……さて、あの人ときちんと話をしないとな。
「タージャ」
「んん……?」
身体を揺すられ、目を開くと……視界いっぱいにツタージャの顔が映った。
「ふぁぁ……おはよう、ツタージャ」
「タージャ」
欠伸をしつつツタージャの頭を撫でる、ツタージャもニッコリと笑みを返してくれた。
……はて、何だかベッドがめちゃくちゃデカいような。
「………あ、そっか」
そういえば、エグフィード家に戻ってきたんだっけ。
相変わらずバカでかい部屋だ、ひと部屋だけで普通の部屋の四倍はあるだろうな。
ツタージャが珍しく俺より早く目が醒めたのも、バカでかい部屋に慣れないせいかも。
「……今日も、いい天気だな」
窓を開けると、眠気なんて一気に醒めてしまう程の青空が広がっている。
と、俺はキョロキョロと辺りに視線に送った。
「タジャ?」
「いや、レシラムとゼクロムの姿がないなって」
中庭に居たはずのレシラム達がいないのだ、あのでっかい身体は相当目立つのに……。
まさか黙って行ってしまったなんて事は無いだろうし、どこ行ったんだろ?
そう考えていたら……腹が鳴った。
「腹減ったなぁ……ツタージャ、メシ食いに行くか?」
「タジャー」
賛成、と右手を挙げて応えるツタージャ。
レシラム達も気になるけど、今はメシを先に済ます事にしよう。
そう思い着替えを済ませ、ツタージャを肩に乗せ部屋を出る。
「グリード様、おはようございます」
通路を掃除していたメイドさん達に声を掛けられた。
「おはよう、いつもご苦労様」
そう返すと、メイドさん達は何故か頬を赤らめた。
「???」
なんか変だな……とは思いつつ、食事をする為に大広間へと足を運ぶ。
「…………?」
「タジャ?」
そして入った瞬間、俺とツタージャは同時に動きを止め。
「……おはようございますグリード様、朝食の用意は……できておりますよ」
いつも通り……と思いきや、僅かに顔を引きつらせているセリーヌさんが、俺達を迎え入れてくれた。
「…………誰?」
数十人が一斉に食事できるようなながーーーいテーブルに、一組の見知らぬ男女が優雅にコーヒータイムをしゃれこんでいる。
女性の方は足の付近まである長い白銀の髪に金色の瞳、真白な肌とこれまた白いワンピースを着ており、整いすぎているという容姿も相まって、どこぞの令嬢を思わせる。
対する男性は対照的に黒で統一されており、背中で切り揃えられた黒髪に黒い瞳、ベルトの付いた黒い長袖に黒い長ズボン。
こちらも超絶美形、ていうか……誰だ?
「ん? おぉ、おはようグリード」
「よく休めたようだな」
「えっ?」
声を掛けられた、俺の事知ってるのか?
そんな俺の心中に気づいたのか、男女は苦笑しつつ自分達の正体を話してくれた。
「私はレシラムだよ」
「我はゼクロムだ」
「…………は?」
ポカンと、アホみたいに口を開けて男女達を眺めてしまう。
いや、だって、えっ?
美女がレシラムで、美男がゼクロムって……。
「………どゆこと?」
「ああすまん。お前には言ってなかったが、私達は人間になる事ができる能力があってな」
レシラム……と名乗る女性が説明をしてくれる。
何でも、レシラムとゼクロムはお互いが揃っていれば、人間に変身できるらしい。
元々レシラム達は一つの存在だった、変身能力は既にその時に備わっていたそうだ。
しかし、二つに分かれた際にその変身能力はおかしな方向に変わり、レシラムとゼクロムが互いに傍に居なければ使えなくなったらしく。
「なる程……レシラムだけの時に変身しなかったのは、傍にゼクロムが居なかったからか……」
「そういう事だ、しかしようやく観光名所扱いをされずに済むのは助かるよ。セリーヌ、紅茶のおかわりをくれ」
「………グリード様」
「セリーヌさん、この人達はレシラムとゼクロムですよ。この声にこの波導……間違いないです」
まあ、とは言ってもそう簡単に信じられるわけがないよな。
現に、セリーヌさんはそう言われてもまだ怪訝そうな表情を浮かべている。
「おかわりー!!」
「うるさいぞレシラム、我等はここに泊めてもらっている身、そのような我が儘を言っていいわけがないだろう?」
「良いではないか、この紅茶なかなか美味なのだから。セリーヌ、茶」
「…………」
「セリーヌさん、睨まないで、気持ちはわかるけど」
というか、レシラム……お前そんなキャラだったっけ?
