転生者セイズ・ベルベットの憂鬱   作:エリス

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第24話 捜索隊(Easyモード)

 正史(ほんらい)よりも余裕がある状態で17階層に辿り着けたベル達一行は17階層のロキ・ファミリアのキャンプ地に落ち着いた。そのテントの1つを貸し切って、ベル達は集まり、ヴェルフとリリルカを中心に話し合っていた。

 

「マナスケ…お前は”誰”だ?発生した直後のゴライアスを瞬殺しちまうし…レベル4だの5どころじゃないだろお前…」 

 

「私の正体はこういう者です。リリルカ・アーデと言えば分かりますでしょう?」

 

そう言いながらフードを取る。先程までチラ視えしていた犬耳が無くなっていた。顔そのものも少し変わっている。

 

「私はセイズ様とアルフィア様からの連名での依頼を受注しているということになっています。基本的にベルへのダンジョンでの実地訓練、及び立ち回りや知識の教導、戦闘時の指揮と緊急時の護衛と交渉事の担当等々…」

 

「そうか…レベル7で同格のお前を顎で使えるのは『流石セイズさん』とでも言えばいいのか?」

 

「今は明確な悪党の活動は縮小しているような状況ですからね…基本手が空いているから、『自己鍛錬を怠っていない』と信頼されているから【アストレア】の先輩達にも勝手が許されているのです」

 

「セイズ様と先輩達は仲が良いですし、私が【アストレア】に所属しているのもセイズ様あってのお陰ですからね」

 

「連絡も先程済ませましたし、セイズ様が何人か連れて救助隊の(てい)で直接迎えに来るそうです。『ヘスティア様との繋がりは隠していないからこれくらいはいいだろう』とのことです。」

 

───

 

「桜花…(ミコト)…千草…アンタらなんでビビってんの?普段はもっと自然体じゃない」

 

「いえ…セイズさんが【ヘスティア・ファミリア】とはどんな仲なのか、と思いまして…」

 

タケミカヅチ・ファミリアはセイズに恩が有る。オラリオに来たばかりで右も左も分からない頃に全員が世話になったし、タケミカヅチの武術を冒険者の中では誰よりも高く評価し、弟子入りと共に高額な月謝まで貰っているのだ。

元日本人でサブカルにも染まっていたセイズからすれば魂の故郷(にほん)の神を尊び、技を重視する考えは当然だった。最初セイズからは1千万ヴァリスを提示されたが「流石にそれは高すぎだ」と断られ結局10万ヴァリス程度に落ち着いたが…

お陰でタケミカヅチは正史(ほんらい)よりバイトに追われていない。

 

「まあヘスティア様とは個人的な繋がりがあるし、元々ベル君は私が紹介した関係だし…その関係で今も面倒見てる感じね…」

 

「え!?じゃあオレが押し付けたことは…」

 

「あー別にそっちはいいわよ、本人たちもきちんと生き残っているし、ちゃんと被害者達に直接謝罪すれば…寧ろきちんと名乗り出たことに感心したくらいよ?相手もまだまだ木っ端のファミリア相手だってのに…

大半の同業者のカス共だったら知らんぷりしているとこだと思うわよ?もっとタチ悪いのなら『全滅してくれてますように』とか願っているとこだろうし更にクソだったら口封じ考えるだろうし」

 

「な…!セイズ殿!我らはそんなことまでは…!」

 

「あくまで一例を挙げただけ、よ…だから自分達の至らなさを自覚して反省して一応誠実な態度を取れているアンタらはまだ及第点だから、私が後からどうこうするつもりはないわ…」

 

───そんな会話をしながら18階層迷宮の楽園(アンダーリゾート)まであっという間に辿り着いた。

 

攻撃魔法が使えることは最早隠していないし、剣の一振りで魔法みたいに広範囲を斬り飛ばせるようなことを出来るのがレベル7以上の世界だ。

 

「実戦を間近で見るのは初めてでしたが、ここまでのものとは…レベル7とは(かく)も凄まじいものなのですね…」

 

(ミコト)が漏らすがその後ろでヘルメスがアスフィに囁くように話し掛ける。

 

「アスフィ…どう見る?」

 

「レベル5になったとはいえ、元々私は研究者寄りなんですよ無茶言わないでください、私でも殆ど量れるものじゃないですよ」

 

「しかも『賢者の発明品』のお陰で連絡取り合えているから無駄に捜索せずに迷わず一直線…か」

 

「妙に含みが有る言い方ですね…私はギブアンドテイクで滅茶苦茶利用させてもらっていますが、別にフレイヤ様の我儘とかは聞いたりしていないですよ?」

 

「つまり、ウラノス達も君にゾッコンというわけだ」

 

「まあ大体の神様に好かれていますからねー私は。闇派閥(イヴィルス)の邪神共やイシュタルは私を殺したくて仕方ないでしょうが」

 

「あ、それとロキ・ファミリアがキャンプ中らしいから私はフィンさんと話してきます、桜花達のこともついでに、ヘルメスとアスフィらは自分達で伝えなさい」

 

───

 

普通は敵対派閥(フレイヤ)の幹部がロキ・ファミリアのキャンプ内をうろついていたら、顰蹙ものだ。

だが、セイズの場合は許されてしまう。その理由の1つが…

 

「じゃあ…ポイズン・ウェルミスの毒の解毒…やってしまいますね、遠征の成果もイマイチだったっぽいし、お安くしておきますよ?」

 

「ああ…入れ違いになったベートには悪いが…よろしく頼むよ」

 

