転生者セイズ・ベルベットの憂鬱   作:エリス

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第9話 大物狩り

原作開始(ベル君がオラリオに来る)1年前くらいの頃───フェルズさんとの眼晶(オクルス)から連絡が来た。

 

「セイズ…君の言うことが起きた【エルソスの遺跡】からサソリ型のモンスターが溢れ出し、【アルテミス・ファミリア】が討伐依頼を受注した…『大元には絶対手を出すな』という忠告は伝えられたようだが…」

 

「そうですか…ウラノス様に『例の話』の準備でよろしく言っておいてください、着いたらこちらから眼晶(オクルス)で連絡するんで」

 

「だが、いいのか?君の能力を大多数に晒すことになるが…」

 

「別にバレてもそんなマイナスにはならないですし…大丈夫でしょう。3大冒険者依頼(クエスト)の時は負けた場合を考慮して当時はこんなことしようとも思わなかったのでしょうが…大丈夫ですよ私の居る戦場に敗北は有りません」

 

「『奮い立てオラリオ』ですよ」

 

「そうか───それは頼もしいが…負けるなよ?」

 

「前哨戦ですよ黒竜の前の…こんな所で躓くつもりはないです、そのための仕込み…起爆剤にする」

 

【竜の壺】で仲間にしたイル・ワイヴァーンの異端児(ゼノス)、イルルちゃん♀でベル君やアルフィアさんらが住んでいる山奥に向かう。普段はホームの端っこに置いていて、偶にフレイヤ様を乗せたりもしている。

彼女は喉の関係上喋れないが、普通のモンスターよりは非常に賢い。【ガネーシャ】が飼育している普通のワイバーンよりも強く賢く大きく速く飛べる。暴力に長けた【聖女】かつドラゴンライダー。まるでどこぞの拳の凄女(せいじょ)みたいだ。

 

「アルフィアさんアルフィアさん緊急よ!」

 

「なんだセイズ…緊急とは珍しい「『サソリ』よ!」!きたか…とうとう…!」

 

「予定通り私はリリとザルドさん、団長とヘディン他何人かを連れてそっち向かうから。ベル君がオラリオに来る前に今の世界の最上位レベルの戦いを見せておくのも良いでしょう。」

 

確か情報を統合すると、3大冒険者依頼(クエスト)クラスの敵っぽいんだよな、アルテミス様食っていない素の状態でも…そうだ、今の時期なら…そうして人数が増えてホームを移した、アストレア・ファミリアの【星屑の館】を訪れる。私はほぼ顔パスだが。

旧ホームの【星屑の庭】は古参団員の隠れ処的なスポットになっている。

 

「アストレア様、リューとリリ貸してください。【例のサソリ】です。」

 

「!?リリは元々貴女から預かっていたようなものだし構わないんだけど…リューも?」

 

「【ルミノス・ウィンド】なら後ろから撃っても邪魔にならないでしょうからね、前衛はレベル7を3枚で保たせるんで、前を任せるのはレベル6でも心許ないです…

ヘイズとアミッドも連れていきますから3人でも保つでしょうたぶん、リリは大半の雑魚狩りとヘディンの予備です。小柄だから乗せ易いですしね…」

 

さてと、次は…

 

「バルドル様バルドル様、レオンさんそこに居ますか?」

 

眼晶(オクルス)はある程度の人数配っている。闇派閥(イヴィルス)に奪われたら面倒なんで実力と信用がある所だけだが。ウラノス様の許可が降りた場合のみに。

 

「ええ、彼なら自室に居るでしょうが…何か?」

 

「ちなみに学区今どのへんですか?」

 

「もうすぐ☓☓☓あたりに寄港するところです。オラリオでの点検修理(オーバーホール)ほど長くはないでしょうが」

 

「これから『大物狩り』をしに行くんで一緒に来てもらえたらな、と、ダンジョンじゃないですよ?」

 

「ええ、構わないですよ彼も喜ぶでしょう」

 

これで良し、と。

 

「セイズ様、これだけの面子集めてまだ更に【ナイト・オブ・ナイト】までって…」

 

リリから突っ込みが飛ぶ。既にアミッド、ヘイズ、リュー、ザルドさん、団長にヘイズ、ヘディンが集まってきている。

 

「そんじゃイルルに乗って行くからまずは通り道の街の☓☓☓に寄港している学区からレオンさん拾ったら、山奥に居るアルフィアさん迎えに行くから」

 

