だけど……みんなとの実力差がありすぎる。
俺は、どうすれば強くなれるんだろうか……。
「………う〜」
唸りながら、部屋の中をゴロゴロと転がり回る。
そんな俺を、ムクバードとミロカロスは不思議そうに見つめる中。
「タジャ!」
「いてっ!」
いい加減鬱陶しくなったのか、ツタージャが俺の頭をつるのムチでペチンと叩いてくる。
「タージャ、タジャ!」
うっ……ポケモンの言葉はわからないけど、ツタージャが怒ってるのはすぐに理解できた……。
今日は三回戦が始まる前の休みの日、だからいつものように特訓をすればいいのだが……。
なんていうか、やる気が出ずに部屋の中をゴロゴロと転がっていた。
……そりゃツタージャも怒るわな。
「タジャ、タージャ、タジャタジャ!!」
不甲斐ない俺を怒っているのか、左手を腰に添え右手で俺を指差しながら何事を喚くツタージャ。
きっと「遊んでないで特訓でもしなさい!!」と言っているのだろう。
「……ごめんなツタージャ、みんな。俺も特訓をした方がいいのはわかってるんだけど……自信を無くしちまったというか」
あのバトルを見て、改めて実力差を思い知らされた。
負けるのが恐いわけではない、けど……こんなにもアヤト達との実力が開きすぎてるなんて思わなかった。
それを自覚したら……なんでかわからないけど、いつもの自分が保てない。
「……タージャ」
「ツタージャ……」
慰めるように、ポンポンと俺の身体を軽く叩くツタージャ。
「ミィ……」
「ムク〜……」
ムクバードにミロカロスも、身体をすり寄らせ俺を慰めてくれた。
「……ごめん、ちょっと気分転換しに散歩にでも行くか?」
「タジャ」
「ムク〜」
「ミィ!」
一同迷う事なく頷いたので、俺は早速部屋から出て学園内をうろつく事にした。
さすがに試験中とあってか、一年生の校舎ではなんだか全員やる気が溢れている。
……俺も、しっかりしないといけないんだけどな。
試験といっても、生徒達にとってリーグ戦のような真剣さでバトルしている。当たり前だ、この学園に居る者は誰しも明確な理由があって在学しているのだから。
だけど俺は……ただトレーナーになりたくて、ただポケモンが好きでここに居る。
……そんな態度じゃ、強くなんかなれないのかな。
俺は、トレーナーになる事ができた。なら……次はどうすればいい?
かつて俺にポケモンという存在を教えてくれた少女に会って、もしそれも叶ったら……。
「キバキバ〜」
「ん……?」
なんだ、今の声は?
「タジャーッ!!」
ツタージャが何やら喚いている、何事かと視線を下に向けると……。
「あーっ!!」
左手に持っていたバッグの中に、何かが潜り込んでいた。
慌てて引っ張り上げる……ってか、重い!?
「ぬおりゃぁぁっ!!」
力を込め、どうにかその何かを引っ張り上げると。
「キバ?」
その何かに、キョトンとした表情を向けられてしまった。
「このポケモンは……」
たしか、キバゴっていうポケモンだったはず。
まあそれはいいとしてだが……。
「お前、バッグの中に入ってたポフィンを食いやがったな!?」
あれはツタージャ達のおやつ用に持ってきたものなのに………!
それを聞いて、ツタージャ達から悲鳴のようなものが上がる。
「キバキバ〜!」
しかしキバゴはわかってないのか、ニコニコと笑みを浮かべるだけでそこに反省の色はない。
コイツ……もしかして野生のキバゴなのか?
「って、こら! まだ食べる気かお前は!!」
再びバッグの中に顔を突っ込もうとするキバゴを慌てて止める。
だぁーっ、なんて食い意地の張ったキバゴなんだコイツは!!
