さーて、今日はどんな1日になるんだろうな?
「あ、あの……グリードくん」
「? ソラネ、どうかしたか?」
さあ今日もあそこに行こう、と思った矢先、後ろからソラネに声を掛けられた。
「あ、あの…その……えっと……」
口をパクパクと動かすソラネ、一向に何を言いたいのかよくわからない。
でも、対人恐怖症のソラネが自分から話しかけようとしてるんだから、大きな進歩だよな。
「ソラネ、慌てなくても大丈夫だからな?」
「う、うん……あ、あのねグリードくん、その…相談したい事が、あるの」
「相談? ああ、別にいいぜ」
「ほ、本当?」
「ああ。だけど……場所を変えてもいいか?」
「………?」
………。
「――おーい、ラティアス!!」
「クゥゥォゥ!」
名を呼ぶと、すぐさま姿を現して俺に体当たりをぶちかますラティアス。
「ははっ、くすぐったいよラティアス」
「クゥ、クゥゥ!!」
離れてくれと言うものの、ラティアスは一向に離れてくれない。
仕方ない、ちょっと暑苦しいがこのままソラネの話を聞くことにしよう。
「ソラネ、それで相談ってなんだ?」
「う、うん……えっと、その……今度ね、ポケモンコンテストがあるの」
「ポケモンコンテストって、ソラネみたいなコーディネーターが出場するアレか?」
たしか、優勝するとコンテストリボンが貰えて、それを5つ集めるとグランドフェスティバルというトレーナーでいうポケモンリーグのような大会に出場する権利が与えられるとか。
「うん……その、公式じゃないんだけど今度学園でコンテストが開かれるんだ」
「へぇ、ソラネは出場するのか?」
俺の問いに、こくんと頷くソラネ。
「頑張れよ、応援するからな!」
「クォゥッ!!」
「あいてっ!! わかったよラティアス、今ポフィンやるから」
俺の作ったポフィンを気に入ってくれたのは嬉しいけど、欲しいからって角で刺そうとするのはやめてほしい。
「……でもね、私……コンテストに出ようか迷ってる……」
「えっ?」
どうしてなんだ、そう訪ねようとして……俺は理由を理解した。
――対人恐怖症
ソラネは、自分の瞳のせいでいじめられた過去がある。
そんな彼女が、人前で演技するなど……ある意味拷問に等しいものだ。
「でも、いつまでもコンテストに出ないわけにはいかなくて……私、どうすればいいのかわからなくなって……。
グリードくん、私……どうしたらいいのかな?」
「むぅ……」
困った、ソラネの相談とはこういう事だったのか。
どうすればいいのかと言われても……返答に困る問いかけだ。
「ソラネ、わかってはいると思うけどさ、それはお前あいてっ!?」
「クゥゥ?」
「ラティアス、悪いけど少し静かにしててくれるか? 今大事な話をしてるから」
「クゥ」
頷き、俺のポフィンをいそいそと食べ始めるラティアス。
「……ソラネ、それはお前が決めるしかないんじゃないか?
お前が出たいなら、出るしかないさ」
「…………」
「お前が人の事が恐いのは知ってるけど、やっぱり出たいなら勇気を出すしかないんじゃないか?
月並みな言い方しかできないけど、頑張るしかないよ」
「………うん」
ソラネ自身もわかってはいるのだが、いかんせんアレが邪魔をする。
どうしたものか……。
うーん………。
…………………あっ。
「そうだ!!」
「ど、どうしたの?」
「ソラネ、俺もコンテストに出るよ!!」
「…………えっ?」
「一緒に出場するなら、精神的にも楽になるんじゃないか?」
自分でも安易な考えだとは思うが、普通に応援するより一緒に出場する方が効果的だと思ったのだ。
コンテストパスがあればトレーナー科である俺でも出場できるらしいし、何事も経験する事はいいことだしな。
「グリードくんと、一緒に……?」
「そうだよ。……それじゃあ、ダメか?」
「う、うぅん……そんな事ないよ。グリードくんと一緒なら、多分大丈夫だと思う……」
「決まりだな。それでコンテストはいつになるんだ?」
「3日後、だけど……」
「よーし、それじゃあ早速準備するか!!
