勝てるとは思えない……でも、精一杯全力でバトルしてやるぜ!!
「——それではこれより、グリードとフェイトによるポケモンバトルを始める」
「…………」
「…………」
遂に始まった三回戦。
アヤトもカレンも、今頃は対戦相手とバトルを行っているだろう。
っと、いけないいけない。俺は俺のバトルに集中しないと。
なにせ相手はフェイト、俺なんかより才能も経験も多いトレーナーなんだから、集中しなきゃあっという間に負ける。
「使用ポケモンは互いに三体ずつ、交代はどちらも自由、先にどちらか三体のポケモンが全て戦闘不能になった時点で終了とする!」
三回戦からは、三体全てのポケモンが戦闘不能になるまでバトルは終わらない。
すなわち、俺のポケモン達全ての力を十二分に発揮させねばならないという事だ。
早速、互いに一体目のポケモンを出すためにモンスターボールを構える。
「ツタージャ、君に決めた!!」
「――タジャ!」
「レントラー、お願い」
「――レン、トッ!!」
相手はレントラーか……相性ではこちらが有利だけど、気を抜かずに行くぜ!!
「先攻はグリードから、それでは試合開始!!」
…………。
「ツタージャ、つるのムチだ!!」
「タジャ!!」
先攻はグリードから、早速つるのムチで攻撃を仕掛ける。
「レントラー、かわしてたいあたり!!」
「ツタージャ、こっちもたいあたりだ!!」
「レントラーッ!!」
「タジャーッ!!」
回避したいあたりを仕掛けるレントラー、ツタージャもつるのムチを出しながらレントラーと真っ向からぶつかり合う。
しかしパワーはレントラーの方が上、ツタージャは回転しながら上空に吹き飛ばされてしまった。
「10まんボルト!!」
「レントォォォッ!!」
雄叫びを上げ、10まんボルトを放つ。
ツタージャは空中にいるために回避できないが。
「グラスミキサー!!」
「タジャッ!!」
迫る10まんボルトを、グラスミキサーで相殺する。
その隙に、ツタージャは無事着地した。
「……さすがだね」
「まだ始まったばかりだ、そう簡単にやられるかよ!!」
「……ふぅん。今のはなかなかいい動きだね」
観客の1人になっているアリアは、グリードの指示に少しだけ感嘆の声を口にした。
「それよりアリア、君はいつからグリードと知り合いになったんだい?」
隣に座るサクラは、少しつまらなそうな口調で試合を観戦しつつ、アリアに問うた。
「昨日だよ。アリアのキバゴがグリードのポケモン達のポフィンを勝手に食べちゃったんだ」
「はぁ……相変わらずだね、君のキバゴは」
「でもキバゴはグリードを気に入ったみたいだよ、もちろんアリアもね」
「…………」
その言葉を聞いて、サクラは少しだけ面白くなさそうに唇を尖らせた。
「リーフブレード!!」
「タジャ!!」
地を蹴り、右腕を振り上げレントラーに向かっていくツタージャ。
「レントラー、かわして!!」
「タジャーッ!!」
「――レンッ」
しかし持ち前のスピードを生かし、ツタージャのリーフブレードを回避するレントラー。
―――瞬間
「今だツタージャ、リーフブレード・二段斬り!」
「えっ!?」
ツタージャの三つ叉の尻尾がエメラルド色に輝く。
「タージャッ!!」
「レントォッ!!?」
そして、回避したはずのレントラーの腹部に、尻尾で発動したリーフブレードが、深々と突き刺さった。
完全に予期していなかった攻撃に、レントラーは受け身もできずに地面を転がっていく。
「……レントォ〜……」
「レントラー戦闘不能、ツタージャの勝ち!!」
「よっしゃ、いいぞツタージャ!!」
「………タジャ」
(――まさか、こんな攻撃をしてくるなんて)
完全に自分の油断が招いた結果だ、フェイトは自分の不甲斐なさに唇を噛みしめる。
しかしなにより——グリードとツタージャのコンビネーションが、見事だった。
