グリードくんのイルミナ学園奮闘日誌【完結】   作:マイマイ

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今日は私、ツタージャの1日を見せてあげる。

さて、今日はどんな1日になるのかしらね……。


第12話 〜ツタージャのイルミナ学園奮闘日誌その1〜

―――目を醒ます

 

私はツタージャ、人間達にはくさへびポケモンと呼ばれる存在だ。

起き上がると……まだ朝になったばかり、当然ながらムクバードもミロカロスも眠っている。

というかミロカロス、重いからどきなさいよっ。

やれやれ、なんて寝相が悪い子なのかしら。

 

ミロカロスをどうにかどかしてから、私は小さな脚と手をチョコチョコと動かし、ベッドに登る。

なんて不便なのかしらこの身体は……早く進化したいものね。

自分の不便な身体に愚痴を零しつつ、グースカと間抜けな顔で眠っている私の主人―ーグリードを眺める。

……本当に間抜けな顔ね、それに涎……なんて汚い男なの。

もう少しそういう所を考えてほしいわね、配慮が足りないわ。

とは思いつつも……私はグリードの布団に潜り込んだ。

……だってしょうがないじゃない、何の因果かは知らないけど、私は彼を大層気に入ってしまったのだから。

 

――初めての出会いを思い出す

 

あの時私は、不用意に近づいてくる彼につるのムチをお見舞いしたのだ。

我ながらちょっとやりすぎたという反省は一応している、謝罪する気はないが。

だけど……彼の事を見ていると、なんだか心が暖かくなった。

ポケモンなのに人間と同じような事を……そう思ったけど、ポケモンだって人間と同じように生きているのだ、心だってあるしその心が暖かくなる事だってある。

中にはそんな事を考えないどうしようもない人間も居るけど……っていけない、話が脱線したわ。

とにかく、私は不思議と彼という存在を知りたいと思ったのだ。初めての感覚で戸惑いもあったけど、私はとりあえず本能に従う事にした。

 

そして今に至り……まだ答えは出ていない。

 

彼は一言で言うと、わけのわからない人間だ。

いや、別に悪口を言ってるつもりはない、むしろいい意味でだ。

彼は掴みようがないのだ、まるで空を自由気ままに漂う雲のような心を持ち、そう思うと同時に呆れるくらい子供じみた所もある。

サクラから聞いた話だが、人間で16歳というと大人になり始める年頃らしい。

でも、グリードを見る限りとてもじゃないがそうは思えない、サクラが嘘をついたと思ってしまったくらいだ。

だってそうじゃない、グリードの何処を見れば大人な面が見つかるっていうの?

 

「んっ……」

あっ、起きた。

彼と目が合う、寝ぼけ眼で見つめられても少し恥ずかしい。

「ツタージャ、おはよう……」

まだ半分眠っているのか、その声はいまいち聞きづらい。

ほら、いつまでも寝ぼけてないで起きなさいよ!

顔面につるのムチに叩き込み、無理矢理覚醒させた。

 

「あだっ!?」

起きた? ならさっさと着替えなさい。

「ひでぇなぁ……もう少し優しく起こしてくれよツタージャ……」

うるさいわね、起こしてもらっただけありがたく思いなさいよ。

う〜う〜言いながら着替え始めるグリード、その間に私はムクバードとミロカロスを起こす。

 

〈おふぁよぉ〜……〉

ムクバード、あなたも寝起きが悪いわよ。

〈ふぁふ……あと五分だけ……〉

ミロカロス、そういうベタな事は言わなくていいからさっさと起きなさい。

「みんな、おはよう」

ようやく頭が覚醒してきたのか、グリードは先程よりしっかりした口調で挨拶を……。

って、下着一枚のままこっちに来ないでよ!!

 

〈わぁ……〉

ミロカロス、ジロジロと見るんじゃないの。

まったく、女の子に対する配慮ってものが足りないわね、グリードには。

 

 

………。

 

 

着替え終わり、ムクバードとミロカロスをボールに戻し、私を頭の上に乗せグリードは部屋を出る。

今日もアヤト達と練習バトルを行うらしい、試験まであと2日しかないから当然だけど。

でも、まずはしっかりと食事をしてからだ、グリードもそう思っているので、食堂へと向けて歩を進めているが……。

 

「ミロー♪」

「ぐっ、リース、頼むから乗っかろうとしないでくれ!」

「ふふっ、リースは相変わらずアヤトラブなんですね。私やフェイトちゃんみたいです」

「わ、私はその……別にそんな……」

「………何だあれ?」

 