そうしてキャンプ内を銀色の輝きが覆い一瞬で床に伏せていた者達が復帰する。直接視界に入れていない相手までも雑に治療してしまった。

 

「無茶苦茶だな…レベル7の今の君はこんなことまで出来るのかい…」

 

「そういう魔法とスキルなんで…ベヒーモスの毒と比べたらなんてことはないですよ?」

 

「取り敢えずこれで今世話になっていた者達の滞在分には充分ですね」

 

「ああ…有り難う…」

 

闇派閥(イヴィルス)()り合うなら呼んでくださいね暇な時なら手貸しますよ?【アストレア】の子たちもいちゃそうそう私まで出る幕無さそうですけどね」

 

手をひらひら振りながらセイズがフィンのテントを後にする。ここ数年でフレイヤ・ファミリアは予想外の方向に舵を取り始めた。ずっと身内だけで喰らいあっているだけならまだ鼻で嗤っていられていたのだが。

オッタルを始めとした停滞していた高レベルの幹部達の多くがランクアップし、明確にロキ・ファミリアより上のステージに登っていった。その中心に居るのは間違いなく彼女だろう。

昔は本当にそのうち脱退しそうな雰囲気があったので、明確な敵対者になることは想定していなかったのだが。勿論リヴェリアとの【契約】もあるから彼女自身がこちらに刃を向ける可能性は低いのだが。

いざとなれば力を捨ててもその【契約】を破棄して敵対する可能性も0ではない。いや一応彼女もロキ・ファミリア(こちら)に期待して、戦力として見込んでいるようだし、そうそう争うことはないと思うのだが。

「女神一筋」が殆どだったあの連中がオッタルまで含めて纏まり出しているのだ。彼女に追随するように。リリルカが完全に取り込まれている時点で個人的にはどうしても強く出れないのだが。

彼女の言うように「伴侶探し」は一旦止めた。ライラからのアプローチは続いているし、憎からず思っているのだが、魂にまでこびり付いた苦手意識はそうそう拭えない。

今のリリルカが魅力的過ぎるのだ。「歳の差考えろ」と言われたら全くもってその通りなのだが。自身と同等以上の頭脳に、危険な場所に単独でいの一番に切り込める勇気、

現在のレベル8の全員が高く評価する武力、ライラほどスレないままに善良な心を持ち続けていられてるし、彼女以上の条件の小人族(どうぞく)が今後現れるとは思えない。

慕っている相手は、「ノーマル」を公言しているセイズだ。相手が碌でもない人間だったら暗殺も視野に入れていたところだが、その人間は自身の守備範囲外とはいえ間違いなく「この時代最高の女性」だろう。

リリルカ自身の感情はあくまで「親愛」のようだが、今後そのままとも限らない。というかセイズが男だったらマジで詰んでいた。

 

「セイズさまーっ」

 

「あらリリ、2人のこと有難うねえ」

 

「パーティメンバーを守るのは当然ですっあ、お2人は別の場所で休息中ですよっ」

 

リリルカがセイズに抱きつきセイズを中心にくるくる回る。相変わらず仲睦まじいことだ。

 

───

 

そうして貸し与えられたテントの中で(ミコト)はベル達に土下座をしていた。

 

「あれは俺が出した指示だ。そして俺は、今でもあの指示が間違っていたとは思っていない」

 

「露悪的になって自身が進んで罪を引き受けようとする、その自己犠牲の精神だけは、5点…後は頭の責任の取り方としては落第ね…」

 

「桜花…アンタ切腹でもするつもりなの?『俺の首だけで収めてくれ』みたいな?そんなことしたら、余計泥沼になるし、彼らまでが無駄に(ミコト)達の恨みを買うことになるわよ?」

 

「リリとしては0点ですね、そもそも相手を見て謝罪の仕方を変えるのもどうかと思うのですが『レベル7の私がイラッとしたから』という理由だけで簡単に貴方達程度の首なんて落とせるのです」

 

「『知り合いだから』ってだけで許されると思っているのなら、そんな甘い世界だと思っているのなら今すぐ冒険者なんて辞めてしまいなさい。私は先輩達やセイズ様ほど甘くない」

 

リリが殺気を出しながら睨む。この場での正解は(ミコト)のように誠心誠意謝罪することであっただろう。苛立ったヴェルフも発言するのが正史(ほんらい)の流れだった気もするが、完全にリリにもっていかれた。

 

そうして───セイズに毒を治療されたことによりロキ・ファミリアは正史(ほんらい)より早めに地上に帰還していった。

ヘルメスの手引で正史(ほんらい)通り姿消しの魔道具漆黒兜(ハデスヘッド)を借りて、ベル・クラネルに私刑(リンチ)を仕掛けたチンピラ共だったが、

慣れたベルに普通に撃退され、ヘルメスはリリルカに捕まりガチ目の殺気を浴びせられ、思わず神威を出してしまい、結局正史(ほんらい)通りに黒いゴライアスが喚びだされてしまった。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

「ああもうっ結局こうなるのかっ…」

 

安全階層(セーフティポイント)によりによって階層主が出現する異常事態(イレギュラー)だが、神も同行している時点で予想の範疇だ。そもそもこれは「知識」にもあった事態だ。

 

「アスフィはもう既に動いているっヘルメスが元凶な時点でマッチポンプのようなものだけどっ…」

 

多分故意でない偶然だろうけどこの状況をベル君の実力を見るためにヘルメスは利用しようとするはず…なら別にそれに乗ってもいい。

アスフィがレベル5だから私まで無理に行かなくても良いんだけど、流石にこの場にいて行かないのは薄情過ぎだろう。リューの代わりに居るようなものなのだし。

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