と。
「キバゴ、ダメ!」
澄んだ声が響き、先程まで好き勝手やっていたキバゴの動きがピタリと止まった。
その隙にキバゴを掴み上げ、睨みつける。
「お前なぁ……人のものを盗んだら泥棒だって教わらなかったのか?」
「キバ〜?」
ダメだ、通じてない。
「ごめんね。キバゴが悪さしたみたいで」
そう言って声を掛けてきたのは、先程キバゴを止めた人だった。
「………子供?」
「っ、人を子供っていう方が子供だーっ!!」
うがーっ、と怒る1人の少女。でもしょうがねえじゃん、ちっこいんだから。
俺に声を掛けてきたのは少女、いや……幼女?
何せ身長が俺より2〜30センチくらい小さい、ぱっと見では小学生にしか見えない。
「こう見えても、18なんだから!!」
「マジで!?」
本気で驚く。
いや、だって……ねぇ?
「〜〜〜〜っ」
あ、ヤバい、本気で驚いたら涙目になった。
「わ、悪かったよ……だってどう見ても小学生にしか——」
「っ、小学生……?」
「あ……」
墓穴掘った!?
泣き出しそうになったので、おもわず身構えてしまうが……。
「……あんた、もしかしてグリード?」
ハッとした表情を見せながら、少女がそんな事を言ってきた。
「えっ……なんで俺の名前を?」
目の前の幼……女子とは初対面のはずだ。
「なる程……サクラが言ってた通り、女性への配慮は×ね」
「お前、サクラの事知ってるのか?」
「アリアの方が年上なのに……礼儀正しさも×」
……何なんだ、コイツ。
「お前、一体何なんだ?」
「アリアの名前はアリア・フォートレス。高等部三年の18歳。
そして——サクラと同じく四天王よ」
「へぇ……って、四天王!?」
こ、こんな小さな女の子が……?
「……あんた、また失礼な事考えなかった?」
「い、いや……ただこんな小さな女の子が四天王だなんてマジかよって思っただけ——」
あっ、また墓穴を!!
「…………」
「ははは……」
もう笑って誤魔化すしかない。
しかし……返ってきたのは怒声ではなく、呆れたようなため息だけ。
「はぁ……サクラの言った通り、嘘をつくない性格なんだ……」
「うっ……悪い」
「いいよ別に。本当はぶっ飛ばしたいけど、キバゴの件もあるし」
そういえば、キバゴの事を忘れてた。
「このキバゴ、お前のポケモンか?」
「そうよ。まだタマゴから孵ったばかりだけど」
「コイツ、俺のポケモン達のおやつ用のポフィンを全部食べちゃったんだけど……」
ツタージャ達も、ジト目でアリアとキバゴを睨んでいる。
「ごめんごめん、この子食いしん坊だから」
「………はぁ」
もういいや、部屋に戻ればまだあるしまた作ればいいから……。
「それにしても……このキバゴって結構舌が肥えてるんだけど、あなたが作ったポフィンは気に入ったみたいね」
孵ったばかりなのに舌が肥えてるのか?
