転生者セイズ・ベルベットの憂鬱 作:エリス
バベルの頂上では───
「良かったのですか、フレイヤ様?」
「何が?」
「セイズの動きですよ、アレの性能は我らであっても無視出来るものではないでしょう。私も1人見せてもらいましたがあんなのが量産されたら、それに【暴喰】と【静寂】に【アストレア】まで入れ込んでいるのでしょう【例のファミリア】は、
アレらが成長して奴らと合流されたらセイズ抜きでは我らとて負け兼ねないですよ?」
今日の「当番」はヘディンだった。オッタルが独占していたポジションがセイズに移り変わり、「当番性」に変更されたのでぶっちゃけヘディンはセイズに感謝していた。
「このポジションを独占出来るように」とは思わない。それで満足していて同僚の幹部達に差をつけられ、或いは追い抜かれたら何の意味もないからだ。
「フフ貴方がそこまで言うほど?レティちゃんでも見せてもらったの?あの
クスクス貴方の妹で私とセイズの娘みたいなモノだからねえ…いいえ私からすると孫娘みたいなモノかしらね…私は別に『おばあちゃん扱い』も構わないのだけれど…」
「それにセイズは私が『許容範囲』を越えない限り決して私を裏切らないわ、セイズは『私がベルに心底惚れている』と思い込んで行動している、余程『別の私』はアレだったみたいねえ?」
「違うのですか?」
「違うわよ、『ベルに心底惚れていたであろう私』をある程度想像して動いていただけよ、彼も確かに魅力的だからすんなりロールプレイが出来たわ」
「あの
セイズと同じように魅了が効かないリリルカをファミリア外でいつまでも手元に置いているのも…対策の1つなのでしょうね…セイズが『アレ』を使ったら2レベル差くらいまでは簡単に覆せるわオッタルでも勝てないでしょう」
「『アレ』ですか?ですが『アレ』は…」
「『レベル7になってからようやく制御に成功した』そうよ?普通なら『レベル7になってからようやく使い物になる魔法』なんて他の誰にとっても殆ど価値の無いものでしょうけどレベル7の高みもあの
「その分真に使いこなせれば破格の性能、と…」
「そう…剣才も【
「他の多彩な能力も結局は真に『あの魔法』の性能を引き出すための材料に過ぎない」
「奴がヘルンに大した価値を感じないのも当然でしょうな…」
「昔言われたのよ『貴女が本気で惚れ込むような男は決して貴女に惹かれるような人格ではない』って…」
「それに『若返りの魔法』…地上の子としては規格外の魔法だけど…何故多くの人間が望むであろう『あの魔法』が今まで誰も目覚めなかったんだと思う?」
「それは、そんな俗物的な願望を抱くような輩が刹那的に生きる冒険者としての高みに昇れるはずがないからでしょう?」
「でも、俗物的でもなく既に高みにいるあの
『人間の寿命で先にフレイヤ様を置いて逝きたくない』って…まあ細かい正確なところは違うかもしれないけど、一番深く関わっている
あそこまで健気なところを見せられたら私も『暫くは家族ごっこだけでもいいかな』って気にもなるわよ」
それはそれとして
だがヘディンは嬉しかった。近頃はフレイヤの長年うっすら在った憂いのようなモノが無くなっていたからだ。
「伴侶」とは少し違うのだろうが、少なくとも
決して美女同士の
だが「早くセイズに言ってあげてくれ」とも思った。奴が「別のフレイヤ」というこの世界で有りもしないモノを見据えてアタフタ行動しているのが面白いのだろう。
ここ最近の奴の【ヘスティア・ファミリア】への入れ込みようは異常だ。奴の好みからすれば神ヘスティアの善良さが好ましいのは分かるのだが。
【暴喰】と【静寂】だけなら純粋に
長年の言動とここ最近の行動…ここまでの材料が揃えばヘディンの聡明な頭脳ならセイズの「事情」も内面もある程度掴めるものだ。神としての感覚でも「セイズの妹達」は「新しい玩具が増えた」くらいの感覚なのだろう。
容姿や能力の方向性も結構融通が利くらしいし、既に奴の脳内では草案も出来ているらしいし自身も楽しみではある。普通に他所のファミリアにまでばら撒くつもりなのは「本当にお前ふざけんな」という感覚なのだが。