まさか、また両親に会う事になるなんてな……。
「…………」
グリードが部屋に入っても、クロスは書類に目を通しペンを走らせている。
その態度に、ツタージャはキッとクロスを睨むが、グリードは別段気にした様子もなく相手の言葉を待っていた。
そして、クロスはペンを机に置き……ようやく顔を上げ。
「――反省の言葉もないのだな」
グリードを睨み、いきなりそんな言葉を口にした。
「……反省?」
「そうだ。己の立場もわきまえずに勝手な行動をしたというのに、私に対して謝罪の言葉の1つも無いとはな。
お前は、エグフィード家としての己の立場というのを、まるでわかっていないようだ」
「はっ、誰がエグフィード家の人間だって? 俺はもうあんた達とは親子の縁を切ったと言ったはずだ。
それなのに、まだあんたは俺を息子だと思ってるのか?」
鼻で笑い、冷たい瞳でクロスを睨むグリード。
しかし、クロスは気にした様子もなく言葉を続けた。
「お前はエグフィードカンパニーを継ぐために生まれてきた、そしてその為に育ててきた。
だというのに、そんな勝手が許されると思っているのか?」
「―――――」
その言葉に、グリードではなくツタージャが絶句した。
今、グリードの父親である人間は、何と言った?
エグフィードカンパニーを継がせるために、グリードを育てた?
そんなのはおかしい、親というものは子供を愛情込めて育てるものだ。
これでは、グリードをエグフィードカンパニーの道具にしか見ていないという事に……。
「……相変わらず、自分以外の人間は、自分の駒としか思ってないみたいだな」
呆れと怒り、そしてほんの少しの失望を混ぜたグリードの口調で、ツタージャは我に返る。
「あんたはいつだってそうだった、俺をエグフィードカンパニーを継がせるための道具としてでしか見てこなかった。
今更、親の愛情を望んでいた訳じゃないけど、失望したね。
あんたは、結局救いようのないくらい傲慢な人間だったって事を、思い知らされたからさ」
「お前に失望される謂われはない、いいからさっさと自分のやらねばならない事を自覚しろ。
お前はエグフィード家の跡取りだ、ポケモンなんぞの化け物に入れ込む暇があるなら、さっさと家に戻れ」
「っ、タジャー……!」
自分を化け物と罵るクロスに、ツタージャは威嚇を込めたうなり声を上げた。
「フン……野蛮だな、こんなものを傍に置いている者の気持ちが理解できん」
「あんたみたいな傲慢の塊みたいな人間には、一生理解できるわけないだろ。
この子は俺の大事な家族だ、俺にとって……家族はポケモン達だけだ」
「…………」
睨み合う両者。
まるでこれから命の奪い合いをするかのように、殺気立っている。
だが、先に視線を逸らしたのは……グリードの方。
そのまま踵を返し、扉に手をかけた。
「どこへ行く?」
「もう用はない、いや元々あんたに会うつもりなんて毛頭無かった。
ここに来たのは、セリーヌさんがどうしても来てほしいと頼まれたからだ、そうじゃなきゃ誰が好き好んであんた達の前に姿を現すか」
……少しは、マシになっているかもしれない。
そんな淡い期待を抱いていたのだが……やはり、この男は根本から救いようのない男だった。
「そんな勝手が許されると思っているのか?」
「俺はあんたの人形じゃない、自分の思い通りの駒を作りたいなら、あんたに媚びへつらっている親戚に目を付けるんだな」
親戚も、一部を除いて同じ穴のムジナだ。
グリードとしては、もう二度とこんな欲望に溢れ愛情の欠片もない家には、戻りたくない。
そして同時に、この男の顔など一秒たりとも見たくない。
結局、グリードは一度もヒュビリスの顔を見る事はなく、部屋を後にする。
「………グリード様」
外に出ると、いつの間にかメイド服に着替えたセリーヌの姿が。
「……セリーヌさんのメイド姿、なんだか久しぶりに見ましたよ」
白を基調にしたフリル付きの服に、頭には同じく白いメイドカチューシャを身につけたセリーヌは、家を出る前となんら変わらない。
当たり前ではあるのだが、グリードにとってはほっとできる光景だった。
「そうでしたね。……何かおかしい所は御座いますでしょうか?」
「いいえ、相変わらずよく似合ってます」
まだ26という若さで、メイド長をしているセリーヌ。
小さい頃のグリードをいつも見守り、厳しくも優しく育ててくれたといっても過言ではない。
グリードにとって、彼女は姉であり母であり……エグフィード家では数少ない理解者である。
……だからこそ、あんな事をしでかした理由が、理解できない。
「グリード様、どうかなさいましたか?」
「………いえ」
「では、次は奥様の部屋に行きましょう」
「…………」
会うと約束した、だから今更何かを言うつもりはない。
しかし……先程のクロスとのやりとりの後に母に会うというのは、やはり精神的によろしくないわけで。
「……グリード様、男らしくないですよ?」
「うっ……わかってますよ」
では参りましょう、そう告げて歩き出すセリーヌ。ため息をつきつつ、グリードはその後ろについていく。
「……グリード様、ツタージャをお戻しになってはくれませんか?
