さーて、今日はどんな1日になるのかな?
「おやつだぞー!!」
俺の声に、ポケモン達が元気な声を上げる。
練習バトルの後のおやつは、やっぱり格別だよな。
「それにしても……グリードさんのポケモン達も充実してきましたよね」
「そうだね」
モモカの言葉に、そういえばとポケモン達に視線を向ける。
ツタージャにムクバード、ミロカロスにキバゴにコジョンド、たしかに充実してきた。
「そういうモモカ達も充実してきたよな」
アヤトは6体全て揃えたし、俺とカレンとモモカとフェイトはあと1体で6体になる。
あと1体か……どんなポケモンをゲットするのかなぁ。
「もうすぐ期末試験ですけど、今年はどんな試験になりますかね?」
「期末試験……」
その単語、俺にとって聞きたくない類のものだ。
でも、今年“は”ってどういう意味だ?
「去年は筆記試験に単なるポケモンバトルでしたけど、今年はどんな試験になるのかなぁ……」
「へぇ……」
その時ごとに試験内容が違うのか、面白いな。
「………シア」
「………?」
ふと、みんなで楽しくおやつを食べているグレイシアが、あるポケモンを見つめているのに気が付いた。
グレイシアの視線の先には……カレンのエルレイド?
みんなと違っておやつを食べず、腕を組んで目を瞑っている、なんか男らしいな。
あ、エルレイドがグレイシアと目を合わせた。
「シ、シア〜……」
見つめられ、顔を赤くして顔を背けるグレイシア。
「……グレイシア、もしかして」
「? モモカ、なにがもしかしてなんだ?」
「これは間違いありませんね……グレイシア、カレンさんのエルレイドに恋してます!!」
「…………恋?」
恋って……あの恋愛とかの恋か?
「ちょっと待ちなさいよ、あたしのエルレイドにモモカのグレイシアが恋してるって……」
「間違いありませんよ。グレイシア、あなたエルレイドに恋してますよね?」
「シ、シア……」
尋ねられ、ますます顔を赤くするグレイシア。もしかしてマジ?
してますよね、もう一度モモカが尋ねるとグレイシアは恥ずかしそうにこくりと頷いた。
「へぇ……他の種族のポケモンに恋する事もあるんだな」
「何を言ってるんですかグリードさん、恋に種族なんて関係ないですよ。
ツタージャやキルリアやミロカロスがグリードさんを、リースがアヤトの事が好きなのと一緒ですよ」
「キルキル♪」
「………タージャ」
「ミィ♪」
「おわっ……みんなして抱きつくなよ」
「ミロォ〜♪」
「ぐっ……リース、抱きつくな」
もみくちゃにされる俺とアヤト、嬉しいけど……ちょっと苦しい。
「よーし、じゃあグレイシアの恋を成就させましょう!!」
「えぇー……」
「ちょ、そこまで嫌そうにしなくてもいいじゃないですか!!」
カレン、そんなに嫌なのかよ……。
「言っておくけど、あたしのエルレイドそういうのにまったく興味がないから。グレイシアが傷つくだけじゃない?」
「何を言ってるんですかカレンさん!! 恋に障害は付き物、あればあるほど燃えるんです!!」
「はぁ……」
もう何を言っても無駄だと思ったのか、ため息をついて諦めるカレン。
やれやれ、恋愛の事になるとモモカは人が変わるな。
「だが、具体的にはどうするんだ?」
「まずは……アピールですね」
「アピールって……」
「グレイシア、エルレイドにアピールです!」
「シ、シア……」
頷き、ゆっくりとエルレイドに近づいていくグレイシア。
「シア、グレシア」
「…………」
少し恥ずかしそうに話しかけるグレイシア、エルレイドは黙ってそれを聞いている。
暫し、そんなやりとりを眺めていると……エルレイドがぷいとそっぽを向いてしまった。
「シア〜……」
あーあ、ショック受けて涙目になってる。
「カレンさん、グレイシアに何てことするんですか!!」
「あたしに言われても……エルレイドはそういうのに興味ないって言ってるじゃない」