「【ロキ】はいいのか?」

 

ヘディンから当然の質問が飛ぶ。

 

「想定される戦場はダンジョンなみに天井高いとは言え、屋内戦。リヴェリアさんの魔法じゃ大味すぎだし、他のレベル6じゃ()()()。魔法が使いやすいフィルヴィスだけならまあいいんだけど、後は単純に速度と定員の問題。」

 

「ああ、あの時お前に賭けたのは正解だったぞ、セイズッ…」

 

くつくつと笑い武者震いをしているザルドさん。

 

「楽しみにするのは結構ですけどサソリなんて毒々しいモンスター食うとか止めてくださいよ、ザルドさん、そんなの使わせるくらいなら、最悪私やアルフィアさんの魔法で遺跡ごと沈めます」

 

若干緊張した顔色の、ヘイズとアミッド。

 

「アミッド、ヘイズ貴女達も黒竜戦の戦力候補なんだから慣れておきなさいな、この空気」

 

「はい、師匠…」

 

「フレイヤ様の名に傷つけないように頑張るわ…」

 

「あと戦いは都市中と学区にも見せるつもりだから、どうしても見られたくない切り札有るなら今のうちに自己申告、最悪見せるの止めておくから」

 

そうしてベル・クラネルやアルフィア、ゼウスらが住む山奥の村の家では…

 

「どうしたんじゃアルフィア…妙に楽しそうな顔をして…」

 

「ゼウス…私は明日から数日家を空ける…ベルを頼んだぞ…元々ベルには見せる予定だったからお前も見ておけ。神のお前がいるこの家になら、【神の鏡】が届くだろう。その眼晶(オクルス)から合図された時間にウラノスに呼びかければ【神の鏡】も繋がるはずだ。

私との模擬戦は見ていたが実戦は見たこと無かっただろう。我らの愛弟子の実力を…敵は古代に封印された黒い大型のサソリモンスター【アンタレス】だ。最悪ベヒーモスやリヴァイアサンと同格だろうが…久々の大物だ!」

 

「その名前をまた聞くことになるとはな…」

 

「私はこの場所をセイズやザルド以外の連中に知られたくないから、準備してから、明日(ふもと)に降りて合流してから行く。せいぜい焚き付けてやれ」

 

「お義母さん?出かけるの?」

 

「ああ、明日から暫くな…お前も来年オラリオに行くつもりならよく見ておけ」

 

「???何を?」

 

──────

 

そうして翌日、(ふもと)で合流したアルフィアは素早く騎竜(イルル)に乗り込む。交通手段として既に何度も利用しているので慣れたものだ。

 

「フン【ロキ】のガキ共は連れてこなかったか」

 

「元々予定通りでしょうに…はあ、【ココノエ】欲しいなあ…」

 

「そっちの騎士小僧も連れてきたか…」

 

「『小僧』って…年齢あんま変わらなくないですか?」

 

「ええ、久しぶりですね【静寂】…リヴァイアサンの時以来ですか。貴女が病気を完治させてこうして共闘出来るのは嬉しい」

 

「あと、ザルド…お前なんか若返っていないか?」

 

ザルドの実年齢は50を越えている。しかし今は20代半ばの外見。高レベルの冒険者は老化速度が緩くなるとはいえ、それでも若すぎる外見だった。

 

「ああ、セイズに毎日回復魔法かけられていたら何故か『こう』なってしまってな…」

 

レオン以外から白い眼で見られるセイズ。

 

「単純に若い方が強いんだから良いじゃないですか、別にっ」

 

「別にそれ自体は構わんが、歳の差少なくなったからって恋愛対象にするなよ?」

 

アルフィアがセイズとザルドを睨む。実はちょっと考えていた。セイズ的には歳の差が無ければザルドはかなりアリだ。

ゼウス眷属にしては露骨にスケベ心を見せることはないし…冒険者にしては割と理知的な方だし、料理美味いし…

自分より強い男性がレアすぎだし。「そのうち抜いてやろう」という想いは勿論あるが、それはそれとして今の彼はかなりモテるだろう。

セイズは「最低レベル3くらいないと能力や価値観の差に苦しみそう」とは考えていた。

原作キャラの男共は大抵碌でもないし、少しでも「イイ」と思った人間に限ってお相手いるし。

フレイヤ眷属は全員論外。「フレイヤ様とのほうが気持ち良かった」とか言われたら普通に殺してしまい兼ねない。イシュタルのようなヒス女にはなりたくないから比べられたくない。

