転生者セイズ・ベルベットの憂鬱   作:エリス

2 / 35
第2話 暗黒期にて

「エレン」を名乗る神は財布を取られた挙げ句アストレア・ファミリアの少女達に助けられた。次代を担うかもしれない「正義」を掲げる今はまだ未熟な雛鳥達。

「いい機会」だとちょっかいをかけようとしたところで待ったをかける闖入者が現れた。

 

「はあまだ()()()()()やっているの?貴女達。ガネーシャの真似事(ごっこ)。警邏の類は数の多いガネーシャに任せて、

貴女達は才能豊かでもっと強くなれる余地があるんだからダンジョンで鍛えてレベル上げて、敵の特記戦力を速やかに討ち取れる実力付けなさいって。『そうした方が結果的に多くの人たち守れるわよ』って。前にも言ったわよね?

せっかくの才能を無駄遣いよ、アンタたち。」

 

これは原作知識だけでなく、実際に見た感想だ。リューは言わずもがなそれと張り合っていた輝夜も凄い。アリーゼも武と魔法のバランスが高水準だ。ライラは武はちょい物足りないがパーティに1人は欲しい人材だ。

ウチにはこの手の人材皆無だしな…ヘディンは偉そうで上から目線だからすんなり聞きにくいし…

 

「モチロンッ!アナタの言うことは聞いてるわよッ!セイズッ!ただ今日はオフなのっ気晴らしに見回りをしていただけっ!眼の前に困った人がいたら見過ごせるわけないでしょッッ!?」

 

「どちらにせよ他所(よそ)のファミリアの貴女に言われる筋合いはないです」

 

「ええ…私らは美神様のお気に入りほどお気楽ではいられませんので」

 

リューが恨めし気に睨みながら言う。輝夜の嫌味は嫌味にすらなっていない。眼の前の少女が、いざ「悪」や傷ついた民衆を目にすれば誰よりも早く動くのは理解っているのに。

 

「気晴らしに見回りって…休めていないじゃん本末転倒ね。まあ私も眼の前に困っている人が居たらそりゃ助けるわ、()()()()()の【ガネーシャ】が不甲斐なくて私らまで駆り出されてんのに、

『お前らがゼウス・ヘラより弱いからだ』とか言われてもんなこと知りませんて。昔から居たらしい闇派閥(ゴミクズども)駆除していなかった大先輩達と、下らん利権争いでその大先輩達追い出したロキやウチのロクデナシ共だけに言ってくださいって。」

 

この時代のガネーシャ・ファミリアは7年後と比べると大分弱い。まあ人数だけは多いのだが。

 

アストレア・ファミリアは眼の前の少女1人に負けたことがある。それもこの場の全員がレベル3同士だった時だ。闇派閥(イヴィルス)の末端が暴れていた現場に駆けつけた時に眼の前の少女が先手ですんなり制圧していて、

不完全燃焼で終わりそうだったところで彼女に喧嘩を吹っ掛けられたのだ。なんだかんだ言っている事自体は正論だし「一理ある」ぐらいには耳を傾けられたので、悪い人間とは思っていない。憎たらしいけど。

それにアストレア・ファミリアが無名の頃から眼をかけ時には力を貸し、高く評価をしてくれていた。実際強いし。むかつくけど。彼女は治癒師(ヒーラー)としての才能も開花させ、前線で白兵戦で戦いながら、

傷ついた味方や自身をも癒やす僧兵(モンク)としてのスタイルを確立させていた。都市でほぼ唯一の戦闘治癒師(バトルヒーラー)とも呼ばれている。既にレベル4で次期幹部としても堅い。フレイヤのお気に入りとしても有名だ。美少女だし。

ファミリア単位ではなく個人で一番民衆を救っているのは彼女とも言われている。あの派閥の人間とは思えないほどあけすけに主神や同僚の悪口を言っている。ちなみに他所の人間が言うと機嫌を悪くする…面倒臭い。自分が言うのはいいらしい。

 

「貴方がエレボス様ですか…ふんふむやっぱり邪神って感じではないですねー無駄に顔は良いけどそこはかとなくロクデナシのかほりがしますが。『地下世界と暗黒』って権能、

マイナスイメージ付き纏いそうですけどそれ自体は別に悪い属性(モン)でもないでしょうに、逆にどちらも無いと困るくらいですし。あ、ザルドさんとアルフィアさんもう来てます?」

