さーて、今日はどんな1日になるのかな?
「ゾロア、かみつく!」
「がうー!」
「エレキッド、かわせ!」
「レキッ!!」
向かってくるゾロアを回避するエレキッド、既に右腕には雷を蓄え始めている。
「かみなりパンチ!!」
「シャドークロー!」
「レキーッ!!」
「がうがうがうー!!」
かみなりパンチとシャドークローがぶつかり合う。
力は互角、どっちもさすがだぜ!!
「………ソラネ、ここまでだ」
「は、はい……」
練習バトルが終わる、とは言ってもコンテストバトル形式でだったが。
「アヤトは知ってたけど、ソラネってあんなに強かったんだな」
アヤトのエレキッド相手に一歩も引いてなかったし。
「そ、そんな事ないよ……普通のバトルだったら、スギウラくんにはとても……」
「そんな事はないさ、こちらも制限時間のない普通のバトルでは危なかったかもしれん」
「ほら、アヤトが褒めるなんてめったにないんだぜ? もっと自信を持っていいんだって!」
「グリード、一言多いぞ」
「ふふっ……」
和やかな空気。
と、“それ”は当然やってきた。
「レキッ……?」
「何……?」
「あっ!!」
エレキッドの身体が白い光に包まれる。
……進化が、始まるのか。
シルエットはだんだんと大きくなり、やがて光が消えた時には……。
「エレ、ブーッ!!」
エレキッドはエレブーへと進化を遂げていた。
「やったな、アヤト!」
「お、おめでとう、スギウラくん!」
「ありがとう。……エレブー、これからも頼む」
「レブー」
にっと笑みを浮かべるエレブー。
「がうがうー」
ゾロアもおめでとうと言っているのか、アヤトの周りをぐるぐると回り始めた。
「ははっ。ゾロアの奴、アヤトの事を気に入ったみたいだな」
「そうか……?」
「うん。……ねえ、スギウラくん」
「何だ?」
「ゾロアってね、コンテストよりポケモンバトルに興味があるんだけど……その、えっと……もしよかったら、スギウラくんの手持ちにする気はない、かな……?」
「えっ……」
「へぇ、いいじゃんかそれ!!」
なんて羨ましい提案だろうか、もし俺だったら二つ返事でOKする所なのだが……。
「……少し、考えさせてくれないか?」
アヤトの奴、随分と曖昧な物言いしかしてこなかった。
「何でだよ? ソラネの許可は貰ってるし、ゾロアだってお前に懐いてるんだから……」
「ああ。でもそんな簡単には決められないさ、自分にとって大切なパートナーになるかどうかが懸かってるからな」
「むぅ……」
そう言われてしまうと、返す言葉がない。
……まあいいか、決めるのはアヤト自身なんだから、俺がとやかく言える義理は。
「…………えっ?」
顔を上げ、辺りを見回す。
……何だ、今。
「グリードくん、どうかしたの?」
「…………」
ソラネの声には応えず、尚も視線を辺りに向ける。
ここは学園の裏庭、生徒の姿はまばらにしか存在せず、俺達の周りには誰もいない。
そう、誰もいないはずなのに……今、確かに何かの気配が。
「タジャタジャ!!」
「っ、ツタージャ……まさかお前も?」
肩に乗るツタージャに視線を向けると、コクコクと頷きを返された。
……やっぱり、気のせいなんかじゃなかったか。
「――クォゥゥ」
「っ!!」
聞こえた、今確かに。
そう思った瞬間、俺の身体は自然と動き走り出していた。
後ろで俺の名前を呼ぶ2人にも何も言わず、感じた気配を頼りに学園内を走っていく。
走って走って……走り続けて。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
気がついたら俺は、学園の外に出てしまっていた。
さすが都会なだけあり、周りには人が溢れ喧騒が耳に入ってくる。
くそっ……見失ったか?