 

「本当に手出しされたら都市中が敵に回ると思いますよ…いくらザルド様でも生き残れないんじゃないですかね?」

 

リリルカが繋ぐ。

 

「え、それって都市内じゃ私誰とも恋愛出来ないんじゃね?」

 

「貴女はもっと自分の人気を自覚してください『冒険者人気投票』で、ずっと1位独走中、直近のでも2位のアイズにダブルスコアですからね?」

 

「だから『とっととフレイヤ様を受け入れたほうが楽になれる』と言っておるのだ。処女なんか公言しおって…しかし相変わらずお前の回復魔法は無茶苦茶だな」

 

「この世界神様たちのせいで変に技術進んだ部分有るけどスキンケアは結構未熟だったから自分に色々試していたら肌も若返らせられたから、『これ全身いけるんじゃね』って思ったらイケたわけよ。」

 

「女性陣でセイズ様求めて戦争起きそうですね、知られたら…」

 

「【若さ】は何時の世でも権力者達がこぞって求めるものだろう…まあ【フレイヤ】在籍中は、俗物共が手を伸ばしてくることはないだろうが、な」

 

「ふふん、フレイヤ様のお身体がいつも絶好調なのも私の魔法のお陰なんだからね、団長とヘディンは感謝なさい」

 

「ああ、素晴らしい功績だぞセイズ…」

 

「逆に何が出来ないんだお前は…」

 

妙な「元賢者」と繋ぎを作って便利アイテム作らせまくっているらしいし。本人もチートで更に人脈もチート。

ヘイズやアミッドの現在の最高級の装備もレベル5になった時のお祝いにフェルズに依頼して作らせた賢者の技術の(すい)を込めまくり、

セイズ自ら材料集めにも協力した最上級の素材も使った、第一級冒険者でも「ちょっとそこまでする?」というレベルの性能の装備だ。杖も服もだ。慕われるのも当然の結果なのだろう。

今もアミッドやリリルカ、ヘイズやアルフィアからザルドへ殺気がビンビン飛んでいる。ザルドならこの面子に同時に襲われても少しは保つが連携されたらシャレにならない。

フェルズ製の空気抵抗を無くしつつ風を遮断する【騎乗補助装置】のお陰で、かなり飛ばすことが出来、3日程度で付近に到着した。周囲は緑が枯らされていたりと良くない状況だった。

人の多い地域まではまだ到達されていないようだが…

 

「リュー、【アルテミス・ファミリア】や【ヘルメス・ファミリア】見かけても加勢しようだなんて思わないで、私らの役目はとっとと大本叩くことよ、その後でも残っていたら、その時加勢すればいい」

 

「っ…分かってますっ…」

 

そうはいいつつも騎竜の上からヘディンと一緒に魔法で援護して、雑魚サソリを一掃したりもした。

 

──────

 

「よしっ見えてきた入口…情報通り結構デカいからこのままイルルごと突入するわよ。侵入までに邪魔なの居たら私かアルフィアさんの魔法で排除、ね」

 

大きく開かれた遺跡の入口にそのまま突入する。

 

「大広間が見えてきた、多分この先っヘディン!」

 

「了解」

 

「「【永伐せよ、不滅の雷将】」」

 

セイズとヘディンが2人して同じ詠唱をする。

 

「「【ヴァリアン・ヒルド】】!」」

 

2本の雷の砲撃がチラリと見えたばかりのアンタレスを襲う。

 

「うっひゃかったぁやっぱバロールよりは格上ね、間違いない。」

 

「だが、全く効いていないわけではない。勝てない相手ではないなこの面子なら」

 

「子サソリも多いです…レベル2から3ってところですが…あの数は面倒ですね…」

 

アンタレスは多少痺れて焼け焦げた部分もあったが、健在だ。

 

「じゃあリリっ」

 

「はい、行ってきます!」

 

リリが1人でイルルから飛び降り、槍を片手に駆けていく。リリは単騎だとほぼ階位上昇(レベル・ブースト)に等しいほどのステイタス補正が受けられるスキルを持っている。

これも単騎駆けが多かったフィアナの影響なのだろうが…だから「情報の少ない相手には取り敢えずリリが単騎で威力偵察」というちょっと頭のおかしい定石が出来つつある。

まんまどっかの青い槍兵みたいだ。実際滅茶苦茶生存能力が高いし。「これ」があるからぶっちゃけもうタイマンでは普通にフィンさんより強い。私やヘディンが観察してアンタレスの能力を測る。

