……けど、どうやら今回は普通の1日にはならなそうだ。
はてさて、どうなる事やら……。
「――みんな、リヴァーナ島が見えてきたよ」
サクラの声に、俺達は揃って甲板を乗り出す。
「わぁ……綺麗」
フェイトが感嘆の声を漏らす、でもそれも納得できるくらい視線の先の光景は綺麗だった。
――ホウエン地方にあるリゾート地、リヴァーナ島
俺とサクラ、そしてアヤトとフェイトの4人は、現在この島に遊びに来ていた。
話の始まりは、数日前に遡るのだが……。
「グリード、リヴァーナ島という島に行ってみないかい?」
「リヴァーナ島?」
「カイナシティと同じく、ホウエン地方にあるリゾート地さ。
旅行券が手に入ったから、一緒にどうかなと思ったんだけど……」
「いいよ。でも俺でいいのか?」
「もちろんさ」
「やったぜ!!」
「券はまだ二枚あるんだけど……もしよかったら一緒に行くかい?」
残りの旅行券をちらつかせながら、サクラはアヤト達にそう告げる。
「じゃあアヤト、私と一緒に行きましょう!! そんでもって、リゾート地で……ムフフ」
「あっ、ダ、ダメだよモモカ……そんなの、ずるい」
「それ以前に、勝手な事を言ってるんじゃない。ここは公平にジャンケンで決めるぞ」
「えー……」
「文句があるなら、オレはパスする」
「うっ……わ、わかりましたよ」
「じゃあ……」
『ジャンケン、ポン!』
………。
と、まあ。そんなこんなで残り2人はアヤトとフェイトに決まったわけだ。
……日頃の行いがいいからだろうなぁ、とは絶対口にしない。
そうこうしているうちに、船はリヴァーナ島の中へ。
「街の中にも海が繋がってるんだな」
「この島は主に小型の船で移動して生活しているんだ、そして……ここは別名『海神の都』と呼ばれているんだ」
「海神の都?」
「なんでも、海の守り神と呼ばれる存在が、大昔にこの島で済んでいた人間達を災いから救ったという伝説があるみたいだよ。
その時から、この島は大いなる海とその中で暮らす守り神を祀るようになった、だからこの島は『海神の都』と呼ばれるようになったらしいんだ」
「詳しいな、サクラ」
「ここに来る前にガイドブックを読んで勉強してきたんだ、ちゃんとみんなを案内できるようにね」
さすがサクラ、こういう気の利いた事で彼女の右に出る者はいない。
それにしても、海の守り神かぁ……。
どんな存在なんだろう、と、ちょっと興味を持った。
「着いたみたいだね、降りてみよう」
サクラの声に全員が頷き、船から降りて島の中へ。
「へぇ……」
周りにはレンガで建てられた家々、所々で流れている水のせせらぎが、心を落ち着かせ耳を楽しませる。
俺達と同じく観光目的の人達なのか、沢山の人達が街の中を歩いていた。
「……いい島だな」
「うん。本当に……」
「それじゃあ、これからみんなはどうしたい?
ポケギアにはこの街の地図と今日泊まる予定のホテルの場所は登録してあるし……もし希望があるなら、わかれて行動するかい?」
サクラの言葉に、暫し思考を巡らせる。
うーむ、のんびり1人で探検するのも悪くないけど……みんなでっていうのも捨てがたい。
「あ、えっと……あの、アヤト」
「? フェイト、どうかしたのか?」
「あ、うん……あのね、わ、私と一緒に島の中を回らない?」
頬を赤く染め、遠慮がちに呟くフェイト。
どうして顔を赤くしているのかは謎だが、どうやらフェイトはアヤトと2人だけで島の中を歩き回りたいらしい。
「じゃあサクラ、俺達は2人で回るか?」
「えっ?」
「グリード……」
「アヤト、それでもいいよな?」
「あ、ああ……別に構わないが」
「決まりだな。それじゃあサクラ、早速行こうぜ」
サクラの手を掴み、急ぎその場を走り去る。
「ちょ、ちょっとグリード!?」
珍しくサクラの慌てたような声が聞こえたが、今は一刻も早くこの場を離れるのが先決だ。
………なんでかは、俺もよくわかんねえけど。
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【???side】
「――そちらはどうだ?例の物は見つけられたのか?」
美しい海神の都、人気の少ない路地裏に1人の女性が歩を進めながら独り言を呟く。
否、それは独り言ではなく通信――ヘッドホンのような機器の通信機で、何者かと話していた。
『いえ。なにぶん島は広く見つけ出すにはもう少し時間が掛かりそうかと』
「急げ。警察が動き出すと厄介だからな」
自分の部下に冷たくそう言い放ち、女性は一方的に通信を切る。
黒のゴーグルを外すと、ようやく女性の容姿を確認する事ができた。
端正な顔立ち、灰色に近い白髪は短く切り揃えられ、見た目だけを言えばかなりの美女だ。
しかし……その瞳に映るのは、獲物は決して逃さないハンターのような鋭い色、冷たい眼差しは心まで凍ってしまいそうだ。
女性は更に人気の少ない場所に移動し、予め用意しておいた船に乗る。
