転生者セイズ・ベルベットの憂鬱   作:エリス

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第19話 早朝訓練

「ベル君相談って…?」

 

「そのぉぅ…アイズさんがセイ姉の剣を学びたがってて…」

 

ギルド付近でアイズと会話した際に、私に師事していることを教えてしまったらしい。

 

「はぁ?あの()は…まだ諦めてなかったんだ…」

 

()()って…?」

 

「昔から何回か頼まれて(ことわ)ってんのよ、『剣士』として当代で一番名前が売れているのは私だからね。ダンジョンに1人でボロボロになっているあの()を何回も治療して送り届けたりしてあげたりもしてたしね

駄々こねた時は意識落としてから抱えて」

 

「まあ、人選としては正しいのかもしれないけど…ザルドさんやウチの団長は得物の大きさからしてかなり違うし、体格も違うし…お2人は『重戦士』って感じで、あんま『剣士』ってイメージじゃないしね、まあ技量は普通に高いけど」

 

「アルフィアさんのは雑にザルドさんの剣筋模倣していただけだし…そもそもが『大剣の剣術』だから今の私からすると結構(あら)があるようにも視えたんだけど…そのへんは半ば以上にステイタスのゴリ押しでも

バカみたいな力を発揮出来ちゃうのがレベル7以上の世界だから…」

 

「お義母さんが『もう純粋な技量ならセイズの方が上だ』って…やっぱ凄いんだねっセイ姉っ!」

 

「全然褒められたものじゃないわよ…結局弟子入りしてから7年もかかっちゃったし…『昔のゼウス・ヘラの他の団員(なかま)の技は再現出来ないんですか?』って聞いてみたら、小一時間思い出してちょい練習するだけで、

全部再現出来ちゃって一気に技の引き出しが滅茶苦茶増えたから更に差付けられたし…『昔は体調の関係で剣をそこまで突き詰める気は無かった』って…ホント…アレが『本業魔導士』って詐欺よねえ、

でも片手間の方の『剣士』で大半が斬り捨てられちゃうのよね」

 

「セイ姉も『治癒師(ヒーラー)詐欺』っていう声結構聞いたけど…」

 

「私は元々最初は剣士として名を上げるつもりだったのよ、当時の【フレイヤ】は蛮族同然だったし…スロットは3つ有ったけど、最初から魔法使えたわけじゃないしね、でも『剣士の才能』は普通に恵まれていたから…

当時は格上だった先輩達の『洗礼』での動きをとにかく見様見真似で覚えて、組み合わせて、自分の規格に合わせて使い易いようにして、とにかく試行錯誤して…アルフィアさんほどの才能までは無かったから

見様見真似で一発で模倣出来るほどのものじゃなかったしね…」

 

「なんでもないように言っているけどそれって滅茶苦茶凄いんじゃあ…」

 

「うんまあ…お陰で当時のヘイズには妬まし気に見られてたけど…私の治癒師(ヒーラー)としての腕こそ回復魔法の性能ゴリ押しだからね、性能上げるために医神(ミアハ)様に医療知識学んだりもしていたけど。

私としては妹と同じ(ヒーラー)の才能が有ったことの方が嬉しかったんだけどね、剣の腕が一番試行錯誤して鍛えた『私の一番誇れる強さ』かな」

 

「あとは『(ヘイズ)への想い』かな、私が誰にも譲れない誇れる想いっていうのは…ベル君も『これだけは譲れない』っていう強い想い『芯』って物を作ってみると良いかもよ」

 

「譲れない想い…」

 

「あ、結構話逸れちゃったわね、アイズのは、復讐心とかお父さんやお母さんや仲間への想いとかで色々ごっちゃになっているんだろうけど…まあ最近ようやく私も師匠たちから太鼓判を押してもらったからね、アイズへの教導についてはOKよ」

 

第一級同士が訓練するのに流石に市壁の上では狭いということで、戦いの野(フォールクヴァング)でも良かったのだが、あそこは団員の視線がうざいし、ベルはまだ入れたくないので、

アストレア・ファミリアのホーム星屑の館の裏庭の訓練場を借りることにした。ウチには及ばないが結構広い。闇派閥(イヴィルス)の活動が縮小したとはいえ、いつ再び対峙してもいいように、対人戦への勘が鈍らないように場所は結構広く取ってある。

何気に私も新ホーム設立時に関わっている。アイズと待ち合わせ場所で合流する。

 

「おはようございます、セイズさん、ベル…稽古と聖騎士(パラディン)さんの件ありがとうございます」

 

「ああ、ヴィトー?役に立ったんならいいや、レヴィスっての強かった?」

 

