けど、ティアはそんなラティオスをボッコボコにしてしまった。
い、一体どうしたんだよティア……?
「……悪かったな……」
「クォゥ」
「あいてっ!? 妹よ、もう叩くのはやめてくれ」
「クォォォゥ」
「うっ……こ、この度はご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
「セリフと表情が全然一致してないな」
呆れたようなアヤトの言葉に、全員が頷く。
まあ、めっちゃ嫌そうに言われたら、文句も言いたくもなるわな。
……とりあえず、ティアのおかげでラティオスがおとなしくなり、事情を訊いてみた。
まず、やっぱりというか……ラティオスはティアのお兄さんだった。
なんでも、ティアとラティオスはホウエンのとある場所でのんびり暮らしていたのだが……。
このラティオス、シスコンなのである。
シスコンなのである。
大事な事なんで二回言いました。
妹であるティアが可愛くて可愛くて……四六時中ベタベタベタベタベタベタとしていたものだから……ティアの奴、家出したそうだ。
まあ、確かにやめてと言ってもベタベタしてきたら家出したくなるわな……その途中でセシルに襲われ、このイルミナにやってきたというわけで。
「伝説のポケモンがシスコンって……」
「で、でも……それだけティアが大切だって事だと思うし……シスコンでもいいんじゃ……」
「グリード、そのフォローもどうかと思うぞ?」
「うっ……」
「とにかく! 妹を見つけた以上こんな所に用はない。妹よ、早くお兄ちゃんと――あべしっ!?」
またはがねのつばさでラティオスをぶっ叩くティア、本当に兄に対して容赦ないな……。
「クォォォゥ」
「何!? ここに居るとはどういう事だ!?」
「クゥゥ」
「なぁにぃ!? この人間と一緒に居るだとぉぉぉっ!!?」
ニコニコしながら俺にすり寄るティア、おい、ラティオスが血涙流してこっちを睨んでるんだけど。
「何故だ妹よ、人間なんぞに従属するなど一体何があった!?」
「クゥゥ、クォォゥ」
「従属じゃない、家族だと? どうした妹よ、人間のように我々ポケモンと呼ばれる者達を家畜のように扱う下等な種族なんだぞ?
それなのに、人間を信じるというのか?」
信じられないといった表情のラティオスに、ティアははっきりと首を縦に振る。
「ティア……」
ラティオスの言っている事は、間違っていない。
伝説のポケモンと呼ばれる存在であるラティオスだからこそ、その力を狙ってやってくる醜い人間を嫌というほど見てきたのだろう。
人は、自分が得られる強い力があるとわかれば、それを得ようとする。
それは人の性、悲しい事だけど……その醜さは俺だって持ってる。
そして、ポケモンはそんな醜い心を敏感に感じ取れるのだ、だからこのラティオスや俺のツタージャやピカチュウが、人間嫌いになるのも無理はない。
――だけど、それでも
「ラティオス、お前は人間なんか信用できないかもしれないけど……俺は絶対にティアをぞんざいに扱ったりしない。
だから、俺を信じてくれないか?」
「ふん、口だけならいくらでも言えるものだ。妹を手元に置いておきたいからといって、嘘八百を並べられるなど不愉快だ」
「嘘じゃない。俺はティアを家族だと思ってる、ティアだけじゃなくみんなも、だから――」
「人間は、信用するに値しない」
「…………」
おもわず、言葉を詰まらせる。
「貴様……いくらティアの兄だからといっても、グリードを馬鹿にするなら許さん……!」
「そうだね。キミが人間を信じられない気持ちもわからなくはないけど、それとこれとは話が別だ」
ラティオスを睨みつけ、立ち上がるアオイとサクラ。
だが、そんな2人を俺は慌てて制した。
「ちょっと待ってくれ、ラティオスの言っている事は正しい。
いくら口で言ったところで、証明しなくちゃ信じられるわけないんだから……」
「グリード……」
「クゥゥ……」
「わかったようだな。本来ならば、お前達のような人間が妹に出会う事すら許されないのだ。
では妹よ、わかったらお兄ちゃんと一緒に――ごへぁっ!!?」
あっ、またはがねのつばさで……ティア、本当に容赦ない……。
「って、ツタージャ?」
今ラティオスをぶっ飛ばしたのは、ティアだけではなく……ツタージャもだった。
険しい表情、これはこの子が本気で怒っている時の顔だ。
「タジャ、タージャ!!」
ラティオスに向かって何かを訴えるツタージャ。
「ティアがグリードと共に居る事を望んでいるんだから、黙ってなさいだと?」
「タージャ、タジャタジャ、タジャ」
「グリードは確かに人間だ、けど……この世に生きる全ての人間がお前の考えてるような奴等というわけじゃない。