そして、その中に仕込んでいた“仕事用”の道具を手に取った。
と、女性の通信機から僅かな音が。
「なんだ?」
少し苛立ちを含んだ声で女性は通信に応える、しかし——次に放たれる部下の言葉で、女性の表情は僅かに綻んだ。
尤も、それに女性らしさなど微塵もなく……あるのは、新しい獲物を見つけた歓喜の笑み。
『セシル様、この島に妙な反応が……』
「妙な反応?」
『はい。姿形は人間なのですが……これは!?』
「どうした?」
声を荒げる部下に、セシルと呼ばれた女性は訝しげな表情を深めながら言葉を待つ。
『セシル様、ラティアスです!! この島にラティアスが現れました』
「ラティアス……?」
セシルの口から、僅かばかりの驚きを含んだ声が漏れた。
だが無理もない、ラティアスのような珍しいポケモンが、この都に居るという情報は掴んでいなかった。
「間違いないのか?」
『は、はい……どうやら人間に姿を変えているようですが、間違いありません!!』
「そうか。……ならばすぐにワタシへラティアスの居る位置のデータを送れ。
その後は引き続き調査を再開しろ、ラティアスはワタシが捕らえる」
『か、畏まりました』
通信を切り、程なくしてデータが送られてきた。
「フフフ……ワタシは運が良い、この島の宝だけではなく、ラティアスという貴重な商品が手に入るのだからな」
女は笑う、冷たく無慈悲で、不気味な笑みを浮かべ続ける。
そして、船を動かしある場所へと向かう。
――もちろんそこは、ラティアスの居る場所
己が物にする為、我欲を満たす為に、悪魔のような女は行動を開始した。
【???side】out―――
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【ラティアスside】
ラティアスは今、街の中をのんびりと探検していた。
このラティアスは、現在イルミナシティに居るラティアスである。
何故ここに居るのか、それはグリードがここに来る前に彼からこの島に遊びに行くと聞いたからだ。
いい加減あの泉に居るのは退屈になった、しかしグリード達には勝手にウロウロするなと言われている以上、動きようがない。
しかし、彼女は考えた。
――人間になればいいのではないか、と
なんとも短絡的だが、彼女なりに考えた故の行動である。
こうして、そんな結論に達したラティアスは姿を消し、島に着いてから人間へと変化した。
ちなみに、今の彼女はサクラと瓜二つである、知っている人間に変わろうと考えた結果である。
「…………」
しかし困った、人間に変わる為にラティアスは人が居ない場所へと移動したのだが、その際にグリードの姿を見失ってしまったのだ。
そこで、のんびり歩きながら捜すとしようという結論に達し、今に至る。
「………?」
背後から視線を感じ、そちらへと振り向く。
そこには――1人の女性が自分を見つめていた。
「―――――」
おもわず、後ろに後退る。
………危険だ
一目見ただけで、ラティアスは目の前の人間の自分を見る目がどんなものなのか理解する。
下から上を品定めするかのような瞳――それはかつて、自分を捕らえようとした人間と、まったく同じだったのだから。
「――まさか、お前はあのラティアスか?」
「っ」
びくりと、身体が震え上がった。
間違いない、この人間はグリード達と出会う前に自分を捕らえようとした。
「アリアドス、いとをはく」
ラティアスが背中を向けて駆け出すのと、女性がボールを取り出しポケモンを出したのは、ほぼ同時だった。
「ア、リィ——!」
「………っ!!?」
足を取られ、倒れ込む。
それと同時に、全身をアリアドスの糸で絡め捕られてしまった。
「あの時は逃げられたが、人間に姿になっている今なら逃げられんな。
――安心しろ。お前はどこかの名も知らぬ誰かに可愛がられるさ」
女が近づく。
しかし、いくらもがいても糸をまったく断ち切る事ができない。
元に戻りたいが、こうして拘束されている今ではそれも叶わずそのまま……。
「ツタージャ、グラスミキサー!!」
「ア、リィ!?」
アリアドスの横腹を、葉っぱが混じった突風が撃ち込まれる。
「誰だ?」
眉を潜めながら、女は攻撃が放たれた方向へと身体を向ける。
「ツタージャ、リーフブレードで糸を切るんだ!」
「タージャ!!」
一閃、ツタージャが右腕で放ったリーフブレードは、ラティアスを拘束していた糸を断ち切る。
――そこで、ラティアスはようやく気づく
このツタージャは、自分が捜してたあの人のツタージャだと。
【ラティアスside】out―――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「――君も、なかなか気が利くんだね」
「何が?」
「フェイトとアヤトを2人っきりにした事だよ」
アヤト達と別れたら、いきなりサクラにそんな事を言われた。
「だって、フェイトはアヤトと2人だけで街の中を歩きたかったんだろ?
