転生者セイズ・ベルベットの憂鬱   作:エリス

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第30話 品評会

 さて…正史(ほんらい)通り戦争遊戯(ウォーゲーム)が決まったわけだが…ぶっちゃけそう焦る必要もない。ルールも攻城戦だし。ベルも連日の早朝訓練で順調に対人経験も積めているし、

レベル2としては既に対人能力も【フレイヤ】基準でも高い水準にある。焦って特訓を積む必要もない。特にやるべきことは「新入団員」との互いの能力の把握、連携の確認だけだ。

ヴェルフは存在を知らなかったが、2週間前に私が引き入れた「新入団員」がレベル1なのにちょっとシャレにならないレベルで強かったのでなんの心配もない。

ヴェルフと(ミコト)も入団させたし。

例の地下勢力に狙われそうな要素持ちなのだが、エニュオ不在だから私やアルフィアさんがいる限り闇派閥(イヴィルス)程度に襲撃される心配は殆ど無いし。主にアルフィアさんがメインで面倒を見てもらっており、私も直接鍛えている。

ベルの特訓も正史(ほんらい)の世界線でアイズとティオナによって行われたアレも、対人戦の経験不足を補うためのものだろうし。そのへんが既に万全なら焦って詰め込む必要もない。

まあ彼の場合早熟スキルによってギリギリまで成長が見込めるので一気に詰め込んでも無駄にはならないだろうが。既にアストレア・ファミリアの娘達とも仲良いし。アストレア様が「ウチの子達抑えるの大変だった」とか言ってたし。

パーティでのアストレア様の付き添いはアリーゼだったのだが、事前に抑えるように伝えておいて良かったな本当に…

 話は変わるが、精霊の分身(デミ・スピリット)を生み出す「緑の宝玉」というものがあるだろう。私はダンジョンから一方的に養分を吸い上げ、一定の高水準の戦力を送り込んでくる、

【穢れた精霊】の本体の在り方がむかついた。私らは苦労して鍛えてせこせこレベル上げに勤しんでいるのに、だ「なにそれズルい」と。だから「その力をどうにか利用出来ないか」と思案したわけだ。

怪人(クリーチャー)方面…というかレヴィスの方は人間に戻せたとしても味方にするのは無理だろう。元々あまり誉められた人格じゃなかったっぽいし。フィルヴィスが怪人(クリーチャー)化していたら全力で人間に戻すための研究をしていただろうが、その必要もないし。

だから手っ取り早く分かり易く強い精霊の方に注目することにした。*1。元々は人類の手助けのために遣わされたのが神の分霊たる精霊なのだ。

私が利用しても罰当たりにはなるまいて。私は例の【胎児】からモンスターとしての要素を解毒さながらに除去して、残った「精霊の死骸」*2

人体の材料*3

をかけ合わせて半分が人間の人造精霊を創りあげることに成功した。半人半精霊*4誰かしらの神血(イコル)か精霊関係者の血を触媒に、

無色の【精霊石】に火水風雷地光闇の7属性の中から指定して指向性を持たせ安定させる。基本は人間7、精霊3くらいのバランスが黄金比だ。ちなみにアイズもそれくらいだ。

触媒の素になった神の性質と私の中にある「契約者」の資質を持たせられることが出来る。私の資質も勿論。リリやリューのファミリア加入が無くなってしまったので私なりの方法でヘスティア・ファミリアを補おうというわけだ。

ザルドさんとアルフィアさんらじゃ強すぎて今合流させたらバランス悪くなるし。最初に産み出した娘達はその殆どをヘスティア・ファミリアに加入させて、自衛出来る程度に強くなったら、

親元の神のファミリアに希望が合致すれば改宗させる。ロキ・ファミリアは()り合ってる連中が危険なので当分渡さない。フィンさんには熱烈に要望されまくっているのだが。

私の性質を色濃く継承させれば治癒師(ヒーラー)不足の解消にも繋がるからな。基本的に能力のベースは私かつ精霊なので、武力も魔力も高い。

アイズクラスの才能の子達を量産出来てしまうということだ。基本的に戦乙女(ヴァルキュリア)という属性が土台にあるので、女の子しか居ない。

英雄と言ったら普通男性率が高いだろうが、その「英雄に寄り添う」という性質を持っている関係上精霊の大半が女性だが*5ゼウス様の神血(イコル)はヤバかった。

女の子にしようとしたのに(オス)の因子が強すぎて男になりかけてしまったのだ。どこかの地上最強(オーガ)かな?

ゼウス様の禄でもない部分を排除しつつ雷神としての側面や神々の王としてのカリスマな部分だけを抽出して産み出せた娘は最高傑作と呼べる出来となった。

他の雷神の血もかけ合わてみた。トール様やタケミカヅチ様だ。人間としての容姿や能力のベースはヘディンだ。

まんまヘディンを女の子にしたような外見なのだが、見た目は滅茶苦茶可愛い。この事実だけで結構笑える。頭も良いが、性格もまだまだ素直で良い娘なので皆に滅茶苦茶可愛がられている。

これらの行為はフェルズさんから蘇生魔法(ディア・オルフェウス)をコピーしたら出来るようになった。「命を吹き込むこと」への理解度が上がったのだ。

ベル君の【幸運】もコピーしたので最早確定蘇生(ザオリク)だ。魂の概念、死後に天界に導かれるこの世界のシステム上時間経過による限界は有るが。

コストは驚きのオール1500…今までで一番高かった。彼女は勇士や勇士候補という感じでもないのだが、私好みの善人で綺麗な魂の持ち主だ。結局は「私の好みかどうか」っぽいな。契約出来るかどうかは。

 

 

「はい、じゃあ、皆に紹介」

 

「初めましてベル兄様…皆様方…セイズ姉様に産み出された…オルトリンデと申します」

 

「同じくレティシア・セルランドです」

 

「ユースティアです」

 

「プロセルピナです」

 

「スルーズです」

 

「ウルカヌスです」

 