「おい、グリード!」
「あ、アヤト……」
「まったく……急に走り出してどうした?」
「いや、その」
まいったな、後先考えずに走ってきたけど、どうやって説明を。
「―――クゥゥ」
「―――っ」
再び、疲れた脚に渇を入れて走り出す。
「グリード!!」
その後ろを追いかけてくるアヤト。
「タジャ!!」
「ツタージャ、こっちなんだな!?」
指差すツタージャを頼りに、まだ慣れてない街中を駆けていく。
……人通りも少なくなってきた。
どこまで走ればいいのだろう、そんな事を考えていると……。
「――――」
突如として俺はその場で立ち止まり、言葉を失った。
「はぁ…はぁ……グリード、一体どうしたんだ?」
「……アヤト、ここは」
俺の目の前に広がるのは、凄まじいと言えるくらい澄んだ湖。
日の光を反射して、まるで宝石のように輝いている水は、五メートル近くはある底まで見る事ができる。
「ああ……なんだ、こんな所まで走ってきたのか。ここはなグリード、心の泉と呼ばれる場所だ」
「心の、泉……」
「なんでも、泉に映った者の心が見えるという伝説があるそうだ。
まあ、あくまで伝説であってそんな事はありえないんだがな」
「…………」
アヤトの説明をどこか遠くで聞きながら、泉に近づく。
そして、その水に触れようとした瞬間。
「クゥゥ」
「っ!!?」
気のせいだと思った鳴き声が、再び聞こえた。
「今の声は……」
アヤトも俺と同じく周りを見るが、当然のごとく俺達の他には誰もいない。
……違う、誰もいないんじゃない。
気配は感じる、けど姿が見えないだけだ……。
キョロキョロと眺めるのは止め、警戒心を解く。
「なあ、俺達はお前に何か危害を加えようなんて思ってない。
だから、もしよかったら姿を見せてくれないか?」
「……グリード?」
端から見たら、凄まじく危ない人間にしか見えない俺の行動。
だけど――その子は俺の言葉で少しは安心してくれたのか、姿を現してくれた。
「クゥゥ……クォゥ?」
まるで初めからそこに存在していたかのように現れたのは……一体のポケモン。
「こ、このポケモンは……!?」
その子を見た瞬間、アヤトは何故か珍しく驚愕に満ちた声を上げた。
「アヤト、いきなり大声出してどうしたんだ?」
「お前……このポケモンが何なのか、わからないのか?」
「えっ、うーん………可愛いな、凄く」
「クォゥゥ……♪」
褒められたのが嬉しかったのか、顔をすり寄せてくるポケモン。
可愛い奴め、そう思っていたら……アヤトからとんでもない事実を教えられた。
「そのポケモンはラティアス……伝説のポケモンだぞ」
「ラティアス……あぁ、そういえば前に聞いた事があるな。たしかむげんポケモンとかいう……」
あと、とんでもなく珍しいという話も聞いた。
「そんなラティアスが、どうしてここに……」
確かに、ここは外れの方とはいえ街の中だ。
ラティアスのようなポケモンが、ホイホイ存在するのは明らかに不自然である。
……まあ、そんな事は別にいいんだけどな。
「ラティアス、お腹空いてるか?」
「クォゥ?」
「もしよかったら、グリード特製のポフィンを食ってみるか?」
そう言いつつ、小型のポフィンケースを取り出し、三個ほど手のひらに乗せてラティアスに近づかせる。
クンクンと匂いを嗅いでから、ラティアスはポフィンを口の中に入れてくれた。
さーて、気に入ってくれるかな……?
「………クォゥゥ♪」
にっこりと満面の笑みを浮かべ、もっとくれとばかりにすり寄ってきた。
「あはは、そんな慌てなくてもまだまだあるから大丈夫だよ」
「……タージャ、タジャタジャ!!」
「クォゥ? クゥ、クォォゥ!」
「おいツタージャ、ラティアス?」
何やら睨み合うツタージャとラティアス、なんで仲良くできないかねお前は……。
「あなた達、こんな所で何してるの?」
「えっ?」
睨み合う両者を宥めようとした瞬間、第三者が泉に現れた。
腰の辺りまで伸びる濃い紫のロングヘアー、瞳の色も髪と同じ。
美人なんだけど……なんだろう、こっちに敵意を向けてるのは何故?