 

「大先輩達にちょっくらこっちから挨拶したいなーなんて」

 

「待て…キミは()()()()()()()!?」

 

この時点で彼女らにバレては堪らないとセイズの手を引っ張るエレボス。

 

───

 

そうして連られてきた場所は例の廃教会。ここを集合場所にしていたらしい。

そこではレベル7の古強者(ふるつわもの)達が待ち受けていた。

 

「それで連れてきたのがそのフレイヤのお気に入りとやらか」

 

「死期を悟って自ら餌になりに来た貴方達に、少しは建設的な話をしましょうか…少し長くなるでしょうが…」

 

「まず…【太古の話】と【未来(これから)の話】どちらがいいですか?」

 

「過去のことよりは建設的な未来の方がいいな」

 

「それではまず今から7年後のこの街での出来事を…この物語はある田舎から出てきた英雄になることを夢見た白髪と赤眼の兎のような少年が…一柱(ひとり)の女神様に出逢うことから始まる物語です」

 

「その純朴で影響され易い少年は最初は育ての親の影響で『ハーレム作りたい』とかほざいていましたが、ある1人の憧憬(うんめい)と邂逅して、大きく考えを変え、英雄までの道を一直線に駈け上がっていくことになります。

題名は名付けて【眷属たちの物語(ファミリィア・ミィス)】或いは【ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか】…」

 

「前者で」「捻りはないが前者だな」「えーオレは後者もいいと思うがねというかなんか妙な言霊(ことだま)感じるし…」

 

「そりゃあどっちも作者(絶対神)様が付けたタイトルですから」

 

「少年の名前はベル・クラネル。女神様の名前はオリュンポス十二神の一柱(ひとり)にして、ゼウス様やヘラ様達の姉、竈と聖火の神、三大処女神の一柱(ひとり)ヘスティア様です。

ちなみに最初の住まいはぐーたらしていたヘスティア様がヘファイストス様に追い出され最後の情けとして充てがったこの廃教会の地下です。

そしてまだ駆け出しでパッとしない頃に5階層でミノタウロスに追われそこで憧憬(うんめい)と邂逅します。」

 

──────

 

「そうして同行者の少女のために【憧れ】に無様を晒すのも避けて、逃げずに立ち向かうことを選んだ少年は見事にミノタウロスを撃破します」

 

「ちなみに2度目のミノタウロスとの遭遇、対決を仕組んだのはウチのオッタルさんです」

 

「おい、待てそれは…」

 

「はい、【始源の英雄】と同一の魂を持つ彼はウチの主神(フレイヤ)様に見初められてアプローチされます」

 

その後はアポロンとの戦争遊戯(ウォーゲーム)異端児(ゼノス)との出逢いも話していった。

───

 

「そうして【ヘスティア・ファミリア】を主軸とした派閥連合は見事フレイヤ・ファミリアに勝利します。

 

「女神は酒場の娘(シル)で居続けることを選び一応は丸く収まりましたとさ」

 

「待て…興味深い話ではあったが今の話『お前が』どこにも居なかった、お前には劣るであろう(ヘイズ)ですら居たのに…」

 

「【私】は…居ませんよ…この世界で一番の異常事態(イレギュラー)は私でしょうね…神様たちも誰も気付けないでしょうが…この先【同郷】生まれがこっち来てもおかしくはないですが…」

 

「…それで【今の話】を聞いてどうします?私は【派閥大戦(そのとき)】は確実にレベル6以上…紙一重のはずの勝負に私みたいなのぶっ込んだら流石に派閥連合(かれら)は勝てませんよ」

 

「その話が本当なら今この場でお前を殺すのが話が早いと思わないか?」

 

「おい、アルフィア…」

 

「黙れザルド。こいつの話が真実なら、どんなに有望でも妹の子を不幸にする要因なら私は残りの命を使ってでも全力で排除する」

 

まあ、こうくるわな。「ベル君inフレイヤ・ファミリア=不幸」は決まっているらしい。まあしゃーない。ここまでの話でフレイヤ様達に結構非道い目に遭わされているし。

 

