アヤトも凄いけど、今の所はカレンが有利か……どっちも頑張れ!!
……でも、いい加減バトルしてえなぁ、俺も。
「エルフーン、エナジーボール!」
「エルフィィッ!!」
「かわしてアクアテール!!」
「ミッ! ミロォッ!」
エナジーボールを回避し、すかさずアクアテールで攻撃を仕掛けるリース。
だが……。
「コットンガード!」
「エルッ!」
エルフーンのコットンガードの前に、またしてもリースの攻撃は弾かれてしまう。
「……エルフーンの特性は厄介だよ、なにせ補助技が先制されてしまうからね。闇雲に攻撃した所で防御されるだけだ」
「けどよサクラ、補助技が先制しちまうなら、勝ち目ないだろ?」
攻撃を仕掛けても、コットンガードを始めとした補助技で防がれれば、打つ手はない。
しかし、俺の言葉にサクラは首を横に振る。
「確かにエルフーンの特性は、ある意味ではとんでもない脅威になる。
でもねグリード、ポケモンの技はそれこそ数え切れない程あるけど、完璧なものは何一つとして存在しない。
つまり、どこかしらに穴があるんだ」
「穴……」
「その穴をどう見つけ、どう攻略するのかはトレーナーの力量次第。
――このバトルは、彼のトレーナーとしての力量が試される場面でもあるんだよ」
そう言って、サクラは再び試合に集中した。
……トレーナーとしての力量、か。
本当に、ポケモンというものは底が知れない、少なくとも……今の俺では計り知れないくらいに。
アヤト……お前はエルフーンをどう突破するんだ?
「れいとうビーム!」
「ミーロォッ!!」
「ひかりのかべ!」
「エールッ!!」
エルフーンの前に薄い膜のような壁が現れ、れいとうビームを弾き飛ばす。
っ、コットンガードだけじゃなくてひかりのかべまで……これじゃあ死角なんてどこにも……。
「――なるほどな」
「………?」
僅かに口元に笑みを浮かべるアヤト、一体どうしたのか……。
「リース、アイアンテール!!」
「ミロォォッ!!」
「アイアンテール!? でも、またコットンガードで防御されちまうのに何で……」
「さて、ね……」
「エルフーン、コットンガードよ!」
「エルッ!!」
再びコットンガードで、リースのアイアンテールを容易く弾いてしまうエルフーン。
やっぱり、あの特性の前じゃいくらアヤトでも……そう思った瞬間。
「リース、地面に向かってアイアンテール!!」
「えっ……?」
「へぇ……なる程、彼はそうやって破るのか」
「ミロォォッ!!」
もう一度アイアンテールを展開し、今度はエルフーンではなく地面を攻撃するリース。
すると、フィールドが破壊され大きめの岩の塊が飛び散っていく。
「っ、エルフーン、エナジーボール!!」
「エー……エルッ!?」
エナジーボールを出そうとしたエルフーンだが、自分の周りに飛び散る岩に一瞬驚き攻撃を中断してしまった。
そうか、アヤトの狙いは初めから――
「アクアテール!!」
「ミロォォ…ミィッ!!」
「エルーッ!!」
その隙を逃さず、アクアテールでエルフーンを空中に吹き飛ばすリース。
しかし、まだ彼女の攻撃は終わらない!!
