転生者セイズ・ベルベットの憂鬱   作:エリス

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同僚から見たセイちゃん
オッタル→幹部で唯一自分を普通に慕ってくれている団員なので、滅茶苦茶気に入っている、ほぼ相思相愛()
アレン→むかつくいつかコロスプルプル…
ヘディン→業腹だが、主神に一番必要とされている存在だから好きにしろ、もう…は?脱退?ふざけるなよ?ぶち殺すぞ、ヒューマン?
ヘグニ→あの女こわいよーブルブル(泣)でも膝枕し合っているのいいなー、あ、他の連中より優しいトゥンク(うわチョロッ)
兄弟→きちんと見分けてくれるので大好き
ヘイズ→クソ重感情(隠れシスコン)←アレンみたい 具体的には正史(ほんらい)フレイヤだけに向けられるはずの感情の6割くらいが姉に向けられているのでヘルンへの嫉妬とか皆無。
ヘルン→「女神を惑わす売女が…!」「え?ソレ処女の私に言うの?っつーかフレイヤ様の方が割と気軽にポンポン誰とでも寝るじゃん、そんなことも知らないんですかぁ?解像度ひっく()」「うわぁん何それ知らないですぅ」



第3話  灰被り姫の成り上がり(シンデレラ・ストーリー)

暗黒期は今までが嘘のように呆気なく終結した。

正史(ほんらい)は【大抗争】と呼ばれたソレも起きるには起きたが、大した被害には至らなかった。

正史(ほんらい)闇派閥(イヴィルス)側の協力者だったはずのエレボスらが土壇場で裏切り、主力のはずだった2人がまるまる都市側についてしまったからだ。しかも揃って正史(ほんらい)より絶好調の体調というオマケ付きで。

 

「あんまり貴方達が張り切ると経験値(エクセリア)が目減りしてしまうので程々に」

 

というセイズの要望を少しだけ呑んで、民衆を守るのを重視して雑魚狩りに(いそ)しんだ。アルフィアはとっととベルに会いに行きたかったので結構張り切ってしまったが。

最終的には【ロキ】の三幹部らや、【フレイヤ】の幹部勢が無事ランクアップしてホッとしたとかなんとか。

オッタルやアストレア・ファミリアはランクアップしてなかったので、その埋め合わせに、ダンジョンアタックに同行し、オッタルもバロール単独(ソロ)討伐の偉業を成し遂げレベル7になった。

アストレア・ファミリアの主要メンバーもレベル4になった。オッタルにとっても数少ない自分を慕ってくれている可愛い後輩に「団長をランクアップさせることを条件に、団長に殺されるつもりだったザルドさんを都市側に寝返らせました」なんて言われたら、

断れるわけがない。というかフレイヤの命令以外で珍しく滅茶苦茶気合が入った。既に治癒師(ヒーラー)として正史(ほんらい)のヘイズを上回る彼女はレベル5にランクアップしていたので、彼女のサポートのお陰で、常に万全に戦いに臨むことが出来、

またバロール戦後の傷ついたオッタルを手際よく治療して、速やかに退却が出来たので、「深層単独(ソロ)攻略」なんてアホなことも考えていたオッタルはダンジョンにおける仲間の重要性を思い出したのであった。

この話はそんな暗黒期が終結した少し後の頃の話である。

 

リリルカ・アーデには3人の師匠が居る。1人目は小人族(どうぞく)のライラ。

今ではオラリオの【3大ファミリア】の一角を占める、押しも押されぬ大派閥に成った、アストレア・ファミリア幹部のレベル5の冒険者。

単純に一番教わった知識(モノ)が多いのは彼女からだ。ダンジョンやそれ以外でも生きるための知識や技術、対人での駆け引き等々。

二つ名の【狡鼠(スライル)】の通り、元々の自分の気質的には彼女が一番自分の師に合っていたように思える。

2人目は小人族(いちぞく)の英雄、【勇者(ブレイバー)】フィン・ディムナ。槍術と指揮の多くは彼から学んだ。「3人目」は槍術の腕も高かったのだがどうしても体格が合わないという理由で武術の多くも結局彼に多く学んだ。

3人目は学んだことそのものの量は一番少ないのだが、自分に一番大きな影響を与えた、自分の一番の恩人だ。そもそも前者の2人も彼女からの紹介だった。

セイズ・ベルベット。フレイヤ・ファミリアの大幹部。レベル6の中ではぶっちぎりで最強とも言われている。当時はレベル5だったが。「都市最高の治癒師(ヒーラー)」の名をレベル4であった、暗黒期の頃からずっと呼ばれている。

