グリードくんのイルミナ学園奮闘日誌【完結】   作:マイマイ

100 / 155
突如として俺達の前に姿を現したセリーヌさん。

……いったい、何が目的なんだろう。


第99話 〜エグフィード家へ〜

「………なんで」

この人が、ここに居るのか。

変わらぬ笑顔、人を安心させるような……優しい表情。

俺にとって姉のような存在であるセリーヌさんが、どうしてここに……。

 

「――お久しぶりです、グリード様」

あの時と変わらない、主人を立てるような恭しい礼。

……だが、俺達は揃って彼女に視線を向けながら身構える。

 

「……どうして、あなたがここに居るんですか?」

「グリード様、エグフィード家から戻るようにとのご命令です」

「っ、質問に答えてください。それに——エグフィード家の命令って」

「わたくしはエグフィード家のメイド長ですから、今回は使いとしてここに来ました」

「なっ……」

 

その言葉に、俺達は全員驚愕する。

あんな事をしでかしたのに、この人はまだエグフィード家に……。

 

「そんな事、信用できると思いますか?

 あなたは犯罪者と同じ事をしでかした、それなのにエグフィード家に仕えているというのですか?」

厳しい視線のまま、サクラはセリーヌさんを問いただす。

しかし、セリーヌさんは涼しい顔で言葉を返す。

 

「エグフィード家はわたくしとエリック様が行った事は知りませんから。

 それよりもグリード様、エグフィード家へと至急お戻りください」

「…………」

セリーヌさんの言葉を理解するのに数秒。

理解してから……笑ってしまった。

 

「セリーヌさん、本気で言ってるんですか? 俺にあの家に戻れと? はっ、笑わせないでくださいよ」

自然と、口調がどんどん冷たくなっていく。

みんなも俺の変化に気づき、不思議そうな視線を向けてくるが……今の俺にはそれに反応する余裕はない。

「……奥様が、ご病気で倒られました。重い病でして……グリード様に会いたいと」

「ふざけるなと言っておいてください、今更会いたい? 俺はあの人達の事なんて親だなんて思ってません。

 親面なんてされるなんて胸くそ悪い、あんな人間の事なんて一秒たりとも考えたくないんだ」

 

……自分でも、驚くくらい冷たい言葉が次々口から飛び出していく。

でも、それだけ俺はあの人達を憎んでいる。

 

――十年前の、あの日から

 

「帰ってください、そして二度と俺を呼ぶなと言っておいてください。

 俺はあの人達の顔なんか見たくもない、もう二度と……エグフィードには戻らない」

「グリード様……」

眉を下げ、悲しそうに俺を見つめるセリーヌさん。

……俺の過去を知っているが故に、強く言えないのだろう。

 

「……あの、グリードくん。その……いいの?」

「…………」

「だって、お母さんが病気なのに……」

「ソラネ、俺には親なんていないよ。家族は……ツタージャ達だけだ」

「…………」

 

俺の言葉に、押し黙るソラネ。

他のみんなも何か言いたげだが、俺の雰囲気を察し何も言ってこない。

 

「………どうしても、戻ってはくれないのですか?」

「愚問ですね。セリーヌさんなら俺がエグフィードに戻らない理由、わかりますよね?」

「…………」

 

沈黙が続く。

すると……セリーヌさんはいきなり驚くべき行動に出る。

 

「……お願い致します、グリード様」

『なっ!?』

膝を地面につき、俺に向かって土下座をしてきたのだ。

これには、全員が驚き狼狽してしまう。

 

「や、やめてくださいセリーヌさん!!」

「何をしているんですか!?」

「……お願い致します、奥様に……顔を見せてあげてください。

 あの方は……本当に、グリード様を愛しています……ですから」

「と、とにかく立ってください!!」

 

こんな所を誰かに見られたら、いらぬ誤解を招いてしまう。

俺の言葉を聞き、セリーヌさんはどうにか立ち上がってくれた。

 

「……グリード様」

「うっ……」

 