なら2人だけにしてやるのは当然じゃねえか、なんでかはわからねえけど」
「………なる程、50点だね。それじゃあ」
「何の点数だ?」
そう訊くが、気にしないでいいよと軽く返されてしまった。そういう言い方だと、余計に気になるんだけどなぁ。
「……ところで、さ」
「?」
「今の僕達は……周りから見ると、どんな関係に見えるかな?」
何かを期待するような眼差しを向けながら、サクラはそんな問いかけを俺にぶつける。
どんな関係って……意味がわからん。
「友達? 兄弟? それとも……恋人同士?」
「恋人同士って……そんなのありえないだろ」
「……それは、僕が端から見ると男の子にしか見えないから?」
「違うよ。ってかお前は女だろ? そうじゃなくて、俺とお前じゃ釣り合うわけねえよ」
かたや美少女、かたや平均的な男。
せいぜい友達にしか見えないだろう、それに恋人同士に見られたらサクラの迷惑になる。
「僕はそんな事ないと思うよ? 君はとても魅力的だ、本当に」
「ばっ、な、何言ってんだよお前は……」
真顔でそんな事言われたら、照れるだろうが。
自分でも顔が赤くなっているのがわかる、けれどサクラはそんな俺にその端正な顔を近づかせた。
「今まで出会ってきた男の人で、君みたいなタイプは本当に初めてだ。
僕に対しても自然体を崩さず、対等に話したり意見したりする。
自分で言うとイヤミにしか聞こえないから申し訳ないんだけど、家柄が家柄だから僕に近づく人は下心がある人が殆どだったんだよ?」
「そんなの、仕方ねえだろ……立場が立場だから、それを利用する輩が集まっちまうのは……」
……俺だって、そういう輩は嫌って言うほど見てきたから、よくわかる。
「そうだね。だから僕は嬉しいんだよ、君のような存在が僕の前に居てくれているから。
――グリード、今までありがとう。そしてこれからもよろしくね?」
「………別に、礼を言われる事はしてねーよ」
綺麗な笑みを見せられ、おもわず視線を逸らしてしまう。
こいつ……自分の容姿を自覚してないんじゃねえか?
「? グリード、どうかしたの?」
ちょこんと首を傾げるサクラに、なんでもないと返しながら赤くなった顔を冷ます。
お、俺は何を意識してるんだよ……サクラと俺は友達なんだぞ?
あーうー、と訳の分からない呻き声を漏らしながら、俺は自分自身に対して混乱していると。
―――
「――――」
鼓動が、うるさいくらいに鳴り響く。
これは警鐘、危険を知らせるシグナル。
どうしてそんなものを感じるのかは知らない、理由だってわからない。
けれど、急がねばならないという本能に従わなければ、取り返しのつかない事態になると理解して―――
「グリード!?」
俺の名を驚愕の色を含んだ声で呼ぶサクラを尻目に、その場から駆け出していた。
急げ、急げ、急げ……!