ヴィトーの二つ名は聖女(わたし)の信奉者第1号ということで、【聖騎士(パラディン)】になった。回復魔法も使える。ちなみにレベルは6だ。【ソーマ】の件が片付いてから暫く外のファミリアに出向させていたのだが、

この度、これから忙しくなりそうだから呼び戻したのだ。ハシャーナさんを向かわせたらレヴィスには殺されてしまうので、フェルズさんに言って入れ替えてもらったのだ。

例の「胎児」はオリハルコン製の特殊なケースを用意してそれに収納させ、がっつり守ったことにより、モンスターへの寄生もされずにきちんと持ち帰れて依頼は完遂された。私もアレ研究してみたかったし良かった。

 

「…はい、強かったです」

 

っつーかレヴィスがリヴィラあたりまで来ていたってことは結局闇派閥(イヴィルス)と繋がりは出来ちゃったみたいだな。結局逃がしたらしいし。エニュオ不在なのに…一番嫌な予想が当たっていないといいんだけど…

 

「おはようございます、アストレア様お早いのにご苦労さまです」

 

「私もヘスティアの最初の子には興味があったからね…駆け出しで貴女の弟子になる子なんて初めてじゃない、それに【ロキ】の子の【剣姫】ちゃんも…」

 

「おはようございます、アストレア様…」

 

「おはようございます、初めましてアストレア様、ベル・クラネルといいますっ」

 

アイズとベルが深々とおじきしながら挨拶をする。

 

「セイッズぅ久しぶりぃ最近全然来てくんないじゃないっリオンや輝夜も寂しかってたよ?」

 

「もうあんたらは私の助けなんて要んないでしょっ?7のリューとリリを筆頭にレベル6が貴女と輝夜の2人でレベル5も多いし結構なモンでしょ?」

 

私と団長と白黒抜きのウチくらいになら普通に勝てる。

 

「リリは貴女次第でいつ抜けるか判んないから、イマイチ不安なのよっセイズもウチ来よう?」

 

アリーゼからの何度目かの勧誘だが、私の最近の答えは決まっている。

 

「ごめんなさい、私にとって一番大切なのは(ヘイズ)だから…『アイツのためだ』とか言ってその一番大切な人悲しませちゃ本末転倒でしょ?」

 

私もアレンボコってから意識が変わったのだ。

 

「フーン昔は、『妹?そこそこ可愛いわよ』くらいしか言わなかったのに随分素直になったのねっ!お姉ちゃん嬉しいわっ!」

 

「誰が姉よ誰が、歳は貴女のほうが上かもしれないけど、せめてアルフィアさんと同じレベル8くらいになってから出直しなさいな、私より弱い姉なぞ要らんわ…それにこんな物騒な世界に生きているんじゃいつ死ぬか判んないからね、

『後悔しないように生きよう』って決めたのよ、想いは口にしなくちゃ伝わらないからね、それにそうしていた方が可愛い(ヘイズ)の表情よく見れるしね」

 

「私は良いと思うわよ、昔の貴女は何考えてるか分かりにくい顔してズケズケ言っていたから、ウチの子達も受け入れ難かったのだろうし…今の表情豊かな貴女の方がずっと魅力的だと思うわ」

 

「そうねっ謎めいたクールビューティーより今のシスコンお姉ちゃんの方がよっぽど親しみ易いってことねっ神様たちが『仲良し美人姉妹てえてえ』とか言っているけど私もそう思うわっ!」

 

「想いは口にしなくちゃ…後悔しないように…」

 

尚この時のセイズの言葉を真に受けた天然(アイズ)は後日リヴェリアに「感謝の気持ち」を伝えて感動させたとかなんとか。

 

「さ、どこかのお姫様が待ち侘びて殺気ビンビン飛ばし始めているから、そろそろ裏に周りましょ?」

 

そうして裏庭に行くと──────キンッと音がした。動きより、音が後にくる超神速の攻防。

 

「ッ…へえ、前より速くなったんじゃない?タケミカヅチ様紹介したのは良かったようね…」

 

「ハッあっさり防いでおいて余裕綽々にいけしゃあしゃあとっ…」

 

輝夜が抜刀術でいきなり仕掛けてきた。瞬間的な踏み込みの最高速はアレンより速い。少し抜いた剣で受け止める。

 

「ッ!?」

 

「ああ、アイズ、警戒しなくていいから()()()()()()()()()だし」

 