卑怯だ、あんな方法に出るなんてセリーヌさんらしくない。

でも……それだけ会わせたいという気持ちは、理解できた。

…………仕方、ない。

 

「…………………わかりました」

本当に、ほんとーーーーーーーに嫌だが、セリーヌさんにここまでやらせといて拒否できるわけがない。

この間はシェイミを巡って戦ったが、それでも……彼女は俺にとって姉であり恩人であり、また……逆らえない人なのだ。

 

「ありがとうございます、グリード様」

「………むぅ」

俺は甘いんだろうか、ほっとしたようなセリーヌさんを見ると、文句も何も言えなくなる。

さて、準備を始めないと……そう思った矢先。

 

「ちょっと待ってくれグリード」

サクラが、俺を制止した。

 

「サクラ……?」

「正直、僕は……いや僕達は彼女を信用する事はできない。

 けど君がエグフィード家に行く事に対して止める気もない、そんな権利はないしね。

 だから、せめて僕達の誰か1人を一緒に連れて行ってくれ。そうでもしないと……心配だからね」

後半はセリーヌさんに言うようにしながら、サクラはそんな提案を告げる。

しかし、セリーヌさんは別段気にした様子もなく頷きを返した。

「構いません。さすがに全員は無理ですが、1人くらいならば大丈夫ですから」

 

「えっと……じゃあ、誰が行く……?」

「もちろん、言い出しっぺの僕が……と言いたい所だけど、ここはフウロに行って貰う事にしよう」

「わたし?」

「ってサクラ、なんでフウロなのよ?」

「彼女にはイッシュに行く理由がグリード以外であるからさ。

 フウロ、君はたしか近々ジムに戻らなければいけないんだったよね?」

「うん、挑戦者が来たから一度ジムに戻らないといけないの」

「だったら悪いけど、グリードの件が終わってからでも構わないかい?」

「もちろん、わたしに任せて!!」

 

ポンッと自分の胸を叩くフウロ、あの……俺を置いて俺の話をしないでもらえませんか?

とは思ったが、言っても無駄なので黙っておく。それにみんなは俺を心配してくれているのだから、そんなツッコミは野暮というものだ。

 

「……私も一緒に行きたかったなぁ」

不満そうにそう呟くソラネ、カレンとアオイも似たような表情を浮かべている。

「そう何度も学園を出るわけにはいかないよ、外出許可を貰うのだって時間がかかるんだから」

サクラの正論に、まだ不満そうにしてるものの、みんな押し黙った。

 

「では、参りましょう」

セリーヌさんの言葉に頷きを返す。

……まさか、戻る事になるとは思わなかったな。

もう二度と、あの家には近づかないと心に誓っていたのに……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

――アルヒタウン

 

イッシュ地方最大の都市であるヒウンシティからさほど離れていない場所に、この街はある。

数日掛けて故郷と呼ぶべき場所に来たけど……ひとかけらの感慨も湧かないのは、自分でも笑ってしまった。

 

「……ここが、グリードが生まれ育った街……」

「グリード様、フウロ様、少し急ぎましょう。予定より遅くなってしまいましたから」

そう言って、セリーヌさんは少し早足で歩き出し、俺達も後に続く。

 

――歩くこと暫し

 

「………相変わらず、無駄にでかいよな」

俺達の目の前には、大男が通るんじゃないかと思えるような、巨大な門が。

無駄な装飾が金持ちだと強調しているようで、やはりいけ好かない。

「……ふわぁぁ〜」

フウロはこんな馬鹿でかい門を見た事がないのか、大口を開けて上を見上げている。

まあ当たり前だよな、こんな趣味悪い門を見た事あるわけないか。

と、セリーヌさんは門の前に立ち口を開く。

 

「グリード様とお客様をお連れいたしました」

少し大きめの声でそう言うと……重苦しい音を立て門が開いていく。

「参りましょう」

「ああ」

 

「…………」

「フウロ、どうした?」

「えっ!? あ、うん!!」

……ガチガチに緊張してるな、手と足が一緒に出てるし。

俺は小さい頃からここに住んでるからなんともないけど、やっぱり普通は緊張するのかな。

 