彼は自分達を本当に大切にしてくれる、それがわからないお前にグリードを馬鹿にする権利なんかない……だと!?」
またも驚愕の表情を浮かべるラティオス、同じポケモンと呼ばれるツタージャに、そんな事を言われるとは思わなかったのだろう。
「タージャ、タジャー!!」
「それを証明する為に……あたしと勝負しろ!?」
「えっ……ツタージャ」
「……タージャ」
俺に視線を向け、頷くツタージャ。
……バトルで、俺とお前の絆を証明しようというのか。
異なる種族である人とポケモンでも、確かな絆があると……ラティオスに知ってほしいんだな。
……わかったよ、ツタージャ。
「ラティオス、俺達とバトルしてくれないか?」
「何……?」
「俺は人間だ、お前の言う通り醜い所だって沢山ある。
でも……ティア達を大切に想うこの気持ちは誰にも負けない。家族として……必ず悲しませないという誓いがある。
それを、お前にも知ってもらいたい。だから……バトルでそれを証明してやる!!」
「クォォ、クォォゥ」
ティアもラティオスを説得するように、声を上げる。
……その甲斐あってか。
「いいだろう。威勢がいいだけな人間がどこまでやれるか、見せてもらおうじゃないか!!」
キッと、ラティオスは俺を睨みつけバトルを承諾してくれた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
――場所を移動し、バトルフィールドがある地下の建物へ
「……アイツと会ってから、伝説のポケモンに会う機会が多くなったな」
見学席でグリード達を見ながら、ぼやくようにアヤトは呟く。
なんというか、彼は不思議な星の下に生まれてきたのではないかとも思う。
「……アオイ、君はグリード達がラティオスに勝てると思うかい?」
「無理だな」
「っ!?」
すぐさま言い返すアオイに、人間形態になったティアは驚きの表情を彼女に向けた。
アオイもサクラも、グリードが勝つと信じているとばかり思っていたのに……。
「ラティオスは強い。さすが伝説のポケモンといえるくらいにな、だがグリードはトレーナーとしてはまだ未熟だし、ツタージャとてパワーアップしているが、それでも太刀打ちできるレベルじゃない。
勝ってほしいとは思う、だが……おそらくグリード達では、ラティオスには勝てない」
無情とも言えるくらいはっきりと、アオイは告げる。
しかし、アヤトもサクラもアオイの言葉を否定する事はなく、ティアは不安げに瞳を揺らせグリード達に視線を向けた。
「いくぞラティオス! ツタージャ、リーフブレード!!」
「タジャー!!」
地を蹴り、一直線にラティオスに向かっていくツタージャ。
「………ふん」
だが、ラティオスはその場から動かず――そのままリーフブレードの直撃を受けてしまう。
何を考えているのか、そう思ったのだが……。
「………タジャ」
なんと、直撃を受けてもラティオスにダメージは殆ど通ってはいなかった。
「強い……!」
「今度はこちらから行くぞ!!」
そう言って、ラティオスは口からエネルギー砲を発射する。
「ラスターパージか……だったら、こっちはリーフストーム!!」
「ツタァァァ……ジャァァァァッ!!」
向かってくるラスターパージに、真っ向からリーフストームで対抗する。
ぶつかり合う両者の技、一見互角かと思えるそれはしかし。
「タジャァッ!!?」
「ツタージャ!!」
ラティオスの攻撃はツタージャの攻撃を押し返し、そのまま直撃を受けツタージャは地面に叩きつけられた。
「負けるなツタージャ、リーフブレード!!」
「っ、タジャー!!」
「まだ向かってくるか……無駄だ!!」
ツタージャが起き上がり走るよりも早く、ラティオスは接近し両腕を振り上げる。
「タジャー!?」
ドラゴンクローの直撃を受け、空中に飛ばされるツタージャ。
更に、ラティオスはそんなツタージャに追いつき連続でドラゴンクローを叩き込んでいく。
「タジャ、タジャ、タ、ジャ……!?」
「そらっ!!」
「タジャァァァッ!!」
トドメとばかりに頭部に攻撃を叩き込まれ、地面に落ちていくツタージャ。
「頑張れツタージャ、エナジーボール!!」
「っ、ター、ジャァッ!!」
辛うじてグリードの声を聞き取り、着地の事など考えずにツタージャは攻撃を仕掛ける。
「ふん……」
しかし、迫るエナジーボールをラティオスは軽々と弾き、ツタージャは受け身も取れずに地面に叩きつけられてしまった。
「やはり強い……!」
「あのツタージャが、よもやここまで手も足も出ないとは……!」
「…………」
ギュッと、強く手を握りしめるティア。
……自分のせいで、ツタージャはあそこまで傷ついてしまった。
できるなら今すぐにやめさせたい、でも……そんな事は他ならぬツタージャとグリードがそれを望まない。