グリードが、私の気持ちを代弁してくれた。

前方に居るのはアヤト達なのだけど……見慣れないミロカロスがアヤトを押し潰そうとしてる。

頬を赤く染め、嬉しそうにアヤトの身体にすり寄っている、なんだかウチのミロカロスによく似てる。

それにしても大きいわね、一体何メートルあるのかしら、それにあれ……色違いのミロカロスだ。

あっ、でもミロカロスって図鑑によると6メートル以上あるから、あれが普通なのか。

でも……正直、アヤトが大変そうだ。

それに……1人、見慣れない女が居る。

おそらくこの学園の生徒ではないだろう、なにせあきらかにグリード達と年齢が違うし。

でも、なんだかフェイトに似てる……というか、フェイトをそのまま大きくしたような人間だ。

 

「グリードさん、おはようございます」

「ああ、おはよう。……ところで、そこの女の人とミロカロスは?」

グリードが訪ねると、その女性はニコリと微笑みを浮かべ自己紹介を始めた。

「はじめまして、私はフェイトの姉のアリシア・フリージアよ。

 そしてこの子はミロカロスのリース」

「ミロー」

 

ご丁寧にお辞儀をするリースという名前のミロカロス。

と思ったら、またアヤトにじゃれつき出した、どれだけ好きなのよ彼のこと。

 

「このミロカロス、アヤトにすげえ懐いてるな」

「当然ですよ。だってリースは元々アヤトのポケモンですから」

「えっ?」

「オレが初めてゲットしたのがリースなんだ、でも当時はバトルよりコンテストの方に興味があったみたいだから、既にコーディネーターとして活動していたアリシアに預けたんだよ」

「この子は凄くセンスがあったわ、リボンをゲットした時もグランドフェスティバルの時も凄く助けになった。

 でも、リースもいい加減アヤトの所に帰りたくなったのね。急に泣き出しちゃったのよ」

 

本当に好きなのね、アヤトの事が。

まあ主人好きは、ウチのミロカロスも負けてないけど。

 

「リース、これから宜しく頼むぞ?」

「ミロー♪」

「ぐっ、わ、わかった……わかったから押し潰さないでくれ……」

リースに抱きつかれている、ていうか絡まれてるアヤトに少し同情した。

 

「そういえば、アリシアさんはトップコーディネーターなんですよね?」

「ええ、そうよ」

「なら、俺とバトルしてください!!」

「えっ?」

 

あぁ、またグリードの病気が始まった……。

まあ、確かにコーディネーターもコンテストバトルがあるから、バトルの腕も凄いだろうけど……。

ほら、アリシアもキョトンとしてるし、カレンも呆れたようにため息をついてる。

 

「……うーん、あいにくだけどもうすぐ帰らなきゃいけないの。だからバトルはできないわ」

「ちぇ……そっか」

あからさまに残念がるグリード、仕方ないんだから諦めなさい。

「じゃあカレン、また俺とバトルしてくれないか?」

「いいけど、じゃあって何よ? まるでしょうがないからみたいに聞こえるわよ?」

「そんなわけないだろ、いつもカレンには助かってるんだ。お前の教え方は上手だし、優しいからな」

「………べ、別に優しくなんかしてないわよ」

 

赤くなってそっぽを向くカレン、はぁ……またコイツは無自覚な事をするんだから……。

根が素直というか、飾り気がまったくないから、普通の人間なら照れちゃうわよね。

かくいう私も、グリードに褒められたら照れてしまうし。

……まあ、嬉しくないと言ったら嘘になるけど。

 

「…………」

何かしら、さっきからアリシアの瞳がグリードを捉えてるけど……。

それに、なんというかこれは……私にとってあまり好きではない類の視線だ、何かを探っているような感じで気分が悪い。

 

「……それじゃあフェイト、頑張ってね。

 アヤトやモモカ、それとカレン達もうちの妹をお願いね?」

「はい、アリシアさんも頑張ってくださいね!」

「ありがとう。……そうだグリード君、ちょっと来てくれないかしら?」

「えっ、あ、はい……」

 

キョトンとしながらも、素直についていくグリード。

……何でわざわざ2人になるの?

