観光を楽しんでいると、この島のミヨという女性に夕食をご馳走してもらう事になった。
よっしゃ、腹一杯食うぞ〜!!
「さあさあ、すんごいご馳走ってわけじゃないけど、食べて!」
彼女の家に招待された俺達。
彼女が作ってくれた料理は、この島に伝わる郷土料理。
なんでも、きのみをふんだんに使用するという一風変わった料理だ。
「ごめんな。ツタージャ達のメシまで用意してもらって……」
「いいよいいよ。それに色々な地方のポケモンが見れて、あたしも嬉しいし」
「これ……美味しいね」
「ありがとフェイト、喜んでくれてあたしも嬉しいよ」
「ツタージャ、美味いな」
「タージャ」
頷きながら黙々と料理を食べるツタージャ、そんなに美味いのか。
「それにしても……グリードはポケモンに好かれる才能があるみたいだね」
「えっ?」
「自分のポケモン達だけでなく、友達のポケモン達にまですごく好かれてる。端から見てるとよくわかるよ」
「そう、かな?」
「キルキル〜♪」
その通り、と言わんばかりの笑みを浮かべ、キルリアが俺に近寄ってきた。
「タジャ、タージャ!」
「キル、キルル!!」
「おいコラ、喧嘩すんじゃないの!!」
「あははっ、随分好かれてるんだね!」
「ディア〜……」
「…………」
「ドレディアにティアまで……」
「モテモテじゃないか、女の子にもポケモンにもさ」
「はは……」
正確にはティアは人間じゃないんだけど……否定する気力はない。
ツタージャとキルリアは相変わらず喧嘩してるし。
ドレディアとティアは俺の服を掴んだまま放さないし。
他のみんなはそんな俺を楽しそうに眺めるだけで助けてくれないし……。
「でも、その好意にはちゃんと感謝しないとダメだよ?
人間にしてもポケモンにしても、一途に自分を想ってくれる感情には、きちんと応えてやらないとね」
「…………」
ツタージャもキルリアも、ドレディアもティアも。
他のポケモン達も、純粋な好意を俺に対して抱いている。
どうして俺なんかを、そう思うが……事実としてみんな俺を好きでいてくれてるなら。
ミヨの言う通り、ちゃんと応えてやらないといけないな。
「それと、そこのアンタも恨めしい視線を送るだけじゃなくて、きちんと行動に移らなきゃ、相手は気づいてくれないよ?」
「っ」
ミヨの言葉に、身体をびくりと震わせるサクラ。
それを見て、ミヨは満足そうに笑うのだった。
「――それにしても、今日は何だか島全体が騒がしいね」
「…………」
何かあったんだろうかねぇ、なんて呟くミヨに、俺達は揃って微妙な表情を浮かべてしまう。
――ポケモンハンターのセシルが、この島の秘宝を狙っているんだ
そんな事を軽々しく言えるはずもなく、適当に相槌を打つ事しかできない。
「…………?」
「………ティア?」
顔を上げ、突然席を立ち窓際に向かうティア。
どうしたんだ、そう訪ねようとしたが。
「……タジャ?」
ツタージャの何かに気づいたような声を皮切りに、ポケモン達が僅かに騒ぎ出す。
「みんな、どうしたの?」
「なんだか様子がおかしいな……」
「…………」
外を見るが、何もおかしなものは見つからない。
けど、ポケモン達は俺達人間にはわからない何かを感じ取ったのかもしれない。
危険察知能力……所謂第六感というやつも、ポケモンの方が人間より優れていると聞いた事があるし。
「っ!?」
「えっ………!?」
息を呑む音、それがティアの口から放たれた事に気づいた瞬間。
「お、おいティア!?」
ティアは、いきなりミヨの家から飛び出していってしまう。
慌てて追いかけるために俺も外に出たが。
「クォォゥッ!!」
「うわっ!?」
突風が吹き、おもわず後ろに倒れ込んでしまった。
すぐさま起き上がり……ティアが、ポケモンの姿に戻り空へ飛び立ってしまう光景を視界に入れる。
あいつ……何を!?
「ティアーーーッ!!」
名を呼ぶが、もはや彼女には届かない。
くそっ……一体何がどうなってやがるんだ!!