「うぅ〜……」
これは、グレイシアも大変な奴に惚れたみたいだな。
うなだれるモモカに、俺達は揃って苦笑を向けていたが。
「――シア、グレイシアァッ!!」
突然キッと顔を上げ、エルレイドに何やら叫び始めた。
おいおい、フられたからって怒るなよな。
そう思ったのだが、どうやらそうではないらしい。
「……エルレイ」
「えっ……エルレイド、まさかグレイシアとバトルしたいの?」
カレンの問いに、こくりと頷きを返すエルレイド。
って事は、グレイシアはエルレイドにバトルを申し込んだという事になるけど……。
「でも、どうしてグレイシアは……」
そう、どうしていきなりバトルを申し込んだのかがわからない、好きな相手なのに。
エルレイドはバトルできれば何でもいいのか、既にやる気満々だ。
「……何なのよ一体」
何やらおかしな事態になり、カレンは頭を抱えてしまう。
モモカも突然のグレイシアの行動に、驚きを隠せないでいた。
まあとにかく、バトルフィールド以外でのバトルは基本的に禁止されているし、場所を移動するしかないな。
…………。
「――すみませんカレンさん、なんかおかしな事態になってしまって」
「いいわよ別に、あたしもバトルができるのは嬉しいから。
言っておくけど、あたしのエルレイドは手加減なんかできないわよ? たとえ惚れられてる相手だろうとも」
「シア、グレシア!!」
そんな事するな、とばかりに叫ぶグレイシア。
既に両者はバトルフィールドに立ち、睨み合うように対峙している。
俺達3人は当然外で観客モード、とりあえず応援だけしておこう。
「でも、グレイシアはどうしてエルレイドにバトルを申し込んだのかな……?」
「それ以前に、オレはいつグレイシアがエルレイドを好きになったのかの方が気になる……」
……俺はフェイトとアヤト両方の疑問が気になる。
好き、かぁ……グレイシアがエルレイドに抱く好きと、俺がポケモン達に向ける好きとは、きっと違うもの。
じゃあ、その『好き』と俺の『好き』は、具体的にどう違うのかな?
「なあアヤト、好きって何なんだろうな?」
「……返答に困る質問をするな」
「だってさ、俺には正直よくわかんねえんだもん、俺はツタージャやポケモンのみんな、アヤト達の事が大好きだ。
けど、グレイシアが抱く好きは違うだろ? 具体的にはどう違うんだろ……」
「………さてな」
適当に返された、ちょっとショックだ。
「それじゃあ、先攻はモモカからでいいわよ」
おっと、そろそろバトルが始まるみたいだ。
グレイシアとエルレイド、勝つのはどっちだろうな?
「いきますよ。グレイシア、こおりのつぶて!」
「グレ、シアーッ!!」
跳び上がり、口から数十にも及ぶつぶてを吐き出すグレイシア。
様子見といった攻撃だが、そんなものはカレンのエルレイドに通用しない。
「かげぶんしん」
「エルレイ!!」
その場からエルレイドが消え、グレイシアの周りに沢山の分身が現れる。
それによりキョロキョロと周りを見回し、軽く混乱してしまうグレイシア。
「インファイト!!」
「エルレレレレッ!!」
グレイシアの全身に、速く重い拳の連打を叩き込んでいくエルレイド、かくとうタイプの技だから効果は抜群だ。
たまらず地面に倒れ込むグレイシア、しかし顔をしかめながらもすぐさま立ち上がる。
「あくび!!」
「グレィ……」
口を開けると、ピンク色の泡が現れユラユラとエルレイドに向かっていく。
あれを受ければねむり状態になる、だが……。
「かわしてほのおのパンチ!!」
「エルレッ!!」
あくびを難なく回避し、右腕を炎に包みながらグレイシアとの間合いに迫る。
しかし、モモカとグレイシアとてただやられるだけではない。
「アイアンテール!!」
「グレェイ……シア!!」
迫るほのおのパンチ、それを真っ向から叩きつけたアイアンテールで迎え撃つ!!