「そいつの話が真実という保証は…」

 

(メーテリア)が生前に言っていた。『自分に子供が出来たら性別問わず【ベル】と名付ける』と、信憑性(しんぴょうせい)は高い」

 

「そこまで想うことが出来るのなら『絶対悪』なんて止めて生きてもらう道は…彼と出逢えば貴女にも病気を克服出来る余地はありますよ…恩恵のスキルにまで現れるような病気だからこそ強い想いだけで克服出来るはずなのです」

 

「それに私の回復魔法で効果が現れなかった存在は今までに有りません。『即完治』とまでいかなくとも、一定の効果は見込めるはずです。」

 

「ザルドさん…貴方はウチの団長あたりに経験値(エクセリア)を託すことを見込んでいるのでしょうが…どうか思い留まって『真っ当な手段』で後進を育成していってもらえませんか?」

 

「この馬鹿騒ぎが収まったらすぐに団長は私がレベル7に押し上げますんで…どうかっ…」

 

頭を下げて懇願するセイズ…「それ」は凄く魅力的な提案だ。だからこそ受け入れ難くもある。「今更どの(ツラ)下げて」とか色んな考えが(よぎ)る。

 

「いいんじゃない?賛成するよオレは「「エレボスッ!!」」…元々オレは『こんな方法』気が勧まなかったさ。もう『これ』しかないと思い込んでいたからこそ提案しただけだし。アルフィアも『甥っ子』の顔見たくなってきたんだろう?」

 

「それにこんなに可愛くて有望な後輩にお願いされたら揺らいでいるだろう、お前らも。その『迷い』がある内はもっと生きた方がいい」

 

「───話は決まりましたね。その【ベヒーモスの毒】…『オッタル程度ならちょうどいいハンデ』とか思っていたのでしょうが…流石に死にに行くだけにしか見えませんよ」

 

セイズの魔力が高まる。現役時代のゼウス・ヘラの幹部級からしか感じられなかったレベルの魔力の高まりだ。

 

「【我が名は戦乙女。不朽を誓いし女神(かみ)の娘にして朋友(とも)。求めるは解毒。その光輝は毒を殺す。消えろ、消えろ、消えろ。我が身は異邦の聖女にして終焉の乙女、争いなき楽園ををここに】【ディア・エイル】」

 

「…どうだザルド?」

 

「完治ではない、完治ではないが…まず間違いなく()()()いる!」

 

「…2割減ってところですかね。毒の成分だけ除去する方向でイメージすれば確実に効果が出るから魔法ってのは便利ですよねえ。その毒の悼ましい気配からだけでも討伐したあなた方の偉大さとそれ以上の黒竜のヤバさを片鱗だけでも理解しました。」

 

「それじゃあ次はアルフィアさん───【静寂の園(シレンティウム・エデン)】は切っておいてください」

 

「分かった…」

 

名前そのものを別に隠してはいないが、知る者はほぼ皆無のはずなのに当然のように言い当てられてもアルフィアはもう突っ込まなかった。

 

「【我が名は戦乙女。不朽を誓いし女神(かみ)の娘にして朋友(とも)。求めるは全治。その光輝は病を殺す。癒やせ、癒やせ、癒やせ。我が身は異邦の聖女にして終焉の乙女、争いなき楽園ををここに】【ディア・エイル】」

 

「ああ…身体がここまで軽いのは久しぶりだな…ありがとうセイズ…」

 

その時心から浮かべたアルフィアの笑顔は「この世界で初めて魅了された微笑み」だったとかなんとか。




セイちゃんから見た同僚

オッタル→武人としては割と尊敬している、それはそれとしてもっとお勉強しましょうね?
アレン→(アーニャ)ちゃん悲しませんなカスが…というか君いる?速いだけじゃん()
ヘディン→本当に頭良いの?君も結構大概(脳筋)でしょうに()
ヘグニ→その中二コミュ障なんとかならない?そこ以外はマシな方
兄弟→リリに近寄んなコント集団め…
ヘイズ→まあまあ可愛い妹
ヘルン→恩義は大事よねうんうん、え?アレになりたい?馬っ鹿じゃねーの?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。