 

「アレが『小人族(パルゥム)の聖女』ですか…凄まじいですね…」

 

レオンから思わず声が上がる。

 

「あの()をあそこまで引き上げられたのが私のこの世界での今までで一番の功績だと思っていますよ」

 

持ってきていた眼晶(オクルス)の1つに呼びかける。

 

「ウラノス様、着きました」

 

「では、今から10分後とする」

 

「ゼウス様、今から10分後です」

 

眼晶(オクルス)を入れ替えて呼びかける。

 

「ほっほっほっ楽しみにしているぞセイちゃんや」

 

バルドル様にも伝える。向こうも準備済みらしい。

アンタレスは単純にデカくて堅くてそこそこ速い面倒そうな相手だった。

ハサミの攻撃も恐いが偶に尾をブン回してくる。まだアルテミス様を喰っていないからか飛び道具の類はなかった。

 

「遠距離攻撃の類は無いですね、毒液噴射くらいするかと思っていたのですが」

 

「だが一応は警戒しておくにこしたことはないか」

 

黄昏の館───

 

「ギルドからの声明…昨日の内に布告はされていたけど…『合図されてから10分後に【神の鏡】を繋げ』とは…結構急だよね…」

 

「オッタルやセイズ達が都市外に一昨日慌ただしく出ていったらしいことと関係あるのかもな、もしかすると」

 

「ふぅん、セイたんと【猛者(おうじゃ)】達かいな、【フレイヤ】総出ってわけじゃないんやろ?」

 

「ああ、リリルカや【疾風】も…彼女が選抜したメンバーって感じだねどちらかというと、彼女が評価しているオッタルやヘディンも行ったみたいだし、その反対のアレンは残っている…アミッドまで居ないようだ」

 

「そろそろ10分───時間やな、ウラノス『力』の行使の許可を」

 

ギルドの方角にロキが呼びかける。

 

「───許可する」

 

そうしてオラリオ中と学区内に【神の鏡】が顕現する。

 

「…時間かな。『視線』が増えた…」

 

リリはまだ1人で戦っている。

 

「はい、こんにちはーオラリオと学区とどこかの山奥の人達ー【フレイヤ・ファミリア】で分不相応にも【聖女】とか呼ばれちゃっているセイズ・ベルベットです」

 

「今日はウラノス様に無理を言って頼んで、こうして【神の鏡】を繋いでもらいましたっオラリオで日々お金だけのためにせこせこ魔石稼いでいるような底辺で足掻いているような人たちは『自分には関係ない』と思っているのかもしれませんが…

今日行うのは黒竜の前の【前哨戦】ってところです。アレ倒せなきゃオラリオの冒険者の存在意義が無くなります、ゴミになります。聞いてるのかオイ特にてめぇらだよ『フレイヤ様のために!』じゃねぇんだよウチの脳筋(ノータリン)共。

地上そのものが無くなったらフレイヤ様もクソもねーだろうがっ『魂を天界に一緒に連れて行ってもらえる』?バカどもめ、この私だってそんなこと期待してねーわ、てめぇらの大半は今のままじゃ落第だよ、私にボロカスにされたクソ猫みてーになハッ

あーそれで今日はこの【エルソスの遺跡】に封印されていた古代のモンスター【アンタレス】が復活したとのことで、放置しておくとかなりヤバいことになるので、こうして私自らが選抜したメンバーで討伐しに来ました。

間違いなく黒竜戦の中核メンバーになる勇士達です。今日『選ばれなかった人たち』は…次までには『アイツが居なくちゃ駄目だ』とこちらから言わせられるような人になっておいてください、

そもそも候補に挙がらなかった人達も、『自分に出来る最善』を常に考え足掻き続けてください、勇者様、今戦っている『私の一番弟子』は『貴方に取って代わる』くらいの気合が有りますよ、

『伴侶探し』だの後継者だのは後回しにしてまずは自分を高めてください」

 

「くははっ言われておるで~フィーン」

 

「団長に向かってなんてことをっあの糞女ッ…」

 

ティオネはリリルカやライラの関係でセイズに何回か喧嘩を売っているがいずれも全敗だ。ちなみにお情けでいつも治療までしてもらっている。尚ティオナは普通に仲が良い。

 

「でも…凄い面子…【猛者(おうじゃ)】に、あの人は【ナイト・オブ・ナイト】さん?【疾風】、【白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)】にザルドさん、アルフィアさん、リリも戦っているしもう…」