レティシアについては一応ヘディンには許可取ってある。対外的には「親戚」で通すことにしている。ちなみに見た目は全員基本的に10歳くらいの少女だ。普通に人間のように成長するだろうが。

ベル君の半分くらいの効果だが成長補整スキルもある。一部は既に魔力アビリティが3000を越えている。アイズにも本来同じくらいの才能があるはずなので、【ロキ・ファミリア】の育成はへたっぴと言わざるを得ないだろう。

いや限界突破しているのは私の因子が有るからなんだろうけど。アイズの場合才能のリソースの多くを「モンスター特攻」に割いているからなのだろうが、故に対人だとそこまでの脅威にはならない。

私やアルフィアさんらくらいなら同レベルくらいでも力で捻じ伏せられる。

 

───

 

そうして戦争遊戯(そのひ)がやって来た。

 

「フフ…今日はよろしくお願いしますね、皆さん…今は【ヴァイス】と名乗っています」

 

「【(ヴァイス)】か…そのベルみたいな白髪は、染めたのか?」

 

「いえ…セイズ様が賢者に作らせた変装用の魔道具です、顔部分に限定することでほぼ自由自在に変化させられます。フフ…元々『印象に残らない顔』とか言われてましたけど、輪にかけて特徴の無い顔でしょう?

ここ数年は私もこちらの顔の方に慣れましたけど。いえ最近は素顔よく晒してますが…」

 

「とはいえ、今日の主役はあなた方です。私は『適当に【クロッゾの魔剣】を振るうだけにしなさい』と指示されているので…まあレベル3以上なら誰でも出来る仕事ですね、レベル6の武力など期待しないでください…

とはいえ【彼女達】も居るのなら大丈夫でしょう」

 

フレイヤ・ファミリアのホーム戦いの野(フォールクヴァング)内の会議室の1つでは───

 

 

「ええーフレイヤ様の(めい)があったとはいえ、今日は皆様方お集まりいただきありがございます、今日姉はフレイヤ様とバベルの方に向かっているので、私が代理で解説をしていきます。

今日の参加者の情報の多くをヘディン様と共に貰っているので…」

 

「チッ例の兎小僧か…」

 

アレンがいつものように悪態を()くがヘディンとヘイズが苦笑する。

 

「?なんで笑っているんだお前ら?」

 

アルフリッグが不思議そうに聞く。『フレイヤの神意』を聞いた2人からすれば可笑しいのだろう。それと妙なすれ違いをしていた2人への「しょうがねえな」という感情だ。

ヘイズはヘディンから聞かされていた。万一また脱退の意志を見せられても面倒だから、そうならないようにセイズを繋ぎ止めておくための協力者だ。

 

「ええではまずお手元の資料を…今日の【ヘスティア・ファミリア】側のレベル1の参加者の情報です…『彼女達』は【ワルキューレ】と名付けられました。意味合い的には姉の二つ名の【ヴァルキュリア】と同じだそうです。」

 

2人ほどの情報に眼を通したアルフリッグが口を開く。

 

「───前々からおかしい奴だと思っていたが今回はその最たるものだな…『1人目』の方が確かに『2人目』より上だが、どちらも充分にヤバい…

この分じゃ『3人目』以降も能力の方向性が違うだけで総合力は大差無いだろう、こんな奴らが増えたら普通に努力するのが馬鹿らしくなってくるぞ?」

 

「というかヘディン、ヘグニ…お前らエルフ的には良いのか、これ?その精霊の扱いとか」

 

「…構わん大っぴらに出自を公表は出来んがお前ら兄弟がかつて戦った【精霊兵】のような冒涜的な存在(モノ)ではない。なんなら【剣姫】も似たような存在(モノ)らしい。

冒涜的というのなら【ロキ】の連中が()り合っている複数の精霊とモンスターとが融合した精霊の分身(デミ・スピリット)共の方がよっぽどだろう。

それよりお前ら早めにランクアップ出来るよう準備しておけ。アレの大元が居る60階層へ突入させるのは『レベル7以上のみ』だそうだ。

『それ以下はバックアップで、手前の階層で待機させる』だそうだ。奴がその手の判断で誤ったことはほぼ無い。言う通りにするぞ。」

 

未だレベル6以下の幹部達は渋い顔をする。ダンジョン攻略でセイズが居るパーティは危機的状況に陥ったことがない。

とにかく鍛えて鍛えて調べて調べて安全マージンを充分に取った攻略をするのだ。ランクアップに値する【偉業】に挑戦する時くらいだ。本当に危険を冒させるのは。

それも「無理そう」と判断された瞬間に格上が割って入れるような制度も設けさせた。お陰でセイズが幹部に就いてからはファミリアのダンジョン内での死者は0だ。

弟子たちへの無茶は大半が地上での鍛錬で、ダンジョン内での無茶は殆どがランクアップに直結している。

 自分たち最上位層が本当に無茶しなければならない状況は主人公補整でも無い限り下の者達は普通にポンポン死ぬような状況だからだ。

ダンジョン攻略も基本が「予定階層までの到達→撤退」というのが大半の流れである。正史(ほんらい)起こり得た「フレイヤ・ファミリア遠征失敗」というのもまず無い。

事前に誰誰がどこの階層主を担当するかはきちんと決めさせている。獲物の取り合いで遠征中での潰し合いなんて愚かなマネしたらセイズの怒りを買う。

ここ数年で数字にも顕著に現れている。フレイヤ・ファミリアで頭角を現せるのは「主神(フレイヤ)に見出される」かどうかより「セイズに気に入られる」かどうかの方が重要なのだ。

殆ど誰とも組まずにダンジョンへ単独で突貫するような輩は当然死亡率が高い。そもそも「自力で頭角を現せない奴は野垂れ死ね」みたいな蠱毒が()だったので、「普通に後輩の面倒を見る」という概念がほぼ無い。