「みんな、ティアが飛んで行っちまった!!」
「ええっ!?」
「何だと……!?」
「飛んでいった?」
「すぐに追いかけないと、みんな戻れ!!」
モンスターボールにポケモン達を戻し、ホルダーに装着してからすぐに家を出た。
「タジャタジャ!!」
追いつき、俺の肩に乗るツタージャがどうしたんだと鳴き叫ぶ。
「ティアを1人にしておくわけにはいかない、あいつはまだセシルに狙われてんだから!!」
ティアだってそれはわかってるはずなのに、どうしてこんな事……。
とにかく、今はあの子を追いかける事だけを考えるしかない。
思考を切り替え、俺は再び走るスピードを速めたのだった。
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【ティアside】
初めは、気のせいだと思っていた。
しかし、全身を覆い尽くすような正体不明の違和感は、ラティアス――ティアの思考にあるものを植え付ける。
それは、“警鐘”。
行かねばならないという脅迫観念に突き動かされ、気がついたら人目も気にせず元の姿に戻り、夜の街を飛翔していた。
向かう先は、この街の中心部にある大聖堂。
あの中から、ティアに向けて警鐘を鳴らす存在が在る。
相手の正体はわからない、意図だって不明だ。
だがそれでも、ティアは行かねばならないと思ったのだ。
――彼には、約束を破った事を謝らないと
罪悪感を胸に抱きながら、ティアはひたすらに大聖堂へと向かう。
だが、平和であるはずのこの島で、イレギュラーな存在が居る事を、彼女は再び思い知った。
「ダー、テン!!」
「クォゥゥゥッ!!?」
謎の声と、背中に襲いかかる衝撃は、ほぼ同時。
そのまま墜落してしまいそうになるがなんとか堪え、ティアは自分に襲いかかった存在を確認する。
まるで天狗のような出で立ちのそれは、ダーテングと呼ばれるポケモン。
あれが放った風が、自分を襲った衝撃の正体だとティアは気づく。
「ダーテンッ!!」
口から放たれる無数の光弾は、ダーテングのタネマシンガン。
それを回避しながら、ティアは大聖堂へと向け再び移動する。
……戦いたくはない。
自分に襲いかかってきているとはいえ、ティアはダーテングと戦う意志は抱かなかった。
それよりも、今は大聖堂に―――
「ダー、テン!!」
ダーテングが両手に持つ団扇のような葉から、はっぱカッターが放たれる。
それを右へ左へ移動しながら、ティアは回避していく。
しかし……それはあくまでも囮である事に彼女が気づくには、数秒足りなかった。
「ダァァァァ……テングァァッ!!!」
「クゥゥゥッ!!?」
ダーテングのソーラービームが、ティアに突き刺さり失速し地面へ墜落していく。
そこに彼女を包み込む網が放たれ……ティアは抗う事もできずに捕らわれてしまった。
「クォォォゥゥッ!?」
瞬間、凄まじい電撃がティアの意識を容赦なく刈り取っていく。
――これは、獲物を捕らえた瞬間に電撃を放ち捕獲する電磁ネット
「クゥゥ………」
ダーテングのソーラービームをまともに受け、さらに電撃を受けたティアは、もう意識を保つ事ができず。
「手こずらせてくれたが、ここまでだ」
そんな悪魔の声を聞きつつ、ティアの意識は闇へと堕ちた……。
【ティアside】out―――
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「は――は、あ―はっ………!」
走る走る走る………!
ティアがどこに向かったのかは知らない、今は飛んでいった方向だけを頼りに地を蹴っていた。
「止まれ、グリード!」
「っ」
叫ぶ声に、おもわず足を止めた。
「落ち着けグリード、冷静になるんだ!!」
振り向くと、俺に追いついたアヤトが肩を掴み動きを封じる。
「でも、ティアが……あいつはまだセシルに狙われてるんだぞ!?」
「だからといって、闇雲に捜した所で見つかるはずがないだろう!!」
「じゃあどうしろって言うんだよ!!アヤト、お前には何かいい案が――」
「落ち着いて!!」
『……………っ』
絞り出すように叫んだフェイトの声で、俺達は言い争いを止めた。
そうだ、今はアヤトの言う通り冷静にならなきゃいけないのに……。
「……アヤト、ごめんな」
「構わない。お前の気持ちは痛いほどわかる」
「話は走ってる最中に聞いたけど、ティアがラティアスだっていうのは本当かい?」
「ああ。でも……どうしていきなり」
考えろ、冷静になって考えるんだ。
ティアは何の理由もなしにあんな事をするような子じゃない、何か理由があったからこそ飛び出していったんだ。
それに、あの時浮かべていた表情。
あれは、誰かに呼ばれているような……自分でも無意識下で行った行動のような気がする。
だとしたら何故? ティアにしかわからない何かを感じ取った……?
何か……不思議な、力。
………不思議な力?
