転生者セイズ・ベルベットの憂鬱 作:エリス
イシュタルはフレイヤが大嫌いだ。だがそれと同じくらいに
「最も美しい女神には最高の眷属が相応しい」とかも。この地上の名誉は全て奴らが手にしているようなものだ。フリュネが奴を襲ったことなど数知れないが、「必ず連れて来い」という命令だけ下して、後は好きにさせていた。
結構前からお気に入りだとは知れていたので、「人質に出来れば後はどうとでもなる」と思っていたのだ。だが奴はフリュネの襲撃を全て撃退し切ってランクアップまでした。
ボロボロのフリュネを引き摺って自分の元にまで連れて来て
「
と良い笑顔で言われた。自分の魅了は一切効かなかった。
更に「こんなゴミカスに好きにさせている時点で貴女の器も知れますね
「エレシュキガル様居ないんですか、エレシュキガル様───貴女なんかよりよっぽど尊敬出来そうだし会いたいです」
その後も的確にこちらを抉る言葉を浴びせ続けて…と言うかなんであの
それに奴が「
「自分は醜いバケモノ共に頼るしか無いというのに…」と、勝手にイシュタルの
「今に見てろよォ…小娘共ォ…」
夜の街───イシュタル・ファミリアが取り仕切る歓楽街。極東から騙されたりモンスターに襲われたり盗賊に売られたり、あれよあれよと波乱万丈の人生を送ってこの地に落ち着くことになった、
極東の元貴族の
だが、最近は夜の時間が楽しみになっていた。その理由は───
「春姫ッいつもの上客からの指名だよッ!」
ああ、またあの人だ。あの方ならいつでもおっけぃなのに頑なに私を抱こうとせず、どこか
「オラリオは同郷の人が少ないから共に語り合えるだけで充分」と言って。実際に「
物凄く金払いが良くて、あの人以外の客を取れたことがないのに何故か売上で1位になってしまったくらいだ。興味を持ったフリュネさんや他のアマゾネスの人達も襲おうとしたらしいが、いずれも撒かれたらしい。
「
「ああ、春姫、今日も
今日も優しい手つきで撫で回してくれる…
はいなんかラスボスの一角扱いのファミリアでどこぞの鬼畜眼鏡に副団長の座を押し付けられたセイちゃんです。
私は今ポンコツエロ狐を変身した状態で撫で回している。
フレイヤ様に見せたら顔はまんまほぼ
喋り方は雰囲気出すために適当にジジイ言葉にしているだけだ。私という特級のチートに加えアーディも生存している以上「必須」というほどではないのだが、使える手札は多いほうが良い。
ここでの時間は物語的にはベル君に助けられるまでのカタルシスのためのスパイスということになるのだろうが、普通に無駄だ。彼女はイシュタルみたいなカスが持つには過ぎた宝だ。
ステイタスの基礎アビリティというものは使い込むほど伸びる。成長速度も限界にも個人差があるが。
だから「身体を動かさずに無駄に魔力のみを消耗し続ける」というダンジョン内では絶対行えない普通なら無駄の極みの現象もきちんと意味があるのだ。「耐久訓練」とか言って拷問じみたボコり方をするのはなんか違うと思うが。
私はフェルズさんに「唯身に付けておくだけで魔力を消耗して鍛えられるアクセサリ」というものを注文した。他のアビリティはともかく、魔力だけは伸ばせるようになるわけだ。
ちなみに腕輪型だ。デザインはガリバー兄弟に担当させた。彼らが作った後にフェルズさんが
ウチと【ロキ】や【アストレア】の何人かとアルフィアさんらにも同じ物を配っている。ダンジョンに潜るときは当然皆外させているが。
レベルや【精癒】持ちに応じて負担の大きさで種類を分けて、使い分けているが。
兄弟は私の「貰って嬉しい程度には綺麗だけどあまり目立たないデザインで」という結構難しい注文に応えて見事に作り上げた。あんまり目立つとフリュネあたりに奪われそうだからな。
フレイヤ様曰く「上位
イシュタルは春姫のことを「儀式の道具」としてしか見ていないので滅多に更新はしないから急激な魔力の上昇もバレる可能性が低い。
