って、今回俺は出番なしかよ!!
ちぇ、しょうがねえな。
「あ〜……あ〜……」
「……うっさい、少し静かにしてくれない?」
あたしの傍でうーうー唸るモモカ、鬱陶しい事この上ない。
「う〜、アヤト分が足りませんよ〜……早く帰ってきてくださいよ〜」
「あのねぇ……その台詞何回目だと思ってるの?」
「え〜と……十回くらいですかね?」
「もう数百回よ!! いい加減その鬱陶しいオーラを消しなさい!!」
「えぇ〜? カレンさんだってグリードさんが居なくて寂しいでしょ?」
「……なんでよ」
どうしてそうなるのか、意味がわからない。
なんでグリードが居なくてあたしが寂しがらなきゃ……。
「…………」
ま、まあ……あいつが居なくて静かすぎるのも、嫌だけど。
「フェイトちゃん……今頃アヤトとしっぽりしてたりして……」
「もう少し表現を濁しなさいよ……」
「うぅ、アヤトの貞操は私が奪おうと決めていたのに」
「お願いだから、少し静かにしてて……」
この子、どれだけ自分の欲望に正直なのかしら。
なんて思いながら、あたし達は中庭へと赴く。
と、見知った姿が困り顔を浮かべているのが目に入った。
「あれは……」
「ソラネさん、ですね。どうしたんでしょう?」
不思議そうに首を傾げるモモカ、でも確かに彼女の様子は普通ではない。
気になり、ソラネに近づき声を掛けた。
「ソラネ、どうかしたの?」
「あ……カレン、さん」
「私もいますよー」
「うっ……」
「あのぅ、「うっ」て何ですか?」
「あなたの場合、腹に一物抱えてるから恐がるんでしょうが」
「ガーン、この清楚で可愛らしくて可憐な私がそんな風に……」
「よく自分でそこまで言えるわね、それに清楚で可憐ならそんな卑猥な事は口走らないわよ」
さてと、いい加減この発情魔は放っておく事にしましょう。
「ソラネ、なにかあったの?」
「……それが、ゾロアが怪我をしてしまって」
「ゾロアが?」
「バトルでもしたんですか?」
「バトルというか……いきなり勝負を挑まれて、ゾロアの怪我はもう治したんだけど、その……すっかり落ち込んじゃって」
「なる程……」
ゾロアの姿がないという事は、今はボールの中に居るのだろう。
しかし、腑に落ちないというか……首を傾げてしまう。
「事情はわかったけど、その相手はもう行っちゃったの?」
だとしたら、礼儀のなっていないトレーナーだ。
しかし、次に放ったソラネの言葉で、ある意味で納得できてしまった。
「その……相手はトレーナーじゃなくて、ワカシャモだったの」
「ワカシャモ?」
「ワカシャモって……アチャモの進化系の?」
「う、うん……野生のワカシャモみたいで、私の他にも何人かいきなり勝負を挑まれたみたいで」
「ははぁ、随分と喧嘩っ早い暴れん坊ですね。
それにワカシャモって生息地不明の珍しいポケモンですよね?
いくらイルミナ学園の庭園でも、そんな珍しいポケモンはいなかったはずですけどねぇ」
「外から来た可能性もあるわよ、グリードのミロカロスも外から来たそうだしね」
「ゾロアは暫くすれば大丈夫だと思うけど……これ以上ワカシャモに暴れられるのも」
「そうね……」
確かに、ムウマの時みたいにあちらこちらで騒動を撒き散らされるのは勘弁願いたい。
「よーし、じゃあ私がワカシャモをゲットしてみせます!!」
「…………」
「…………えっ?」
「ちょ、カレンさんどうしてそんな冷たい視線を送るんですか!?
それとソラネさん、その「えっ?」ていうリアクションは何ですか!?」
「いや、その……あたしはまた被害を余計に増やすような事をしそうだなぁと……」
「ぐふっ!!」
「わ、私はその……だ、大丈夫かなぁと思っちゃって……」
「ぐはぁっ!?」
奇声を発しながら倒れ込むモモカ。
どうでもいいけど、ソラネって結構言うわね。
「ひどい……2人共ひどいですよぉ」
「あ、ご、ごめんなさい」
「まあモモカの事はどうでもいいとして」
「酷っ!?」
「ワカシャモをなんとかしないとね」
「ですから、私がゲットしますってば!!」
「できるの!?」
「なんで真顔で驚いたように言うんですか!?