どこかの世界線でのベル・クラネルへの対応は本当に「特別待遇」だったのだ。これでは普通の人間らしい感情を失って「フレイヤ様の愛を!」とか言う奴ばかりになるのも無理ないだろう。

 

「下を省みないようなファミリアは先細りするだけ、私達が居なくなったらフレイヤ様の地位も転げ落ちるかもよ?かつてのゼウス・ヘラのように」

 

と口を酸っぱくしてセイズは言っているがこの口上はそれなりに効く。「今更馴れ合いなんて」とか言うような奴は大抵取り残されている。三大派閥で頭2つくらい抜けている現在の地位もセイズの功績だ。

 

「…フレイヤ様が『元々セイズは魂からして下界の規格を越えていて、【地上の子】とは呼べない、私達超越存在(デウスデア)の方に近い』と仰ってました。

それと姉は『材料ありきだからいつまでも使え続ける手じゃない、60階層のバケモノを片付けたら倫理的にも不可能になるからそれまでのボーナスタイム』と言ってました。

更に今回の手法を確立させたことによりレベル8にランクアップしたとのことです。上位経験値(エクセリア)を獲得しまくって既に9も近いそうです。

『アビリティ上がるまで当分見送る』とは言ってましたが…」

 

「『いつかモンスター討伐だけではランクアップの限界がくるから何かしらそれ以外の方法を探しておけ』とは言われていたが…やはり奴が真っ先に実践したか…」

 

「はぁ、またか…ファミリアとしては喜ばしいことなのだろうが…他の誰にも不可能という意味でも【偉業】なのだろうな…つくづく奴が味方で良かった…団長を引き受ける気は無いのか?」

 

ちなみにオッタル、アレン、ヘグニはどのみち戦闘しか能が無いので土台無理な話だ。ガリバー兄弟は神話(元ネタ)的にも実際の過去でも手に職をつけているのでマシな方だ。実際にセイズの依頼を受けたこともある。

 

「いえ…『自分は例えオッタル様を戦闘力で越えたとしても団長になる気は無い』と言ってました。『絶対今より忙しくなるからイヤ』だそうです」

 

「そうか…まあそこの脳筋と違って責任感の強いあいつが立場を上げたらそれに見合った仕事をこなそうとするだろうしな…程々の立場である程度自由にさせておくのが正解かもしれん…こういう突飛な朗報も少なくなりそうだしな…ヘディン、副団長は…」

 

「流石に引き受けさせた…対外的にも一幹部のままでは問題あるしな…例の小僧には手を出さないことをフレイヤ様が確約したらようやく引き受けた…もう脱退どうこうを口にすることもあるまい」

 

「それは喜ばしいな…最悪【暴喰】と【静寂】とセイズを同時に相手することも有り得たからな…レベル8が3人とか我らでも不利なのは否めないからな」

 

「【その時】はリリルカ様も敵に回るだろうよ…」

 

次男のドヴァリンがアルフリッグに繋げる。アレンは悪態を()きたかったが、レベル8が3人も揃ったら、確かにどうしようもない。本当に形振り構わなくなったらレオンや【ロキ】、【アストレア】まで動かせそうなのだ。

交渉材料も奴ならいくらでも用意出来るだろう。余計なことを言ってもバカにされるだけなので大人しく黙っていた。

しかもアレンは近頃セイズにデカい『借り』が出来た。いつまでもうじうじしているアレンに業を煮やしセイズが(アーニャ)に変身して大怪我をわざと負い、それにアレンが狼狽えるところをアーニャ本人にこっそり見せて、

2人の仲を取り持ったのだ。アレンは偽アーニャ(セイズ)を抱えてダッシュで並行詠唱しながら魔法を発動させてディアンケヒト・ファミリアに駆け込んで治療を懇願した。

まあアミッドに治療される前に自ら種明かしして自分で治療したのだが。血液を結構失っていたが、それも補えるのが彼女の魔法だ。

「二度とするな」と泣きながらアミッドやヘイズ、フレイヤ達に説教されたのでもうしないだろうが。

一部始終眼晶(オクルス)で中継され、アーニャはアレンの本当の気持ちを知り距離が縮まったのであった。ここ最近の自身の迷走っぷりにも自覚が在ったので、諦めて少しだけ素直になったらアーニャにはグーで殴られるし…

後ろでセイズに「大人しく殴られろ」と睨まれるアシスト付きだったが。耐久はそれほど高くないのでレベル4の(こぶし)はそれなりに痛かった。心はもっと痛かったが甘んじて受け入れた。

正史(ほんらい)のアーニャなら絶対出来なかった蛮行だろう。セイズが味方にいるだけで、度胸がつく…というより調子に乗ってしまうのが彼女のカスみたいな気質だ。

セイズの方も流石に方法的に自分でもどうかと思っていたので、からかうことはしなかったが。アーニャから恥ずかしがって逃げようものならアレンをぶちのめしてでも止める勢いで足止めをするのだ。

実際に停滞していたアビリティも再び伸びるようになってきたし、悪い精神状態が成長に蓋をしていたのは明らかだった。だから表向き認めるようなことは絶対口に出す気は無いが自分より上の立場にいることもそれなりに認めていた。

脳筋(オッタル)よりは絶対マシだし。

 

「さて、そろそろか」

 

主神(フレイヤ)は出張っているので館内に居る雇われの神が【鏡】に繋ぐ。

 

「ええ、では私が参加者達の()の解説をしていきます。どうせすぐに殆どの連中の対策が無意味なレベルで強くなるので…」

 

「資料の序盤に記載しているので1人目の()は…レティシア・セルランドちゃんは…名前の通りにヘディン様をベースに複数の雷神の神血(イコル)をかけ合わせて作られました。」

 

「フレイヤ様と姉は『レティ』と呼んでいます。頭も非常に良いです。あとヘディン様にそっくりで将来絶対美人になりますね、おめでとうございますヘディン様」

 

「なんの『おめでとう』だ…」

 

(というか「雷神」てまさか…)

 