すると、アリアは思わぬ提案を俺に告げてきた。
「ねぇ、もしあなたが良ければこのキバゴ、育ててみる気はない?」
「はぁ?」
「キバゴも、あなたなら大丈夫そうだし」
「いや、でも……」
別に嫌というわけではない、だけど……俺なんかが上手に育てられるとは思えないから……。
「……何かあったの?」
「えっ……」
「なんか悩みがありそうな顔だね、落ち込んでるというか……」
「はは……アリアってエスパー?」
「わかりやすいだけよ、本当にサクラの言った通りね」
サクラの奴、俺をどんな風に説明したんだ。
……否定できないけど。
「よーし、特別にアリアが話を聞いてあげましょう!」
「いや、いいよ……」
「誰かに話す事で楽になる時もあるよ? それにその調子じゃ友達にも話さないつもりでしょ?」
「…………」
ほらほらー、と催促してくるアリア。
その迫力に負け…たわけじゃないけど。
「実は、さ―――」
気が付いたら、洗いざらい話してしまいました。
「ふーん……でもしょうがないんじゃない? だってあなた、この学園に来るまでポケモンの知識が皆無だったんだから。
経験がないんじゃ、実力差があっても当然だと思うし」
「俺もわかってるよ。けどそれだけじゃなくて……アヤト達は、明確に上を目指しているけど……俺には何故強くなりたいのか、その理由がないから……」
だから、理由がない俺には強くなる事なんてできないと………。
「いいじゃない、理由がなくても」
「えっ……」
「アリアだって別に明確な理由はなかったけど、四天王なんて呼ばれるようになったよ。
――ただポケモンが好きだから、頑張ってきただけ」
「…………」
「グリードだってポケモンが好きでしょ? ならその大好きなポケモン達の為に頑張ればいいだけだと思うなぁ。
実力差なんて気にしないで、自分の思う通りにやっていけばいいだけだよ」
「アリア……」
自分の、思う通りに……。
「タージャ」
「ツタージャ……」
腕を組みながら、うんうんと頷くツタージャ。
ムクバードもミロカロスも、笑顔を浮かべ頷いていた。
「信頼されてるね。そこまでの信頼をポケモンから寄せられるトレーナーはあまりいないよ、実力があってもその信頼がなければ、本物とは言えないね」
「……サンキュー、アリア」
胸の支えが、少しだけ取れたような気がした。
自分の思う通りに、ポケモン達と頑張る。今はそれだけでいい。
……よーし、なんだか気合いが湧いてきたぜ!!
「ツタージャ、ムクバード、ミロカロス、早速明日に向かってトレーニングだ!!」
「タジャ!」
「ムクバー!!」
「ミィ!!」
立ち上がり、庭園に向かって全速力で走り出す。
後ろでアリアが俺を呼ぶ声が聞こえたような気がしたが、今の俺には届かなかった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【アリアside】
「ツタージャ、ムクバード、ミロカロス、早速明日に向かってトレーニングだ!!」
そう言って、グリードは手持ちのポケモン達と一緒にその場を走り去ってしまった。
「って、キバゴの事はどうするの!?」
慌てて声を掛けたが、届かなかった。
もぅ……グリードって人の話を聞かないんだね。
それにさっきまで悩んでたのに、すぐ元気になっちゃった。
子供よね、本当に。
でも、ああいう人は結構好きだったりする。
だけど、別に恋愛とかそういう意味じゃないから勘違いしないでよね!!
まあそれはともかく……なんとなくではあるが、サクラがあんな素人を気に掛ける理由が、少しだけわかった気がする。
「キバキバ〜」
少ししょんぼりしてるキバゴ、どうやらこの子もグリードが気に入ったらしい。
「今度あったら、もう一度グリードにあなたの事を言ってみるから、元気だして?」
「キバー♪」
嬉しそうに笑うキバゴに、アリアも嬉しくなって笑みを返した。
さてと……グリード、明日のバトルではどうなってるかな?
たしかサクラは応援に行くって言ってたから……アリアも言ってみようか。
そう思いながら、アリアは少しウキウキした気分で、キバゴと一緒にその場を後にしたのでした。
【アリアside】out―――
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―――夕方、三回戦の対戦表が発表された
アヤトとカレンは、互いに対戦相手にならなかったものの……。
「…………」
次の相手は――フェイト。
「……次は、グリードとだね」
「ああ」
「私、負けないよ?」
「俺だって、負けるつもりはないさ」
そうさ、絶対に負けない。
適うか適わないかは、誰かが決める事じゃない、全ては自分の心構え次第なのだから。
「……なんだかグリードさん、気合いが入ってますね?」
「ああ、今俺は燃えに燃えてるんだ!! 絶対に勝ってみせるさ!!」
「言ったね? それじゃあ楽しみにしてるよ」
「おう!!」
そうさ、絶対に負けるもんか!!
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクバード】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・たいあたり ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・たいあたり ・でんこうせっか ・みずでっぽう
・かげぶんしん ・つばさでうつ
・へびにらみ ・つばめがえし
・グラスミキサー ・ブレイブバード(未完成)