グリードくんのイルミナ学園奮闘日誌【完結】   作:マイマイ

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これはちょっと不思議な出会い。

本来ならありえない、けれど出会うべくして出会う物語……。

……なんてかっこつけたけど、そんな大層なものかな?

まあいいや、とにかく今日はいつもとは違う日常になりそうだぜ!


第35話 〜不思議な出会い、グリードとフィル〜1

「おっ……?」

ティアに会いに行こうと、森の中を歩いている途中で、俺はあるポケモンを視界に入れる。

この森の中には野生のポケモンが沢山居るんだから、別段珍しいわけではない。だが……俺の視界の前に現れたポケモンはなんとツタージャだった。

ツタージャはホウエンには居ないポケモンだ、なのになんで……。

不思議に思いつつ、とりあえず近づいて声を掛けた。

 

「なぁ」

「………っ」

途端に身体をびくりと震わせ、俺を見上げるツタージャ。

恐がらせないようにしゃがみ込み、目線を合わせてからできるだけ警戒されないよう口調を柔らかくして言葉を続けた。

 

「お前、トレーナーとはぐれたのか?」

野生のツタージャがこんな所に居るとは考えにくい、まあ俺のツタージャは例外だけど。

俺の問いかけにキョトンとしながらも、こくりと首を縦に振った。

「じゃあ、俺が一緒に捜してやろうか?」

どうせこれからティアの所に遊びに行こうとしていたのだ、人助けならぬポケモン助けをしたって罰は当たるまい。

ツタージャは暫し考える素振り、うーむ……やっぱり警戒するよな普通。

風が吹き、周りの葉がカサカサと音を出し、その音が収まると同時に、ツタージャはこくりと頷いた。

どうやら少しは信用してくれているようだ、嬉しくなってツタージャを抱きかかえた。

 

「タジャ!?」

「ああ、ごめんごめん。俺もツタージャを手持ちに加えてて、こうすると喜ぶからさ」

そういえばツタージャの奴、さっさとティアの所に行っちまいやがって、薄情だよな。

と思いつつ、俺は迷子のツタージャを抱えつつ泉に向かった。

本当ならすぐに街へ行ってこの子のトレーナーを捜すべきなんだけど、俺はそのトレーナーの特徴を知らない。

それでは捜しようがないし、ツタージャに訊こうにもポケモンの言葉はわからない。

だけど、あいつならこの問題を解決してくれるはずだ。

 

「………♪」

「タジャ」

足を踏み入れた瞬間、穏やかで優しい空気が頬を撫でる。

泉に到着すると、そこには先に行っていた俺のツタージャと、人間形態のティアの姿が。

「………?」

俺に抱きかかえられているツタージャを見て、俺のツタージャが首を傾げた。

……気のせいか、睨んでいるような気が。

 

「ティア、この子トレーナーとはぐれちゃったんだ、話を聞いてあげてくれないか?」

「………(こくこく)」

「ツタージャ、この子はティアって言ってお前と同じポケモンなんだ」

俺の言葉にツタージャは驚き、じっとティアを見つめている。

ティアはそんなツタージャにニコニコと笑みを返していた。

ツタージャを降ろし、肩からさげていたバッグを開いて、紙とペンを取り出しティアに渡す。

何をするのかというと、ティアに字を書いてもらうのだ。

 

説明は不要かもしれないが、ティアはラティアスというポケモンだ。故に他のポケモンの言葉が理解できる。

しかし人間形態の彼女は何故か喋られない、だから紙に字を書いてもらってツタージャの言葉を翻訳してもらおうというわけだ。

「それじゃあツタージャ、ティアに状況を説明してやってくれ」

本当に大丈夫なのか、そんな表情を浮かべながらも、やがてジェスチャーを加えながらティアに説明を始めるツタージャ。

それをこくこくと頷きながら、ティアは紙にペンを走らせる。

端から見るとちょっとおかしな光景だが、致し方ない。

……それより、どうして俺のツタージャはさっきから俺の足をペチペチと叩いているのだろう。

なにやら不機嫌そうなのはわかるが、どうして彼女が怒っているのかはわからなかった。

 