「フレイヤ様は眷属の誰もが子を成そうとしないことに嘆き悲しんでおられたので、彼女達のことを非常に可愛がっています。

あの娘達(こたち)も姉と私の次くらいにフレイヤ様に懐いています。セイズの妹なら私にとっても妹のようなものなので…『可愛い妹が更に増えてもなんの問題もないでしょ?』と姉も言ってました。」

 

(((((惚気(のろけ)ているな、こいつ…))))

 

まあ今更それについては誰も突っ込まない。幹部以外の団員なら大半は羨ましがる立場なのだろうが、立場的にほぼ同格の幹部なら普通にセイズとも関わるし、羨むこともない。

それにヘイズは(セイズ)の足を引っ張るだけの愚図(グズ)ではない。ただ一方的に聖女の愛を甘受するような輩だったら思うところもあっただろうが、

彼女自身も非常に努力をしているし、普通に同格(レベル6)の前衛向けの戦士でも勝ちの目が充分にあるほど白兵戦も強い。

 

「対外的にはあの()は『ヘディン様の親戚』で通すことになりました。年齢的には妹どころかお孫さんでも全然違和感無いんですけどね…」

 

滅んだ故郷(ヒャズニング)の詳しい事情なんて当事者(じぶんたち)以外誰も知らないし、自分達(ヘディンとヘグニ)以外に島を出た者が今まで居なかったわけではないだろう。「まあ、それで誤魔化せるか」とヘディンは思うのであった。

 

黄昏の館では──────

 

ベート・ローガは生来の気質から荒っぽいし口も悪い。しかし彼は正史(ほんらい)よりは大分丸くなった。もし正史(ほんらい)の世界線のロキ・ファミリアの誰かが会えば「誰だお前!?」と突っ込んでしまいそうな程度には。

その要因は「失った物が少ない」とか色々とあるが最大の理由は…

 

「パパーッ戦争遊戯(ウォーゲーム)楽しみだねぇーっ!」

 

「あ、こら、アタシの場所まで取らないのスコルッ」

 

スコル君♂とハティちゃん♀の双子の兄妹の存在である。*6そう彼は二児のパパになっていたのだ。

所帯を持つことになればいつまでもオラつきながら(ヴァナル)ってられない。「パパ恐い」とか「パパきらい」とか言われた日には自害し兼ねないからだ。

冒険者はあんまりお天道様に誇れる商売でないが自分らくらい上澄みになれば安定して家族を食わせてられる。

尊敬されている団長(フィン)がDT疑惑がある中で、副団長(リヴェリア)を筆頭に喪女の集まりとなっているロキ・ファミリアの中では2人はアイドル的存在だ。ロキも非常に可愛がっておりフレイヤに自慢しているとかなんとか。

尚フレイヤ・ファミリアも実態は似たようなものである。主神でDTを捨てたことに満足して、子孫を全く残そうとしないから、

「生物として失格じゃない?」とか「無駄に美形揃えているけど本当に無駄なお飾り*7」とか「ウチって穴兄弟ファミリアよね()」なんてセイズには酒の席の鉄板ネタで嗤われている。*8

 

「こらチビども喧嘩すんな。今日の戦争遊戯(ウォーゲーム)は低めのレベルの割には間違いなく面白いモンが見れるだろうぜ、大人しくよく視ておけ」

 

「アイズ最近アルゴノゥト君達とも訓練してたんでしょ、どんなモンなのぉ?」

 

「うん、私より早くセイズさんやアルフィアさん達に鍛えられていたみたいだから…もうレベル2としてはかなり強いよ…太陽の光寵童(ポエブス・アポロ)とタイマンまでいけば…普通に勝てそうかな?」

 

「それはまた、なんとも…豪華だね…」

 

「【アストレア】の人達にも可愛がられているし…」

 

ちなみに傍で聞いていたレフィーヤは正史(ほんらい)なら「女性達に可愛がられてデレデレしているのでしょう!」とか勝手な憶測で理不尽な怒りを向けていそうなところだが、

「可愛がり」のニュアンスがアレなのも近くで見ていて知っているので、ちょっと同情もしている。

セイズの教えは確実にレフィーヤの血肉に成っているので、兄妹弟子として苦楽を共にすれば、自然と距離も縮まる。

新たな師匠(セイズ)への反骨心は未だ0では無いが表立って反抗する気は皆無になった。レベル6が3人がかりくらいでも強引な

力業(ちからわざ)だけでなく技術を用いてあしらうような神業に、見惚れたからだ。武術はほぼ素人でも腕を上げれば嫌でも()()()ものだ。才能「だけ」でなく努力もしている本当に尊敬出来る遥か高みにいる冒険者なのだと。

最近は彼女の弟子たち(アミッドやヘイズ)まで参加するようになって、訓練相手にも抜擢されぼこられるようになった。

精神力(マインド)を節約出来る方法を身に付けとけ」と「仲間も武器も魔力も尽きたら結局最期に頼れるのは己の身体のみ」と彼女ら全員が

習得している、杖術(じょうじゅつ)と拳法でボコボコにされた。わざわざ自分と同じくらいのレベルの身体能力まで落として。そのくらいの身体能力でもモンスターを容易く弾けさせているのを眼前で実践させられてはその有用性にも気付けるものだ。

まあ「モンスターを弾けさせるのは体液が付着してパフォーマンス落ちるからあまりオススメしない、トドメは他の武器でか仲間に譲るほうがいい」とも言われたが。

元々は「武の才能が低くても前線で安定して支援出来るようにするための護身用」としてセイズが妹のために開発したものらしいのだが、彼女らくらいのレベルと練度になると深層クラスでもなければ普通にモンスターを一方的にボコれるらしい。

そろそろ正式に名付けたいらしく、神タケミカヅチの監修が入りまくっているので「武神流」か「タケミカヅチ流」「フレイヤ流」「セイズ流」「聖女流」で色々と候補が有るらしい。ちなみに「武神流」と名付けると閃華裂光拳*9とか使い出す。