ゼクロムはポケモンの時と同じように真面目そうだけど、レシラムは何ていうか……背伸びした子供みたいに見える。
今だって、ゼクロムに正論を言われてあからさまに不機嫌そうな顔になってるし。
「……レシラム、人間形態だといつもこんな感じなの?」
「というより、元が子供なだけだ。今まで聡明なフリをしていただけでな」
「こら、誰が子供だ誰が!」
『お前だよ』
同時にツッコミを入れる俺とゼクロム。
……もういいや、本当のレシラムはあんな感じだって納得するしかない。
それより、早くメシを食べる事にしよう。
「みんな、出てこい!!」
手持ちのポケモンを全て外に出す。
今日もみんな元気いっぱいだ、さて……昨日作っておいたポケモンフーズを。
「さあ、どうぞ」
「えっ?」
……用意しようとしたら、セリーヌさんがいつの間にか全員分用意していた。
「グリード様、朝食が冷めてしまいますので、ポケモン達の事はわたくしにお任せください」
「あ……すみません」
悪いなとは思ったが、セリーヌさんの厚意に甘える事にして、席に座り用意された朝食を食べ始める。
「グリード、お前はこれから一体どう過ごすつもりなんだ?」
「……とりあえず、ここでの用件を済ましたらイルミナリーグまで旅に出ようと思ってる」
「旅……?」
俺の答えに、レシラムは少し意外そうな表情を見せる。
「イルミナリーグに向けて、みんな凄く頑張ってる。俺も、自分なりに頑張りたいと思ったんだ」
俺はまだ弱い、だからもっともっと高みを目指したい。
その為にも、短いながらも旅をして己を鍛え直さなくては。
「その心構えは良いと思うぞ、しかしここでの用件とは何だ?」
「…………」
おもわず、食事の手を止めてしまう。
ここに来た理由、それは……。
「――あの人に、リア・エグフィードに……話があるんだ。だから俺はここに来た」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「――ツタージャ、お前はここで待っててくれ」
「………タジャ」
不満げに唇を尖らせるツタージャ、けどあの人はポケモン恐怖症だから連れて行くわけにはいかない。
「すぐ戻ってくる。だから頼むよ」
「タジャ……タージャ」
仕方ない、そうため息をつきつつ立ち止まったツタージャの頭を優しく撫でる。
「………ふぅ」
一度大きく深呼吸をしてから――俺は少し控え目にドアをノックした。
「――どうぞ」
聞き慣れた声、そのまま俺はドアを開けて。
「…………」
無言で、自分の母親と対峙した。
相変わらず、ベッドに寝たきりになっているが、顔色は悪くない。
「…………気分、どう?」
「え、ええ……大丈夫よ」
「そう……」
ぎこちない会話、お互いにあまり視線を合わせられない。
……まだ、自分の中で納得できてない部分があるのだろうか。
「……エリックから聞いたわ、あなたにはまた辛い事を……」
「いいよ。今回の事は自分自身で決めた事だ、誰かに強制されたわけじゃない、あくまで俺個人の意志でやった事だから」
「そう……強いのね、あなたは」
「強くなんかない。もしそう見えてるとしても……俺の傍には、家族が居るから」
「…………」
相手の表情が曇る。
俺の言う家族の中に、自分が含まれていないと思ったからか。
「……あなたは、1人じゃないのね。素晴らしい仲間に……大切な家族が居る。
ふふっ……皮肉なものね、実の親である私は何もしてあげられなかったのに……」
「……そんな事ない、あなたは自分の身が危険になるのを承知で、話してくれたじゃないか」
「その程度、何もしてないのと同じよ。私は咎人……裁かれる為に存在しているのだから」
「…………」
何だ、それ。
何なんだよ、それは。
あんたはクロスに利用されてた、ただそれだけだろ?