「…………」

理不尽な暴力を暫く受けていると、聞き終えたのかティアが紙を俺に手渡してきた。

それに目を通すと……ようやく事情を理解する事ができた。

まず、このツタージャの名前はハル、俺のツタージャと同じメス。

トレーナーの名前はフィルといって、この街には観光目的で来たとの事。

しかし、フィルが勝手に居なくなって……って、これ明らかに逆だよな。

なんとなくだけど、トレーナーがはぐれたんじゃなくて、ハルがはぐれたんだと思う。

ともあれ、事情はわかった。

 

「ハル、フィルって奴の特徴は?」

尋ねると、再びジェスチャーを加えながらティアに説明するハル。

それを書き留めた紙を手渡すティア、早速中身を見てみると……。

たれ目で黒の短髪、背はあまり高くなく服装はジーンズに白の七分袖の服を着ている、か。

……そこまではいいけど、情けない雰囲気を醸し出してるって……特徴というより単なる悪口じゃないか?

まあいいや、特徴もわかったし早速探しに行くとしよう。

 

「ツタージャ、ハル。いくぞー」

『タージャ』

同時に頷き、ツタージャは俺の胸に飛び込み、ハルは俺の少し後ろをチョロチョロとついてくる。

……もしかしてツタージャ、お前ハルにヤキモチ妬いてたのか?

そう思ったが訊いたら怒られそうなので、俺は黙って街へ向かう事に。

 

「ティア、お前も来るか?」

「………(こくこく)」

当然ですとでも言いたげに頷き、俺の隣に立ち手を差し伸べるティア。

俺、今ツタージャを抱えてるんだけど……手を繋げと。

「しょうがねえな……」

ツタージャは左腕だけで抱きかかえ、余った右手でティアの手を握りしめる。

 

「………♪」

おーおー、嬉しそうにしちゃってまあ。

何が気に入ったのかは知らないが、ティアはやたらと俺と手を繋ぎたがるのだ。

子供っぽいティアに苦笑しながらも、俺は街へ向かって歩を進めたのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

【フィルside】

 

〈うぅ……心配です、心配です〉

イルミナシティにある4つのポケモンセンターの1つで、一体のルカリオが落ちつきなくうろうろしていた。

その光景を一体のポケモンは呆れながら、1人の青年は苦笑しながら声を掛ける。

 

〈落ち着けよリコ、ってか鬱陶しい〉

そう言ったのは、サーナイトというポケモン、名前はトナ。

人間の女性のような美しい容姿だが、彼はれっきとしたオスである。

ソファーに座り両手を組んで頭に乗せ、足を組んでだらけているその姿は人間くさい。

「鬱陶しいは言い過ぎだけど、ハルはしっかりしてるし大丈夫だよ。少し休んだらまた捜しに行けばいいさ」

そう言ったのは、苦笑していた青年――名はフィルという。

ややたれ目ながらも、その瞳に宿すのは他人を慈しむ事ができる優しい色。

 

〈何を言っているんですかフィル、トナ!! ハルはあんなに可愛いんですよ!?〉

〈いや、可愛いからって何なんだよ?〉

〈考えてもみなさいトナ、あんなに愛くるしいハルは今一人ぼっち……つまり、よからぬ考えを持つ者達に狙われてもおかしくないじゃない!!〉

〈あのなぁ……考えすぎだっての〉

こいつ、こんなキャラだったっけ。頭を抱えながら「あ〜、ハル〜」と嘆いているリコを見て、トナは心底呆れかえっていた。

とは思いつつ、トナも心配しているのか少しだけ様子がいつもと違っている。

 

「じゃあ――」

そろそろ行こうか、落ち着きのないリコにそう告げ、立ち上がろうとした瞬間。

『フィル様。ポケモントレーナーのフィル様、いらっしゃいましたら受付カウンターの方までお越しください』

自分を呼ぶアナウンスがセンター内に響き渡り、どうして呼ばれたのかわからないフィルは、トナ達と顔を見合わせ揃って首を傾げたのだった。

 

【フィルside】out―――

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「――すみません、ジョーイさん」

イルミナシティには全部で4つのポケモンセンターがある、その内の1つに俺達はやってきた。

 