うぅ……そこまで言うなら証明してやります、行きますよ!!」
少しからかいすぎたか、そう言うとモモカは怒ったように行ってしまった。
「あ、あの……」
「気にしなくてもいいわよソラネ、少しはアヤトの事以外に気を向けてもらわないと、あたしが困るわ」
まったく、そんなにアヤトの事が大事なのかしら。
……でも、ああやって一途に誰かを想えるのは、少し羨ましい。
あたしにも、いつかそんな人が……って、話が逸れるからやめよう。
「まったく、どこにいるんですかねぇ……」
辺りをキョロキョロと見回しながら、ワカシャモを捜すモモカ。
ちなみにあたし達は後ろについていくだけ、助けはしない。
「って、カレンさん達も捜してくださいよ!!」
「あなたが捜してみせますって言ったんでしょ? だったら、あなた1人の力でなんとかしてみなさい」
「あれ!? 今日はどうしてそんなにも厳しいんですか!?」
「何言ってるのよ。いつも通りよあたしは」
とは言いつつも、ちょっと可哀想かなぁと思ってしまうあたし。
けど、毎日毎日モモカからアヤトやフェイトに対する愚痴や欲求不満を聞かされてはこれくらいの意地悪は許容してもらわないと。
しょぼーんと肩を落とすモモカ、そんな彼女を見ながら苦笑を浮かべるソラネだけど、助けたりしない。
「ん……?」
あっ、居た。
歩き続けて上の学年の教室がある四階まで来てしまったけど、その甲斐があってかワカシャモを見つける事ができた。
「ワカシャモ、見ーつけた!!」
「シャモ?」
モモカの声に反応し、ワカシャモがこちらへと振り向く。
「ワカシャモ、ゲットさせてもらいますよ! フタチマル、お願いします!!」
「――タチッ!!」
「シャモ、シャァモ」
フタチマルの姿を確認すると、ワカシャモはニヤリと笑いかかってこいとばかりに腕をくいくいと動かす。
どうやら、本当に血気盛んなポケモンらしい。
「なら遠慮なくいかせてもらいますよ、フタチマル、シェルブレード!」
「フタチッ!!」
2つのホタチを手に取り、踏み込むフタチマル。
と、同時にワカシャモも右腕で拳を作りフタチマルへと向かっていく。
「フタ、チィッ!!」
「シャモーッ!!」
シェルブレードとワカシャモの掬い上げるような拳がぶつかり合い、互いに地面を滑りながら後退する。
「今のは、ワカシャモのスカイアッパーです!」
「あのワカシャモなかなかやるわね……モモカ、相性で有利だからって油断しちゃダメよ」
「わかってますよ。フタチマル、みずでっぽう!」
「チマーッ!!」
「シャァモーッ!!」
今度はほのおのうずで、フタチマルのみずでっぽうを相殺するワカシャモ。
「シャモシャーッ!!」
飛び上がり、フタチマルに向かって蹴りを繰り出す。
あれは……メガトンキックだ!!
「かわして!!」
「チマッ!」
横にジャンプし、攻撃を回避するフタチマル。
ワカシャモの蹴りが地面に穴を開ける、凄い威力ね……。
これはなかなか見応えのあるバトルね、そう思っていたら。
「うるさいわね、廊下で何騒いでるのよ!!」
すぐ近くの教室の扉が開き、アリアが怒鳴りながら外に出てきた。
ってバカ、今出てきたら危ない―――
「シャモーッ!」
「へっ―――んきゃぁぁぁぁぁっ!?」
怒鳴られた事に対してなのか、それとも勝負を邪魔された事に対してなのかはわからないが、現れたアリアにほのおのうずをお見舞いするワカシャモ。
「フタチマル、アリアさんにみずでっぽう!」
「チマーッ!」
すぐさまみずでっぽうで消化する、それと同時にあたし達は彼女に駆け寄った。
「ちょっと、大丈……ぶふっ!!」
おもわず吹き出してしまう、だって……。
「ぷっ……な、なんですかその髪の毛……」
「…………」
ソラネは何も言わないが、身体をプルプルと震わせてる辺り、必死で笑いを堪えているのがよくわかった。
でもまあ仕方ない、何故なら……ワカシャモのほのおのうずを受けて、アリアの髪の毛が見事に縮れ毛になってしまったからだ。
「あーっ!? アリアの髪が!!」
「ププッ……!」
あっ、ソラネ我慢ができなくなって笑っちゃった。
「シャーモシャモシャモ!!」
元凶であるワカシャモも、腹を抱えて笑い転げている。
「…………」
ぷちん、と。
なにやら、切れてはいけないものが切れてしまったような音が聞こえたような気がした。
「カメックス、出てきて今すぐに!!」
「ガメーッ!!」
「ちょ、ちょっとアリアさん落ち着いてくださいよ。あのワカシャモとバトルしてるのは私なんですから!!」
「うっさい!! 乙女の髪をこんなんにしてどうなるのか、思い知らせてやるんだから!! カメックス、ハイドロカノン!!」
「ガメーッ!!」
背中のキャノン砲から、凄まじい水圧を誇る水の一撃が繰り出される。
「シャモ!?」
笑っていたワカシャモから笑みが消え、慌てて回避する。
直撃は免れたものの、ズドンッというありえない音が響き、ワカシャモの近くの地面にクレーターができてしまった。
「シャモー……」
あまりの威力に、ワカシャモの身体が固まってしまう。
「フタチマル、シェルブレード!!」
「チマーッ!!」
茫然としているワカシャモに奇襲を仕掛けるモモカ達。
ちょっと卑怯かもしれないけど、確かにバトルをしてた相手はモモカ達なんだから、余所見をする方が悪いわね。
「シャモーッ!?」
完全にフタチマルの事なんて忘れていたワカシャモに回避などできるわけもなく、効果抜群の技をまともに受け倒れてしまう。
「くっくっく……トドメじゃーい!!」
まずい、完全に我を忘れてる!!