ずっと脅されて、人形みたいにされて……でもそれじゃあいけないって思って、勇気を出して告発してくれたんだろ?
……ムカつく。
なんだか無性に、この人の自分を咎人だと罵る言葉に、腹が立った。
――きっと、小さい頃俺を見捨てた負い目が、ずっと罪悪感を抱かせてきたんだろう
だから――
「………もう、いい」
だから、俺は。
「もういい、これ以上……自分を責めなくていい」
気が付いたら、俺はしっかりと視線を向けて、そう言い放っていた。
「…………えっ?」
「もういいんだ、俺は……もうあなたを恨んでなんかいない。
だから、これ以上自分を責めるのはやめてくれ」
……自分自身でも、驚いていた。
決して許さない、この恨みは未来永劫消えはしない。
そう思っていた、それなのに……俺はこの人を許そうとしている。
「……どうして? 私はあなたを……息子のあなたを見捨てたのよ?」
「ああそうだ、あなたは小さい俺を見捨てた。それは決して親として……いや、人として許されない事だ。
だけど、あなただって俺が憎いから、邪魔だから見捨てたわけじゃないんだろう?」
俺の問いに、即座に首を横に振って否定の意を返される。
「だったら、もうこれ以上俺があなたを憎む必要はないし、あなたも俺に対して罪悪感を抱く必要もない、というより俺が困る。
俺はあなたの事を……多分、完全に許す事はできない。
けど、ツタージャ達が俺に家族の絆と思い出を沢山くれた。
あなたにも、その大切な家族の絆と思い出を知ってほしい。やり直す……機会がほしい」
ポケモンと触れ合って、俺は沢山の事を知ることができた。
そして、今まで目を背けていた事も、きちんと逃げずに見ることができるようになった。
それはきっと大切な事、俺が成長できた要因。
ポケモン達に会って、俺はこの人と歩み寄れる強さを手に入れる事ができたのだ。
「あぁ………」
「……泣かないでくれ、泣かれると……困る」
「ご、ごめんなさい……けど、嬉しくて」
「…………」
ポロポロと涙を流す………。
「………母さん」
「えっ――」
「お袋の方がよかったか?」
「いいえ……いいえ、グリード……」
余計に泣いてしまった母さんに、苦笑してしまう。
……でも、ようやくここまでやってきた。
ずっとどこかで、心のどこかで望んでいた……親との和解。
父親とは、一生分かり合う事はできないけれど。
母とは……母さんとは、少しずつ繋がっていく事ができると信じている。
それはきっと、遠くない未来に……。
…………。
――その後
俺と母さんは、少しずつお互いの事を話した。
他愛のない、ごく一般的な会話。
けれど、俺達にとってとても意義のある会話だった。
そして――旅立ちの時がやってくる。
「もう、行くの?」
門の前で立つ俺とツタージャ、そしてレシラムとゼクロムを送る母さん。
その表情は、まだここに居てほしいと告げていて、少し迷いを見せてしまいそうになるけど。
「ああ。立ち止まってなんかいられないから」
自らの道を進むため、俺はしっかりとそう返した。
「そう……なら、私がこれ以上言う資格はないわね。けど、無茶だけはしないでね?」
「わかってるよ、……母さん」
まだ、少しだけ母さんと呼ぶのがくすぐったく感じる。
でもせっかく歩み寄れたのだから、しっかりとこの人を母さんと呼びたい。
「……グリードの事、お願いします」
「任せろ。こいつは私が責任を持って面倒を見てやるさ」
「我も、全力でグリードの助けになろう」
「…………」
「母さん……!?」
「奥様!?」
驚きの声を上げる俺とセリーヌさん。
母さんがツタージャの前にしゃがみ込んだと思った時には……。
震える手で、優しくツタージャの頭を撫でていた。
ポケモン恐怖症の母さんが、自分からポケモンに触れる。
それはきっと、凄く勇気がいる事で……。
「……ありがとう、グリードの傍に居てくれて……この子の支えになってくれて、ありがとう」
声は小さく震え、けれどしっかりとツタージャに聞こえるように母さんはそう言った。
……嬉しかった。
母さんが、自分からポケモンと歩み寄ろうとしてくれた事が……凄く嬉しい。
「……タージャ」
ツタージャも、母さんの気持ちがわかったのか、穏やかな笑みを返してくれた。
やがて、母さんがツタージャから離れ、ツタージャは俺の肩に移動する。
「それじゃあ――行ってきます」
さよなら、ではなく、行ってきます。
その言葉を使ったのは、今回が初めてで。
