グリードくんのイルミナ学園奮闘日誌【完結】   作:マイマイ

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谷底に落ちた俺は、見知らぬ女の子に助けられた。

言葉は話せず、やたらと野性的な恰好をした女の子だけど……何者なんだろう。

そんな中――俺の前に姿を現したのは、イッシュに伝わる伝説のポケモン。

ビリジオン、テラキオン、コバルオンの三体だった。


第112話 〜レシラム、ゼクロム、新たなる英雄伝説!!〜5

「……ビリジオン、コバルオン、テラキオン」

自分の目を、疑った。

ただでさえ目撃例の少ない伝説のポケモン、それらの中で群を抜いて目撃された事がない三体が、自分の目の前にいるのだから。

 

〈何だ人の子、そんなにこの角でその身を貫かれたいのかぁ?〉

テラキオンの凄みのある顔が眼前に迫る。

今すぐにでも殺してやろうか、そんな全力の殺気を込めて。

「うー!!」

しかし、俺を守るように少女がテラキオンの身体をぽかぽかと叩いた。

 

〈ちょ、リン、やめろ!!〉

「うぅー……!」

威嚇するような唸り声を上げる少女、この子の名前……リンっていうのか。

〈おいおいリン、そいつは人の子だぞ? そんなものを守る意味なんてないはずだ〉

「ぐるる……」

唸り声がパワーアップした、テラキオンもおもわずたじろぐ。

 

〈……おやおや、リンはこの人の子を随分と気に入ってしまったようですね〉

〈何呑気に言ってんだよビリジオン、人なんぞ災いしか呼ばないどうしようもなく愚かな存在だぞ?〉

どこか飄々としたビリジオンに対し、テラキオンは俺に対して行き過ぎなくらいの敵意を見せている。

もう一体――コバルオンは、何も語らず何も喋らずただ黙って俺とリンと呼ばれた少女を見つめていた。

その瞳には敵意は警戒心はなく、何やら見定めるような……不思議な感情が見え隠れしていた。

 

〈コバルオン、お前も黙ってないで何とか言ったらどうだ?

 ここはリン以外の人の子の侵入は許さない、さっさと殺して捨てるぞ!〉

物騒なテラキオンの言葉にぎょっとする、殺して捨てるって……。

しかし、コバルオンは何も言わず……痺れを切らしたテラキオンが、再び殺気を込めた瞳をこちらへと向けてきた。

〈小僧、貴様が何故ここに来たのかは知らんが、死んでもらう!!〉

「ちょ、ちょっと待てよいきなり――」

〈問答無用!!〉

頭を下げ、鋭くデカい角を向けてくるテラキオン。

俺は動けず、そのままテラキオンの角が俺の身体を……。

 

「うあー!!」

〈なっ!!?〉

貫こうと迫る瞬間、俺を庇うようにリンがテラキオンの前に――

「っ、やめろぉぉぉぉぉっ!!!」

叫び、手を伸ばす。

すると、突き出した手が淡い青色の光に包まれ、テラキオンを突き飛ばす。

 

〈ぬっ―――!?〉

「う……?」

っ、こいつ……きょとんとしやがって、自分が何したのかわかってんのか……!!

「おい!!」

「っ、あぅ……!」

俺は痛みも忘れ起き上がり、リンに向かって怒鳴りつける。

「お前、なに馬鹿な事やってんだ!! 一歩間違ったらお前が死んでたんだぞ!?」

「うっ……あぅぅ……」

みるみる小さくなっていくリンに、俺も幾分か冷静さを取り戻す。

 

「……悪い、でもこんな事するなよ? 痛いのは嫌だろ?」

こくんと頷くリン、瞳いっぱいに涙を溜めている姿が、罪悪感を運ぶ。

それにしても、今の力は……。

 

〈――なる程、波導使いですか〉

〈テメェ……やりやがったな!!〉

「うぅー……!!」

〈あ、いや……リン、頼むから睨むなよ……〉

一気に怒りを萎ませるテラキオン、どれだけこの子に弱いんだ……。

 