「腕のリーフブレードは囮……本当の狙いは尻尾による攻撃か。うん、ツタージャの身体を上手く使ったいい攻撃だ」
今の攻撃には賞賛を送れるものだ、おもわずニヤリとしてしまう。
「……なんだ、グリード強いじゃない。全然適わないって言ってたのに」
「彼は自分を過小評価し過ぎてるんだ、自分のポケモン達は強いけどトレーナーの自分は弱い。彼はね、本気でそう思っているんだよ」
「それ、謙遜を通り越して嫌味だね」
「ふふっ、そうかもね。けどだからこそ彼は調子に乗る事はあるけど決して慢心したりしない。 常に高みを目指せる向上心がある」
尤も、昨日のように自分に自信を無くしてしまう場合もあるようだが。
「凄いよグリード、本気でバトルするのは初めてだけど……こんなに強かったんだ」
「俺じゃない、ツタージャが強いんだよ」
「タジャ」
その通り、と言わんばかりに胸を張るツタージャに苦笑するフェイト。
「じゃあ、次はこの子が相手だよ。ユキメノコ、お願い」
「――ユキッ」
「ユキメノコ……こおりタイプか。戻れ、ツタージャ」
くさタイプのツタージャでは不利だ、ボールに彼女を戻しグリードは新たなボールを手に取る。
「ミロカロス、君に決めた!!」
「ミロォ!」
「いい判断だ。グリードの手持ちで相性が不利にならないのは、ミロカロスだけだからね」
「あのミロカロス綺麗……コンテストに出ても充分通用するんじゃないかな?」
「そうだね。愛情一杯で育てられる証拠だよ」
「ミロカロス、みずでっぽうだ!!」
「ミ、ロォッ!!」
「ユキメノコ、あられ!」
「ユキッ!!」
「あられ……!?」
――フィールドの空が変わり始める
そして、みずでっぽうがユキメノコに届く瞬間。
「ミッ、ミィッ!!」
あられが発生し、氷の空気がみずでっぽうを相殺した。
そればかりでなく、氷の礫がミロカロスに襲いかかった。
「くっ、ならたつまきだミロカロス!!」
「ミィィッ!!」
尻尾でたつまきを発生させ、ユキメノコに攻撃を仕掛けるミロカロスだが。
「なにっ!?」
「ミロッ!?」
その攻撃は虚しく空を切り、ユキメノコの姿はあられの中に消えてしまった。
「くっ、なんで……」
「グリード、ユキメノコの特性は『ゆきがくれ』だよ。
あられ状態なら回避率が上がるってこと、忘れたの?」
「っ、そうだった……」
「勉強不足だね、グリード」
「ユキメノコ、シャドーボール!!」
「ユキ、メッ!!」
「ミィィッ!!?」
ミロカロスの背中に直撃するシャドーボール。
しかし、ユキメノコの姿は再びあられの中に消えてしまう。
「くそっ…ミロカロス、もう一度たつまき!!」
「ミロォッ!!」
「無駄だよグリード、ユキメノコ。れいとうビーム!!」
「ユキィィッ!!」
「ミロォォッ!!?」
「ミロカロス!!」
たつまきはまたもあられの中に消え、またもユキメノコの攻撃はミロカロスの背中へとまともに命中してしまう。
「……ミィィ……」
「ミロカロス戦闘不能、ユキメノコの勝ち!!」
「くっ……!!」
並ばれた。
しかも、氷タイプのユキメノコに対して唯一不利にならないミロカロスが戦闘不能に……。
「……最後のあれ、焦って指示を出したみたいだね」
少し呆れを含んだ口調で、アリアは口を開く。
「そうだね。グリードはまだバトル慣れしきれてないんだ、それに氷タイプとも戦うのは初めてみたいだし」
あんな状況だからこそ、冷静な判断力でポケモンに指示を出さなければならない。
(まだまだ未熟だけど……頑張って、グリード)
「ツタージャ、君に決めた!!」
「タジャ、タ——ジャッ!?」
フィールドに出た瞬間、再び氷の礫が降り注ぎツタージャに襲いかかる。
(早く勝負を決めないとダメージが………!)
しかし、あられの中に隠れたユキメノコに対して闇雲に攻撃しても、意味はない。
さっきだって、そのせいでミロカロスを失ったのだから。
(落ち着け……トレーナーの乱れはポケモンの乱れなんだ………!)