ぶつかり合い、けれど両者のパワーは互角。
「こおりのキバ!!」
「レシアッ!!」
鍔迫り合いになりながらも、グレイシアはエルレイドの右腕におもいっきり噛みついた。
顔をしかめるエルレイド、更に噛まれた右腕がだんだんと凍りついていく。
口を放すと同時に間合いを離すグレイシア、その時にはエルレイドの右腕は完全に凍り付いていた。
まるで刀のようなものが備わっている右腕が使えない、それはすなわちエルレイドの技の一部も使えない事を意味している。
「れいとうビーム!!」
「グレシ、アッ!!」
追撃となるれいとうビームを放つグレイシア。
「まもる!」
「エルレイッ!!」
それをまもるで防御するエルレイド、状況はグレイシアの方が有利だ。
「このまま一気にいかせてもらいますよ! グレイシア、こおりのつぶて!!」
「グレ、シアーッ!!」
再び数十ものつぶてを吐き出すグレイシア、だがエルレイドは動かない。
やられる、そう思った瞬間。
「サイコキネシス!!」
「――ルレイッ」
エルレイドの瞳が光り出す、そして——迫るこおりのつぶてを全て空中で静止させた。
「シア!?」
「そんな……!?」
驚くモモカ達、だがそれは観客となっている俺達も同じ気持ちだった。
都合五十近いこおりのつぶてを一つも漏らさず、全て空中で止めるなど並のパワーじゃない。
エルレイドはカレンのポケモンの中でも実力はエース級だとわかっていたけど、やはり驚かされる。
「跳ね返して!!」
「エルレイ!!」
カレンの指示が飛んだ瞬間、空中で止まっていたこおりのつぶてが動き出し、その全てが放った側のグレイシアに向かっていく―――!
「かわして!!」
「シアッ!!」
全て弾く事はできない、そう判断して回避を指示するモモカ。
グレイシアもモモカの指示を聞き、迫るつぶての悉くを回避していく。
だが、その際に見せた隙はカレンとエルレイドに絶対的なチャンスを生み出してしまっていた。
「ほのおのパンチ!!」
「ルレイッ!!」
凍ってない左腕に炎を這わせ、つぶてを回避するので精一杯のグレイシアに踏み込むエルレイド。
モモカは気づいたみたいだけど、その時には既に遅く。
「エル、レイッ!!」
「シアァァァッ!!?」
エルレイドのほのおのパンチは、見事にグレイシアの身体へ深々と突き刺さっていた。
宙に飛ばされ、受け身もできずに地面へ転がっていく。
「……今のはかなりのダメージだ、さすがに耐えきれないか?」
「…………」
グレイシアは立ち上がらない、モモカが必死に呼んでいるけど……。
戦闘不能か――誰もがそう思った時だった。
「…………シ、シア」
「っ、グレイシア!?」
足は震え、満身創痍になりながらも……グレイシアは立ち上がった。
「……ルレイ」
そんな彼女に、エルレイドは面白いとばかりに口元に笑みを浮かべた。
――彼の右腕に纏わりついていた氷が砕け散る
せっかく立ち上がったグレイシアだけど、こんな状態じゃまともにエルレイドと戦う事は……。
「グレシア、シア!!」
戦う事はできないと思っていたのに。
グレイシアは、まだ戦えるとばかりに叫んだ。
「……グレイシア」
「シ、シア……」
「……エルレイ」
くいくいと手を動かし、かかってこいとばかりに挑発するエルレイド。
「……わかりましたグレイシア、まだ戦えるんですね?」
「グレシア!!」
「アイアンテール!!」
「エルレイド、リーフブレード!!」
指示は同時に、ポケモン達も同時に行動を移す。
グレイシアは跳び上がり、エルレイドは地を蹴り踏み込む。
「グレェイ……シアァァァッ!!」
長くしなやかな尻尾が鋼色に変わり、渾身のアイアンテールを叩き込むグレイシア。
「エルレイィィッ!!」
それを、正々堂々と真っ向からリーフブレードで迎え撃つエルレイド。
ぶつかり合った衝撃波が、フィールドだけでなく俺達まで巻き込んでいく。
す、すげぇパワーだ……前が見えない……。
「シアァァァァ……!」
「エルレェェェ……!」
互いに一歩も譲らない。
勝つのはグレイシアのアイアンテールか?