「―――まさか」
けど、この島で考えられるのは……。
「ミヨ、『ルギアの涙』ってただの鉱石なのか?」
「えっ、いきなりなんだい?」
「大事なことなんだ、答えてくれ」
「そうだね……今まで不思議な力が発揮されたなんて話は聞いてないけど、あの鉱石には何かしらのエネルギーがあるらしいよ。
尤も、それが何なのか専門家でもわからなかったみたいだけどねぇ」
「…………」
だとすると、可能性として考えられる。
「……大聖堂に行こう」
「大聖堂?」
「ティアは、『ルギアの涙』に呼ばれたんじゃないか?」
「……どうして、そう思えるんだい?」
「『ルギアの涙』には何かしらのエネルギーがあるとミヨは言った。
多分それは人間には感じ取れないもので、でもラティアスであるティアには感じ取れた。
それにあの慌てよう……『ルギアの涙』が自身に対する危険をティアに知らせたんじゃないかな?」
その鉱石に意志があるとは信じられないし、確証だってあるわけない。
でも……ティアが飛んでいった方向は、大聖堂の方だったはずだ。
「なる程な……たしかに一理ある考えだ」
「考えられる可能性がこれしかない今は、大聖堂に――」
「待った」
「っ、なんだよサクラ、どうして……」
「止める訳じゃないよ、ただ――まずは邪魔者をどうにかしてからだ」
そう言って、上空を指差すサクラ。
俺達は揃って視線を上に向けると……そこには、こちらにまっすぐ向かってくる影が。
「あれは……!?」
恐竜のような鋭い顎、岩のような色の身体。
間違いない、あれは古代に存在したポケモン。
「プテラ、だと!?」
「どうしてプテラが、ここに……」
「考えてる暇はなさそうだ、あれは僕達に敵意を向けてる!!」
「くっ……ミロカロス、君に決めた!!」
「―――ミィッ!!!」
川に向かってボールを投げ、水上に現れるミロカロス。
「ハイドロポンプ!!」
「ミロォォォッ!!」
空中から向かってくるプテラに、水流を叩き込む。
だが、二度三度と放ってもプテラは素早く攻撃を回避し。
「ギャギャァァッ!!」
口から、特大のはかいこうせんを撃ち放つ!!
「ミィィィッ!?」
それはミロカロスへと命中し、水面を爆発させ水柱を上げさせた。
「ミロカロス!!」
「ミ、ミィ……」
まだ倒れはしないものの、かなりのダメージを負ってしまった。
「リザードン、僕に力を貸してくれ!!」
「――グォォォン!!」
サクラのボールから出ると同時に、飛翔しプテラの背後に回り込むリザードン。
「りゅうのいぶき!」
「ガァァァァッ!!」
エメラルド色の、不思議な息吹がプテラの背中に突き刺さる。
「ギャギャ……」
ダメージが大きかったのか、そのまま墜落していくプテラに。
「エレブー、バトルスタンバイ!!」
「レントラー、お願い!」
アヤトとフェイトの追撃が入る――!
「レントラー、エレブーに10まんボルト!!」
「レントォォォッ!!」
「えっ!?」
どうして味方のエレブーに攻撃を……?
「レブゥゥゥッ……!」
レントラーの10まんボルトを、全て右腕に集めその腕をぐるぐると回転させていく。
すると――その電気エネルギーが加速度的に肥大化していき。
「トールハンマー!!」
「レブゥゥァァッ!!」
飛び上がり、電気エネルギーを蓄えた右腕で振り上げ、おもいっきりプテラへと叩き込む!!
「グャァァァァッ!!」
凄まじい電気に包まれ、形容しがたい悲鳴を上げるプテラ。
そのまま地面に墜落し、尚も身体に電気を走らせながら、戦闘不能へ陥った。
「へぇ……コンビネーション技か、凄い威力だね」
隣で、心底感心するような声を漏らすサクラ。
「エレブー、いい動きだった」
「レントラー、どうもありがとう」
エレブーとレントラーをそれぞれボールに戻す2人。
俺もミロカロスをボールに戻すと、前方からバイクを走らせながらジュンサーさんがやってきた。
「あなた達、今外に出るのは危険よ!!」
「ジュンサーさん、一体何が起きてるんだい?」
「いきなりポケモン達が現れて、街中を暴れまわっているの。今どうにか食い止めてる所よ」
「ジュンサーさん、大聖堂の警備は?」
「居るには居るけど、こんな状態だから数が減ってるわ」
「……間違いないね。この騒動はセシルの仕業だ。ポケモン達を囮にして大聖堂の警備を薄くしてから、『ルギアの涙』を盗む気らしい」
「私達もそれはわかっているのだけど、暴れてるポケモン達の対処もしなければならないし……」
「だったら、俺達が大聖堂に行って『ルギアの涙』を守ります!!」
「ええっ!? そんなのダメよ、危険な事はさせられない!」
「今はそんな事を行ってる場合じゃない!! それにセシルには俺の友達が捕まってるかもしれないんだ!!」
「けどダメよ、子供がそんな危険な事に首を突っ込むのは」
「っ、分からず屋だな!そんな事を言っているから、あんた達は罪もないポケモン達を守れないんだ!!