頬をバシンッと勢いよく叩き、自分を立て直す。
「ツタージャ、どうにか耐えながらユキメノコを捉えるんだ!!」
「タ、ジャ……」
身体中にぶつかる礫に耐えながら、必死にユキメノコの姿を探すツタージャ。
しかし……素早くあられの中に動くユキメノコをなかなか捉えられず、ダメージだけが……。
「こうなったら……あれしかない!!」
「………?」
「ツタージャ、あれを使うぞ!!」
「タジャッ!!」
今までにない程の強いツタージャの声。
そして―――
「ツタージャ、リーフストームだ!!!」
「えっ!?」
「―――っ」
「リーフストーム!?」
「タージャァァァッ!!」
回転しながら、葉っぱを含んだ凄まじい竜巻を生み出すツタージャ。
その威力は、ユキメノコが作り出したあられを吹き飛ばし、更にユキメノコ自身にすらダメージを与えた。
「ユキィッ!?」
「ユキメノコ!!」
「いいぞツタージャ!」
「タジャ…タジャ……」
しかし、あられによるダメージとリーフストームという大技を使用した故に体力の消耗は激しく、肩で大きく息をしている。
(……あまり長くは保たないか)
「凄いよツタージャ、いつの間にリーフストームを使えるようになってたの?」
「へへ、特訓の成果さ」
「でも、まだ負けた訳じゃないよ」
「わかってるさ。ツタージャ、リーフブレード!」
「タジャーッ!!」
「ユキメノコ、こごえるかぜ!!」
「ユキーッ!!」
放たれるこごえるかぜ。
「タジャー!?」
それは真っ直ぐ向かっていったツタージャを吹き飛ばし……。
「……タジャ〜……」
「ツタージャ戦闘不能、ユキメノコの勝ち!!」
「…………」
「ユキメノコ、あともう少しだよ。頑張って」
「ユ、ユキ、メ……」
もうユキメノコは限界に近い、それでも最後まで戦ってもらわねば。
「あとは、ムクバードだけだね」
「うん。しかも相手のポケモンはまだ一体無傷なのが残ってる」
「………グリード、負けちゃうのかな」
そんな姿、アリアは見たくない。
彼は彼女のお気に入りだ、だから……仕方ないとはいえ、負ける姿を見たいとは思わなかった。
「アリア、まだわからないよ。だって……グリードはまだ、ちっとも諦めてない」
「戻れ、ツタージャ」
ツタージャをボールに戻し、ムクバードが入ったボールを取り出す。
「フェイト、まだまだこれからだぜ!!」
「わかってる。こっちだって最後まで戦い続けるよ!!」
「ムクバード、君に決めた!!」
「―――ムクバー!!」
「ユキメノコ、れいとうビーム!!」
「ユ、キーッ!!」
先制はユキメノコ、弱点であるれいとうビームをムクバードに放つ。
「かわせ!!」
「ムクッ!!」
「ムクバード、そのままつばめがえし!!」
「ムクーッ!!」
れいとうビームを回転しながら避け、間髪入れずにつばめがえしでユキメノコとの間合いを詰めた。
(速い――!?)
「ム、クーッ!!!」
「ユキーッ!?」
ムクバードの一撃が突き刺さり、そのまま地面へと倒れ込むユキメノコ。
「……ユキ〜……」
「ユキメノコ戦闘不能、ムクバードの勝ち!!」
「いいぞ、ムクバード」
「ムック、バー!!」
「これで五分……まだまだ勝負はわからないよ」
なかなかに楽しいバトルを観させてくれる、グリード達を見ながらサクラはそう思った。
「うぅ〜……グリード、勝てるかな……」
戦々恐々といった様子で試合を眺めるアリアを見て、サクラは苦笑を浮かべる。
アリアがこんなにも下級生に対して思い入れをするなど珍しい、意外にも彼女は結構ドライなのだ。
やはり、自分のキバゴが彼を気に入ったからだろうか。それとも……。
……もし違う理由だったら、なんとなく気に入らないが。
「私の最後のポケモンはこの子だよ。ガーディ、お願い」
「――わうっ!」
「ガーディか……」
ムクバードにとっても向こうにとっても、相性的には悪くはない。
(だったらここは真っ向勝負、気合いと根性で乗り切ってやる!!)
「ガーディ、かえんぐるま!!」
「ウガウッ!!」
身体を炎で包み、ムクバードに向かって突撃するガーディ。
「つばめがえしで迎え撃て!!」
「ムクーッ!!」
対するムクバードは、高速のつばめがえしで真っ向からガーディでぶつかり合った――!