理論上セイズには不可能でもない。アミッドは概要だけ聞いて真っ青になっていたので気質的に無理だろうが。なんだかんだそれなりに白兵戦が出来る元々の師匠(リヴェリア)でさえも、「魔法抜きでは彼女らに一方的に倒されるだろう」と認めている。

【ロキ】には居ない精度の治癒師(ヒーラー)が揃っているので、ホームでは出来ないレベルでの訓練も出来るし、訓練場での攻撃魔法は広域魔法は流石に禁止されたが、【アルクス・レイ】だけは許可された。

「広域殲滅魔法は強力な分負担が大きいし使い所も限定的だから、上目指すならとにかく発動の早い【アルクス・レイ】を極めなさい」と言われた。まあセイズらレベル7には強引に素手でも弾かれるのだが。

思えば彼女が好んで使う攻撃魔法は発動が早いアルフィアの音魔法と【白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)】の雷魔法、後はアリーゼの炎魔法くらいだ。その人脈と種族に縛られない性質から引き出しそのものは自分以上に多いらしいが。

その気になればリューやアルフィアと同レベルの並行詠唱、超長文詠唱をしながらの白兵戦も出来るらしいが。

「みんな少ない手札でもそれを鍛えて極めて戦っているんだから貴女もまずは自分の元々の魔法のアルクス・レイとヒュゼレイド・ファラーリカだけを極めるのに集中して、【エルフ・リング】の方は今は能力集めだけに集中しなさい」と指導された。

最初の内は魔力と耐久以外殆ど上がらなかった訓練も最近は全体的に高水準に上がるようになってきた。

今は普通にレベル3の前衛の同僚を白兵戦で一方的にボコれるくらいには強くなった。ラウルあたりを相手にしてもそこそこ戦える程度にはなってきた。

アキやアリシアはまだまだ難しいが防戦に徹すればそこそこ保つ。セイズのいる【フレイヤ】が全体レベルでこの水準以上というのなら今の一強状態も頷けるものがあるだろう。

最近は「鉄拳妖精」だの「頭フレイヤ」だの揶揄されるようにもなってきたし…ちなみにアミッドやヘイズは【撲殺天使】*10だ。「昔はよく脱退の意志を口にしていた」とのことらしいが、最近は口にすることが無くなり確実に定着していってるらしい。

フィン達からすれば喉から手が出るほど欲しい人材だったはずだろう。「【ゼウス・ヘラ】の遺志を直接継いだ彼女の期待に応えられなければ見限って脱退していた可能性もあった」とも。

今のフレイヤ・ファミリアは彼女の期待に応えられたということだろう。実際に正史(ほんらい)と同じ程度のままだったら見限って【ロキ】の強化に注力していた可能性は高かった。

だがオッタルだけでなく、ヘディンやヘグニも確かな【希望】を見せてくれた。普通に慕ってくれる後輩も増えたのでファミリアそのものに愛着も湧いている。後はベルに強引な手段を使わなければ、脱退することはまず無いだろう。

 

「ロキは【鏡】繋いですぐバベル向かっちゃいましたね…」

 

「『アポロンのアホ(ヅラ)拝めるのも最後やからなぁ』とか言ってたよねえ」

 

「ロキも【ヘスティア】の勝ちほぼ確信していたみたいよね…」

 

「まあ『セイズがつく』というのは()()()()ことだ…」

 

「それって【例】の…?」

 

「『不敗神話』ってやつですか…」

 

実際にセイズが味方についた戦場では敗北をしたことがない。「ダンジョンで欲をかいて」というのもまずさせない。暗黒期での対人戦でもそうだ。

彼女が味方にいれば最悪でも仲間を治療をして「引き分け」にまではもっていけるからだ。レベルが上がってからは【常勝不敗の戦乙女】とも呼ばれているが。

 

「【アポロン】連中は普通の買い物にも支障が出だして、少しの間食えていなかったらしい。セイズからの『万全な状態でなきゃ意味がない』という鶴の一声でなんとかなったようだが。

だが、医薬品や武器はノータッチだからそちらは殆ど取引が停止されたままらしい。『聖女の怒り』というものをみなが恐れているらしいな、全く奴はそこまで狭量な奴でないというのに」

 

リヴェリア達古参幹部からセイズへの評価は無茶苦茶高い。暗黒期では共闘することも多かったし、アイズの一番手のかかる時期に面倒を見てもらったのだ。最近でも、だ。

 

「あいつが直接参加するわけじゃないから確実なことは言えんが、まあ勝つだろうよ」

 

「うん、『私の妹』みたいな子達もいるらしいし…大丈夫だと思う…」

 

───

 

 

バベルでは戦争遊戯(ウォーゲーム)の鑑賞会を兼ねた、臨時の神会(デナトゥス)が行われていた。正史(ほんらい)のゲストはアスフィであったのだが、もっと相応しい私がお呼ばれしてしまった。

まあヴェルフ以外は全員弟子のようなものだし、そのこと特に隠していないしもう。特に断る理由も無いからそのままやって来た。

 

「いいんですかね…人間の私がこの場にお邪魔しても…」

 

「この場で貴女が居ることを反対するような空気読めない輩は居ないわ…」

 

まあ99%そうなんだけどイシュタルだけは不快そうに私達を睨んでいる。

 

「神聖な場所」とかはこれっぽっちも思っていない。こいつらがちっとも崇拝するに値しない連中だとは知っているからだ。ヘスティア様やデメテル様は尊敬はしているが「崇拝」まではいかない。

数少ない善神(とくれい)は直接関わって一個人レベルで慕っているだけに過ぎない。そもそもが前世の感覚でも大半の神々が民間伝承レベルにまで零落しているし。聖書の神あたりでも居れば少しは違ったかもしれないがどのみちキリスト教徒でもないし。

 

「あ、この場を借りてついでに報告させてもらいますが、私もレベル8になりましたよ」

 