奥様の身体はかなり衰弱してますし、ポケモンに対して恐怖心を抱いておいでですから……」
「…………」
――グリードの母、リア・エグフィードはポケモン恐怖症だ
幼い頃に野生のポケモンに襲われ、大怪我をしたのがキッカケで……いまだにポケモンに近づくのを恐がっている。
ただでさえ衰弱しているのだ、セリーヌの言う通りポケモンを見たら症状が悪化してしまうかもしれない。
……関係ない、関係ないが……それで余計に具合を悪くしてしまえば、さすがに目覚めが悪い。
「……ツタージャ、悪いけどボールの中に入っててくれるか?」
「タージャ」
ツタージャもグリードの心中を理解してくれたのか、こくりと頷き自分でボールを開き中に入っていった。
「賢い子ですね、それにとても主人思いで可愛らしいです」
「俺が一番最初にゲットしたポケモンで、俺なんかよりよっと頭良いですよ」
ツタージャ種のポケモンは、総じて知能が高く下手をすると人間よりも賢いと言われている。
自分のツタージャを見ていると、それも間違いではないかもしれない。
――そして、とある部屋に辿り着く
「…………」
ノックをするが、返事はない。
なので、グリードはそのまま部屋の中に入り、今度はセリーヌも彼と共に部屋に入る。
整理整頓された、大きく綺麗な部屋。必要最低限の物しかなく、飾り気がない。
そんな部屋の一番奥にあるベッドで……1人の女性が苦しげな寝息を立て眠っていた。
少し色素の薄いブラウンの髪、身体の線は細く……見るからに弱々しい。
この女性こそ、グリードの母であるリア・エグフィードである。
「……薬が効いているようですね」
「…………何の病気なんですか?」
重い病とは聞いた、しかし具体的にはどんな病気なのかは知らないグリードが、少し小さな声でセリーヌに問いかける。
すると。
「風邪ですよ、ただの」
セリーヌは、あっけらかんとそう言い放った。
「は…………?」
風邪? ただの?
理解するのに数秒、そして理解した後……グリードは理解した。
「……嵌めましたね?」
そう、初めからセリーヌの策略だったのだと理解してしまった。
「ですが奥様は身体が丈夫ではないので、たかだか風邪といっても決して油断できませんよ。それに、今回の風邪はかなり重いですから」
「…………」
それはわかる、セリーヌの言っている事は間違いではないだろう。
しかし、しかしだ……やはり納得できない気がするのは、決して気のせいではないはずだ。
「申し訳ありませんグリード様、ですがわたくしはどうしても奥様にグリード様をお会わせしたかった。
グリード様が出ていってから、奥様は目に見えて元気を無くされましたから……」
「…………」
卑怯だ、おもわず言いたくなった。
そんな言い方をされては、文句など言えるわけが無いだろうに……。
「……グリード……?」
「っ」
視線を、ベッドに向ける。
……目を醒ましたリアが、こちらを見ている。
「あぁ……グリード、戻ってきてくれたのね……」
「…………」
のろのろとした動きで身体を起こし、グリードの頬に手を添えるリア。
……正直、払いのけてやりたい。グリードは父と 同じくらい母が苦手なのだ。
だが……こんな弱々しい姿を見ては、そんな事をするのは躊躇われた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」
「…………」
譫言のように、何度もグリードに向かって謝罪の言葉を口にするリア。
瞳からは涙が流れ、身体は震えている。
「……何に対しての謝罪だよ」
「わ、私……私は、あなたを今まで母親らしい事を何も――」
「………今更、そんな事を言って許されると思っているのか?」
ギリと歯を鳴らし、グリードはリアを睨む。
許さない、その感情を瞳に乗せて。
「グリード……」
「俺は絶対にあんた達を許さない、たとえ泣こうが喚こうが……絶対にだ」
「グリード様、奥様はずっとあの時から――」
「わかっているさ。この人はあいつよりは人間味があるって事ぐらい。
俺だけなら或いは許していたかもしれない、けど……この人は十年前の事件の時、罪のないポケモンも見捨てた。
それだけは、どれだけ月日が経とうとも許さない!!」
リアをはねのけ、出入り口に足を運ぶグリード。
そして、もう一度リアを睨みながら……口を開いた。
「罪を意識を感じているなら、死ぬまで苦しむんだな。何があろうとも……俺はあんた達は許さない。
言いたかったのはそれだけだ、じゃあな」
「グリード………!」
「…………」
リアの声を無視し、グリードは部屋を出る。
そのまま早足で廊下を歩き……目指すのはフウロが居るであろう客間。
「………フウロ?」
「あっ……ふひーほ」
客間に入った瞬間、グリードは先程までの怒りや冷たい雰囲気を消し去った。
何故なら……フウロが口一杯にお菓子を詰め込んでいたからだ。
暫し見つめ合う2人、するとこんな光景を見られて恥ずかしくなったのか、フウロの顔がどんどん赤くなっていく。
「んぐ……ち、違うよグリード! い、いつもこんな風にがっついてるわけじゃないから!!