「あなた達は……」
「えっ、俺達の事を知ってるのか?」
はて、俺は目の前の女性にはなんら面識はないはずだが……。
「……グリード、彼女はイルミナ学園四天王の一人、ユキムラマイ先輩だ」
「四天王!?」
へぇ、そんな凄い人だったのか。
「やっぱり、スギウラアヤトにグリード……イルミナ学園の一年だったわよね?」
「ええ、まあ……」
「……ラティアス、どうして私達以外の人間の前に姿を現したの?」
「クォゥ……」
叱られ、しゅんとうなだれるラティアス。
「もしかして、このラティアスは先輩の手持ちなんですか?」
「いいえ。それより……この事は誰にも話さないでくれる? 大事にするわけにはいかないの、ラティアスの為にも」
「もちろん、だってそんな事したらラティアスをゲットしようとする奴らが来ちゃうじゃん。
言われなくたって、秘密にするよ。それよかラティアス、ポフィンだぞー」
「クォォゥ♪」
美味しそうにポフィンを食べてくれるラティアス、可愛いなぁ……。
「………こんなにラティアスが心を開くなんて、さすがサクラが気にかけてる新人ね」
「サクラが?」
へぇ、気にかけてくれてるんだ、ちょっと嬉しいかも。
と。
「はぁ、はぁ……は、早いよ2人とも」
「おや……マイじゃないか。それてラティアスも……」
「あれ、サクラ?」
息を切らしているソラネと、その隣で彼女を支えているサクラが現れた。
なんか、どんどん大所帯になっていくな……。
………。
「へぇ……そんな事があったんだ」
その後、何故かサクラが持っていた紅茶セットでお茶会をする事になり、何故ラティアスがこんな所に居るのかをマイに教えてもらった。
「ところでサクラ、何でこんなものを持ってたんだ?」
「今日は天気がよかったからね、君を誘って外でお茶しようと思っていたんだよ。
まあ、声を掛けたのに君は無視してしまったけどね」
紅茶を口に運びつつ、皮肉を口にするサクラ。悪かったな。
話を戻すが、マイがラティアスに出会ったのは今から4日ほど前。
ここは人気は無いし一部の人間しか入ってはいけないから、彼女は時々ここでのんびり過ごす習慣があるらしい。
そしていつものように泉に来たら、傷を負ったラティアスがここで倒れているのを発見、サクラに連絡して秘密裏に学園の中にあるポケモンセンターに運んだそうだ。
ラティアスみたいな伝説のポケモンは、おいそれと人前には出せないものだから、それ故の処置らしい。
幸い傷自体はたいしたことはなく、今はこうやって完全に傷が治るまでこの泉に滞在していたのだが……ラティアスが約束を破って、学園の中を散歩した事がきっかけで現在の状況に繋がるというわけである。
「大変だったんだな、ラティアス」
可哀想に、優しく撫でてあげると嬉しそうに声を上げるラティアス。
「相変わらず、君はどんなポケモンとも仲良くなれるね。
だけど、さっきマイが言ったようにこの事は秘密にしてね?」
「わかってるよ。俺だってそれくらい……」
……それくらい、わかっているさ。
珍しいポケモンが、悪意ある人間達にどうされるのか、嫌ってほどわかってる。
だって、俺はこの目と心でそんなポケモン達の末路を―――
「――――――」
気持ち、悪い。
思考が、心がドス黒く汚い感情に支配されて……。
「……クォゥゥ……」
「……タジャ……」
泣きそうな顔で、俺にすり寄ってくるツタージャとラティアス。
……あんな出来事、二度と思い出すな。
「……どうか、したのか?」
「…………いや、なんでもねえよ」
自分でも驚くくらい、冷たく無機質な声が出てしまった。
でも、アヤトは気を利かしてそれ以上は何も訊いてはこない。
「さて、と……」
マイが立ち上がる。
そして、視線をアヤトに向け口を開いた。
「ねえアヤト、私とバトルしてみない?」
「えっ……」
「この間のテストトーナメントを見てたけど、なかなか見所があるバトルだったから。
それでどう? 挑戦を受ける気はある?」
「いいなー、俺もバトルしたいぜ」
「……わかりました。お願いします」
アヤトの言葉に笑みを浮かべつつ、互いに離れボールを取り出す。
「じゃあ僕が審判をするよ」
2人の間に立つサクラ。
「使用ポケモンは一体ずつで交代はなし、それでいい?」
「はい」
「よーし……なら私は、メタグロス、ゴー!!」
「―――メタッ!」
「あれがメタグロスか……でっけえなぁ」
「うん、それに凄く強そう……」
「モウカザル、バトルスタンバイ!!」
「――ウキッ!」
アヤトはモウカザル、はがねとエスパータイプのメタグロスには相性ばっちりだ。