「ガウゥ………!」
「ムクッ……!」
互いに吹き飛ばされ、しかしグリードはすぐさま次の攻撃へ。
「でんこうせっか!!」
「ムクーッ!!」
先程よりも更に早いスピードで、ガーディへと向かっていくムクバード。
だが―――
「ガーディ、地面に向かってほのおのうず!」
「えっ!?」
「ムクッ!?」
「ガァーゥ!!」
地面に向かって放たれるほのおのうず。
それは地面を反射し、ガーディを包み込みまるでバリアのような役割を果たした。
――ムクバードは止まれない
「ムクーッ!?」
そのままほのおのうずのバリアにぶつかり、弾き飛ばされ……。
「ガーディ、かえんほうしゃ!!」
「ウガゥゥゥ!!」
すぐさま、かえんほうしゃがムクバードを地面へと叩き落とした。
「ムクバード!!」
「ム、ムク……」
どうにか立ち上がるムクバードだが、まともに受けたためかなり苦しそうだ。
「間髪入れずに攻撃したのは良かったけど、フェイトの方が一枚上手だったみたいだ」
「うぅ〜……何してるのよグリードは……」
(ムクバードは限界だ、でも……つばめがえしじゃガーディに決定打は与えられない)
ならば――後はあの技に賭けるしかない!!
「かえんほうしゃ!!」
「ウガゥゥゥ!!」
迫るかえんほうしゃ。
「ムクバード、上昇してかわせ!!」
「ム、ムクーッ!!」
間一髪、迫るかえんほうしゃを飛翔して回避するムクバード。
そして――グリードは最後の賭けに出た。
「ムクバード、ブレイブバードだ!!」
「ムクバァァァッ!!」
「ブレイブバード!?」
リーフストームだけでなく、ブレイブバードまで完成していたのか。
しかし、フェイトの疑問は半分は間違いだ。
正確には、まだムクバードはブレイブバードを完全に使いこなす事はできない。
確率としては五分五分、すなわち半分の確率でブレイブバードは……。
それでも、残された体力でガーディを倒すにはこの技しか残されてはいないのだ。
「いけぇぇぇっ!!」
「ムクゥゥゥッ!!」
翼を折り畳み、最速のスピードでガーディに突撃するムクバード。
―――しかし
「ガーディ、オーバーヒート!!」
「えっ———」
「ウゥゥゥ……ガァァァァッ!!!」
身体を赤く発光させながら、小さな身体に不釣り合いなほどの強大な炎を発射するガーディ。
――オーバーヒート
それは、ほのおタイプ最強と呼び声の高い技であり。
ブレイブバードを放っているムクバードが回避できるはずもなく、まともに受け……。
「……ム、ムク〜……」
その威力の前に、敗れ去ってしまった……。
「ムクバード戦闘不能、ガーディの勝ち! よって勝者、フェイト」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「…………ふぅ」
試合が終わり、自室に戻った俺は、ベッドに倒れ込んだ。
ちなみに、アヤトもカレンも勝ち進み、あの3人はベスト4だ。
「…………」
――負けた
勝てるとは思ってなかったけど、完敗だ。
自分と相手の力量に差があった、ただそれだけ。
……まだ未熟なんだから、仕方ないんだ。
「………?」
扉をノックする音が部屋に響く。
とりあえず、開けてみると……。
「やあ、グリード」
「……サクラ」
どうしたのだろうか、とりあえず立ち話も何なので中に入ってもらうことに。
すると、彼女は部屋に入るなり一言。
「悔しかったかい?」
俺に視線を向け、そんなわかりきった事を訊いてきた。
「…………」
ああ、悔しかったさ。
負けても仕方ないとわかってても……やっぱり、負けるのは本当に悔しかった。
今だって、悔し涙を流さないようにするので精一杯なのに、コイツも結構嫌な事を訊くものだ。
「……もし悔しくて泣きたいなら、泣いてもいいと思うよ」
そう言って。
サクラは、俺の頭を優しく撫でた。
「君は一生懸命頑張った、それでも勝てなかったんだから……泣いたっていい。
その悔しさを否定できる人なんて、この世のどこにもいないんだから」
「…………」
じわりと、視界が滲む。
サクラの言葉が、俺の涙腺を決壊させたかのように、抑えても抑えても涙が止まらない。
「……よく頑張ったね、いいバトルだったよ」
そんな俺を、サクラは笑おうとはせず俺が泣き止むまで……ずっと頭を撫でてくれていた。
――それが、俺にとっては嬉しくて
俺はその日、久しぶりにおもいっきり泣いた。
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクバード】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・たいあたり ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・たいあたり ・でんこうせっか ・みずでっぽう
・かげぶんしん ・つばさでうつ
・へびにらみ ・つばめがえし
・グラスミキサー ・ブレイブバード(未完成)
・リーフストーム
・リーフブレード二段斬り