自分の身体に何が起きているかは知らない、この警鐘が何を意味するかはわからない。
でも、ただただ俺は走って走って走り続けた。
この街の地理など知らないのに、“そこ”へ向かう為に無我夢中で走り続けて……。
「あの時は逃げられたが、人間に姿になっている今なら逃げられんな。
――安心しろ。お前はどこかの名も知らぬ誰かに可愛がられるさ」
そんな声が、前方から聞こえてくると同時に、俺はモンスターボールを手に取っていた。
――視線の先に、ある光景が映る
それは、1人の少女がアリアドスの糸で拘束されて、反対側に居る女がその子を捕まえようとしている光景。
それを見た瞬間、俺はすぐさま次の行動へと移った。
「ツタージャ、グラスミキサー!!」
ボールを投げ、中からツタージャが出てくると同時に指示を出す。
「ター、ジャ!!」
放たれるグラスミキサーは、アリアドスの横腹に突き刺さり相手の動きを止める。
「誰だ?」
「ツタージャ、リーフブレードで糸を切るんだ!」
「タージャ!!」
右腕によるリーフブレードを一閃、少女を拘束していた糸を寸断させた。
すかさず、少女を守るように前に出て相手を睨む。
「お前、何をしているんだ!!」
「…………」
相手の女は答えない。
代わりに、凄まじいまでの威圧感と殺意を俺に向けてきた。
それに怯みそうになってしまうが、自身を奮い立たせて声を荒げる。
「答えろ、いきなり何してんだよ!!」
「……ヘルガー、かえんほうしゃ」
「ガァァァァッ!!」
別のボールを出し、中からヘルガーが現れ俺達に向かって炎を吐き出した。
「ミロカロス、ハイドロポンプ!!」
数瞬対処が遅れたが、ミロカロスの入ったボールを投げ指示を出すと同時に、ツタージャを抱きかかえ庇うように背を向けた。
「ミ、ロォォォッ!!」
既に眼前にまで迫っていた炎を、間一髪ハイドロポンプで相殺するミロカロス。
「ツタージャ、大丈夫か?」
「タジャ……」
鳴きながらこくんと頷きを返すツタージャ、どうやらダメージはないみたいだ。
「ほぅ……なかなか美しいミロカロスだな、取るに足らないトレーナーかと思ったが、それなりに優秀な育て方ができるらしい」
「テメェ、いきなり何しやがる!!」
「お前が仕事の邪魔をするからだ、さっさとこの場を去れば見逃してやらん事もない。
そのミロカロスも需要がありそうだが、それよりも今はそのラティアスを捕らえる事が先決だからな」
「ラティアス!?」
俺のすぐ後ろで縮こまってる少女……。
っていうか、この子サクラに瓜二つだ!!
「その人間はラティアスが化けている、ワタシはこいつを捕まえるのに忙しいんだ。わかったら、さっさと消えろ」
「…………っ」
ふざけんな。
事情はよくわかんないし、このサクラそっくりの女の子がラティアスかどうかも、正直信じられない。
でも……ポケモンを無理矢理捕まえようとするのは、絶対に許せなかった。
そして同時に、俺はこの女の正体にも気がつく。
「……お前、ポケモンハンターだな?」
「ほぅ……お前のような子供にも知れ渡っているとは、ワタシも有名になったものだ」
「勘違いすんな。お前みたいな最低野郎を……前に見た事があるってだけだ」
「………小僧。あまり調子に乗るなよ? ワタシはすぐに消えろと言っているのだぞ?」
「…………」
俺は答えない、というかもう一言だって目の前の奴と話したくなかった。
ポケモンを道具のようにしか思わず、商品にして売りつけるポケモンハンター。
それは………俺がこの世で一番嫌いな存在だ!!!
「―――目障りだな」
つまらなげに、冷たく吐き捨てると、ハンターは己がポケモン達に指示を出す。
「ヘルガー、かえんほうしゃ。アリアドス、ヘドロばくだん」
「ルガァァァァッ!!」
「アリィィィッ!!」
「っ」
来る。
そう理解した瞬間、俺もポケモン達に攻撃の指示を出そうとして。
「ドレディア、エナジーボール。リザードン、かえんほうしゃ」
突如として現れた第三者によって、アリアドス達の攻撃は完全に相殺された。
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクバード】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・たいあたり ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・たいあたり ・でんこうせっか ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん ・つばさでうつ ・れいとうビーム
・へびにらみ ・つばめがえし
・リーフストーム ・ブレイブバード(未完成)
・リーフブレード二段斬り
【キバゴ】♂
【使えるわざ】
・ダブルチョップ
・シャドークロー
・りゅうのいかり
・ドラゴンクロー