転生者セイズ・ベルベットの憂鬱   作:エリス

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第16話 雇われサポーター(レベル7)

「申し訳有りませんガネーシャ様、いつか必ず本神(ほんにん)にも頭下げさせに来ますんで…」

 

「お前はあそこの眷属とは思えないほど出来た子だな、被害者や我々に対する誠意も、主神を案じる気持ちも全て感じられる…ガネーシャ感激ッ!それに被害者への謝罪と賠償は済んだし、その費用もお前負担だ、怪我人はお前自らが癒やしてくれたしなっ」

 

神格者(じんかくしゃ)のこの方にまでこう言わせてしまうウチらの客観的評価って…はあ…

 

「黙っていればいくらでも誤魔化せただろうに、何故こうして名乗り出たのだっ?」

 

「いや手口的に神様たちにはバレバレでしょうに犯人なんて…あんなんウチの主神(フレイヤ)様以外に無理でしょーに…人間でも一部の聡い人は気付いてるでしょうよ…」

 

「それに『バレなきゃいい』とかって問題でもないでしょう…」

 

「なんでセイズが謝るのっ!?そんなん悪いのフレイヤ様じゃないッ!」

 

様子を見に来ていたアーディが口を挟む。

 

「いや『誰が1番悪いか』ってそりゃ主神(フレイヤ)様でしょうけど止められなかった眷属(わたし)にも責任はあるでしょう?

ウチの脳筋(ばかども)はフレイヤ様のやることなすこと全肯定だし神様だろうがなんだろうがただの1度も間違えない(ヒト)なんて居ないのに…せめて私1人くらいは頭下げないと」

 

「もう、あそこ辞めてウチに入ろうよっ!イルルちゃんも一緒でっお姉ちゃんも皆も大歓迎だよ?」

 

「貴女の誘いは嬉しいけど私も『お姉ちゃん』だし、あの()はファミリアを離れられないだろうから…」

 

「ふぅんセイズのこと自由人だと思っている人いるけど全然そんなことないよね?」

 

「ええ…あのファミリアは基本フレイヤ様の我儘に振り回される苦労人の集まりだから…団長や幹部も悲しき中間管理職に過ぎないの…」

 

「だが、嫌いにはなれないのだろう?」

 

「そうでねまあ…『ン億歳のクセにいつまでガキみたいなことしてんだ』と思わなくもないですが…それを承知であそこにいるわけですし…」

 

「まあ好きでやっているのなら構わん、我らはお前に大きな借りがあるし困った時はいつでも力になるぞ?祭りでもお前の働きは大きいしな」

 

その後はウラノス様とも面会をして、祭りの後始末は終わった。

 

───

 

 

 

そのちょっと後正史(ほんらい)以上の速度で到達階層をどんどん更新し、ベル君がステイタスの一部をエイナさんに教えた件については、直後に私とアルフィアさんがセットで乱入して収めた。エイナさんは泡吹きそうだった。一応口止めはしたが。

 

 ベル君の欠点とは何か。人によっては美点にも映るかもしれないが、人を疑うことを知らないことだ。アルフィアさんの教育はサバイバルとか重視で、結局そのへんはおざなりだったっぽい。

まあ山奥の村じゃ仕方ない。同年代の子全然居なかったし。そのへんは大人がどれだけ教育しようとしても、実際の人同士の付き合いで痛い目に遭いながら少しずつ覚えていくものだ。

子供同士なら騙し騙されても被害なんてたかだか知れている。だが冒険者として生きていくならそうはいかない。レベル1の駆け出しだろうが一人前の大人としてやっていけなくては話にならないのだ。

そしてそのあたりの教育係に相応しいのは誰かというと、まあリリルカ・アーデだろう。早い内に助けられたので、却って対人が正史(ほんらい)より未熟になってないか心配だったのだが、

なんだかんだそのあたりはライラや輝夜達が補ってくれたようだ。元々頭は良いのだから、良い教師役を就ければ、安全に実地でも学べられる。アストレア・ファミリアではよく変身して、潜入捜査とかもしていたらしい。

実はかなり適性高かったのかなあの派閥…

 だから彼女をお供にして決定的な失敗をしないままに学べるようにするつもりだったのだが… 彼女を正史(ほんらい)と同じようにベルと関わらせられるわけがない。

既にレベル7の超有名人だし、普通に同行させたら緊張感がなくなる。盗みも当然はたらいていないし…

レベルと高い魔力のお陰で正史(ほんらい)より変身魔法(シンダーエラ)の性能が高くなっている。ザルドさんや団長ほどの巨漢は無理だけど普通に成人男性くらいの体格にまでなら変身出来るし…

ベル君は私らに憧れてくれている関係で私が同行している時は別の緊張をしているみたいだが。ダメ出しをちょこちょこしているし、「もう言われないように、良いところを見せられるように」という想いがあるのだろう。

そんなワケで───

 

「ではベル様…よろしくお願いします、マナナと申します…『マナ』とお呼びください」

 

ちなみに偽名の元ネタはケルトとかそっちの方だ。正史(ほんらい)と同じ犬人(シアンスロープ)の子供のフリして街中でベルに近付いた。

結局元の体格と近い体型の方が動き易いとのこと。それに「子供の方が庇護欲を誘うから」「油断され易い」「舐め腐った態度取った場合は素行不良者としてマークする」とか昏い笑顔で言っていた。

逞しくなったな…大体正史(ほんらい)と似たような格好だろうが護身用にナイフくらいは携帯している。第二等級武装でやや抑えめの物にしているが。

一番凄いのは槍だが、今は割と武器全般に適正が上がっている。

 

───

 

そしてこっそり正史(ほんらい)通りナイフをがめた。当然後でこっそり私に返される。

 

「はい、それじゃあ今回のお願い、今日からいつも報告してもらうからね」

 

変身を解いたリリと、カフェで3人で向き合う。

 

「アルフィア様もですか…本当に甥っ子さんなんですね…」

 

「御託はいい。とっとと始めろ。」

 

「まず率直な人物評価を」

 

「───凄まじいですね…レベル1とは思えないくらい。セイズ様と会った後のリリほどじゃないですが…本来なら嫉妬どころじゃなかったでしょうね…ところどころにセイズ様の動きも見え隠れしますし…アビリティも既に結構高いですよね?」

 

「人格的には好印象ですね、駆け出しでもあんなピュアッピュアな人そういませんよ。確かにお二人が騙されないかの心配をするのも理解ります。まあでも危なっかしくても腹黒い連中よりは全然良い」

 

「ちなみにナイフはなんと言って返す気なんですか?」

 

「『拾った』で押し通す」

 

「えーそれで誤魔化せちゃうんですか、大丈夫ですか…それ?」

 

「今のままじゃ大丈夫じゃないから貴女に任せるのっ」

 

「まあ今は【アストレア(ウチ)】も手が空いてますし、暫くこのまま付き合いますよ。リリもマトモな人はあんまり騙したくないので、彼で最後にしてくださいよ、こういうのは」

 

「くれぐれも余計な(ムシ)を近付けるなよ…?私達の信頼を裏切るような奴じゃないもんなあ?お前は…」

 

リリ自身が堕ちる可能性もあるけど、どうかなあ…別に物語のような劇的な出逢いじゃなくても男女なら色恋になる可能性は普通にあるのだ。

 

「はいはい、脅さないでくださいよ、アルフィアさん…」

 

以上ベル君育成計画の今回の裏側でした。

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