「……タジャ? タジャタジャ」

「…………」

ハルの呟きに、ティアが翻訳しそれを書いた紙を俺に見せてきた。

「何でポケモンセンターに来たのかって? すぐわかるさ。

 ジョーイさん、ちょっと調べてほしい事がありんですけど。他のポケモンセンターにフィルって男性のトレーナーが居るかどうか、訊いてみてくれませんか?」

「フィルさんですね? 少々お待ちくださいね」

お願いしますと言ってから、近くのソファーに座り込んだ。

 

「タジャタジャ」

「お腹すいたって……じゃあ、ポフィンでも食うか?」

同じツタージャだし、ハルも気に入ってくれるだろう、そう思いバッグに入っているポフィンを取り出しハルの前に。

少し訝しげにポフィンを眺め、くんくんと匂いを嗅いでから……恐る恐る口にした。

「――タジャ!」

「…………」

「凄く美味しい、こんな美味しいお菓子初めて食べた、ね……大袈裟だよハル。

 それよかティア、いちいち翻訳しなくてもいいよ……」

ハルが何か話す度にティアは紙にペンを走らせるのだ、ポケモンの言葉がわかるのは嬉しいけど。

 

「グリードさん」

ハル達の頭を撫でていると、ジョーイさんが調べ終わったのか俺達の元へとやってくる。

「先程のフィルさんというトレーナーですが、第2センターに居るみたいです」

「第2センターですね、わかりました」

第2センターは北西にあるポケモンセンターだ、行った事はないけどポケナビもあるしすぐに着くだろう。

ありがとうございますとジョーイさんにお礼を言ってから、ポケモンセンターを後にする。

 

「ハル、もうすぐフィルに会えるからな」

「タージャ」

嬉しそうに鳴くハル、そういえば……フィルってどんな奴なんだろ。

 

…………。

 

「―――ハル!」

〈フィル、トナ、リコ!〉

「よかっ――ぶほっ!?」

ハルに駆け寄るフィルだが、いきなりリコに突き飛ばされ地面に倒れ込んだ。

〈フィル、大丈夫か?〉

ちょっと呆れながら、トナはフィルの元に駆け寄り起こしてやる、その間にもリコはハルを抱えその身体をきつく抱きしめる。

 

〈ちょ、リコ…く、苦しいよ……〉

〈ああよかった……本当に心配したんですよ。

 トナとフィルは役に立たないし楽観的に考える事しかできないし〉

〈役に立たなくて悪かったな〉

ジト目で顔が青くなりかけているハルを尚もきつく抱きしめるリコを睨むトナ、というか早く助けてやれ。

 

「おいおい、ハルが苦しがってるぞ!!」

〈えっ……?〉

グリードの声が聞こえ、リコはキョトンとしながらハルを見ると……。

〈うぅ……〉

身体をピクピクと震わせながら、ぐったりとしていた。

〈きゃーっ!? しっかりしてハル、誰にやられたの!?〉

〈お前しかいねえだろ〉

トナの突っ込みにも反応せず、リコは尚もハルをゆさゆさと揺らしている。

そんな光景に、グリードは少し呆れながらも地面に座り込んでいるフィルへと声を掛けた。

 

「大丈夫か?」

「う、うん……」

手を差し伸べてきたグリードに応えつつ、彼の手を掴み立ち上がるフィル。

「君は……ハルを助けてくれた人だね? 本当にありがとう」

「気にすんなよ。ハルと出会えたのは完全な偶然だったんだから。

 あっ、俺の名前はグリード。このイルミナシティでポケモントレーナーを目指してるんだ」

「僕はフィル、カントーのマサラタウンから来たんだ。この街へは、観光目的で……」

「それなら知ってるよ、ハルが教えてくれたからさ」

「えっ……?」

教えてくれたから、という言葉にキョトンとするフィル。

それではまるで、ハルの言葉を理解したみたいではないか。

 

(コイツ……)

トナの表情が少しだけ険しくなる。

見た目だけならこの少年は怪しい者ではない、事実ハルを自分達の所に届けてくれた。

だが……トナにはこのグリードという少年をどうも信用できない。

しかし、それはトナだけでなく――リコも同じ。

 