ほ、本来のわたしはお淑やかで上品な女の子だからね!?」
「…………」
口の周りにクリームを付けたままで、上品でお淑やかに見えるわけがないだろうに。
しかし、必死に言い訳をしているフウロを見ると、そのような無粋な事は言えない。
とりあえず……ティッシュを渡してあげた。
「あ……ごめん」
ティッシュを受け取り、口に付いたクリームを拭き取るフウロ。
……何だか、胸の内に湧き上がっていた黒い感情が、少しずつ晴れていく。
両親に会って再び内側にあった怒りを呼び起こしてしまったが、今のフウロのおかげで再び内に戻ってくれたようだ。
「……ありがと、フウロ」
「ふぇ……?」
「いや……なんでもない。それよか……よく食うなお前」
テーブルを見ると、空になった皿が幾つも並んでいる。
女性は甘いものが好きだと言うが……些か食べ過ぎな気がするのは気のせいではないだろう。
「あぅ……だって、美味しいんだもん……」
ばつが悪そうに顔を逸らすフウロ、沢山食べた所を見られたのが恥ずかしいのだろう。
「――お茶が入りましたよ、グリード様」
「ひゃあ!?」
「……ありがとうございます、セリーヌさん」
いつの間に用意したのか、テーブルに紅茶を置くセリーヌ。
この素早さにグリードは慣れているが、フウロは驚きの声を上げた。
「……グリード、お父さんとお母さんに会ってきたんだよね?」
「ああ、でも俺はこの家には戻らないから安心しろ」
「………そっか」
その言葉に、少し不謹慎と思いつつフウロはほっとする。
せっかく無理を言ってイルミナ学園に行けるように手配したのに、また離れ離れにならなくて済むからだ。
「それよか、フウロは早くフキヨセに行かなくていいのか?」
「うん。……これ食べてからね?」
「ああ、そう……」
都合八皿目のケーキを口に含むフウロに、グリードの口元が引きつる。
……だが、ある意味では好都合かもしれない。何故なら……自分もまだこの家に。
否――セリーヌに用があるからだ。
「セリーヌさん」
「はい、なんでしょうか?」
紅茶を一口含み、深呼吸をするグリード。
セリーヌも、彼の真剣な表情を見て向かい側に座り込んだ。
そして。
「――教えてもらいます、あなた達の目的を……何故、強いポケモンを集めているのかを」
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクホーク】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・はがねのつばさ ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・真・リーンフォースブレード ・でんこうせっか ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん ・つばさでうつ ・れいとうビーム
・へびにらみ ・つばめがえし ・じこさいせい
・リーフストーム ・ブレイブバード ・ふぶき
・リーフブレード二段斬り ・インファイト ・アクアリング
・エナジーボール ・かげぶんしん ・アクアテール
・はかいこうせん ・みずのはどう
【オノノクス】♂ 【コジョンド】♀ 【グライオン】♂
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・ダブルチョップ ・みきり ・シザークロス
・シャドークロー ・はっけい ・れんぞくぎり
・りゅうのいかり ・とびひざげり ・ほのおのキバ
・ドラゴンクロー ・はどうだん ・クロスポイズン
・りゅうのいぶき ・おうふくビンタ ・ギガインパクト
・りゅうせいぐん ・ギガインパクト ・はがねのつばさ
・あなをほる ・ドレインパンチ
・りゅうのはどう ・ストーンエッジ
・はかいこうせん ・きあいパンチ
・かみなりパンチ
【クチート】♀ 【ラティアス(ティア)】♀ 【ゴチミル】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・てっぺき ・ラスターカノン ・ねんりき
・アイアンヘッド ・じこさいせい ・ひかりのかべ
・かえんほうしゃ ・はかいこうせん ・サイケこうせん
・ねごと ・りゅうのはどう
・ラスターカノン ・りゅうせいぐん
・かみくだく ・れいとうビーム
・ドラゴンクロー
・はがねのつばさ
【ピカチュウ】♂
・10まんボルト
・アイアンテール
・ボルテッカー
・でんこうせっか
・かみなり