転生者セイズ・ベルベットの憂鬱 作:エリス
セイズがいつからヘイズのことを大切に想うようになったか正確な頃は憶えていない。最初は本当に他愛もない理由だったと思う。
彼女が正真正銘この世界で産まれたきりの
別に
【フレイヤ・ファミリア】の中では
この世界での両親は良い人だったと思う。じゃなきゃ揃ってベルベット姓を名乗っていない。だが「モンスターによって両親を失った」なんてこの世界じゃ珍しくもない話だ。
ヘイズはセイズのことを愛している…勿論家族愛としての親愛的な意味でだが。
「
今の視野の広さも。考えることの重要さも。効率の良い鍛錬法も。何から何までセイズが教え導き与えてくれたものだ。ヘディンほどの出来の良い頭でなくとも。凡人の頭でも落ち着いて考えれば色々と世界の視え方は変わってくるものなのだ。
姉無しで一人でファミリアの「洗礼」なんて続けていたら、きっと碌な人間になっていなかっただろう。「聖女」と呼ばれて色んな人間に愛を振りまいているその在り方はどこまでも正反対だが。出来るなら彼女の愛を独占したい。
「一番はヘイズ」と言ってくれているからセイズを困らせないように滅多に我儘は言わないが。
昔は確かに今ほど分かり易くはなかったが。
それが世界から称賛され祝福されるレベルで、自分に対しての愛によって培われた努力だというのなら、話は別だ。アレほどの能力の持ち主が、自分に対して惜しみなく愛を注いでくれるのだ。自分まで
アミッド・テアサナーレは暗黒期が終わってすぐセイズに弟子入りした。最前線で悪党と戦いながら味方の冒険者も民衆も癒やすその在り方に自身の理想を視たからだ。
【戦場の聖女】の二つ名も彼女のほうが相応しいと思っている。今では自分も”そこそこ”戦えるようにはなったが。武術の才能も”そこそこ”程度の評価だった。
だが「
当の本人が前衛で剣をぶん回しているのだから、説得力があまりなかったが。「武術の才能は凡人でも自衛出来なきゃ話にならない」と言われて、槍術と棒術を元にした、杖を使った
タケミカヅチがオラリオに来てからはより洗練された「拳法」を更に仕込まれたが。瀕死と本物の死の境界を見極められさんざん無茶をさせられたが。お陰で今では50階層付近なら1人でも闊歩出来る程度には強くなった。
今では素材採集も鍛錬を兼ねて自分の足でも行けるようになったのだからやはり「武力」も身に着けたのは大正解だった。自身の武力を恐れてタチの悪い粗暴な客は減ったし。
下に無茶だけを押し付けるパワハラ上司ならまだしも彼女は懇切丁寧にお手本を見せるのだ。それもその時の自分ならなんとか努力と工夫だけでどうにかなるような範囲のものを。
しかも今の装備なんて億単位の価値のモノばかりだ。「師匠なら良い物をプレゼントするなら当然でしょう?」と言ってポンポン出してくれるのだ。金にがめつい主神は白目になっていたが。
今では世界中に勇名を轟かせる師匠のことをアミッドは敬愛している。
「欠損再生魔法」の存在は純粋に羨ましかった。「何故自分にも生えなかったのか」と。彼女以外にも使い手はいるらしいが。彼女の存在のお陰で義肢はぱったり売れなくなってしまったが、
「自分が居なくなったら再び需要が出るだろうから未来の人たちのために研究は続けなさい」と少なくない研究費を捻出して研究にも直接協力してくれた。
主神は高価な義肢を売れなくした原因だけれども、医療の発展にも力を入れる彼女の在り方に複雑そうな顔をしていたが。