(この人……何だろう、いい人みたいだけど……内側から、私と似た力を感じる……)

この世に生きる生物なら誰もがその内側に宿す不可思議な力――波導。

ルカリオであるリコは、それを強く感じ取る事ができ、また使用する事ができる。

普通の人間に対しては、気を張らなければ感じ取る事ができないくらい小さい波導しかない。

だが……この少年に対して、は。

まだ確証があるわけではない、しかし確かに普通の人間にはない強い波導を彼から感じ取れる。

 

――それを、確かめたいと思った

 

〈フィル〉

そう思った時には、リコは既にフィルに声を掛けていた。

ポケモンの言葉がわかるフィルはその声を聞き取り、リコに視線を向ける。

そして、リコはあるお願いをフィルに投げかけた。

 

〈フィル、私……この人とポケモンバトルをしてみたいです〉

 

と。

それを聞き、グリード以外の表情が変わった。

それと同時に、フィルの中では若干の驚きと疑問が生まれる。

リコはバトルに対して消極的というわけではないが、こうして自分から挑むというのは珍しい。

彼女の事だ、何の意味もなくそう言ったわけでないようだが……グリードを睨むように見つめているリコに、理由を訊くのはなんだか憚られた。

別にフィル自身もバトルをするという事に対して反対意見はない、だから彼はグリードへと視線を向け口を開いた。

 

「あの……僕とバトルしてくれませんか?

 リコが、このルカリオがあなたとポケモンバトルをしてみたいそうなので……」

「バトル? もちろん喜んで!!」

グリードからしても、その提案はとても嬉しいものだった。

見るだけで判る、フィルのポケモン達の凄さというものが。

フィル自身に凄みなどは特に感じないが、何というか……彼には不思議な魅力のようなものを感じる。

そんな人とバトルがしてみたい、グリードという少年の性格からすれば、そんな結論に達するのは無理からぬ事だった。

 

「じゃあ早速裏にあるバトルフィールドに行こうぜ!」

言うやいなや、フィルの手を掴んでセンターを出て行くグリード。

そんな彼等を後ろから黙ってついていくトナだったが、歩きながらリコに対し疑問を投げかける。

〈珍しいな。お前からフィルにそんな事を言うなんてよ〉

バトルマニアだったかお前、と冗談めかして言うトナだが……リコの表情は少し厳しいものになっている。

いつもと違うリコの様子に、ハルは首を傾げトナは表情を固くする。

 

〈アイツ、なんかおかしな力を感じるな……〉

〈ええ。だから……私はそれを確かめたい〉

知らず、拳を握りしめるリコ。

ただならぬ雰囲気に、トナは肩を竦めやれやれと首を振るのだった。

 

――フィル達に呼ばれ、急ぎ足でバトルフィールドに向かう

 

周りには人はおらず、グリード達はすぐさまフィールドへ。

「それでルールは? できればフィルのポケモン全員とバトルしてみたいんだけど」

「そうですね……」

まずはトナ達に訊いてからだ、そう思いフィルはトナ達へと視線を向けると。

「………リコ?」

リコが、黙ってグリードの元へと歩いていきそして。

 

〈――私は、あなた自身とバトルしたい〉

 

そう言って、彼女はグリードのポケモンにではなく……。

グリード“自身”に、バトルを挑んできた―――

 

 

 

To.Be.Continued...




【ツタージャ】♀     【ムクバード】♂      【ミロカロス】♀
【使えるわざ】      【使えるわざ】       【使えるわざ】
・つるのムチ       ・たいあたり       ・たつまき
・リーフブレード     ・かぜおこし       ・アイアンテール
・たいあたり       ・でんこうせっか     ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん     ・つばさでうつ      ・れいとうビーム
・へびにらみ       ・つばめがえし
・リーフストーム    ・ブレイブバード(未完成)
・リーフブレード二段斬り

【キバゴ】♂     【コジョンド】♀
【使えるわざ】    【使えるわざ】
・ダブルチョップ   ・みきり
・シャドークロー   ・はっけい
・りゅうのいかり   ・とびひざげり
・ドラゴンクロー   ・はどうだん
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