治癒師(ヒーラー)の中では【都市2位】と呼ばれている【戦場の聖女(デア・セイント)】も【都市3位】と呼ばれている妹の女神の黄金(ヴァナ・マルデル)らも彼女の弟子だ。

治癒師(ヒーラー)は重要な役割(ポジション)だが、基本的に個人の武力に乏しい傾向があり、故に大成しにくい傾向がある。「他人の傷を癒やす」ような魔法に発現する気質の持ち主は

本来戦いに向かないからだ。「格上のモンスターを倒す」ことが冒険者の【偉業】の基本となっている現在のスタンダードではレベルも上がりにくいだろう。某賢者のような天才的な発明家なら別の形での【偉業】も有り得るが。

 

暗黒期が終結して間もない頃の【フレイヤ・ファミリア】のホーム【戦いの野(フォールクヴァング)】の門の前で─────

 

「お願いしますっ助けてくださいっ」

 

「ええいっ!離れろっ矮小な小人族(パルゥム)如きがっ!」

 

「何の騒ぎ?」

 

「ああっ申し訳有りませんっセイズ様っこの汚らわしい小人族(パルゥム)が…」

 

「敵やイタズラでもない限り、どんな来客であっても私かフレイヤ様に一報入れるって話だったわよね、アンタ何様?この()が敵対者やイタズラしにきたように見える?」

 

「それに種族蔑視は良くないわよねえ最近小人族(アルフリッグたち)が幹部入りしたっていうのに…

相手の力量も判断出来ないレベルの木っ端の分際で小人族(パルゥム)ってだけで相手を甘く見ているような奴はすぐ死ぬわよ?」

 

「他所で無様晒す前にいっそこの場で死んでおく?」

 

門番の男は真っ青だ。彼女も先日レベル5になり幹部入りしたばかりだが、発言力で言えば幹部内でも既に上位だ。何せ「女神のお気に入り」だ。

レベル2以下の門番の首など彼女の気分次第で簡単に飛ぶ。物理的にも、だ。

 

「さてと…これも運命ってやつなのかしらね…リリルカ・アーデちゃん、なんでウチに来たのかしら?」

 

「え…(なんでリリの名前を…)それはっその…小人族(いちぞく)の出世頭のアルフリッグ様達を頼りに来ましたっ」

 

「ふぅんちなみに他の3人の名前は?」

 

「次男がドヴァリン様、三男がベーリング様、四男がグレール様ですっ」

 

「おお、よく言えました花丸よ、あいつらも喜びそうね、で、【ロキ】で門前払い食らった後かしら?怒らないから正直に」

 

「はい、最初は【勇者(ブレイバー)】様を頼ろうとしましたがここと似たような感じで門前払いをっ…」

 

「こりゃ小人族(パルゥム)としての仲間意識低くなるのも当然ね…いつの時代も向こうの門番の質って低いのね…こっちも言えた口じゃないけど…」

 

門番を睨みながらそう言うセイズ。

 

「いいわ、どのみちゆっくり話す必要があるわね、私の部屋で話しましょう」

 

「栄養状態もよく無さそうね、まずは、ご飯をきちんと食べてから、後で落ち着いたらでいいわよ」

 

それから、今まで食べたことのないような美味しいご飯を与えられ、風呂に入れられ、身だしなみを整えられてから───

 

「ゆっくり貴女の事情(コト)教えて頂戴?私は急かさないし怒らないし、疑わないから…」

 

それからリリルカはぽつりぽつり自身とファミリアの事情を話し出す。大体原作(ほんらい)と同じ状況のようだ。既にザニス(ゴミクズ)によるファミリア私物化は始まっているらしい。

7年経ってもレベル2のままのカスが牛耳っているような状況は普通に気に食わない。まあレベル2になっただけで二つ名が付くように本来はレベル2程度でもそれなりに少ない貴重な戦力なのだ。

【ロキ】だの【フレイヤ】だのの上位層に居たら忘れそうになるが。

 

「…貴女の事情は理解ったわ…私があのファミリア潰して、貴女だけを引き抜くことは簡単だわ。まだ幼子の貴女は庇護されて当然の立場だもの。フレイヤ様も似たようなこと結構しているし…