「フウロ、別に緊張する必要なんかないぞ?」

「だ、だって……こんなに大きな家に入るの初めてだし、それに……好きな人の家だもん、緊張しちゃうよ……」

「………そうか」

好きな人、という単語に少し気恥ずかしさを感じた。

くっ……今のは不意打ちだ。

 

「ふふっ……グリード様は、沢山の女性に慕われているのですね」

そんな俺達のやり取りを見ながら、セリーヌさんは嬉しそうにそんな事を言ってくる。

そんな満面の笑みを浮かべながら言わないでくれませんか……?

「そうなんですよセリーヌさん、グリードってばちょっと……いやかなりモテるんです。

 そりゃあ魅力的だから仕方ないかもしれないけど、ライバルが増えるのはわたしとしては不満というか……」

「ですが、恋というものは障害があるからこそ燃えるもの、そうは思いませんか?」

「ええ、だからこそ絶対にグリードを振り向かせてみせる!! って気になるんです!!」

「フウロ様は情熱的な方ですね、グリード様にはフウロ様のようなリードしてくれるような行動力溢れる女性がお似合いだと思いますよ?」

「えっ、えへへ……やっぱりそうですか?」

「…………」

 

2人とも、この数日で随分仲良くなりましたね。

フウロなんか、すっかりセリーヌさんに対する警戒心なんか宇宙の彼方に押しやってしまったし、セリーヌさんはセリーヌさんでこの間のような威圧感は無く、昔のような態度だからすっかり毒気が抜かれてしまった。

……この人は、一体何を考えているんだろうか。

移動中は、セリーヌさんと話す事はなく一時的にエグフィード家に戻る事に対して内心愚痴ばかり零していたけど……少し余裕ができた今は、彼女に訊きたい事が沢山ある。

そんな事を考えていると、どうやら玄関に辿り着いたようだ。

相変わらずでかい扉だ、ガブリアスみたいなデカいポケモンも余裕で通れそうだな。

 

「………タージャ」

先程から沈黙を保っていたツタージャも、規格外な門や扉を見て少し呆れを含んだ鳴き声を漏らす。

「グリード様、ポケモンはボールの中に入れておいてください。旦那様と奥様に見られたら……」

「関係ないです、この子は俺の肩に乗ってる方が落ち着くんで。

 何と言おうと、俺はツタージャをボールに戻しませんよ」

あいつらの事情なんか知った事じゃない、向こうに合わせる義理なんてないはずだ。

すると諦めたのか、セリーヌさんはそれ以上何も言わず扉を開く。

瞬間。

 

『お帰りなさいませ、グリード様!!』

 

ものの見事に声をハモらせ、沢山のメイドと執事が規則正しく並び俺に対し頭を下げてきた。

その光景に、俺は予想通りだなと内心苦笑、フウロに至ってはポカンとしてしまっていた。

当たり前だ、こんな光景見慣れるものじゃない、俺だっていまだにちょっと慣れないのだから。

というか、むしろ少し恐がっているのか、俺の後ろに隠れてしまった。

フウロ、気持ちはわかるが別にとって食おうというわけじゃないから。

 

「グリード様、あの……旦那様が」

メイドの1人が、少し躊躇いがちに進言してきた。

……俺とアイツの仲の悪さをわかっているから、口調も躊躇いがちになるのだろう。

 

「わかった」

「ではわたくしも一緒に行きます。あなた達、彼女はフウロ様といってグリード様の大切なご友人です。

 失礼のないようにおもてなしなさい」

メイド長としての威厳に満ちた口調で、周りのメイドに命令するセリーヌさん。

わかりましたと返事を返し、メイド達はあっという間にフウロを取り囲んでしまった。

 

「えっ、えっ?」

「フウロ様、こちらへどうぞ」

「あ、あの……グリード〜」

助けて、という視線を送られたが、俺はそれを苦笑で返す。

「フウロ、大丈夫だから少し向こうで待っててくれ」

「そ、そんな〜」

さあどうぞこちらに、そう言われながら連れて行かれるフウロが、少し可哀想に見えた。

……やっぱり、ああいうのは普通慣れないよな。

 