だから、ティアにはこのバトルを黙って見守る事しかできなかった。
「ツタージャ、大丈夫か!?」
「タ、タジャ……」
起き上がり返事を返すツタージャだが、やはりダメージが大きく足元がおぼつかない。
それを見て、ラティオスは呆れたような口調で口を開く。
「もういい。これ以上やっても無駄だ」
「なに……?」
「お前は無駄にツタージャを傷つけているだけだ、こんなものは絆でもなんでもない。
どうやってツタージャを騙しているかは知らないが、これ以上戦う意味などない」
「俺はツタージャを騙してなんかいない!! リーフブレード!!」
「タジャー!!」
「っ、無駄だというのが……わからないのか!!」
叫び、全身を高エネルギー体で包み込み、突撃するラティオス。
「タジャァァッ!!?」
ラティオスの攻撃――ギガインパクトは、呆気なくツタージャを吹き飛ばしてしまった。
そのあまりの威力に、ツタージャは飛ばされたまま壁へと向かい――
「ツタージャーーー!!」
「何!?」
驚愕の声は、ラティオスから。
「あぐっ……!!」
ツタージャが壁に激突する瞬間、グリードは彼女と壁の間に入り彼女を抱きかかえる。
しかし、それだけで衝撃は殺せず――頭部を強打してしまった。
「グリード!!?」
席から立ち上がり、グリードの元へ向かおうとするサクラ達。
「みんな、まだバトルは終わってないんだ!!」
だが、グリードは大声を張り上げ全員を押し留める。
……ポタリと、彼の額から血が落ちた。
「バトルは中断だグリード、怪我をしてるのがわからないのか?」
「わかってる。けどこんなのかすり傷だ」
「かすり傷って……」
血が流れているのに、かすり傷なわけがないだろう。
そう言いたかったが……グリードの瞳を見て、サクラ達は何も言えなくなってしまった。
――止めないでくれ、と
グリードは、口ではなく瞳でサクラ達に訴えかけていた。
「ツタージャ、大丈夫か?」
「タジャ……」
「俺の事なら心配するな、それより絶対にこのバトル、勝つぞ!!」
「…………タジャ!!」
力強く頷きを返し、再びバトルフィールドに向かうツタージャ。
「……どうして、そこまでして」
自分が怪我をしてまでツタージャを守った事もそうだが、何より……まだ立ち向かってくる事に、ラティオスは驚愕を隠せない。
「言ったろ、お前に俺達の絆を見せてやるって!!」
「怪我をしてまで、通そうとする事か!?」
「ああそうだよ。俺は馬鹿だからな、でも……ラティオスに人とポケモンの絆を信じてもらいたいんだ。
人とポケモンの絆を知れば、きっと今まで見えなかったものが見えてくるはずだ!!」
「―――――」
おもわず、ラティオスはたじろいでしまった。
――この人間は、今まで見てきたどの人間とも違う
あくまで真摯で、汚れなき純粋な心で自分と対峙している。
(こんな人間が、この世界にはまだ……)
「いくぜラティオス!! ツタージャ、リーフブレード!!」
流れる血を乱暴に袖で拭いながら、グリードは再びバトルを開始する。
「タジャー!!」
ツタージャも、主人の望むままにバトルを続行、ラティオスに向かう。
「くっ……!」
恐れにも似た何かを感じつつ、ラティオスも反撃に移る。
発したのはりゅうのはどう、オノノクスのより巨大な光球をしかし。
「っ、タ、ジャ!!」
ツタージャは身体を捻って回避し、攻撃を回避。そのまま跳躍して――右腕を振り下ろした。
「が、っ―――!?」
頭部に受けた衝撃に、おもわず短い悲鳴を上げてしまうラティオス。
「リーフブレード・二段斬り!!」
「タ、ジャー!!」
着地と同時に脚へ力を入れもう一度跳躍、今度は回転しながらラティオスの右頬にリーフブレードを叩き込んだ。
「ぐ……っ、こいつ……!」
だが、まだやられるラティオスではない、怯みながらも手を伸ばしツタージャの右足を掴み上げた。
「今だツタージャ、リーンフォースブレード!!」
「なっ!?」
まだ攻撃する余裕があるのか、驚愕しつつラティオスの視線はツタージャに。
すると彼女は、右手にリーフブレード、左手にエナジーボールを構えそれを合成。エメラルドに輝く巨大な大剣を生み出した。
「ター、ジャァァァァッ!!」
振り下ろされる大剣。
それを避けられる余裕もなく、ラティオスは直撃を受け。
ツタージャと共に、地面へと叩きつけられた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「いててて……」
「ほら、じっとしてなきゃダメだよ」
場所は変わって、ここは学園にある保健室。
保健室とはいっても、小さな病院くらいの施設はあるけど。