――“あの時”だってそうだったじゃないか!!」
「えっ……?」
「グリード……?」
「ミロカロス、もう一度出てきてくれ!!」
もう埒が明かない、俺はそう判断し再びミロカロスを水上に出す。
すぐさまその背に乗り、指示を出した。
「さっきのバトルでダメージを受けてるけど、大聖堂まで言ってくれるか?」
「ミィ!!」
「ちょっと、君!!」
「ジュンサーさん達はそのままポケモン達の鎮圧をお願いします!! 俺は、このまま大聖堂に!!」
ポケギアを起動し、大聖堂へ一番近い水路を割り出すと同時に、移動を開始した。
……もう御免だ、何の罪もないポケモンを救えないなんて。
今度こそ守るんだ……今度こそ!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【サクラside】
「ああ、もうっ!! どうして次から次へと問題ばかり……」
苛立つジュンサーさん、でも今はそんな事に構ってる暇はない。
「彼は僕が止めます、ジュンサーさんは彼の言ったようにポケモン達の鎮圧を」
「…………わかったわ、お願いね」
まだ迷いがあるものの、ジュンサーさんは別のエリアに移動していった。
……よし。
「僕はこのままグリードを追って『ルギアの涙』を守ろうと思ってる。――君たちは、どうしたい?」
「決まってる。俺も行くさ、グリードが心配なんでな」
「私も行くよ!」
答えは、すぐさま帰ってきた。
その答えを聞いて僕は口元に笑みを浮かべつつ、ボールを手にしてポケモンを場に出した。
「フライゴン、出てくるんだ」
「――ライゴォン!」
「アヤト、フェイト、君達は僕とは違うルートで移動してくれ。
おそらくティアはもうセシルに捕らわれてる可能性が高い、だから僕とグリードはセシルを足止めしているから、君達はフライゴンに乗って直接大聖堂の内部に行ってくれ」
「大聖堂の内部に?」
「セシルには部下が居る、おそらくティアの捕獲はセシルが、そして『ルギアの涙』の奪取は部下が行うだろう。
だから君達には、最悪その部下から『ルギアの涙』を守ってほしい」
本当はそんな危険な事はやらせられない、でも僕だってセシルの相手だけで精一杯だ。
セシルのポケモン達は強い、おそらく僕と同じかそれ以上。
だからこそ、この2人と別行動でそれぞれの目的を果たさなければ、とてもじゃないけど両方を守る事はできない。
「――わかった。いくぞフェイト」
「う、うん!」
「ちょっと待っておくれ、あたしも行くよ」
「ミヨさん?」
「大聖堂の内部を案内するのに役立つはずさ、連れて行って損はないはずさね。
あたしだって、秘宝を守りたいという気持ちはあるんだよ」
「………わかりました、お願いします」
頷きを返し、アヤト達と一緒にフライゴンに乗るミヨさん。
「フライゴン、みんなを守ってやってくれ」
「フラァァッ!」
一声鳴き、大きく飛翔し大聖堂に向かって飛んでいくフライゴン。
……さて、こっちは早くグリードを追わないと。
「リザードン、水路に沿いながら飛んでいくよ」
「グォゥ」
頷き、リザードンも翼を羽ばたかせ水路を飛んでいく。
「…………」
――あの時だってそうだったじゃないか!!
先程グリードの口から放たれた言葉が、頭の中で反復する。
あの時って……一体グリードは何を言っているのだろうか。
……彼の過去に、何があったんだろう。
疑問は尽きず、けれどすぐさま思考を切り替える。
たしかに気になる、けど今考えるべき事はそれじゃない。
グリード、無茶だけはしないで………!
知らず知らずの内に手には力が入り、僕はリザードンと共にグリードの後を追ったのだった。
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクバード】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・たいあたり ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・たいあたり ・でんこうせっか ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん ・つばさでうつ ・れいとうビーム
・へびにらみ ・つばめがえし
・リーフストーム ・ブレイブバード(未完成)
・リーフブレード二段斬り
【キバゴ】♂
【使えるわざ】
・ダブルチョップ
・シャドークロー
・りゅうのいかり
・ドラゴンクロー