「いっ、て……」

無理矢理身体を起こしたせいで、ズキズキと身体が痛む。

けど、何故か痛みはさっきより引いてくれてる、これなら……。

「よっ、と………うん、大丈夫だな……」

身体を少し動かす、痛みはあるけど普通に動けるレベルだ。

 

「うぅー……?」

「大丈夫だよ。無理してるわけじゃないから」

言いながら、心配そうに俺を見るリンの頭を撫でてやる。

〈テメェ、どこ行こうってんだ!!〉

「……仲間の所に帰るんだ、レシラムと共にゼクロムを止めないと」

〈レシラムに……ゼクロムだと? おい人の子、テメェ一体何をしようとしてんだ!!〉

「俺にはグリードっていう名前がある、それにそんな偉そうに訊かれたら答える気も失せるよ」

先程からテラキオンの俺に対する態度についカチンと来て、おもわず言い返してしまった。

 

〈なっ、人間の分際で生意気な―――!〉

「うー!!」

再び襲いかかろうとするテラキオンだが、リンに叩かれたら途端におとなしくなった。

「助けてくれた事は感謝してる、けど……時間がないんだ。ティア、出てきてくれ!!」

「――クォォゥ!!」

「ぼへっ!?」

 

ボールから出した瞬間、ティアは俺めがけてタックルを仕掛けてきた。

さすがに怪我をした状態でやられたので一言言ってやろうと思ったが……やめた。

……ティアの瞳に、涙が溜まっていたから。

 

「……ごめんなティア、心配かけて……悪かった」

頭を撫でると、ティアはふるふると首を横に振った。

〈……ラティアスに認められている、だと? こんな人の子が……?〉

何やら、テラキオンが俺達を見て驚いているが、一体どうしたのだろう?

気にはなったが、悠長にしている暇はきっとない、レシラム達が待っているんだから……。

 

「リン、本当にありがとうな。ビリジオン達も本当にありがとう」

「あぅあぅ……」

頭を撫でてお礼を言うと、リンはふにゃふにゃと顔を緩ませ俺に抱きついてくる。

〈待て、まさかここから生きて帰れると思っているのか?

 ここは人が立ち入ってはならない聖域だ、それを知られた以上……生かしてはおけん!!〉

 

俺達に立ち塞がるように身構えるテラキオン、何がなんでも俺をここから先に行かせたくないらしい。

彼は、今まで出会ってきたポケモン達の中でも、群を抜いて人間に対する憎しみは強い。

テラキオンだけじゃない、ビリジオンとコバルオンも……口には出さないけど、人間に対する憎しみを瞳に宿してる。

……でも、だからってここでおとなしく殺されるつもりも、立ち止まるつもりもない!!

 

「テラキオン、俺はこんな所で立ち止まってるわけにはいかないんだ。

 だから――何が何でもどいてもらう!!」

「クゥゥゥ……!」

戦闘態勢に入るティア。

〈いいだろう。ならばそのまま死んでいけ!!〉

テラキオンも唸り、このままバトルか――そう思っていたら。

 

〈そこまでです、リンが怯えているではありませんか〉

ビリジオンの冷静な声が、場に響いた。

「あ……」

頭に血が昇っていて気づかなかった、怯えるようなリンを見て……冷静さを取り戻す。

……何やってんだ、俺は。

 

「……リン、ごめんな?」

「うぅー……あーうー」

「喧嘩しないよ。もう……喧嘩しないから」

〈………チッ〉

〈グリード、といいましたね。レシラムの事を知っているようですが……何者です?〉

キッと睨むように、ビリジオンが問いかける。

隠し事などするつもりはないが、その鋭い瞳を見ると嘘をつけなくなるくらいの強さを持っていた。

 

