転生者セイズ・ベルベットの憂鬱   作:エリス

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アレン好きな人すいません


第6話 駄猫

「アレン…私もレベル6になったの、慣らしも済んだところだから…相手してくれる?レベルが同じなら互いに言い訳出来ないでしょう?あ、心配しなくてもアンタ如きに切り札は使わないから」

 

「…上等だ」

 

───

 

「おい、セイズ様がとうとうヤる気らしいぞ!アレン様を!」

 

「え!じゃあとうとう副団長交代か!?」

 

──────

 

それからアレンは、まあセイズにボコられた。自慢の速さも対応出来る者からすれば大した脅威にはならない。純粋な戦士同士の戦いで、その速さも全部対応されて受け止められ、パワーで劣るのであっという間に押し込まれそのうち受け止められなくなり、

槍を弾かれて喉元に剣を突きつけられた。

 

(やはり同レベル帯で勝てる者はいないか…)

 

ヘディンは騒ぎを聞きつけて見物に来ていたが、まあ予想通りというか予想以上だった。アレンの能力では自分の(ずのう)を搭載しても勝ち目は皆無だ。技量でも劣る上に単純に数字が足りない。

セイズは基本格上以外に遅れを取ったことがない。同レベルの者で彼女と渡り合えたことがある者など皆無だ。アルフィアをして「才禍(わたし)一歩手前の才能」と言わせるほどの鬼才。

 

(どれだけアビリティを溜め込んだんだか…)

 

「少し足が速いだけ、ピュンピュン目障りなだけで速さに反応すら出来ない格下には滅法強いけど対応出来る同レベル帯なら自慢の速さもこんなもんよ、ヘディンのこと『羽虫』って呼んでいるけど一番羽虫みたいなのアンタでしょ?」

 

「気付いてないようならこの際ハッキリ言ってあげる。この街のレベル6で一番弱いのアンタよ?攻撃も軽いし、頑強さもなく脆い。頭も悪い。出し渋っている魔法も突撃しか能がない。アンタ本当に何が出来んの?

(アーニャ)ちゃんから逃げて、アンタのしたかったことって何?何が『最強の女神であれ』よ。余分なもの切り捨てて身軽になったつもりのアンタには何も重みがない。全部が空虚でスッカスカ。

(しん)が無いから(しん)も無い。(しん)も無いから全てが(うつ)ろ。言葉も軽くなる。だから、団長にも相手にされない。ヘディンにも軽く見られる。ヘグニがアンタのこと憐れんでいるの気付いていないの?

アンタみたいな空っぽで中身の無い奴がフレイヤ様に身勝手な幻想押し付けないでよ。一人で黒竜に突撃して勝手に野垂れ死んでいたら?(アーニャ)ちゃんの面倒は私が見てあげるから安心して逝きなさいな」

 

「あ、副団長の座なんて要らないから。ヘディン、アンタがやりなさい」

 

「おい、待て、お前まさか本当に脱退する気じゃ…」

 

「『女神のため』とか『最強』とか高らかに言っている奴に限って弱いわよね…私が一番大切なのはいつだってフレイヤ様よりヘイズだけどね。ヘディン、アンタは失望させないでよ、団長以外で能力だけなら一番使えそうなのアンタなんだから。

それとも駄猫が期待外れすぎて不完全燃焼な分、アンタが今から私の相手する?なんならヘグニと同時でもいいわよ?これ以上このファミリアに失望したくはないんだけどね、まあでもアンタの持ち味はタイマンなんかじゃ半分も判んないか」

 

単体戦力として団長くらい突き抜けて強いわけでもなし、本当に最強だったなら少しは認めていたのだが。ヘディンは頭脳と巧みな指揮能力、特に遠距離の砲撃戦ではほぼ都市最強だ。タイマンの接近戦も強い方だろうが、本来の自身の土俵ではないだろう。

 

「お前が『切り札』を使うつもりがないのならどのみち時間の無駄だ、オッタルでも相手にしていろ」

 

ベルベット姉妹らはあまり自覚していないが、セイズは下に滅茶苦茶慕われている。普段の発言のせいで皆表に出せないだけだ。なんせ面倒見が良い。満たす煤者達(アンドフリームニル)で過労で倒れそうになった者を

先んじて休ませて自身が数人分働いたり、傷付いた団員の治療も特によく引き受けている。基礎が出来ていない新人にアドバイスをしたりと、世話になった者が多い。女神と(とぎ)を共にした後でもガチ恋し続けている者もいるくらいだ。

【ロキ】の三幹部と対照的に、「最強の個であるオッタル」「最高峰の頭脳と最強の魔法剣士としての強さも併せ持つヘディン」、「最高の治癒師(ヒーラー)にして最強の女剣士、人間関係の潤滑油であるセイズ」の3人が現在の【フレイヤ】の柱だった。

「人望0のアレンよりはセイズを副団長に」とは誰もが思っていた。セイズまでもがレベル6になった現在なら「集団としても【ロキ】以上」と団員たちは信じて疑わなかった。本当に脱退なんてされたら主神とファミリア全体への影響が計り知れない。

「主神を妹以下の2番目」に置きながらも、いざとなればすぐに女神のために動けるセイズのことをヘディンは評価していた。主神を1番に置いている狂神者共よりよっぽど有能だし。

口にすることはまずないが、家族が残っていないオッタルやヘグニ、ヘディンらにとってはそこまで大切に想える血の繋がった家族の関係は尊いと思っていた。だからこそ、相対的にアレンの評価は低くなる。

「妹が安心して暮らせる世界のために黒竜を殺したい」という最初の出発点はそっくりなのにその妹を傷つけてまで遠ざけたアレンは芯がブレブレだ。セイズは最初から目的にどこまでも真摯で芯がブレない。だから強い。

「脱退したい」というのも恐らくはオラリオ全体を底上げすることに繋がる「何か」があるのだろう。ヘディンから言わせれば奴らのは同族嫌悪のようなものだ。

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