「マジで…!?神時代初の快挙じゃね!1つのファミリアに2人のレベル8…!ゼウス・ヘラも単独のファミリアだったわけじゃないし…」

 

「流石フレイヤ様と俺達の聖女様だぜぇ!」

 

「ヒャッハー朗報だぁ!」

 

「わ・た・し・の・よ?間違えないでねもう…口さがない愚神(バカ)はうっかり潰しちゃうかもしれないから♪」

 

やっぱりこの連中を崇拝するのは無理だな…フレイヤ様の私への独占欲も今に始まったことじゃないが…まあ自分の眷属でもなんでもない頃からベル君に独占欲見せてた正史(ほんらい)のフレイヤ様はちょっとキモかったしそれに比べればマシか…

自分の眷属そっちのけでアレなんだから同僚連中が哀れすぎる。まあもし実際に会うことがあったら団長以外の幹部は指さして笑ってやっただろうが。

嫉妬に狂って叫んでいるヘディンも嗤ってやりたかったがどうもこの世界ではそうもいかないらしい。*11私の今回のランクアップも長年の憂いが無くなったからってのもあるだろうな。

これでフレイヤ様が自分の言葉撤回して「キャーやっぱりベル最こーう!無理矢理にでも頂くわー!」とか言い出したら、オラリオがガチで滅びかねない。

今のフレイヤ・ファミリアと私が割れてザルドさんらとアストレア・ファミリアと組んで敵対して潰し合うなんて悪夢でしかない。天界(おそら)のディオニュソスもにっこりである。

レベル9が率いて負けた以上、黒竜本来の地力は正攻法だとレベル10以上が居なきゃ厳しいのだろうが、それでもレベル8は正史(ほんらい)ならこの時代にはもう存在しない貴重な戦力だ。

私もレベル10以上は当然目指すが、【偉業】の内容的にも厳しくなってくるだろう。同格の貴重な冒険者同士で潰し合うとか冗談じゃない。

まあ過去のゼウス・ヘラはそれに近いことをやっていた挙げ句のあのハイレベル帯だったらしいが。結局ロキもフレイヤも彼らの猿真似、後追いしかしていなかったわけだ。それじゃあ彼らを超えられないし、黒竜はもっと無理だ。

殆ど正攻法だけでここまで上げた私をもっと称えるべきだろう。

 

「ねえねえどうやって今回ランクアップしたのぉ!?参考にさせてよぉ!」

 

「どうせ誰にも真似出来ないからなんの参考にもなりませんよ」

 

ヘルメスやエレボス様はくつくつ笑っている。彼らにも神血(イコル)を提供してもらった関係上【偉業】の内容は知っているしな。ロキ様も何気に私があげた子を連れている。普通のペットと周りに勘違いされているみたいだが。

 

「静粛にっ!今日のメインはあくまで彼らですよ。あんまりうるさいと解説役投げますよ」

 

「このちょっと前に加入した子達…えーっとレティシアちゃんにプロセルピナちゃん、ユースティアちゃんにウルカヌスちゃんにスルーズちゃん全員聖女様の弟子ってマジ?」

 

「マジですよ。全員が素晴らしい才能の持ち主で私の義妹(いもうと)のようなものです。まあ一番可愛いのは実妹(ヘイズ)ですけどね。そこは譲れません」

 

プロセルピナは神話のデメテル神の娘の女神ペルセポネのローマ神話における別名だ。この世界では団長とはいえ一眷属でしか無いので名前の由来がバレることはない。

見た目はまんまロリデメテル様。愛称は「ルピー」だ。使用した神血(イコル)はデメテル様と、同じ豊穣神として本神(ほんにん)同士の相性が良いフレイヤ様、夫であるハデス神は地上に居ないらしいので属性的に近いエレボス様と、

神話で父親とされるゼウス様の血もちょこっとだ。司る属性は地と闇。複数の神血(イコル)を掛け合わせるのは相性が良ければ可能、複数属性も3つくらいまでは可能だ。

あんまり沢山の属性を1人に持たせようとすると【穢れた精霊】のように歪な存在になりかねないのであまり欲張れない。

ユースティアはアストレア様の別名をちょっと文字っただけだ。愛称は「ティア」、女神アストレアのローマ神話における別名の【ユーステティア】をちょいもじっただけだ。

まあ見た目もちっこいアストレア様なので、アリーゼ達には熱烈な視線を浴びせられているが、少なくともあと1年はヘスティア眷属だ。司る属性は光と炎、魔法無しの個人の武力なら一番高い。

ウルカヌスはヘファイストス様の別名だ。司る属性は火と地、見た目はロリヘファイストス様だ。顔は普通に綺麗なままなので眼帯はしていない。ヘファイストス様とヴェルフの血をかけ合わせて作った。

愛称は「ウル」元々は男神の名前とはいえ女の子っぽい響きになってはいるだろう。司る属性は火と地。皆回復魔法持ちなのだが彼女だけは発現していない。

オルトリンデは…名前そのものはワルキューレの姉妹にも元々あるが容姿は某運命ソシャゲを元にした。この世界ではヘスティア様の神血(イコル)を使い、

見た目はまんま「胸の無いヘスティア様」だ。ロリ巨乳は普通の人間からすると有り得ないしね。まあ成長すれば普通にデカくなるだろう、おっぱいも。

属性は光と火、ヘスティア様の権能も一部引き継いでおり、元々はこの()が大本命だった。

私と同じ【魅了の完全無効化】能力を持ち、また他の複数人にも付与出来る。ヘスティア様が【権能】を振るう時は本来よりかなり少なめの仕込みで済むであろうサポート能力を持っている。

当初はフレイヤ様対策だったが、まあ普通に戦っても強い。属性は光と火、名前の意味は「剣の切っ先」なので槍使い(ランサー)ではなく剣士(セイバー)だ。

ヘスティア様の火は破壊の炎とかではないので、守りに長けた能力配分になっている。攻撃も普通に強いが。各々が自身の属性に合わせた強力な魔法を持っている。あと殆どが回復魔法を使える。