「……俺は、レシラムのパートナーだ」

〈何だと!?〉

ビリジオンではなく、テラキオンが驚いた。

〈パートナー……つまり、レシラムの新しい従者ということですか?〉

「少なくとも、レシラムは俺の事を認めてくれたよ」

〈……レシラムもゼクロムも、人間に対して甘い所がありますからね。まだ……見限れないのでしょう〉

 

「俺は、レシラムに人間を襲っているゼクロムを止める為に協力してほしいと言われて、この大陸に来た。

 それで、ゼクロムと戦って……その最中、俺は谷に落ちたんだ」

〈なる程……。あなたは近くの川で倒れていたのを、リンが見つけ助けたのですが……そういう経緯があったのですね〉

「ゼクロムは、意味もなく人間を襲うような事はしないと思う。確証はないけど……」

〈フン、ゼクロムが人間を見限っただけだろう〉

〈テラキオン黙ってください。……それで、あなたは人間の為にゼクロムを滅ぼすのですか?〉

ビリジオンの言葉に、ぎょっとした。

ゼクロムを滅ぼす?

 

〈ゼクロムを止めようとするという事は、命懸けの戦いになるでしょう。

 そうなれば、どちらかが倒れるのは必至。その時……あなたは人間を取るのでしょう?〉

 

それはどこか試すような……俺の言葉で何か答えを得ようとしているような、そんな問いだった。

人間を取るか、それともゼクロムを取るか。

どちらかしか救えなかったら、お前はどちらを救う?

……タチの悪い冗談だ。

そんな未来など認めない、認められない。

 

「俺は、ゼクロムは見捨てないし人間だって見捨てない」

〈それは甘い理想論というものです、ゼクロムと戦ったのならその力は知っているでしょう?

 あの強大な力と拮抗したら、どちらもただでは済まず敗者は確実に滅びの道を辿る。

 ――選択を、しなければならない時です〉

 

あくまで、ビリジオンは来たるべき未来の話をしている。

……俺だって、もしかしたらと思わなかったわけじゃない。

レシラムとゼクロム、人間の力など簡単に超えた存在が、十の力を以てぶつかり合えば……どうなるのか。

あの時の戦いでも、小さな山が消し飛んだのだ。

もし、両者が街で暴れ回れば……。

 

〈人の子、あなたにもわかっているのではありませんか?

 後回しにできない問題から目を背けても意味はありません。仮にもレシラムのパートナーを名乗るのならば、覚悟を決めねばならないのではありませんか?〉

冷静な口調で、ビリジオンは淡々とした口調で俺を問い詰めていく。

……だが、そんな事で俺の心は揺るがない。

 

「ビリジオン、俺は誰かを失う未来は選ばないよ。俺は……絶対にゼクロムも人間も助ける」

〈…………〉

精一杯の強がりを見せて、ビリジオンに答える。

それをどう受け取ったのか、ビリジオンは何も語らず俺の顔を暫しジッと見つめ続けていた。

〈チッ――人の子風情が、奇麗事をぬかしやがる〉

またも悪態を吐くテラキオン、余程人間が嫌いらしい。

仕方ないとはいえ、なんともやるせない。

 

〈……人の子、いえグリード。お気持ちはわかりますが、ひとまず傷が完全に癒えるまではおとなしくしていなさい〉

「えっ………」

一瞬、ビリジオンの言葉の意味を理解する事ができなかった。

〈ビリジオン、貴様この人の子をここに置いておくつもりか!?〉

俺よりも早く言葉の意味を理解したテラキオンが、予想通り凄まじい形相でビリジオンへと迫った。

〈ええ。だって面白いではありませんか、この人の子は本気でゼクロムを滅ぼさずに人を助けると言ったのですよ?