それじゃあソラネ、ラティアス、またな!!」
すちゃっと立ち上がり、さっさとその場を後にする。
後ろからソラネ達の声が聞こえたが、今の俺には届く事はなかった。
………。
と、いうわけで……。
出場登録を無事に済まし、続いてはルールの確認をしなければ。
……実は俺、出場する事に決めたのだが、ポケモンコンテストのルールを知らなかったりする。
だってしょうがないだろ、今までコンテストに出た事がないんだから。
やるなら徹底的、だからコンテストのルールを知ってる奴の元へ。
ソラネに聞けばいいんじゃないかと思ったんだけど、彼女は今見当たらない。
……こんな事なら、短絡的な行動をとらなければよかった。
「フェイトー」
一応ノックはするが、確認を待たずにフェイトの部屋を開く。
「グリード?」
よかった、部屋に居てくれた。只今読書中であるフェイトの前に立ち。
「フェイト、ポケモンコンテストのルールとコツを教えてくれ!!」
と、お願いした。
「えっ?」
「いや、実はさ……」
―――説明中
「………というわけで、コンテストのルールとコツを教えてくれよ」
「なる程……そういう事なら、私も協力するよ」
ふわりと微笑むフェイト、やっぱり持つべきものは頼りになる友達だ。
「コンテストは一次審査と二次審査があるの。
一次審査は個人によるポケモンとのパフォーマンス、簡単に言えばどうポケモンを魅せるかを競い合うの。
そして一次審査を勝ち進んだ上位陣による二次審査は、コンテストバトルよ」
「コンテストバトルって、普通のバトルとどう違うんだ?」
「まず五分の制限時間がある事と、相手を戦闘不能にする以外にポイントをゼロにする事でも勝利扱いになる事かな」
「ポイント?」
「基本的に相手にダメージを与えたら減っていくんだけど、それ以外にも減る要因はあるんだ。 たとえば相手の攻撃を華麗に回避したり、相手の技を利用してダメージを与えたりするとポイントが大きく減るかな。
ただ技を繰り出してダメージを与えるだけじゃダメなの、そこが普通のバトルと違うところかな」
「……なんか、難しそうだな」
コンテストなのだから魅せる事を重点に考えなくてはならないというのはわかったが、俺にはあきらかに不釣り合いというか似合わない。
「そんな事ないよ。グリードのポケモン達はみんなコンディションはかなり良いと思う。
特にミロカロスは、並のコーディネーターじゃ太刀打ちできないくらい綺麗だよ」
「そうかぁ?」
「ポケモンに心からの愛情と信頼を送り、丹精込めた良いポケモンフーズとポフィンを与える。
それが一流のコーディネーターに近づくための大切な事、姉さんは口癖のように言ってた。
グリードは、その条件をクリアしてるよ。今すぐコーディネーターになっても通用するくらい」
「それは言い過ぎだろ、サクラといいフェイトといい……みんなして俺を買いかぶり過ぎだぜ」
「……もっと、自信を持ってもいいと思うよ。
グリードはそれだけの努力をしてきたって、みんな知ってるから」
「むぅ……」
どうも、こういうストレートな褒め方は苦手だ、リアクションが返しづらいから。
でも、まあ……そこまで言ってくれるのは、やはり嬉しい。
「サンキューなフェイト、じゃあ今度の大会はミロカロスで出てみるよ」
「うん。私もアヤト達も応援してるから!」
「おう。よーし、早速特訓だぜ!!」
何せコンテストまで僅か3日しかない、付け焼き刃になるのは明白だけど、できるだけの事はしないと。
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【サクラside】
「――ふぅん。グリードも出るのか、今度のポケモンコンテストに」
これは驚きだ、グリード……ちゃんとルールを把握していればいいんだけど。
「う、うん……グリードくんと一緒なら、大丈夫かも……」
そう口にするソラネは、とても嬉しそうだ。
……やはり、彼女はグリードに明確な好意を抱いているらしい。
おそらくソラネ自身は気づいていない、今まで誰かを好きになった事などないから仕方ないかもしれないが。
「それで、ソラネはどのポケモンでコンテストに出るつもりだい?」
「う、うん……私は、ブラッキーで行こうと思ってるけど……」
「ブラ、ッキー!!」
名を呼ばれ、一声鳴くブラッキー。
なる程、たしかにこの子ならかなりいい所まで行けそうだ。
……ちゃんと実力が出ればの話だが。
ソラネは優秀なコーディネーターになれる素質を持っている、友人の贔屓目を抜きにしてもだ。
ポケモンを大事にする優しい心、コンテストに対する熱意と努力、それを同時に備わっているのだから、成長しないわけがない。
実際に彼女は一年の中でもかなり上位の成績だと聞いている、しかし……彼女のトラウマがその全てを封印してしまっていた。