「ではグリード様、ご案内致します」

「…………ああ」

緊張が走る。

会いたくない、叶う事ならさっさと帰りたい。

しかし、セリーヌさんと約束した以上さよならなんて男らしくないよな。

 

「はぁ……行きましょうか」

「そんなあからさまなため息をつかなくても……」

「つきたくなりますよ、回れ右して帰りたいですから」

くすりともせずにそう言うと、セリーヌさんはなんともいえない表情を返す。

 

………はぁ、行きたくないなぁ。

自分でも男らしくない事を考えつつも、行かなければいけないので足を動かす。

無駄に長い廊下、フカフカの絨毯を踏みながら進み……高価な工芸品をつまらなげに眺めていると……辿り着いてしまった。

 

「あぁ、やだなぁ……」

「タージャ……」

そんなに嫌なの? という視線を送ってくるツタージャ。もちろん嫌に決まってるだろ?

 

「――旦那様、グリード様をお連れいたしました」

強すぎず弱すぎずの力で扉をノックするセリーヌさん、すると中から「入れ」という声が聞こえ、俺はまたため息をつきながら部屋へと入る。

そこは、俗に言う執務室。沢山の執務記録が書かれた書類が棚に並べられており、その奥には……馬鹿でかい机の上にこれでもかと散りばめられた書類の山。

 

そして――そこに座る1人の男。

 

やや嗄れた顔に黒縁のメガネを掛け、色素が薄くなった茶髪。

……この男こそ、俺の父親。

エグフィードカンパニーを束ねる、クロス・エグフィード。

その男と、俺は久しぶりに対峙していた……。

 

 

 

 

To.Be.Continued...

 

 




【ツタージャ】♀           【ムクホーク】♂      【ミロカロス】♀
【使えるわざ】            【使えるわざ】        【使えるわざ】
・つるのムチ            ・はがねのつばさ     ・たつまき
・リーフブレード          ・かぜおこし         ・アイアンテール
・真・リーンフォースブレード  ・でんこうせっか      ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん           ・つばさでうつ        ・れいとうビーム
・へびにらみ            ・つばめがえし       ・じこさいせい
・リーフストーム           ・ブレイブバード      ・ふぶき
・リーフブレード二段斬り    ・インファイト        ・アクアリング
・エナジーボール         ・かげぶんしん       ・アクアテール
                   ・はかいこうせん      ・みずのはどう


【オノノクス】♂     【コジョンド】♀    【グライオン】♂
【使えるわざ】     【使えるわざ】     【使えるわざ】
・ダブルチョップ   ・みきり         ・シザークロス
・シャドークロー   ・はっけい       ・れんぞくぎり
・りゅうのいかり   ・とびひざげり     ・ほのおのキバ
・ドラゴンクロー   ・はどうだん      ・クロスポイズン
・りゅうのいぶき   ・おうふくビンタ    ・ギガインパクト
・りゅうせいぐん   ・ギガインパクト    ・はがねのつばさ
・あなをほる     ・ドレインパンチ
・りゅうのはどう   ・ストーンエッジ 
・はかいこうせん   ・きあいパンチ
・かみなりパンチ

【クチート】♀    【ラティアス(ティア)】♀    【ゴチミル】♀
【使えるわざ】    【使えるわざ】         【使えるわざ】
・てっぺき      ・ラスターカノン          ・ねんりき
・アイアンヘッド   ・じこさいせい          ・ひかりのかべ
・かえんほうしゃ  ・はかいこうせん         ・サイケこうせん
・ねごと       ・りゅうのはどう
・ラスターカノン   ・りゅうせいぐん
・かみくだく     ・れいとうビーム
            ・ドラゴンクロー
            ・はがねのつばさ

【ピカチュウ】♂
・10まんボルト
・アイアンテール
・ボルテッカー
・でんこうせっか
・かみなり
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。