ようやく、この家が俺の帰るべき場所だと思えた瞬間だった。
「ええ、いってらっしゃい……グリード」
「グリード様、わたくし達はいつでも貴方様のお帰りをお待ちしております。どうか、お気をつけて」
ありがとう、そう告げて……俺達は門から外に出る。
「……さすが、お前の親だな。一度は道を外したようだが、あれなら大丈夫そうだ」
少し皮肉めいた口調で、ゼクロムが言う。
うるさいよ、軽く悪態を返しつつ……街の外へ止まらずに歩みを進めた。
「さて……これからどうするんだ?」
街の外に出てから、レシラムが今後の予定をどうするのか問いかけてきた。
「まずはライモンシティに行く、カミツレさんが呼んでるらしいから」
何でも、俺と母さんが話している最中にカミツレさんから連絡があったらしい。
内容は、「ライモンシティに来てほしい」との事だった。
詳しい事は着いてから話すと言っていたらしいので詳細はわからないが、「無理して来る必要はない」と言っていたから、急ぎの用ではないのだろう。
とはいえ、まだ旅の行き先を決めてない以上、ライモンシティに向かう事にしたわけだ。
「よし、では早速行くとしよう!!」
そう言って、レシラムとゼクロムはポケモンの姿に戻る。
「おいおい、ポケモンに戻っていいのか?」
〈だって、そうしないと速く移動できないじゃないか〉
〈案ずるな、街中に降りるつもりはない〉
「……まあ、それならいいけどさ」
それに、レシラム達なら移動速度を大幅に短縮できるだろうし。
というわけで、レシラムの背中に乗り込む。
〈しっかり掴まっていろよ、では行くぞ!〉
一気に高度が上昇し、景色が変わる。
「よーし、頼むぞレシラム、ゼクロム!」
〈うむ!!〉
〈了解した!!〉
移動を開始し、ライモンシティに向かって飛び立っていく。
――イルミナリーグまであと2ヶ月半
俺も俺ができる精一杯の努力をして、今よりもっともっと強くなってみせる!!
To Be Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクホーク】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・はがねのつばさ ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・真・リーンフォースブレード ・でんこうせっか ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん ・つばさでうつ ・れいとうビーム
・へびにらみ ・つばめがえし ・じこさいせい
・リーフストーム ・ブレイブバード ・ふぶき
・リーフブレード二段斬り ・インファイト ・アクアリング
・エナジーボール ・かげぶんしん ・アクアテール
・はかいこうせん ・みずのはどう
【オノノクス】♂ 【コジョンド】♀ 【グライオン】♂
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・ダブルチョップ ・みきり ・シザークロス
・シャドークロー ・はっけい ・れんぞくぎり
・りゅうのいかり ・とびひざげり ・ほのおのキバ
・ドラゴンクロー ・はどうだん ・クロスポイズン
・りゅうのいぶき ・おうふくビンタ ・ギガインパクト
・りゅうせいぐん ・ギガインパクト ・はがねのつばさ
・あなをほる ・ドレインパンチ
・りゅうのはどう ・ストーンエッジ
・はかいこうせん ・きあいパンチ
・かみなりパンチ
【クチート】♀ 【ラティアス(ティア)】♀ 【ゴチミル】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・てっぺき ・ラスターカノン ・ねんりき
・アイアンヘッド ・じこさいせい ・ひかりのかべ
・かえんほうしゃ ・はかいこうせん ・サイケこうせん
・ねごと ・りゅうのはどう
・ラスターカノン ・りゅうせいぐん
・かみくだく ・れいとうビーム
・ドラゴンクロー
・はがねのつばさ
【ピカチュウ】♂ 【キュウコン】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】
・10まんボルト ・かえんほうしゃ
・アイアンテール ・ほのおのうず
・ボルテッカー ・じんつうりき
・でんこうせっか ・エナジーボール
・かみなり ・アイアンテール
・ボルテッカー・アイアンテール