アリシアの行動に疑念を抱いた私は、グリードの頭にしがみつきながら警戒心を強めた。

やがて、誰もいないのを確認してからアリシアは立ち止まり、グリードへと視線を向けた。

 

「ごめんねグリード君、ちょっとあなたに訊きたい事があったの」

「別にいいですよ。それで、何ですか?」

「……あなた、この学園に入るまでトレーナーになった事が無いんですってね?」

「ええ、ちょっと家の都合で……」

「……家の都合、ね」

「???」

 

含みのある言い方、グリードは気にしてないみたいだけど、私はこういう態度の人間は嫌いだ。

はっきり物事を言わず、こちらを試すような物言いが気に入らない。

 

「そういえばあなた、姓はなんていうの?」

「―――――」」

アリシアの問いに、グリードの身体が震えた。

グリードは嘘をつくのが本当に下手だから、こうやって身体を震わせるのは訊かれたくない事を訊かれた時の態度。

……そういえば、私もグリードの姓は知らない。

というより、グリードが姓を言いたくないから誰もしつこく訊かないのだ。

だけど、アリシアはグリードが姓を名乗るまで逃がすつもりはないらしい、態度を見ればわかる。

 

「えっと、その……」

グリードもアリシアの態度に気づいたのか、あからさまな困り顔を浮かべてしまう。

はぁ……本当に誤魔化し方を知らないというか、根が素直過ぎるのも大変なのね。

どうにか誤魔化そうとしてるけど、全然誤魔化しになってない彼の態度にため息をついていると、アリシアは——ある単語を口にした。

 

 

「――エグフィード」

 

 

「っ!!!??」

バッと顔を上げるグリード、その表情は驚愕と……僅かばかりの恐怖と不安。

エグフィード? それって一体何なのかしら?

 

「……やっぱり、グリードという名前に聞き覚えがあると思ってたけど……あなた、エグフィードの人間なのね?」

「…………」

グリードは答えない。

けれど、その瞳はそれ以上この話題に触れるなと物語っていた。

私は人間の姓についてあまり知らないけど、エグフィードというのがグリードの姓だというのがわかった。

つまり、本名はグリード・エグフィードという事になる。

けど、そんな事より……グリードはどうしてこんなに不安そうな顔になってるの?

 

「大丈夫よ。フェイト達には話さないでおいてあげるから、でも……みんなあなたの事を知っても離れていったりしないと思うわよ?」

「……俺だって、信じてます。けど……前に同じような事がありましたから、いまいち信じられないんですよ」

力ない笑み、いつものグリードからは考えられないくらい弱々しい。

……胸が、少し痛んだ。

 

「そう……でもねグリード君、いつかはバレてしまうから……ちゃんと心の準備だけはしておきなさい?」

「……はい、それはわかってます」

ならいいけど、そう言ってアリシアは場の空気を元に戻した。

「じゃあねグリード君、次会ったらバトルをしましょう?」

「はい。その時は負けませんよ!!」

期待してる、そう言ってアリシアはその場を去っていく。

 

「――よーしツタージャ、今日も頑張ろうな?」

いつも通り、彼は私に視線を向けそう告げる。

だけど今回のは……少し無理をしてるように見えてしまった。

無理をしているわけではない、今私が見えるのはいつも通りの彼だ。

でも……どうしてか、今の私にはいつもの彼には見えなかった。

 

 

………。

 

 

〈どうしたの?〉

ポケモンフーズを食べながら、ミロカロスは私に話しかける。

なんでもない、そう返しながら私は思考に耽れていた。

 

――今は夕食、練習バトルを終えグリード達も食堂で私達と同じように食事をしてる

 

……彼は、いつも通りの笑顔のままアヤト達と他愛ない話をして盛り上がっている。

その笑顔に、何処もおかしい所はなかった。

でも……やっぱり私にはいつもの彼の笑顔には見えない。

いや、どちらかというと私の見方がおかしいという自覚はあるのだが……やはり、先程の力ない笑みが忘れられないのだ。

だって、グリードはいつもニコニコ笑っていて、私やみんなの心を暖かくするような笑顔を見せてくれていた。

そんな彼が、あんな笑みを浮かべるなんて……ショックだったのだ。

私が勝手に勘違いしただけ、彼だって人間なのだから色々ある。

それでも、私の心はショックを受けてしまったらしい

まったく、私もグリードの事を子供子供言えないじゃない……。

 

 

 

 

ねえ、グリード……。

 

私、あなたの事を主人と認めてるのよ?

 

だから、もっとあなたの事を教えて。

 

些細な事でもいいから、ちゃんと教えてくれないかしら?

 

素直じゃないし、すぐあなたを攻撃する可愛げのないポケモンだけど……。

 

私はあなたを気に入ってるの、だから……今すぐじゃなくていい。

 

いつか……あなたの事を教えてね?

 

 

 

 

 

To.Be.Continued...




【ツタージャ】♀  【ムクバード】♂  【ミロカロス】♀
【使えるわざ】   【使えるわざ】   【使えるわざ】
・つるのムチ    ・たいあたり    ・たつまき
・リーフブレード  ・かぜおこし    ・アイアンテール
・たいあたり    ・でんこうせっか  ・みずでっぽう
・かげぶんしん  ・つばさでうつ
・へびにらみ    ・つばめがえし
・グラスミキサー  ・ブレイブバード(未完成)
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