それともエルレイドのリーフブレードか?
鍔迫り合いはまだ終わらない、凄まじいエネルギーを辺りに撒き散らしながらも尚、激しさを増していく。
そして、永遠とも思える長い時間の後――凄まじい爆発音と共に、フィールドが噴煙に包まれていった。
「おわっ!?」
「タジャ!?」
「ちっ!!」
「きゃっ!?」
俺はツタージャを、アヤトはフェイトを庇い煙に包まれていく。
バ、バトルは……グレイシアとエルレイドはどうなったんだ?
煙に咳き込みながらも、フィールドに視線を向ける。
やがて、覆い尽くしていた煙も晴れ……フィールドには、しっかりと立っているグレイシアとエルレイドの姿が。
「…………シ、ア」
そう思った瞬間、グレイシアは小さく鳴き地面に倒れ込んでしまった。
……勝負あり、だな。
「…………」
倒れたグレイシアに近づくエルレイド、そして暫しグレイシアを見つめてから……。
「あ………」
優しく、本当に優しくグレイシアの頭を撫でてから、その身体をそっと抱きかかえた。
「エル、エルレイ」
「……エルレイド、あなた」
「エルレイ」
驚くカレン達をよそに、エルレイドはグレイシアを抱きかかえたままこちらへとやってくる。
……優しいじゃんエルレイド、彼の真意がわかった俺はすぐさまバッグからきずぐすりを取り出してグレイシアの身体にかけてやる。
全力で戦ったグレイシアの気持ちが、少しはエルレイドに届いたのかもしれない。
もしかしたらグレイシアがバトルを挑んだのも、好きな人に認めてもらいたかったからかもな。
そして、その想いがエルレイドにも届いたから……そんな考えは、都合がいいかもしれないけど、そうであってほしい。
「カレン、モモカ、ポケモンセンターにいくぞー」
「えっ、あ、そうですね」
「……わかってるわよ」
我に返ったカレン達と共に、俺達はポケモンセンターに向かう。
もちろんその間も、エルレイドはグレイシアを抱きかかえたままだ。
恋とかはよくわかんねえけど、そうした方がいいっていうのはよくわかった。
「なあ、ツタージャ」
「タジャ?」
「恋って、なんか難しそうだな」
「………タージャ」
To.Be.Continued...
【ツタージャ】♀ 【ムクバード】♂ 【ミロカロス】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】 【使えるわざ】
・つるのムチ ・はがねのつばさ ・たつまき
・リーフブレード ・かぜおこし ・アイアンテール
・たいあたり ・でんこうせっか ・ハイドロポンプ
・かげぶんしん ・つばさでうつ ・れいとうビーム
・へびにらみ ・つばめがえし
・リーフストーム ・ブレイブバード(ほぼ完成)
・リーフブレード二段斬り
・エナジーボール
・???
【キバゴ】♂ 【コジョンド】♀
【使えるわざ】 【使えるわざ】
・ダブルチョップ ・みきり
・シャドークロー ・はっけい
・りゅうのいかり ・とびひざげり
・ドラゴンクロー ・はどうだん
・りゅうのいぶき