 脆弱で愚かな人間の分際で、そんな夢物語を本気で叶えようとしているのですから〉

こんな阿呆は初めて見ました、とビリジオンは本人の前でも構わず暴言を吐きまくっている。

……そこまで言われると、ちょっと悲しい。

 

〈人の子、私はあなたに興味が湧きました。ですから特別にここで傷を癒す事を認めてあげましょう。

 見届けさせてもらいますよ? あなたの戯れ言が、真実か否かを〉

口元に笑みを見せ、ビリジオンが楽しげに言い放つ。

……試されているのだ、俺は。

人間如きがどこまでできるのか、まるでゲームを楽しむかのように。

 

「………ああ。俺は必ず守ってみせるさ、ゼクロムも……人間達も」

だから、俺はしっかりと頷きを返し、言い返してやった。

それを見て、ビリジオンは何を思ったのか。

 

〈………言葉だけにならない事を、祈ってあげますよ〉

どうせ口先だけだ、そう言いたげに言葉を返してきた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

場所は変わり、イッシュ地方の外れにある丘の上。

そこに立ち空を見上げている1人の男――エリックは、隣に立つ巨大なポケモンに対して口を開く。

 

「すまんな。このような面倒事に巻き込んでしまって」

〈構わない。この世界のポケモン達全員の問題だ、むしろ私の力を貸りたいと言ってくれたのは嬉しいものさ〉

そう言って、そのポケモンも優しく微笑みを返す。

人に対する慈愛に満ちた微笑み、このポケモンは……強大な力を持ちながら、劣る生き物である人を愛していた。

 

「―――エリック様」

背後から女性の声が響き、エリックは振り向く。

そこにいたのは、動きやすいように改造を施した、エグフィード家から支給されるメイド服に身を包んだ、セリーヌの姿が。

 

〈……何故、そのような恰好なんだ? それは人に仕える服装だと記憶していたが……〉

「わたくしはメイドですから、やはりこういう服の方がしっくり来るんです」

(そういう問題か……?)

服くらい自由にしてもいいが、これから戦いに行く恰好ではない。

 

「それよりもエリック様、ゼクロムが再び動き出しました……」

「わかっているさ。遅くなってしまったが……動くぞ」

言って、ポケモンの背に乗るエリック、セリーヌもそれに続く。

「……グリード様は、元気にやっているのでしょうか」

「大丈夫だ。あの子の傍には沢山の友達が居る。きっと幸せになる事ができるさ」

……その為に、この戦いは必ず勝つ。

グリードのような子供が幸せに暮らせるように、大人である自分達が動かなければ。

 

「頼むぞ。どうか私達に力を貸してくれ―――“ルギア”」

空を飛び立ち、エリック達と共にゼクロムを追うのは――幻のポケモンである、ルギア。

 

――エリックは、力を貸してくれるポケモンを探すために、ジョウト地方へと赴いた

 

そこで偶然出会ったのが、海の守り神と謳われるルギアだったのだ。

出会えたのは本当に偶然だった、ルギアに会う目的で動いていたのは確かだったが……よもや、本当に出会えるとはとエリックは当初驚いたものだ。

うずまき島と呼ばれる島の中で、エリックはルギアへと告げる。

 

――力を貸してほしいと

 

――大切な者を守る為に協力してほしいと

 

静かに、自分を見つめるルギアにエリックは懇願した。

そして、ルギアは暫しエリックを見定めるような視線を送った後。

何も言わず、けれど力強く頷きを返した。

 

〈エリック、ゼクロムに向かう者が……他にもいるようだ〉

ルギアとの出会いを思い出していたエリックに、彼からテレパシーが送られた。

「私達以外にも……? 国際警察かもしれないな」

国際警察が今回の事件に対して動きを見せているのは知っている、だからそうなのだと思ったのだが……ルギアは首を横に振る。

 

〈いや、人間も居るようだが……この強大な力は、普通のポケモンではないな……〉

「何……?」

〈何にせよ、警戒しておいた方が良さそうだ。では少しスピードを上げるから、しっかり掴まっていろ〉

言って、ルギアはすぐさま飛行スピードを速める。

 

 

――ゼクロムを止める

  その思いを持った者達が、集結していく

 

決戦の時は、すぐ傍まで迫っていた―――

 

 

 

 

To Be Continued...




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