都市最強派閥に頼ろうとするだけでも結構勇気が要ることだものね、本来。況してやウチは【ロキ】と違って物騒なイメージしかないし…でもここで私が全部解決しても全部が貴女のためになるとは思えないわ。

だから先日パワーアップした私のスキルの実験台になって頂戴?どんな結果になっても貴女を助けると誓うわ」

 

「ええっと…実験台ってどのようなっ…?」

 

「ちょっと魂に干渉して()()()()()もらうだけよ」

 

このセイちゃんには「チート転生者」を名乗るのに相応しい能力がいくつかある。しかしどれも最初から無双出来る類の能力(モノ)でなく、順次開放型というか、大器晩成型というか、

要は低レベルの時には使いにくい能力ばかりだったのだ。()()()…つまり過去形…私も先日レベル5になったお陰で出来ることが増えてきた。

その1つを使う。スキル【魂術(セイズ)】…「本来魔法スロットの1つを占めてもいいくらいに下界の人間には過ぎた術」だそうだ。

スキル自体は初期からあった。本当に大したことが出来なかったのだ。魂に直接干渉が出来る術───「本来は神の力(アルカナム)の領域」とのこと。

この魂術(セイズ)を使って「魂に欠損が有り、色が認識出来ない」というヴィトー某をこの前癒やした。

私の魂のほんの少しを切り分けた欠片を(もと)に魔力で肥大化させて、その欠損を丸々補ったのだ。真人間になったヴィトーはこれまでの色々を悔いたが、私が、

「これからはその罪を抱えながらその重荷が少しでも軽くなるように善行を成しながら生きなさい」と聖女っぽいことを言って適当に諭しておいた。今はエレボス様の眷属として、

「我が聖女のために力をッ!」とか言いながらダンジョンで順調に強くなっているらしい。元々がレベル4なので普通に強い。モンスターの方はともかく人間の方の血の臭いは大分失せてきたし。

この術を使って要はリリに前世(かつて)の片鱗を思い出してもらうのだ。聖女(フィアナ)の力を取り戻してもらえば前世(かつて)のような武闘派小人族(パルゥム)が出来上がるだろう。

全部を思い出させて前世の全てを思い出させるのはあまりに危険だ。それは現在(いま)を生きるリリの人格を否定することだし、あくまで一部だけだ。匙加減。じゅーよー。

ロキ・ファミリアあたりに使ったらかなり愉快なことになりそうだが、あそこ古代のネームド結構居るし、ベートさんやヒリュテ姉妹、レフィーヤは未だ居ないけど。

まあ、彼らに使うことはないだろう。これからすることは、本来はフィンさんあたりが全て知ったら殺されてもおかしくないくらいの蛮行だ。

だが(フィンさん)(フィアナ)の来世を想って力を奪った結果が「現在(いま)に抗う力まで奪ってしまった」なんて残酷な結果、彼らは知らないままのほうがいいだろう。

 

そうして次の日の朝に戦いの野(フォールクヴァング)に出てくる。広い場所が望ましかったからだ。まだ今は普通に『洗礼』も行われている。まあこの時間は普通に訓練している団員だけだが。

どのみち私がレベル6になったらほぼ無くすつもりだが。

 

「おい、見ろよ、あの格好…」

 

「セイズ様アレやる気じゃあ…」

 

「誰だあの女の子…?」

 

私は戦士と治癒師(ヒーラー)の二足の草鞋(わらじ)を完全に両立させているので滅多に普通の杖を握ることはない。しかし今日持っているのはフェルズさんに作らせた最上級の魔導士用の杖だ。

術者に専念する時のみ扱う。服も儀礼用のローブ。アルフリッグから借りた昔使っていた彼の槍。そんなに重くないので今のリリにも持てる。

私は杖とは別に自分用の槍も持ち込んで地面に置いておく。端っこの方でリリと向き合う。

 

「我が身は女神の娘(フノス)───」

 

まずは起動詠唱、その後はほぼアドリブだ。見た目にも劇的な変化が起きる。毛髪と眼の色が銀色に染まる。

 

「汝の前世(かつて)の名はフィアナ───嗚呼(ああ)勇敢なる小人の聖女よ、凶猛(きょうもう)の呪われし(あか)では無く、勇敢で勇ましき炎のような赤に変え、前世(かつて)の呪いを祝福に変え(たけ)き力よ今ここに蘇りたまえ!」

 

