転生者セイズ・ベルベットの憂鬱   作:エリス

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第20話 猛牛訓練

17階層のとあるルームで…オッタルはベル・クラネルの超えるべき壁としてミノタウロスの1体を見繕い、魔石を与えて強化種にし、武器を与えて自ら鍛えていた。

 

「団長…精が出ますね…【ミノタウロスの強化種】って言ったらレベル3上位のスペックですよ?それに武器持たせて技仕込ませてレベル1にぶつけるとか…普通にオーバーキルですよね?レベル2でも普通に戦ったら殆どが殺されると思いますよ…?」

 

正直能力的にはヒュアキントスなんかより普通に強いと思う。あいつレベル3の真ん中くらいだし。

 

「フンそう言う割にお前自身は弟子が殺されること自体には大して心配していないみたいだが?」

 

「まあ彼相手に『ミノタウロス』というのはね…正直これ以上に無いそのチョイスをした団長の判断自体は尊敬しますよ…」

 

「それで首尾はどうだったのだ?」

 

「お二方には許可貰えましたよ…ヘスティア様は常識的な判断で絶対反対するから無許可になってしまいますが…」

 

「『許可なんて』とか思っているかもしれませんが、あのお二方を感情的にも敵に回したくないし、魅了にも頼りたくないし、襲撃されたらフレイヤ様とヘイズだけ連れて即とんずらしますよ?どう考えてもこちらが悪いですし」

 

「…未だに『女神の期待に応えられないならくたばれ』とか考えているなら…軽蔑しますよ?」

 

「…いやお前らが鍛えている上で実際見た感じギリギリイケそうだとは思った…それでお前の眼から視て”こいつ”はどうだ?何か感じられそうか?」

 

「芽生えかけですね…ほんの少し魂らしきものが発芽しかけています…」

 

「そうかやはり…途中から理知らしきものも感じられたからな、そうなると餌にするのは少し勿体ないか?」

 

「いいえ、どちらにせよその状態から一度死ぬくらいの強烈な体験をしないと『彼ら』には成れないでしょうから、一度遠慮なくぶっ殺してもらいます。」

 

「団長はそっちで私が作ったこちらの弁当でも食べて休んでいてくださいな」

 

「ああ、礼を言う…本当にお前は気が利くな…」

 

「本来幹部の役目って団長の補佐とかですよね、なんでどいつもこいつも団長の首取ることしか頭に無いんでしょうね」

 

「それは『女神の隣を欲しい』とみなが思っていたからであろう…尤もそれに関してはオレを倒しても大して意味は無いとは気付き始めているようだがな…」

 

「そしてお前の世話になった者は多いからな、ウチの者の殆どがお前に刃を向けることは許さない、勿論オレもだ」

 

「団長にそう言ってもらえるのは嬉しいですけど…アレその割には皆未だに強くなることには意欲的ですよね?」

 

「それはお前が常に強くなることに貪欲だからだろう、みなが『お前のようにありたい』と思うようになっているのだ、まあフレイヤ様への接し方に関しては…お前以外には無理だろうだがな…」

 

「団長こう感覚的な話題になると結構饒舌で理知的な感じになる時ありますよね、いつもそうならもっと尊敬されるのに」

 

「フレイヤ様は未だオレにはお前ほどでないとはいえ信を置いてくれているし…団員からの信もお前1人だけからので充分だ。それだけでも他の連中が羨むモノだ。オレは果報者だ」

 

会話しながらもミノタウロスを鍛える手を止めないまま時間が過ぎていった。

───

ダンジョン9階層で、マナナ(リリルカ)とベルは今日も探索していた。そしてセイズとの打ち合わせした通りの所定のルームに向かう。

 

「さあ、ベル様こちらで休憩しましょう」

 

「ヴォ…」

 

「「ハ?」」

 

(赤いミノタウロス!?強化種ッレベル3上位くらいッ!?バカなんですかっオッタル様はッ)

 

視線を外さないままに後退(あとずさ)りながら自然な動きで距離を取る。勿論マナナ(リリルカ)が本来の実力を見せれば瞬殺だ。だが、ここでそれをしてしまえば色々と台無しになる。

得物にバゼラートは渡してある。今の時点でもしっかり力を込めれば十分通じるだろう。ナイフも普通なら叩き折られるだろうがアレなら十分通じる。

 

「マナは逃げて…」

 

「ハ?」

 

「いいからっ逃げてっ…行けえええええええええええええええええええええええええ!」

 

「─────────ッごめんなさいっベル様ッ!」

 

───そんな様子をセイズは姿消しの魔道具を使って気配を消して眺めていた。

(これで舞台は整った…後は…)

 

眼晶(オクルス)で映す。これで地上に居るゼウス様やアルフィアさんらに映像が届く。彼の育ての親や、アルゴノゥトに力を貸した精霊(ジュピター)の大元であるゼウス様には視て欲しかったのだ。

まあフレイヤ様の「彼の輝きが視たい」というオーダーは割とどうでもいいとして、初のランクアップの相手はこれがベストだろう。アステリオス誕生にも関わるし。

 

「【ファイヤボルト】ォ!」

 

牽制の一撃から始まる。まずは距離を取る。

 

「ヴモォッ!?」

 

(正面から打ち合ったら叩き潰される…でも多分僕の長所の速さも大差ない…)

 

単純にスペック差があり過ぎる。呆れるほど状況は絶望的だ。だが、爛々と「何か」を期待する視線を沢山感じる。見世物にされるのは良い気分じゃないが、いいだろう。「ご照覧あれ」か。

大好きな物語(アルゴノゥト)で聞いたセリフだが、どこかのずっと昔にも言ったような気がする。

 

「ご照覧あれ!」

 

強く怖く恐ろしいが、あの憧れた英雄達に比べればなんてことない。セイズはここ数日レベル3くらいのスペックで大剣を持ち出して模擬戦をしまくっていた。いっそ過保護なほど執拗に。

まだまだセイズの技術に比べれば拙いが、なんとか大剣の側面を弾く受け流しの防御をしてから、奥に切り込んでダメージを浴びせていく。

 

(ロキ・ファミリアも来たか…なら…)

 

セイズはアイズと特にティオナに向けて”サービス”をすることにした。

 

「「我が身は女神の娘(フノス)───」

 

「汝の前世(かつて)は道化、汝の前世(かつて)は将軍、汝らの前世(かつて)の猛々しい(いくさ)の原風景を映したまえ!」

 

私1人では無理な芸当だったが幸いこの場にはかつての「演者」が4人もいる。全員の「魂の記憶」からうっすらと前世(かつて)の戦いの場面をうっすらと今と重なるように映しだす。

精霊と契約した【雷霆の剣】を持った道化と「将軍」と呼ばれた牡牛が重なるように激突している。

 

やがて───

 

「ファイヤボルトオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

大爆発がミノタウロスを呑み込んで爆散した。重なる過去では道化と姫の雷帝の奔流が猛牛の将軍を呑み込んで戦いはほぼ同時に終結した。尚ギャラリー達は一様に喝采していた。




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