「たつまきだ!!」
「ミィィィッ!!」
空中に投げ出されたエルフーンが、リースのたつまきによって拘束される。
「エ、ル……」
あの中に居続ければダメージを受けるだけ、ならばとカレンはすぐさま指示を出した。
「エルフーン、ソーラービームでたつまきから脱出しなさい!!」
「させるか! リース、たつまきにハイドロポンプ!!」
「ミロォォォッ!!」
エルフーンにではなく、たつまきにハイドロポンプを浴びせていくリース。
一体何を、そう思った矢先――たつまきの中にハイドロポンプが放たれエルフーンの動きが止まった。
「ハイドロポンプをたつまきに加えて威力を底上げしたのか……うん、なかなかいい攻撃だ」
「みずタイプのハイドロポンプを直接当てるより効果はあるね、アイツなかなか見所ありそう。
まっ、アリアには適わないけどね」
「トドメだリース、アイアンテール!!」
「………エルフーン、やどりぎのタネ!!」
「何っ!?」
「ミィィィ……ミ、ロォォォッ!!!」
「エルーッ!!?」
渾身のアイアンテールがエルフーンに見事ヒット。
たつまきの中から飛び出し、エルフーンは地面に倒れ込んでしまった。
「……エル〜……」
「エルフーン戦闘不能、ミロカロスの勝ち!!」
「…………」
アヤトの奴、あんな方法でエルフーンを……。
「見事だったよ彼の指示は、でも……エルフーンも最後の最後に嫌な置き土産をしたものだね」
「置き土産?」
「やどりぎのタネだよ、もう回避できないと悟ったからエルフーンの特性を利用して放ったんだ、末恐ろしいものだよ」
とは言いつつも、なんだかサクラは楽しそうだ。
……カレンはこれで残り一体、でもリースだってもう保たない。
まだまだ勝負は、わからないか……。
「――ピカチュウ、出てきなさい!!」
「ピカァッ!!」
ラストはピカチュウ……リースには不利か。
「リース、じこさいせいだ!!」
「ミィィィ……」
リースの身体が光り、傷を回復させていく。
じこさいせいまで使えるのか……。
「ピカチュウ、でんこうせっか!!」
「ピッカ!!」
四足歩行で地を蹴り、あっという間にリースとの間合いを詰めていくピカチュウ。
「アクアテール!!」
「ミロォッ!!」
それを叩き潰そうと、リースはアクアテールで迎え撃った。
「リースに飛び乗りなさい!」
「ピカッ!!」
「くっ!?」
でんこうせっかのスピードは落とさずにアクアテールを回避し、リースの身体に飛び乗るピカチュウ。
「ミィッ!?」
「今よピカチュウ、かみなり!!」
「ピカァァァァ……チュウゥゥウゥゥッ!!」
「ミィィィィッ!!?」
凄まじいまでの黄色い雷が、リースの巨体を易々と包み込んだ。
最大パワーによるかみなり、それはリースに多大なダメージを与え……。
「……ミィ〜……」
「ミロカロス戦闘不能、ピカチュウの勝ち!!」
……じこさいせいで回復までしたのに、なんてパワーなんだ。
「リース、よくやってくれた。
――モウカザル、バトルスタンバイ!!」
「ウッキャァ!!」
アヤトのラストはモウカザル、出てきた瞬間ピカチュウと睨み合った。
「これで最後だカレン、勝たせてもらう!!」
「来なさい、アヤト!」
「モウカザル、マッハパンチ!!」
「ピカチュウ、でんこうせっか!!」
「ウキャァッ!!」
「ピッカ!!」
互いに先制技、連続で繰り出されるマッハパンチを、ピカチュウはでんこうせっかのスピードで避けていく。
「かえんぐるま!!」
「アイアンテール!!」
「ウキィッ!」
「ピッカチュウ!!」
かえんぐるまで向かってくるモウカザルを、今度はアイアンテールで受け止めるピカチュウ。
「10まんボルト!」
「ピーカチュゥゥッ!!」
「ウキィィッ!?」
10まんボルトがモウカザルの身体を包み込む、だが……。
「かわらわり!!」
「ウ、キ……ウキャァァアッ!!」
電撃に包まれながらも右腕を振り上げ、ピカチュウの頭部に渾身の力で叩き込む———!
「ビガッ!?」
地面をバウンドし倒れるピカチュウ。
「きあいパンチ!!」
「ウキィヤァッ!!」
「ピカーッ!!?」
そこにモウカザルの追撃が入り、ピカチュウはフィールドの端まで吹き飛ばされてしまった。
今のは効いた……このまま行けばモウカザルの勝ちになる!!
でもモウカザルのダメージも大きい、早く勝負を決めなければ負けるのは向こうだ。
「かえんほうしゃ!!」
「ウキィィァッ!!」
トドメのかえんほうしゃを放つモウカザル、ピカチュウはまだ立ち上がれない———!