吟遊詩人(リュールゥ)ならもっと上手い詩を思いついたのだろうが、私の文章力ではこれが限界だ。だが、充分な言霊(ことだま)は宿った。

(ディム)が全てを引き取ったはずの呪いだが、その残り香までを消すことは出来ない。その僅かな残滓を利用して膨れ上がらせ思い出させる。

 

「ア?アアア…アアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ!?」

 

騒ぎを聞きつけて見物に来ていたオッタルら幹部達も驚愕する。

 

()()()()…」

 

まだレベル1なので気配そのものは大きくないが誰であっても無視出来ない、荒々しい気配が(ほどばし)る。眼が【ヘル・フィネガス】以上に赤く染まり、槍を凄く鮮やかに振るう。

 

「ふふ…成功ね…リリその槍を私に振るってみなさい、手加減要らないから思いっきり」

 

「え…でも…」

 

「大丈夫…私は強いから簡単に壊れないし、貴女の魂も槍の振るい方、思い出したでしょう?」

 

「う…ハァッ!」

 

リリルカが槍を思いっきり振るう。まだまだ前世(かつて)には及ばないだろうが、その片鱗を感じさせるものだ。

 

「「「「「速いッ!?」」」」」

 

「…しかも結構重いわね…レベル4くらいはあったわよ、今の一撃…」

 

自身の槍で受け止める。そこからは凄かった。幹部ら第一級冒険者達でも眼を離せない二匹の獣同士の喰らい合い。槍の軌跡が閃光と化し、幹部以外には眼で追えない速さになっていった。

 

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」

 

「うらららららああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

「すっご…」

 

「ばけ…もの…」

 

セイズの動きもどんどん吸収し、速さだけでなく技のキレも増していく。やがてリリルカの方は徐々に勢いを減らして力尽き眼の色も戻り倒れた。

 

「───素晴らしい功績よセイズ」

 

こういうとき神様視点だと「素晴らしい見世物」とか言いそうだけど、そこは自重してくれた。結構前からフレイヤ様も見物していた。

 

「その()はどこの子?」

 

「ソーマ・ファミリアです」

 

「レベルは?」

 

「1です」

 

「「「「「「「ハァ!?」」」」」」

 

周りから驚愕の声が上がる。アルフリッグ達も滅茶苦茶私に色々聞きたそうだけど。黙って私とフレイヤ様のやり取りを見守っている。

 

()()()()()()?」

 

小人族(パルゥム)の聖女、フィアナの生まれ変わりでしょう、恐らく」

 

「なん…」

 

「「「だと…」」」

 

急に笑わせてくんなしお笑い4兄弟。実際今までは「100%そうだ」とは言い切れなかった。まあ99%「そう」だと思っていた上に今回ので確定したのだが。

普通なら笑い飛ばすところだし小人族(パルゥム)ならキレてもおかしくないところだが、先程の明らかに尋常でない動きから誰にも否定することが出来ない。

 

「そう。その子はどうするの?ウチに入れるの…?」

 

「いえ…虐げられていたこの()を更にウチの血生臭い『洗礼』にぶっ込むわけにはいきません…今なら普通に頭角を現すでしょうが…」

 

「暫くは【ソーマ】所属のままで大事に育てます。あそこは現団長が腐っていますが、主神はまだ変われる余地がありますから」

 

「後はライラとフィンさん…アルフリッグ達…貴方達も協力してくれる?こぉらフィンさんの名前が出た瞬間に露骨に嫌そうな顔しないの。言っておくけどこの()頭も無茶苦茶良いわよ?頭脳(そっち)方面無理でしょ貴方達じゃあ…」

 

アルフリッグが一瞬フレイヤ様の顔を伺ってニッコリ頷かれるとアルフリッグもパァッと笑顔になって頷く。

 

「ああっ勿論だ!我らの手で育ててあの似非(エセ)勇者の鼻を空かしてやろうじゃないかっ!」

 

「だからフィンさんにも預けるっちゅーねん、まあ年齢差考えずに本気で求婚してきたら手段問わずにぶっ潰すからそこは安心しなさい」

 

ちなみにリリルカこの時8歳である。だがリリルカ・アーデの運命はこの日確かに大きく変わったのであった。端役(はやく)ではない「本物の英雄」の資格を手に入れて。




尚ガリバー兄弟は「聖女様、聖女様」言いながらリリに付き纏ってウザがられて割とすぐに師匠役を解雇されました。 偶にヘディンやザルド、アルフィアまで参加する超英才教育を受けて滅茶苦茶強くなりましたとさ。
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