「先攻はアヤト、あなたからでいいわ」
「それでは、試合開始!」
「モウカザル、かえんぐるま!!」
「ウッキャァッ!!」
身体を丸め、炎に包まれながらメタグロスに突撃するモウカザル。
「サイコキネシス」
「メタッ」
メタグロスの顔にある×印が光り出す。
「右に方向転換!!」
「ウキッ!」
しかし、突如としてかえんぐるま状態のままモウカザルは進路を変更、サイコキネシスを逃れる。
「ウッキャァッ!!」
「メタッ!?」
そしてそのままメタグロスに衝突し、ダメージを与えた。
「マッハパンチ!!」
「ウッキャァッ!」
すかさず地を蹴り、メタグロスの顔面にマッハパンチが叩き込まれる。
「メ、タァ……」
メタグロスの巨体が、地面を削りながら後退していく。
「ほのおのうずで動きを止めろ!!」
「ウキィッ!!」
モウカザルの口から放たれるほのおのうず。
それは怯んでいるメタグロスを瞬く間に包み込んだ。
「ほのおのうず……なる程、テストトーナメントの時より成長しているみたいね」
「ありがとうございます。モウカザル、かえんぐるま!!」
「ウッキャァッ!!」
一気に勝負をつける気なのか、再びかえんぐるまで突撃するモウカザル。
「いい手だ。だけど……メタグロスを拘束してるほのおのうずのパワーが足りないな」
「えっ……?」
審判をしているサクラから、ぽつりとそんな言葉が放たれる。
おもわず訊き返そうとして――俺はその意味をすぐに理解した。
「サイコキネシス」
「メッタッ!!」
再びサイコキネシスを展開するメタグロス。
だけど、今度は先程よりパワーそのものが違っていた。
「ウキッ!?」
「なっ!?」
驚きの声はアヤトから。
しかし仕方ない、メタグロスのサイコキネシスがほのおのうずとモウカザル自身を同時に拘束したからだ。
こんな芸当、並大抵のパワーじゃできるわけがない。
「メタグロストドメよ、コメットパンチ!!」
「メターッ!!」
メタグロスの右腕が光り輝く。
「ガギャ……!?」
凄まじいパワーを込めたそれは、回避も防御もできないモウカザルを吹き飛ばした!!
「モウカザル!!」
勢いよく地面に叩きつけられ、モウカザルは動かない。
「モウカザル戦闘不能、メタグロスの勝ち。よってこの勝負、マイの勝ちだ」
「………すげぇ」
モウカザルをたった一撃で……これが四天王の力か。
「ほのおのうずのパワーがもう少しあれば、あのかえんぐるまは避けられなかった。
アヤトのポケモンは、よく育てられてるわね」
「ありがとうございます先輩。モウカザル、いいバトルだったぞ」
「はいはーい、次は俺とバトルしてくれよ!!」
「悪いけどそれは無理。ラティアス、また来るから次は学園に来たらダメよ?」
「クォゥ」
頷くラティアス、けどなんか信用しがたい。
「じゃあ、オレ達も戻るか」
「そ、そうですね」
「ちぇ……」
渋々その場を後にする俺達。
と、いきなりラティアスに服を噛まれてしまう。
「ラティアス?」
「クォゥゥ……」
寂しそうな顔を俺に向けるラティアス、まるで行かないでほしいと言わんばかりだ。
「……グリード、もしあなたがよかったらまたここに遊びに来てくれないかしら?
許可は貰っておくし、それになによりラティアスが喜ぶから」
「あ、ああ……わかったよ。ラティアス、また遊びに来てもいいか?」
「クゥ!!」
頷き、嬉しそうにすり寄るラティアス。
「まったく、お前の才能には驚かされるな」
「才能?」
「ああ。ポケモンに好かれるお前のそれはもはや才能だよ」
「たしかに、君のそれは貴重なものだよ」
「そ、そうだね。グリードくんのポケモンに好かれる才能、羨ましいなぁ……」
「………そ、そうかなぁ?」
口々にそう言われると、照れてしまう。
ポケモンに好かれる才能かぁ……。
本当に俺にそんな才能があるのかはわからないけど、ポケモンを大事にしようという気持ちが強まったのだった。
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクバード】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・たいあたり ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・たいあたり ・でんこうせっか ・みずでっぽう
・かげぶんしん ・つばさでうつ
・へびにらみ ・つばめがえし
・リーフストーム ・ブレイブバード(未完成)
・リーフブレード二段斬り