……それにしても、最近俺ってポケモン絡みで怪我するのが多いかも。
「キミらしい怪我だとは思うけど、あまり無茶はしないでくれ。
見ている僕達は肝を冷やしてしまうから」
「すんません……」
バトルは終わり、その後俺は保健室に連れられてから現在に到るまで、アオイとサクラに説教されていた。
まあ、悪いのは俺だからおとなしくするしかないんだけど。
ちなみに……バトルはラティオスの勝ち。
リーンフォースブレードでツタージャは力尽き、ラティオスは辛うじて立ち上がったから、俺達の負けだ。
あの子達はすぐさまきずぐすりを使ったから既に全快している、ポケモンって本当に凄い。
「…………」
先程から俺を睨んでいるラティオス、しかし……不思議と敵意は感じられなかった。
「……おい、人間」
「なに?」
「その、なんだ……」
「………?」
何やらもごもごと口を動かし、俺に何かを伝えようとしているのはわかるが……正直、何を言いよどんでいるのだろう。
暫くそんなラティオスを見つめていたら、いきなり大声でこんな事を言ってきた。
「い、一応は認めてやらん事はないぞ。お前とポケモン達の絆とやらを!」
「…………」
「な、なんだそのポカンとした間抜けな顔は!!
ボ、ボクが認めてやると言っているんだから、感謝しろ!!」
「……はあ、ありがとう」
とりあえずよくわからないまま頭を下げると、ラティオスを「ふん……」とそっぽを向いてしまった。
その光景に俺は首を傾げ、ティアは可笑しそうにクスクスと笑い、他のみんなは苦笑やら呆れ顔を浮かべている。
……でも、少しは認めてくれたのかな。
「だが勘違いするな!! お前には絶対に妹はやらないからな!!」
「………?」
「それと、お前が少しでも妹をぞんざいに扱ったら……りゅうせいぐんで消し炭にしてやるから……カクゴシロヨ……?」
「あ、ああ……」
そんな血走った目で言わなくても……そんなに信用できないのかな。
まあ、でも……少しだけ、人間を信用してくれたのは嬉しい。
まだまだこんな関係だけど、きっとラティオスとも仲良くやっていけるはずだ。
そう思い、俺は自然と口元に笑みを浮かべていたのだった。
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクホーク】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・はがねのつばさ ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・真・リーンフォースブレード ・でんこうせっか ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん ・つばさでうつ ・れいとうビーム
・へびにらみ ・つばめがえし ・じこさいせい
・リーフストーム ・ブレイブバード ・ふぶき
・リーフブレード二段斬り ・インファイト ・アクアリング
・エナジーボール ・かげぶんしん ・アクアテール
・はかいこうせん ・みずのはどう
【オノノクス】♂ 【コジョンド】♀ 【グライオン】♂
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・ダブルチョップ ・みきり ・シザークロス
・シャドークロー ・はっけい ・れんぞくぎり
・りゅうのいかり ・とびひざげり ・ほのおのキバ
・ドラゴンクロー ・はどうだん ・クロスポイズン
・りゅうのいぶき ・おうふくビンタ ・ギガインパクト
・りゅうせいぐん ・ギガインパクト ・はがねのつばさ
・あなをほる ・ドレインパンチ
・りゅうのはどう ・ストーンエッジ
・はかいこうせん ・きあいパンチ
・かみなりパンチ
【クチート】♀ 【ラティアス(ティア)】♀ 【ゴチミル】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・てっぺき ・ラスターカノン ・ねんりき
・アイアンヘッド ・じこさいせい ・ひかりのかべ
・かえんほうしゃ ・はかいこうせん ・サイケこうせん
・ねごと ・りゅうのはどう
・ラスターカノン ・りゅうせいぐん
・かみくだく ・れいとうビーム
・ドラゴンクロー
・はがねのつばさ
【ピカチュウ】♂ 【キュウコン】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】
・10まんボルト ・かえんほうしゃ
・アイアンテール ・ほのおのうず
・ボルテッカー ・じんつうりき
・でんこうせっか ・エナジーボール
・かみなり ・アイアンテール
・ボルテッカー・アイアンテール