「ピカチュウ、立って、立ちなさい!!」
「ピ……カッ!!」
紙一重、その表現がしっくり来るくらいギリギリのタイミングでピカチュウは立ち上がり、迫り来るかえんほうしゃを回避してみせた。
そしてカレンは起き上がったピカチュウに――驚くような指示を出す。
「ピカチュウ、自分にかみなり!!」
「なっ………」
に!?」
「ピィカァァァ…チュウゥウゥッ!!!」
ピカチュウの身体が、自分自身が放ったかみなりに包み込まれる。
自滅する気か……!?
「ここで決めるぞモウカザル、オーバーヒート!!!」
オーバーヒート!!?
「ウキィッ、ウキィィアァァァッ!!!」
雄叫びを上げ、身体を赤く発光させるモウカザル。
そして、先程のかえんほうしゃとは比べものにならない炎がピカチュウに放たれる———!!
「ピカチュウ、ギリギリまで引きつけて!!」
「ピカッ!!」
オーバーヒートを睨みピカチュウはその場を動かない。
――オーバーヒートが迫る、しかしその瞬間
「今よピカチュウ、でんこうせっか!!」
「ピカッ!!」
本当にギリギリまで引きつけて、なんとピカチュウはオーバーヒートを回避してしまう。
「何だと———!?」
モウカザルに隙が生まれ、そして——カレンはピカチュウに最後の大技を指示した。
「ピカチュウ、そのままボルテッカー!!」
「ピッカ!! ピカピカピカピカピカピカピカピカピカピカ………!」
全速力で走りながら、ピカチュウの身体が黄金の雷に包まれていく。
それに比例して、ピカチュウのスピードも加速度的に上昇し……。
「ピッカーッ!!」
臨界点を超えた瞬間、モウカザルに突貫する!!
「ウキィィァッ!?」
ズドンッというまるで大砲のような音が、衝突音として鳴り響き……モウカザルはフィールドの外まで吹き飛ばされ、壁を破壊して中にめり込んでしまった。
――ピカチュウ系統だけが使える大技、その名もボルテッカー
その凄まじい威力は、誰もが認めるものであり。
「……ウキ〜……」
「モウカザル戦闘不能、ピカチュウの勝ち!!よって勝者、カレン」
このバトルの幕を降ろすのに、相応しいといえる技だった……。
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「——カレンの奴、どこ行っちまったんだ?」
試験も終わり、今からみんなでお疲れ様パーティーを開くという話になったのだが、先程からカレンの姿が見当たらないのだ。
ったく、本当にどこに居るんだよ……。
ぶつくさ文句を言いつつも、キョロキョロと辺りを見回しながら歩を進めていると……。
「あんな奴程度にあそこまで苦戦するとは、情けなくなったものだ」
前に聞いたような気がする声が耳に入ってきた。
「………?」
何事かと声のした方に行ってみると。
「あ………」
いた、カレンだ。
でも……カレンの他にもう1人、アイツは……。
「嫌味を言いに来たの?アオイ」
そう、カレンを睨むように見ているのは、アオイとかいう女生徒だ。
というか、このピリピリした空気は何だ? なんだか近寄れなくて物影に隠れてしまう。
「嫌味? 事実を言ったまでだ」
「そうね。あなたにとっては嫌味じゃないか、それで用件はそれで終わりなの? ならさっさと消えてくれない?」
疲れたようにカレンがそう告げると、アオイの表情が怒りを含んだものに変わる。
それにしてもアイツ、やけにカレンに突っかかるけど……なにかあったのかな?
「……まだ、あんな連中に付き合って自分の才能を消すのか?」
「あんな連中だなんて言わないでくれる? グリード達はあたしの親友なの」
「親友? ハッ、あんな弱いだけの存在がか?」
心底小馬鹿にしたようなアオイの言葉に、カレンの肩が少し動いた。
背中越しに見てるから表情は見えないけど、たぶん怒ってるなカレン。
「そうね……確かに今のあなたよりは弱いわよ、でも……あなたが前にバトルしたグリード、あいつはいずれアンタを超えるトレーナーになるわ」
「……えっ?」
カレンの言葉に、つい間の抜けた声を出してしまった。
カレンの奴、何を言ってるんだ?