「カメックス、最大パワーでハイドロポンプ!!」
「ガメーッ!!」
「モモカ、早くモンスターボールを!!」
「そ、そうですね。お、お願いしますモンスターボール!!」
カメックスがハイドロポンプを発射する前に、モモカはモンスターボールを投げつける。
そのおかげか、間一髪でワカシャモはボールの中へと入っていった。
「あーっ、ちょっと何してるのよ!!」
「それはこっちの台詞ですよアリアさん!! ワカシャモをゲットしようとしてるのに、邪魔しないでください!!」
「あのワカシャモがアリアの髪をこんなんにしちゃったからでしょ!?」
「それは…ぶふっ、そうですけど……ぶはっ!」
「……アンタ、アリアに喧嘩売ってるの?」
そういうつもりは毛頭なさそうだが、バッフロンみたいな頭になっているから、無理ないかもしれない。
というか、何をどうしたらあんな髪型に変形してしまうのか、甚だ疑問である。
「……モモカ、ゲット終わってるわよ」
「へっ?」
もうモンスターボールは揺れない、すなわちワカシャモをゲットした事になるのだけど……。
なんだろう、この感動的な要素ゼロのゲットは、なんだか悲しくなってくるわね。
「……ワカシャモ、ゲットです!!」
気を取り直してそう叫ぶモモカだが、今更感全開の為まったくもって感動できない。
「お、おめでとう……」
ソラネに至っては、形だけの祝福を送る始末。
「……モモカ、ワカシャモ出しなさい」
「な、なんでですか?」
「決まってるじゃない、アリアの髪をこんなにしたあいつに、お仕置きする為よ」
そう告げてニヤリと笑うアリア、しかしその笑みは正直不気味だ。
「その顔は、お仕置きレベルで済ませない顔でしょう!?」
「ええいうるさい! いいからさっさとワカシャモを渡しなさいよ!!」
「あーん、カレンさんソラネさん助けてー!」
「じゃあ、後は頑張ってね」
「あはは……」
「助けてくれないんですか!?」
「無理」
「ごめんなさい」
「即答!?」
だってしょうがないじゃない、今のアリアには関わらない方が安全なんだから。
「ひぇ〜ん、お二人の裏切り者ー!!」
「待てーっ!!」
全速力でその場から逃げ出すモモカ、それを追いかけるアリア。
……ふぅ、ようやく静かになった。
「もぅ……元はといえばグリード達がさっさと帰ってこないから、あたしが疲れる羽目になるのよね」
責任転嫁だと自分でもわかっているが、それだけ苦労してると思っていただきたい。
「……グリードくん、早く帰ってこないかな」
「…………」
寂しそうに呟くソラネ、この子もしかして……。
「ソラネって、グリードの事好きなの?」
「えっ!?」
凄まじいまでのうろたえぶり、判りやすいわねこの子。
「そ、その……グリードくんは、憧れというか…尊敬してる人で」
「尊敬……」
グリードを尊敬するなんて、変わってるわね。
まあ、悪い奴ではないしむしろお人好しだけど、尊敬するような人かしら?
「……そういうカレンさんは、どうなの?」
「何が?」
「グリードくんの事……好き?」
「…………」
友達としてなら、好きの部類ね。
予め用意しておいた返事が、喉元で止まってしまった。
……ちょっと待って、なんで否定しないのよ。
あいつは友達、あたしの大事な……友達じゃない。
それなのに、どうして否定が……。
「? カレンさん、どうかした?」
「………なんでもない」
……胸に痛みが走る。
否定しようとすると、正体不明の痛みに襲われてしまう。
この気持ちは……でも、そんな事あるわけない。
グリードは友達、それ以上でも以下でもないんだから。
そうよ……そんなの、当たり前じゃない。
――当たり前、なんだから
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクバード】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・たいあたり ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・たいあたり ・でんこうせっか ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん ・つばさでうつ ・れいとうビーム
・へびにらみ ・つばめがえし
・リーフストーム ・ブレイブバード(未完成)
・リーフブレード二段斬り
【キバゴ】♂ 【コジョンド】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】
・ダブルチョップ ・みきり
・シャドークロー ・はっけい
・りゅうのいかり ・とびひざげり
・ドラゴンクロー ・はどうだん