 

「前衛役がレベル7の3人…後衛の砲撃支援が【白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)】だろうな…場所的に私は不適格とされたか。アミッドにヘイズまで居るとなるとセイズは治癒師(ヒーラー)ではなく、例の【本気】をやるつもりだろうな」

 

「『契約者』の魔法を行使する、『勇士の魔法』を使用する魔法剣士スタイル…わざわざ【神の鏡】を使っている前で!?」

 

レフィーヤは「契約」した関係上セイズの【切り札】を知っている。実は更に主神(フレイヤ)しか知らない【奥の手】があるのだがこの場の者達は知らない。

 

「『もう隠す必要ない』と思ったんじゃないかな?実際手札が多すぎてバレても大したデメリットはない」

 

「そうだな…深層や格上相手にくらいでしか使わないらしいからレフィーヤもよく見ておけ良い機会だ、しかも【疾風】も並行詠唱の腕は私以上だ。」

 

フィルヴィスが繋ぐ。

 

「後衛や遊撃はともかく一番危険な前衛はレベル6以下は力不足と判断したようじゃな…くっやしいのぅ」

 

「【前哨戦】と言うからには『本番』はもっと上を想定しているんだろうな、あの人は…」

 

現時点での事実上の「戦力外通知」にガレスやベートは悔しそうだ。

 

「【フレイヤ】でも彼女だけはどこまでも異色で、独自路線をいっているからこそ他と見えているものが違うんだろうね…昔から偶に未来が視えているような動きすることあったし…」

 

「そうだな…【27階層の奇跡】…本来は【悪夢】と呼ばれるであろう事態になっていたはずのあの日…あの3人が来なければ私や昔の先輩たち含めて多くが死んでいただろうな…、それにレフィーヤのこともあの頃から知っていたような発言もしていたぞ」

 

「ええっ!?5年前ですよねっ!?私のことをっ!?」

 

「その節は済まなかったね、フィルヴィス…」

 

「ああ、いやこのファミリアに入る切っ掛けにもなったからいいんだ、あれ以来アイツとも、もっと仲良くなれたしな」

 

「ザルドやアルフィアが今でも普通に生きていることも彼女の功績らしいからね…」

 

「ええ!?あのレベル7の2人がっ!?」

 

「本来は暗黒期に闇派閥(イヴィルス)側について都市を攻撃して活をいれるつもりだったらしいからね…それで『誰かしらに討たれて経験値(エクセリア)を託すつもりだった』と…」

 

「ザルドはベヒーモスの毒、アルフィアは持病で死期を悟っていたらしい…だが『黒竜討伐』にとにかく真摯なセイズのことをあの2人はかなり評価しているし、命の恩人でも有るから溺愛している」

 

「うん…あの3人は…凄く強い…暫く『人に教えるほどじゃない』って拒まれてたし…剣術…」

 

「え…でも…リリルカちゃんやアミッドさんらは結構前から弟子になっているらしいですよね」

 

リリルカはフィンの弟子でもある関係上ロキ・ファミリアとは結構親しい。ティオネには当然のように襲われているが、普通に今のフィンと同格なので逃げ切られるか撃退されている。

教えられることが少なくなってきたので最近は大変なようだが。実際ライラの弟子からは卒業している。

 

「リリルカは冒険者としての基礎や普遍的な体術が主だったらしいよ…」

 

「アミッド達もそのへんと治癒師(ヒーラー)としての立ち回りだけで剣術は教えていないだろうな…」

 

「リリたんや【アストレア】の子達といいベートやフィルたんといいアイズたんもやけどセイたんが昔から目をかけてる子達はみーんな第一級冒険者になっとるがな…それも自分の所に無理に入れようとはせえへん」

 

「派閥の枠に最初から捕われずに各々の才能が発揮出来る最適な場所を見繕っている…だから『黒竜討伐に真摯』と言われるんですね…」

 

アリシアは「黒竜討伐」に関して多少なりとも意識している側だから思うところがありそうだ。

 

「あ、リリちゃんが戻ってきたよ!いよいよじゃない?」

 

「刮目せよオラリオ…英雄の雛鳥よ…!今日のこの戦いが最新の英雄譚だ!」

 

セイズが宣言するとレオン、オッタル、ザルドがアンタレスに斬りかかる。

先程まで全員が片手間で相手していたアンタレスの子供である子サソリの群体にリリルカが飛びかかる。

体力は魔法で回復済みだ。ちなみに無傷だった。

 