ペース的に多分999でカンストしている頃だと思うけど。護衛の人員や対象人数、消費魔力等諸々を考えると私の方が圧倒的に汎用性は上だろうが。私は味方を強化しても全然普通に自分でも戦えるのだ。
アーディも元々の上がり幅的には私と似たようなものなので、ただ現時点ではレベルの分だけ私の方が性能で上回っているだけだ。
アーディも私ほどじゃないが、自分でもそこそこ戦えるし、護衛の人員など必要無い程度には強い。まあ結局「全員の力を併せるのが一番強い」という結論に落ち着くわけだが。
実際【ココノエ】が十全な性能を発揮出来れば私でも唸るほどの性能になるが、現時点での【ウチデノコヅチ】だけでは大した物でもない。そして
私の【
私は精神の異常に敏感なので、魅了にどっぷり浸かっていた頃のアイシャさんを正気に戻したら、やたら信頼されるようになった。それで元々事情は知っていたのだが勝手に春姫の事情を話されて託された。
フレイヤ様も「私がやたら構っている」ということで能力含めてその存在を認知しているが大した興味は無いらしい。
フレイヤ様は最初からある程度光るモノを持っている存在にしか興味を持たないんだよね。ベル君くらい綺麗なら最初は弱々しくても構わないらしいけど。近い視点を持ちながら私とフレイヤ様の好みは全然違う。
汚く醜く歪んでいない限りは弱々しい子にも
最初は弱々しかった子達が自分の手で徐々に磨かれて輝いてく様子を眺めるのは普通に気持ち良い。今は弱々しい春姫にも「芽」がないわけではない。小一時間春姫と戯れた後、アイシャさんに呼ばれる。
「【
「えぇ?そこまででしたか…?」
「ハァ…アンタは自分に対しての好意に鈍いねえ『滅茶苦茶顔が広い』って聞いているのに…あたしゃアンタ周りの人間関係を知るのが恐いよ…」
「それで…次の満月の夜に…『儀式』を決行するつもりなんですね?」
「ああ、そのままアンタらの所に攻め込むつもりらしい」
「はあ…
「アタシもそう思うんだがね、レベル7が2人にレベル8が2人とかどう考えても無理だと思うんだがね…」
「あんまり私達を舐めないでください、貴女達程度がドーピングしたところでアレンやヘイズはおろかお笑い四兄弟程度にも勝てないですよ?レベル4ですらタンムズくらいしか居ないのに…勝てるわけないじゃないですか…」
「『地下のバケモノ共が居れば勝てる』って…」
「それは
まあちょっと引くほど数が多かったですが…3桁以上ならまだしもあの程度のが10体未満程度じゃあ、私1人にも通用しませんよ?大体制御出来ないバケモノに何の価値があるのですか…
自身の器を見誤って手を伸ばすべきでない領域にまで手を伸ばして…フリュネ如きにも散々手を焼かされているのに学習能力無さすぎ、頭スッカスカですよね本当に…」
「だから私達が手を下さなくても『
既に
良かったですね。まあフリュネだけは改めてボコりますが。ヘルメスが持ち込んだ
根拠の無い自信では無い…圧倒的な実力に裏付けされた自負と、冷静に彼我の実力差も見極めた上でイシュタル様を
「はあ…アンタに相談したのは正解だったよ…アンタを敵に回すとか冗談じゃあない」
「他の
「…騒がしくなってきましたね」
ベル君が
全く「この件は任せなさい」と言っておいたのに…ベル君へのちょっかいでアルフィアさんが動き出したら、ここまでウチの連中抑えておいた意味が無くなる。
歓楽街の火の海は避けられてもベル君の安全確保した後【ジェノス・アンジェラス】なんか撃たれたらなんの意味もない。
「今夜もう終わすか…」
これ以上長引かせる意味もないし。ベル君と春姫も会ったようだし。
「は?どういう意味だい!?」
アイシャさんが声を上げるが知ったこっちゃない。大体前にヘイズがフリュネに狙われかけたことを知っているのだ。こちらは。なるべく「知識」から外れすぎないように泳がせていたがもう時期的に差は無いしそろそろ潰しても構わないだろう。