 

「お、始まりましたね…」

 

鏡の中の映像では、アポロン・ファミリアが居を構えるシュリーム古城跡地に向かって、ヘスティア・ファミリアの面々が駆けていく。

だがすぐヴァイス(ヴィトー)がすぐ突出していく。彼はセイズが大分前からアルテミス・ファミリアに出向させていた。

「謎の覆面フリー冒険者リューさん」が居ないので代理にと、蓋を開けてみればアホほど戦力が揃ってしまったので別に居なくとも勝てたのだが。

流石に年単位の仕込みを使わないのは勿体なかったので「兄弟分からの刺客」というシチュも結構美味しかったのでそのまま使ったのだ。

本気で暴れられたらゲームになんないのできちんと手加減はしてもらうが。それを追うようにして駆けて行く面々。

 

だがワルキューレの面々が光の翼を生やし空に空に飛び立っていく。

 

「「「ハァ!?」」」

 

「「とっ飛んだァー!?」」

 

翼を持った乙女たちがヴィトーの速度に追いつき城に向かっていく。

 

先頭はレティシアだ。

 

「【雷の(サンダー)

 

宙空に飛び立ち右手からその少し頭上に(いかずち)のエネルギーが収束していく。

(レイン)】」

 

巨大な雷球が弾けて雷撃の「雨」と呼ぶにはあまりにも大きな無数の粒が城の上部に陣取っていたアポロン側の眷属に降り注ぎ次々と討ち取っていく。

 

「アレはヘディンの…!?」

 

「カウルス・ヒルドだと…っ」

 

「…厳密には違う魔法らしいです…」

 

ヘイズが解説する。ヘディンからの視線が痛い。敢えて解説役を奪わないようにセイズが作成した資料にはおおよそのスペックしか記載されていない。

与えられた情報量も参謀(ヘディン)より(じぶん)の方が多いらしい。全く嬉しくない気遣いだ。

 

「彼女の攻撃魔法は資料の通り【サンダーボルト】一種のみ…アレはスキル【雷帝(らいてい)】…効果は『雷単一属性の魔法なら全て模倣出来る』のとのことです。

イメージ力が重要らしいので一度直接見た方が効果は上がるらしいですが、別に見なくても模倣出来る程度に自由度は高いらしいです。

あとあの魔法自体にチャージ能力も付加されているらしくて溜め時間(チャージタイム)に応じて出来ることの範囲が変わっていくみたいです…

詠唱文は『雷に関する単語(ワンワード)さえ入れるだけでほぼ自由自在…』」

 

「アレがレベル1…?」

 

「はい…レティシアちゃんだけは魔力アビリティが3000を超えているらしいですが…」

 

「それはもうレベル2より強いんじゃないのか?こんなのが既に10人くらい…?しかも他のファミリアにまで?」

 

「はい…今後の【戦果】次第で『もっと増やせる』とのことです。今回の戦争遊戯(ウォーゲーム)後に『ある程度幹部の要望(リクエスト)は聞く』とのことです。

ただし『容姿についての希望は一切聞かない』と。『ウチの連中に聞いたらどうせフレイヤ様みたいな()を希望するから』とのことです。『フレイヤ様似は既に2人いるからそれで満足しろ』と…。」

 

「それでウチに入るのは…」

 

「2人です。というか既に入団しています。教育係は私達姉妹に任せられました…」

 

「『更に増やせる』というのなら本来なら派閥乗っ取りとかを危険視するところだが、まあお前ら姉妹に限ってそれはあるまいて…」

 

「いえ、寧ろ…」

 

「?」

 

「あの娘達(こたち)が姉に従順なことを考えると、他派閥を乗っ取ろうと思えば出来る気もします…」

 

「だがこの性能の高さを見れば他の神々も受け入れざるを得ないというわけか…」

 

「それに姉にそんな意図はないかと…色々な神血(イコル)を手に入れて最終的にはオラリオそのものの底上げをするために取引材料にしただけかと」

 

「それに『戦力的に守れそうで眷属を大切にしてくれそうな所にしか入れさせる気は無い』とも言ってました…」

 

「だから【ロキ】と【アストレア】か…は?【ヘルメス】?というか【ヘスティア】は戦力的にそうでもないだろう…いや善神(よいおかた)とは聞いているが…」

 

「神ヘルメスは…アレでも眷属を大事にしているらしいので…あと『有能かつ友人であるアスフィさんの負担を減らすため』とも…あとヘスティア・ファミリアはこの戦争遊戯(ウォーゲーム)後に

ザルドさんとアルフィアさんが入団する見込みとなっていますので…『ある意味ウチの次くらいに安全』と。」

 

「「「はあ!?」」」

 

「もしかして奴がヘスティア・ファミリアに入れ込んでいたのは…」

 

「間違いなくベル君だけじゃなくあのお二方のこともあったでしょうね…改宗先候補だったのでしょうね、きっと…姉が仲良いまま定着してくれて本当に良かったです」

 

───

 

「じゃあ上は任せますね、みんな…」

 

レティシアだけが妹達に任せて降り立つ。上の敵は一掃済みなので楽にそちらからも侵入出来るだろう。

仲間たちは既に城の付近で待機していた。

 

「じゃあルピーお願い」

 

「はい姉様【大地の怒り(アースクエイク)】!」

 

城が揺れる。極東出身の(ミコト)はすぐ思い当たるがオラリオの住人には見慣れない現象だ。

ガタガタ激しく揺れて城がそのまま崩れていく。

 

城内では───

 

 

「馬鹿なぁー!?なんだこの揺れはッ!?先程の雷撃が止んだと思ったら…!」

 

「おいおいおいおいやべえよこれ崩れるんじゃないか!?」

 

そうこう言っている内にガラガラ城が崩れていく。カサンドラは「せめてダフネだけでも」と逃がそうとしていたのだが、いつもの如く信じてもらえなかったのでどうしようもなかった。