バベルの頂上では───

 

「素晴らしい輝きね皆…あの()が見繕って育てた勇士達とオッタルやレオン、ザルドら完成していた超級の英雄達…あの子達を1つに纏め上げられるなんてまさに【戦乙女(ヴァルキュリア)】だわ…」

 

「───ヘグニ…あの場に居れなかったことが…あの子に選ばれなかったことが悔しい?」

 

「ぃぇ…確かに悔しいですけど…アイツの観察眼は疑っていないですから…正しい判断だったのでしょうきっと…」

 

ヘグニがちっさい声で応対する。正史(ほんらい)ならオッタルが他所に出張った時フレイヤのお付きになるのは序列的には副団長のアレンだったのだが今の副団長はヘディンだ。

しかしヘディンでも序列的には3位でヘグニは4位アレンは5位にまで落ちていた。2位のセイズはよほどフレイヤが「おねだり」しない限り、自己鍛錬か弟子の強化や異端児(ゼノス)との交流に時間を割いている。

「店」ではフレイヤにおねだりされまくったので普通に同僚として働いている。リューの同僚フラグを潰してしまったことに多少の罪悪感も有ったので断れなかったのである。

普通にミアにも気に入られ【フレイヤ】の同僚よりは店員たちのほうが気に入っているため憩いの場になっている。

アレン(じぶん)をボコボコにした宿敵(セイズ)(アーニャ)は無茶苦茶懐いているため、どこぞの愚兄(アレン)の脳が破壊されたとかなんとか。

 

(流石に駒の質が極上だと言うことが少ないな…)

 

ヘディンは戦場の指揮権を預かっているが、周りの子サソリを剣で薙ぎ払いながら、並行詠唱を続け砲撃をアンタレス本体に浴びせる火力支援を行っている。

リリルカは小サソリの掃討に専念した。既に魔石の位置も把握しているのでスムーズだ。

前衛を預かる壁役(タンク)でもある3人、レオンは守り7攻撃3、ザルドは1:1くらいオッタルは攻めに偏重した攻め7守り3くらいの立ち回りだが、

オッタルが前衛のダメージディーラーになり、力強く踏み込んでいる。セイズはアーディからコピーした正義巡継(ダルマス・アルゴ)でバフをかけていた。階位上昇(レベル・ブースト)ほど劇的な変化ではなかったので全員すぐ慣れた。

ヘディンと共に火力支援を行い、前衛の1人が深手を負って崩されたら、素早く入れ替わり、フィルヴィスの盾の魔法【ディオ・グレイル】を展開しながら守りを固めて戦線の維持に努めた。

アミッドとヘイズまで居れば自身までが治癒師(ヒーラー)をする必要はないからだ。ヘディンは後方から観察も続け、3人の前衛に綻びが起きたら素早く、補うように時偶(ときたま)指示するだけだ。

これが大勢の格下を率いての戦いだったら細かい指示が必要だったが、何せこの場のメンバーは各々の役割に関しては超一流の働きしかしない。治癒師(ヒーラー)の回復のタイミングまでが完璧で、

とにかく全員が動き易い戦場だった。アルフィアとリュー、リリルカは遊撃に徹し、子サソリの数が多い内はアルフィアも掃討に協力していたがやがて数が減ると、【サタナス・ヴェーリオン】を本体にも浴びせていった。

リューは子サソリを斬り捨てながら並行詠唱を続け、【ルミノス・ウィンド】を本体に飛ばして火力支援を行っていた。

 

「リリルカァッ!もうそっちはいいだろう!()()()ッ!」

 

小サソリが減るとヘディンからリリルカに指揮権が譲渡され、ヘディンは後方魔導士としての役割に徹するようになった。

 

「レオン様はもう少し攻めていいですっアルフィア様(こちらから)右のハサミを集中的に、オッタル様は攻めすぎですっ!」

 

やがて誰がトドメを刺すまでもなく、アンタレスの動きが生命活動ごと停止した。

 

後に【エルソス攻防戦】或いは【アンタレス討伐戦】と呼ばれるこの戦いは、ゼウス・ヘラの黒竜敗北で陰鬱になっていた空気を吹き飛ばす2体の大物討伐以来の明るいニュースとなり、

次世代の英雄の誕生を下界に知らしめるセンセーショナルなニュースとなり地上を駆け巡るのであった。




フィルたんはレベル6。
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