そこから始まるレベル6と7の攻防。途中からアリーゼも交ざりだした。魔法は全員封印しているが、割と息が合っていて強い。

アリーゼは敏捷も普通に高いが力が特に高い。パワーのアリーゼ、スピードの輝夜という感じで、輝夜の連撃の合間にアリーゼも上手いタイミングで力を込めた斬撃を放ち厄介だ。

アイズにはギリギリ見えてそうだが、ベル君には全然視えないだろうな…そんな攻防が暫く続いた。セイズは殆ど反撃しなかったが、やがて2人の方が先に息が上がり一息()いた。

 

「ふぅ…さて、感想戦よ、アイズ?どう見えた?」

 

「お2人の連携は凄く上手くて…セイズさんの剣術は…防御寄りだったと思います…」

 

「そ。私の()()()()は基本防御寄りなの。今回は敢えてレベル6の時くらいのスペックで相手したけど、勿論その気になればレベル7の力でレベル6を2人程度ならねじ伏せられるけどそんなん見てもなんの意味も無いでしょ?」

 

「で、どちらかというと私の剣は対少数向きね、今みたいに防御や回避を続けて、相手が隙を見せたら、一気に踏み込んで断つ、みたいな」

 

「駆け出しの時と違って今は共闘する仲間にも恵まれているからね、自然と時間稼ぎを重視する動きが増えたってわけ、今の2人の連携は上手く私のカウンターを潰していた感じかな」

 

「勿論素直に盾を持たずに剣のみを持っているのにもきちんと理由があるから…剣は私のアイデンティティの1つでもあり、その気になれば数の多い雑魚狩りだけじゃなく、大物狩りにも参加出来るだけの力もあるからね」

 

「唯単に効率良くモンスター狩りまくるだけなら今のアイズ以上の剣技は無いと思うわ…私の昔の対人剣術なんてアイズの劣化版でしかないでしょうし、ね…」

 

「でも貴女が身に着けたいのは私の『防御寄りの、連携や対少数を意識した剣術』なんでしょう?」

 

「はい、そちらです…」

 

「いいわ、昔の『とにかくモンスター殺しまくりたい』よりは大分成長したからね、【ロキ・ファミリア】くらい仲間に恵まれているところなら時間稼ぎでも出来れば生存率上がるだろうし…」

 

「『私の剣』…貴女に授けるわよ…」

 

こうしてセイズに初めて「剣術の弟子」が出来たのであった。

 

「ぶぅ~リリの相手もうリュー先輩しかしてくんなくなっちゃったし、セイズ様が相手してくださいっ」

 

ベルの方をちらりと一瞥するとこちらにやって来るリリ。あくまでここでは初対面だ。

 

「あ、リリ…」

 

「おはようございます、アイズ…私の今のレベルはセイズ様に無理して着いていこうとした結果なのであまり褒められたものではありません。【ロキ・ファミリア】の方針は間違っていないと思いますよ?」

 

アイズとリリルカは実力も歳も近しい貴重な友達だったのだが、リリルカがティオネのターゲットになり出してから、師匠(フィン)との交流もファミリア外で行われるようになり*1

あまり【ロキ・ファミリア】のホームに近付かなくなってしまっていたのであった。友達1人にまで意識を割けなくなっていたというか。セイズがティオネに結構辛辣なのもこのへんが原因である。

そうこうしている内にリリルカの方はいつの間にかレベル7への大躍進だ。ある程度リリルカの方がアイズの心理状態を把握していたので、焦らないように釘を刺しに来たのだ。

 

「話は聞いてましたけどそちらの弟弟子(おとうとでし)さんリリにもきちんと紹介してくださいよ、セイズ様?」

 

こいつ抜け抜けと…いやそもそもが私のせいなんだけどさあ…

 

「【小人族の聖女(ナイト・オブ・フィアナ)】のリリルカ・アーデさんっ…アンタレス戦は凄かったですっ!」

 

「歳は近いし、二つ名長いし、『リリ』でいいですよ?」

 

普段気安く接しているのにむずかゆいだろうな。

 

「セイズッ私と()りましょうっ!最近リリルカしか相手してくんないんですよもうっ」

 

リューもやって来て呼びかけてくる。

 

「似たようなこと言っているわね貴女達…力加減ヘタクソなんじゃないの?」

 

「そんなことっ…まあちょっとはあるかもしれませんが…」

 

「くすくすリオンったら後輩達からも訓練誘っても避けられてますもんねえ?実力と容姿には憧れられているというのに…」

 

「輝夜ッ!本性隠している腹黒代表の貴女に言われたくないッ!」

 

そんなこんなで初日は交流が多めだったが、早朝の合同訓練は妙な形で始まったのであった。

 

*1
これでティオネが更に凶暴化する悪循環

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