「……そんなくだらない冗談は不愉快でしかないな」
「冗談なんかじゃない、あいつはアンタにはないものを持ってる。
いずれ、そう遠くない未来で必ずアンタに勝つ事ができるわ」
はっきりと、当たり前だと言わんばかりに言い放つカレン。
――アオイの表情が険しくなる
拙い、これ以上放っておくわけにはいかない。そう判断して、俺は飛び出した。
「待て待て待て!!」
「っ、グリード……」
「…………」
「お互いそんな喧嘩腰になるなよ、知り合いならもっと仲良くできねえのか?」
「お前には関係ない、それにこいつとはもう知り合いでも何でも――」
「もう、ってことは前は知り合いだったんだろ?
一度でも知り合いになったなら、そんな憎まなくてもいいだろうが」
「っ、何も知らないくせにずけずけと………!
関係ないヤツが、口を出すな!!」
拳を握りしめ、殴りかかってくるアオイ。
それをどうにか避け、殴ってきた腕を掴む。
「関係ないけど、お前を見てると放っておけないんだよ!!」
「何を……」
「お前のその目、なんか……寂しそうだ。
……昔の俺と、まったく同じなんだよ」
「な、に……?」
「グリード……?」
そう、どうしてこんな失礼な奴を放ってはおけないのか。いつもの俺なら口も利きたくないと思うのに……。
コイツの目の中に、確かな寂しさと……焦燥感のようなものが見えたから。
だから、俺はコイツを放ってはおけない。
「っ、放せ!!」
「放すか! お前とカレンの間に何があったのか知んないけど、そんなに突っかかる事は―――」
「放せと言ってるんだ、このっ!!」
胸ぐらを掴まれる。
と、その際にバランスを崩してしまい……。
「どわっ!?」
「きゃっ!?」
ものの見事にすっ転んでしまい、アオイに押し倒されるような形になってしまった。
「いてて……おい、早くどいてくれよ」
『―――――』
息を呑む音が、2人から聞こえた。
何だろうと思い、顔を上げて――俺は、自分の状態に気づいてすぐさまアオイから離れた。
……シャツが、破れている。
多分胸ぐらを掴まれたまま倒れた時に破れたのだろう、けど別にそんな事はどうでもいい、代えなんていくらでもある。
けれど——カレン達、今“アレ”を見たのか?
「……お前、“ソレ”はなんだ?」
僅かに恐怖が入り混じった表情で、アオイは俺に問いかける。
彼女の後ろでは、カレンも口には出さないものの同じ問いかけをしていた。
「……………」
けれど、俺は答えない。
……答えられるわけがないだろうが。
「おい、質問に答えろ。お前のソレは――」
「答えない。答える意味なんかないから、お前がこれを知った所で何の得があるんだ?」
感情は込めず、自分でも驚くくらい無機質な声でアオイの言葉を潰す。
それが効いたのか、アオイはそれ以上何も言わずにその場を立ち去った。
「……あーあ、これお気に入りだったのに」
「…………」
「カレン、モモカがしびれを切らしそうだから早く行こうぜ?」
「…………ええ」
俺の心中を察してくれたのか、それとも……“俺の全身に残っている傷”を見たせいか、カレンは何も言わずについてきてくれた。
――俺の身体には、おびただしい程の傷が存在する
斬り傷から始まり、刺し傷や打撲痕……数え上げたらキリがないくらいだ。
これは思い出したくもない記憶の証、生まれて初めて感じた死の恐怖の象徴。
一生消えない傷を全てではないにしろ見たのだ、女の子にとっては耐え難い……というか、普通の人間なら気分を害してもおかしくない。
「――忘れろよ、カレン」
「えっ……?」
「今見たものは忘れろ、覚えていても……意味のないものだ」
「…………」
カレンは答えない、でも届いてくれたと信じている。
災難だなぁ、今年は厄年か、と思いつつ。
俺はカレンを連れて、モモカ達の所へと戻ったのだった。
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクバード】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・たいあたり ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・たいあたり ・でんこうせっか ・みずでっぽう
・かげぶんしん ・つばさでうつ
・へびにらみ ・つばめがえし
・リーフストーム ・ブレイブバード(未完成)
・リーフブレード二段斬り