』ねえ…駆け出し用のそこそこの武器持たせてもどんどん更新する必要が出て手に馴染む前に追いつかなくなるからと…前に作ったやつと大体仕様はおんなじね、いいわ俄然やる気が出てきたわよ」
「へ?前と同じ?」
ランクアップ速度のレコードを更新し続ける昔のセイズにフレイヤが「億単位の買い物でもいいから祝わせて頂戴!」とか言い出したため、
原作知識を用いてヘファイストスに直接依頼をしてもらい、【ヘスティア・ナイフ】と同系統の武器【ヴァナディース・ソード】なるものが作られてしまったのだ。
現在のメインウェポンで、魔法も
当然【フレイヤ】眷属にしか使えなく、いずれ
最近では吹っ切れて恐らく自ら手放すことはないと思っているが。レベル7の彼女に合わせた成長をしているので、軽めの割にはオリハルコン以上の強度で魔法相性抜群という謎金属と化している。
そうして───ヘファイストスの手で無事【ヘスティア・ナイフ】は作製された。
はあ…思えばここが読者視点だと一番判り易いフレイヤ様の最初の暗躍だったな。例の食人花はエニュオ不在な以上出ないだろうけど…
私はイルルを飼っている都合上、この祭りの目玉扱いされている。というかガネーシャ様やウラノス様から正式な依頼も受けている。
昔私の【イケロス潰し】に団長を協力させた都合上、フレイヤ様も
お2柱は尊敬しているし、色々融通を利かせてもらっているし…あんまり迷惑かけたくないんだけどなあ…
やるんだろうなあ眷属の晴れ舞台でも。フレイヤ様は現状
というか「私と仲が良い少数だけならどうとでもなるだろう」という感じだ。流石の私も全員と仲が良いわけではない。【イケロス潰し】を早めに行えたお陰で
どちらにせよ最初から喧嘩腰だったグロスのバカはフツーにボコったので私には何も言わなくなった。ラーニェはビビって何も言わないのをいいことにこっちからセクハラにならない程度のスキンシップをしている。
こう言っちゃなんだが
まあ正直「
私が協力した場合は…多分結構効果がある。
レベル7のリリはほぼ私の個人戦力扱いだし。モンスターの凶暴性が高いこの世界じゃ「ドラゴンライダー」なんてほぼ空想上の産物だ。【ガネーシャ】が調教出来ているワイバーンも地上で代を重ねた木っ端だけみたいだし。
だが私のイルルはガチの迷宮産の深層種、その威風堂々たるや【竜の谷】の上位の竜種共にも劣らないだろう。
自身の実力もオラリオの最上位層に食い込んでおり、影響力がバカでかい私が、そんな超強そうなやっべえドラゴンと戯れて乗りこなしているのを見たら?そら多くが憧れる。子供は特に。
普通に
最初に聞いた時は「神様らしい気が長すぎる計画だなあ」くらいにしか思えなかったし「今の
だが、私が関わると一足飛びで決してバカには出来ない影響力があるのだ。再三に渡って「超特殊個体で例外中の例外」だからと呼びかけてはいるが。
移動手段以外でザルドさんとかベルも結構乗せているし…男の子って好きだよねこういうの。アイズの眼はちょっと恐いけど。まあ竜種は地雷だもんなあスキルにも出ているし。飛行型の有用性は流石に認めざるを得なくて葛藤しているようだが。
ふふふもっと悩めーい
【ガネーシャ】所有の闘技場内で私はイルルと空中を舞っている。上空に一気に舞い上がってから急降下したり、かなりアクロバティックな動きをしている。単なる騎乗技術だけでは無理な冒険者の身体能力を活かした「人竜一体の舞」だ。
手を振っているアリーゼやアーディ、ティオナにもちょい振り返すサービスをしておく。ちぇベル君にも見てもらいたかったのに…あえて教えていなかった。
フレイヤ様がベル君に構いたそうにしていたからここいらでガス抜きをさせようというわけだ。アルフィアさんは教会から
今頃ヘスティア様と2人で祭りに行っているだろう。
お!闘技場の外が
「よしっ…イルル上空1000
「キュアッ!」
猛スピードで一気に上昇する。そして高空で滞空してもらう。スキルの影響で私の視力は滅茶苦茶高い。よし、視えた。散り散りに逃げるモンスター達。例のシルバーバックだけは対象外にして…
「【永争せよ、不滅の雷兵】【カウルス・ヒルド】!」
散り散りなったモンスター達がシルバーバックを除いて雷の雨で、消し飛んでいく。ついでにティオネにも弱めのを当てておく。
騒ぎを聞きつけて闘技場の外に出たヒリュテ姉妹とレフィーヤだったが、次の瞬間に雷の雨が降り注ぎ、モンスター達が次々と消し飛んでいく。
「うっわすっごあんな上空から正確にモンスターだけを纏めて狙撃したってこと!?なんかティオネにも弱いの降ってきたし…【
「痺れたぁ~んのぉ~クソアマァ~」
「他人の魔法をオリジナル以上に使いこなしているかもしれないんですね…
「うん…『彼女が【フレイヤ】にいる間は絶対連中と戦っちゃ駄目だ』ってフィンが言っていた理由がよく理解る…」
「あ!セイズが手振ってくれている!おーい!」
ティオナが上空のちっさい点に向ってぶんぶん手を振る。
「よく、あんな小さいの見えますね…」
───
「はあ…フレイヤ様がやらかして眷属の私が事態を収拾するとかマッチポンプもいいとこなんだけど…ベル君も無事勝ったみたいだし良かったわ」
闘技場に戻って降り立ち優雅にポーズを決めて締める。あとでお二柱には謝らないと…会場内はやばいくらいに盛り上がっていた。図らずともフレイヤ様との連携で私の名声が更に上がってしまったらしい。