対人恐怖症であるが故に、彼女は今まで数えるくらいしかコンテストには出場していない。
しかも出場したとしても、大勢の前で演技する事ができなくなるのだ。
仕方ないと言えばそれまでだ、いくら非公式で学園の中で行われてるコンテストだとしても、本物と同じように一般の観客も観に来る。
そんな中で、ソラネが演技するというのは拷問に近い。
彼女もどうにか克服しようと努力はしてるんだけど……情けない事に、僕では彼女の傷を癒やす事はできない。
友達なのに、なんとも情けないものだ。
でも、グリードならばもしかしたら……そう思える。
彼ならもしかしたら、ソラネの傷を癒やす事ができるかもしれない。
打算も計算もない、純粋な彼の言葉ならソラネに届くかもしれない。
……しかし、それは同時にソラネにとって危険なものでもある
「ソラネ、わかってはいると思うけど、あくまで演技は君と君のポケモンで行うんだ。グリードは、助けてくれないよ?」
「う、うん……わかってるよ、サクラちゃん……」
本当にわかっているのだろうか、僕の言葉で途端に顔には不安しか浮かばなくなってる。
グリードのおかげでソラネは明るくなった、けれど……彼に依存しかけているのが心配だ。
彼はソラネにとって頼りになる初めての異性、それに気さくな性格だからなんでも相談に乗ってくれる。
だから……ソラネが彼に依存し過ぎないか、心配なのだ。
自分のポケモンを輝かせられるのは、あくまで自分自身のみ。
それなのに、ソラネが彼に依存し過ぎてしまったら……せっかくの才能を消してしまう事になる。
「とにかく、まずは演技の練習をした方がいい。
コンテストバトルの練習は、僕が手伝ってあげるから」
「あ、ありがとう……サクラちゃん」
でも、僕は敢えてそれ以上ソラネには言わない
これはソラネが自分で乗り越えらなければならない問題だ、他人の僕ができる事は限られている。
信じよう、親友を。
そして、あの綺麗な心を持つ彼を。
【サクラside】out——
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――そんなこんなで、あっという間に3日が過ぎた
「うへぇ……すげぇな、人がうじゃうじゃだ」
学園の中にコンテスト会場があるのも驚きだが、数百という席が満席になっているのも驚いた。
本当にイルミナ学園は色々な意味で凄まじいと再認識していると。
「グリードさん」
「どうだ、緊張してるか?」
アヤトとモモカを初めとしたみんなが応援に来てくれた。
「どうだろ? よくわかんねえや」
緊張はしてるかもしんないけど、気楽にやらないと上手くできない。
「それよか、みんなわざわざ応援に来てくれてサンキューな」
「気にしないでください、お友達なんですから」
「そういう事だ」
「グリード、頑張ってね?」
「…………」
「? カレン、どうした? もしかして腹痛?」
「……グリード、頑張ってね」
「おぅ……」
うーむ、まだ俺と微妙な感じを保ったままか……。
やっぱり、あの傷を見たからかなぁ……今度、ちゃんと話し合わないと。
「ところで、控え室に行かなくていいんですか?」
「そうだった。それじゃあみんな、俺だけじゃなくてソラネの応援もしてあげてくれよな!」
手を挙げそう告げてから、俺は控え室へと向かう。
中に入ると、少しだけピリピリした空気が肌で感じ取れた。
「ソラネ」
「あっ……グリードくん」
俺の声が聞こえ、俯いていた顔を上げるソラネ。
うーむ、やっぱり緊張してるか……表情がガチガチだからな。
「ソラネ、とりあえず深呼吸して落ち着け」
「すー……はー……すー……はー…」
言われた通り深呼吸を繰り返すソラネ、少しは落ち着けられたようだ。
「大丈夫だ。ソラネならできるよ」
「そ、そうかな……私、こんなんだから」
「ちゃんとここで、お前の演技を観てるから、自分と自分のポケモンを信じて頑張ればいいよ。
失敗したって構うもんか、自分が後悔しない演技ができれば絶対に間違いじゃないんだから」
「う、うん……!」
力強く頷き、瞳に闘志を抱くソラネ。
と、会場が映るモニターから歓声が聞こえてきた、どうやら始まるようだ。
よーし、どこまでできるかはわかんねえけど、精一杯やってやるぜ!!
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクバード】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・たいあたり ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・たいあたり ・でんこうせっか ・みずでっぽう
・かげぶんしん ・つばさでうつ
・へびにらみ ・つばめがえし
・リーフストーム ・ブレイブバード(未完成)
・リーフブレード二段斬り