まあ「聖女(セイズ)が関わっている相手」というだけで今日の相手にはファミリアの大半がダフネ含めて引け腰になっていた。一般人には白い目で見られるし…

セイズは唯一といっていい「予知を信じてくれる人物」だったのでカサンドラからしてみても崇拝の対象だったのだが、「耐えられなくて脱退したいのならいつでもダフネと2人一緒に抜けさせてあげるから」とも言われていた。

「あんなに優しくしてくれたのに弟子を奪おうとするなんて」と引け腰になっていたのだが、そのままズルズルと開戦してしまった。

その結果がコレだ。辺りは死屍累々だった。レベル2はなんとか動けるものが多いがレベル1は完全にノビている者ばかりだ。

そして瓦礫の山に座り込んでいる自分にはひたりと刃を首に添えられた。

 

「このまま大人しくしていてください…セイズ姉様は貴女のことも気にかけていたので、降伏するなら悪いようにはしないです…」

 

ユースティアだったっけ。妙に神アストレアに似ている。

 

「えっと…他の人たちは…?」

 

「仲が良い」と言えるのはダフネだけだが「それ以外の全員どうでもいい」とまでは流石に言わない。まあダフネ以外の連中よりは自分の方が優先度は高いが。

 

「普通に倒すだけです。ほら兄様達がどんどん倒しているでしょう、あなた方を。あのまま普通に全員平らげてもらうだけですよ。

 

「あっ」

 

ダフネがふっ飛ばされた。雷を纏った2人組の男女にふっ飛ばされる。しかも片方は10歳くらいの幼女だ。エルフとはいえ。

 

すぐ近くで雷を纏った2人組の男女が次々と薙ぎ払っている。ちなみに上空から城に侵入を試みようとした姉妹達は城そのものが崩れて無駄骨になってしまった。

 

───

 

「アレはっ…!?【ラウルス・ヒルド】!?」

 

ヘディンが驚く。第3魔法が発現してから実際に使用出来る相手も居なかったが、セイズ相手には試したことはある。その後にきっちりコピーはされたが。2人同時に纏っているが効果は酷似している。

 

「いいえ、アレはヘディン様の魔法と精霊魔法の【カエルム・ヴェール】との併せ技みたいなものです。本人は【雷の衣(サンダー・ヴェール)】と言ってましたが…

ヘディン様のような回復効果はなく、見ての通り自身にも纏えるので、支援特化というよりは『支援も自己強化も両方出来る』というのが正しいです」

 

「そうか…砲撃魔導士としてだけでも私以上になれる潜在能力(ポテンシャル)があるのに、近接戦でも自己強化も出来る魔法とは…」

 

正直滅茶苦茶羨ましい。そもそも【支援特化魔法】というモノが自分に合っていないのだ。あんな魔法(モノ)があればヘグニ相手に近接戦で遅れを取ることはなくなるだろう。

自分以上に遠近隙が無さすぎる。更に空まで飛ばれたらどうしようもない。他の姉妹達もほぼ同格らしいが成る程…【傑作】と言うわけだ…

 

「新入団員というのはアレみたいな奴らなのか?」

 

「ええまあ、概ね…」

 

「成る程…他所の派閥にも渡すのは旨味を与えて余計な詮索を防ぐのと、都市内のパワーバランスを保つためか。唯でさえ現在でも派閥としては我らが突出しているのに、一派閥だけであんなの全員独占していたら危険視もされるだろうしな…」

 

「ええ、それもありますが…『最強であるのは悪くないことだが完全な一強状態は他所の派閥の人間を舐め腐るようになり問題行動が増えるだろうから』と危惧していました…」

 

(もっと言えば「向上心が低くなりそう」というのもあるか…その点についてはウチはあまり心配はないのだが)

 

「かつてのゼウス・ヘラのように…か」

 

「ええ、そのようです」

 

「まあ、奴もそこまで考えているのなら構わん。だが『今の三強くらいが丁度いい』と言っていたのにこのままでは【ヘスティア】含めて【四強】になってしまうのではないか?」

 

「いえ寧ろ…『彼らは今の三強(わたしたち)に何かあった時の予備』だそうです。『歴史(うんめい)を変えまくってしまった責任があるから絶対にしくじれない』と。」

 

そうこう話している内に映像の中ではベル・クラネルがバフも切れた状態の完全な一騎打ちでヒュアキントスを下してしまった。

 

「フン…奴らが期待するだけのことはあったか…だがセイズはこの戦争遊戯(ウォーゲーム)を【品評会】にするつもりだったらしいがワルキューレはほぼ2人だけの活躍になってしまったが…いいのか?」

 

「ええ『最低1人…2人だけでも力を示せれば充分』と言っていましたから大丈夫でしょう」

 

ヘイズがそう言って締めると映像内の戦争遊戯(ウォーゲーム)も【ヘスティア】側の完全勝利で終結した。

*1
イシュタルと発想が被っているのが若干不満はあるが

*2
【精霊石】と名付けた

*3
酸素65.0%、炭素18.0%、水素10.0%、窒素3.0%、カルシウム1.5%、リン1.0%、硫黄0.25%、カリウム0.2%、ナトリウム0.15%、塩素0.15%、マグネシウム0.05%

*4
「半人半霊」と呼ぶと某庭師のようになるのでそうは呼ばない

*5
一部例外アリ

*6
ちなみに元ネタでも双子だが性別不詳

*7
ロキ・ファミリアも

*8
ちなみにフレイヤ女性陣もセイズを筆頭に喪女の集まりなのも深く突っ込んではならない

*9
ダイの大冒険の元僧侶の武闘家の必殺技。回復呪文で治癒力を異常なまでに促進させて細胞を壊死させるという「生物には絶対に効く」という触れ込みの恐ろしい技

*10
「ドクロちゃん」と読ませたい

*11
普通に畜生




フレイヤFで話していたのはヘイズとヘディン以外はほぼ四兄弟のみ。
他の3人は話を振られない限り基本ダンマリ。
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